ティンブクトゥ (新潮文庫)

制作 : Paul Auster  柴田 元幸 
  • 新潮社
3.61
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本棚登録 : 475
レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451137

作品紹介・あらすじ

ミスター・ボーンズは犬だ。だが彼は知っていた。主人のウィリーの命が長くないことを。彼と別れてしまえば自分は独りぼっちになることを。世界からウィリーを引き算したら、なにが残るというのだろう?放浪の詩人を飼い主に持つ犬の視点から描かれる思い出の日々、捜し物の旅、新たな出会い、別れ。詩人の言う「ティンブクトゥ」とは何なのか?名手が紡ぐ、犬と飼い主の最高の物語。

感想・レビュー・書評

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  • この本の惹句に「犬と飼い主の最高の物語」とあるが、単なる犬を主人公にした小説ではない。犬のミスター・ボーンズは高い知能を持っているが、犬という形に生まれたことで制約を受けている。一方、飼い主のウィリーは文学について高い志をもってはいるものの、人間として重要なものが欠落している。つまり、これは人間の頭脳と知性を持った犬と、犬の脳みそしかない人間の話なのではないか。そんな思いを抱きつつ読み進めると、いろいろなことが腑に落ちる。犬の呼称に「ミスター」が付いているのもそのひとつ。
    『リヴァイアサン』では読者の想像をかきたてる部分が今ひとつだったが、この『ティンブクトゥ』では見事にかきたててくれた。これまで読んだオースター作品の中では『偶然の音楽』がベストと思っていたが、本書もそれに匹敵する。

  • 2010-6-30

  •  久々に読むポール・オースター。
     紆余曲折の人生を歩んできた詩人のウィリーと、その飼い犬ミスター・ボーンズの物語。
     ミスター・ボーンズ目線で物語は進む。
     物語の大半は飼い主ウィリーが亡くなった後、犬であるミスター・ボーンズがどのような思考、どのような態度、どのような志でこの世を生き残ろうとし、記憶と夢の狭間でどのような世界に導かれ、どのような結末を迎えるのかが描かれている。
     淡々としているようであり、いつものポール・オースターらしく哲学的、論理的でもあり、余計な感傷はそぎ落とされているのだけれど、知らぬ間に心の琴線に触れてしまう物語である。
     犬好きでなくても、たまらない魅力を持った作品だと思う。
     悲しい物語と捉えることもできるが、たまらなく幸せな犬の物語だと捉えることも出来ると思う。

  • 淡々と書いてあるけど、感傷的にならずに読めるわけもなく、この終わり方もまた、私にはきつい。
    犬といつも一緒に行動出来ない人間としては、安閑とは読めないラストシーンだった。
    小説は仕方が無いとは思うけど、当たり前の変哲のない犬の生活語ったものって、無いのかしらん

  • 暖かい,平穏な生活を求める,ミスター・ボーンの様子が,とても痛ましく,哀しい

  • 「ミスター・ボーンズは知っていた。 ウィリーはもう先行き長くない。」
     そんな一文から始まる。犬と人間の物語。

    ホームレスのウィリーと、むく犬の「ミスターボーンズ」。ふたりは、アメリカ、東海岸の街(ワシントンや、ボルチモア が出てくる)で暮らしたり、放浪したりしていた。
    ウィリーはやがて世を去り、ミスターボーンズは、ひとり放浪の旅を続ける。“新らしいパートナーはしっかり選べよ” と言い遺したウィリー。ボーンズは、放浪の先々で、新たな人々と出会う。
    中国料理店の息子ヘンリー少年と出会い(裏庭で親に内緒でこっそり飼われ、やがて追い出される。)。パイロットの妻と子供たちの裕福な白人家庭に保護され、つかのまの穏やかな日々。
    しかし、ボーンズは、そうした日々の合間にも、ウィリーの思い出を回想するのだった。

    優しかったウィリーのことを思い続けるボーンズ。
    生活はきつかったけど、彼との放浪は楽しかったなあ、とか、彼は自分の人格を尊重し、信頼してくれたなあ、と思うのである。
    人と犬の関係なのだが、ペットとして愛でるものとは程遠い。“お前はそんな生き方でいいのか?” とか、“誇りを持って生きろ” と問うような。ふたりは、そんな、哲なる対話をするのである。

    犬とヒトの友情をしっとりと描いて泣かせる小説…。
    そんな期待感を抱いて読み始めたのだが、期待値を上げすぎたかもしれない。

    ただ、終章は、切なさが少しばかり胸に迫った…。 
    ウィリーに会いたいという思いをいよいよ募らせるミスター・ボーンズ。“ウィリーは未知の土地「ティンブクトゥ」に旅立った” そう考えるボーンズは、彼に会いたくて会いたくて、彼のもとへ旅立とうとするのだった。

  • 飼い主ウィリーとの絆に泣き、壮絶なミスターボーンの犬生に最後涙してしまう。
    なんでこんなに犬の気持ちがわかるのだろう、ポールオースターという人は。
    いや理解しているわけではないのかも知れないが、犬のあんな行動やこんな行動は本当にこんな想いの表れなのかもしれないと思ってしまう。
    しんみり、ほっこりしてちょっと切ない犬ストーリー。

  •  詩人である飼い主ウィリーの死を目前に、賢い犬のミスター・ボーンズは回想する。そして彼の死後、新たな飼い主を求めて彷徨い歩く物語。ミスター・ボーンズの聡明な視線、人を信じる気持ちが、とても強くて美しい。最後は愛するウィリーの待つティンブクトゥにいけたと信じたい。
     オースターと云えばミステリ小説の要素があるイメージだったが、そういう意味では異色の本作。しかし、哲学的な観念は健在。

  • かわいらしいわんちゃん写真の表紙と、興味のあったポール・オースターということで購入。
    猫ブームに押され気味の犬諸君、わたしはわんちゃんも応援しています。

    詩人ウイリーの相棒はミスター・ボーンズ。犬だ。
    ウイリーの死後のミスター・ボーンズを犬目線で描く。

    まとめるとこれだけ。
    とても単純。

    この本は、犬目線の物語で想像されがちな、犬らしい仕草に溢れた犬好き大喜びなかわいらしい物語、ではない。
    ミスター・ボーンズは人間と同じように考え行動している。でも犬だから言葉は話せない。犬としての行動を読ませるのではなく、あくまでミスター・ボーンズは犬の姿をした人間なのだ。そこが犬目線の物語ではあっても、この作品が他と違う点。
    飼い主と犬というより男と男。
    相棒を亡くしたひとりの男の物語という感じがする。

    こう書くと男と犬の友情物語という感じがするがそれだけではない。
    ウイリーが行き倒れになり恩師ミセス・スワンソンと再会するところをミスター・ボーンズはハエとなって見ていたりする。
    こういう不思議なところがポール・オースターらしいのかもしれない。オースター初読みなのでよくわからないけれど。

    ところで、タイトルの意味だが、これは作中できちんと書かれている。
    わたしは最初、犬の名前だと思っていた。

    ミスター・ボーンズが新しいやさしい飼い主の元で幸せに平穏に暮らすというありふれた結末を期待しつつ、そういう終わり方はしないのだろうとわかって読む。
    単純な物語だけに何回か読み重ねると思いも深まってくるように感じた。

  • 前半のユダヤ詩人の視点は面白かったけど犬の視点で語られると割とどうでもよくなってしまう

  • 使われている言葉や表現が私には汚くて受け入れがたく、なかなか物語に入り込めなかった。。

  • 放浪癖のある主人とその飼い犬の話
    読む前には、主人と犬がどう生きていくのか、或いは主人が死んでしまった後、犬がどう生きていくのか、といったことを描いた犬好きに感動を呼び起こさせるような内容の本なのかと思ったが、実際は違った。
    読み手が予想するような出来事は上手く避けるように書かれていて、したがって読み手の予想はことごとくシカトされ、新たな展開を上書きすることで読ませているように感じた。
    犬に対しての心理描写は上手く書かれていて、多分作者の人は犬が好きなんじゃないだろうかと思った。
    こう書くとそこまで面白そうに見えないかもしれないが、おそらくこれは小説に求めるものの違いからくるものだろうと思う。この小説は、技巧的な、つまり読ませる小説であり、私の求めている読み込む小説ではなかったように感じた。

  • 多弁症の主人ウィリーを持つ、ミスター・ボーンズ。
    多弁症ってすごいなぁ。そじが喜ぶから真似してずっと1人で喋ってるけど、言葉ってそんなにひっきりなしに出てこない…

    話の中でも喋りが多すぎて飽きた。

    酔歩する男並みに話が思ってたよりも長くて違う方向性だった。

  • 第11話(11月17日放送)で、カフェ・シャコンヌで真琴が読んでいるのが、犬の目線で放浪の詩人と社会を描いたこの本。教え子・根岸の父のリストラ問題からの連想……というわけではないでしょうが、著者オースターが描く人間や社会の「残酷さ」と、その中に確かにある「優しさ」について、真琴は考えているのかもしれません。

  • 【本の内容】
    ミスター・ボーンズは犬だ。

    だが彼は知っていた。

    主人のウィリーの命が長くないことを。

    彼と別れてしまえば自分は独りぼっちになることを。

    世界からウィリーを引き算したら、なにが残るというのだろう?

    放浪の詩人を飼い主に持つ犬の視点から描かれる思い出の日々、捜し物の旅、新たな出会い、別れ。

    詩人の言う「ティンブクトゥ」とは何なのか?

    名手が紡ぐ、犬と飼い主の最高の物語。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    著者のポール・オースター氏は1947年生まれのユダヤ系アメリカ人作家。

    推理小説の分野で、1980年代半ばに発表した「ニューヨーク三部作」で大きく評価される。

    近代文学の秩序性、独創性、簡潔性等といった特徴のアンチテーゼとしてのポストモダン文学的な香りが濃厚に漂う、著者独特の手法で書かれたものである。

    本書はいわゆる推理小説の形をとってはいないが、前述した彼の文学上の特徴が明瞭に現れた作品である。

    飼い犬の目から見た世界が、飼い主との別れ、新しい家族との出会い、また元の飼い主への思慕行動などを通じて描かれる。

    その表現は妄想、夢、時間の逆行など通常のわれわれの意識の下ではとまどいの連続である。

    だが、これは犬の世界なのだと気付くと、この実験的な作品が急に興味深く思えてくる。嗅覚で生きる動物と人間とでは同じ場所にいても感じる世界は違う。

    同じ人間同士でも物事の受け取り方が異なることがままあるが、それでも一通りの秩序が維持できているのは奇跡に近いことだと感嘆せざるを得ないのである。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • これはティンブクトゥ(西アフリカ・マリの交易都市)を舞台にした物語か、あるいはその地に向かう旅を題材にした物語だとばかり思って購入。実際は、まったく期待を裏切られたのだが。ただし、その期待の裏切られ方は、けっして悪いものではなかった。これは、犬の視点から語られるアメリカ版"I am a dog."の物語なのだが、全編を通して独特の哀しみがつきまとう。彼は言う。「求められていると感じられるだけでは犬の幸福は成り立たない。自分は欠かせないという気持ちが必要なのだ」と。遥かな地ティンブクトゥに行けたと信じたい。

  • 残念ながら愛犬家ではないので、破滅型のへぼ詩人ウィリーと、その愛する雑種犬ミスター・ボーンズとの、強い愛の絆の物語、とは読まなかった。

    愛するひとと死に別れた後、どうやって生きていけるか。
    この犬の物語をそう読もうとした。
    ミスター・ボーンズは、それに足る内面を与えられた犬だし。

    だが、簡単にカタルシスを得られる小説ではない。

    老犬の夢の中で、生き続けろと犬に呼びかける主人。
    老衰と病を振り切るように、高速道路の車線へ「車よけ」遊びをしに行こうと、死にに行こうとする犬。
    犬としての誇り、崇高さに満ちた最後の場面を読むと、考え込んでしまう。

    やはり愛するひとのいないこの世より、あの世、ティンブクトゥを選んでしまうものなのだろうか。

  • 久々にPオースター。
    放浪癖のある詩人の飼い犬、ミスター・ボーンズの視点の小説。
    長年飼い主と旅を続けてきたが、ある日瀕死の飼い主とはぐれてしまい…みたいな。
    犬を飼っている身としては、「うちの子が一人ぼっちではぐれてしまったら…」と感情移入しないではいられない感じ。
    ちょっと切なく、同時にユーモラスで淡々としているオースター節はそのまま。切なかったけど面白かったです。
    オースター絶対犬飼ってるだろうなと思ったらやはり飼っているようだ。笑

  • オースターの淡々とした描写で
    ミスター・ボーンズという犬視点で
    ウィリーという人間を通して見ると
    人間のおかしみやかなしみが
    くっきりと浮かび上がってくる。

    ウィリーがあまりにもロマンチストすぎるのです。
    さすが詩人。さすがサンタクロースの伝道者。
    こっちもつられて感傷的になってしまったじゃない。
    オースターの作品にこんな「善良な」人間はあまり登場しない(気がする)。
    でもそのロマンチズムを皮肉るでもなく淡々と書いてくれるオースターが好きなんだよなあ。

    ロマンと現実と。
    夢か現か。

    犬好きにはたまらんということにはまちがいない。

  • ラテンアメリカの作品ばかり続けて読んだせいか、読み始めにいったんリセットする必要に迫られる。
    オースターさんってば意外とフツーのライターとか思ってしまうんで(笑)
    イヤ、フツーで合ってるよね。P.オースターは技巧派じゃない……ような?

    長年連れ添ったボヘミアンな飼い主を亡くし、明日はどっち!?と途方に暮れながら、放浪の旅を続けるボヘミアン犬ミスター・ボーンズ。
    犬の目線で語られた飼い主との珠玉の物語って、P.オースター犬じゃないしなぁw

    オースター作品すべてを制覇したわけではないので、こういう言及は控えるべきかもしれないが、“意外”な印象。
    ただ、映画『スモーク』や『ブルー・イン・ザ・フェイス』(原作未読)に登場する“はみ出しものたち”が織りなす淡々とした群像劇の犬と飼い主バージョン——群像とは対極のミニマムな関係性で語られる“はみ出しものたち”と考えると、そうでもないのかな?

    単なるほのぼの動物感動モノにならないところが、やっぱ外文やね。

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