ガラスの街 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2013年8月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784102451151

作品紹介・あらすじ

「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開――。この作品で一躍脚光を浴びた現代アメリカ文学の旗手の記念すべき小説第一作。オースター翻訳の第一人者・柴田元幸氏による新訳、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 探偵小説のようでそうでもない
    ひとりの男の「間違い電話から始まった」
    物語
    「ニューヨークは尽きることのない空間、無限の歩みから成る一個の迷路」
    やっぱり気になる
    読み終えたあともっと
    気になる
    ゼロは始まりか否か

  • 「そもそものはじまりは間違い電話だった。」

    雑多な人々が暮らすニューヨーク。そこで孤独に生きる作家クインの身に起きた、まるで万華鏡のような物語です。出だしはハードボイルド・テイストと思いきや、次第にオカルト・ミステリー・テイストも加わって、これが映画ならぞくぞくするような展開なのですが、よほど上手く結末を持っていかないと、映画の観客には許してもらえないような・・・。(笑)
    主人公のクインが様々な仮面を被り、幾重にもスライドする可能性がある個人という趣向はなかなか面白いです。また、人生を孤独に生きていると思いきや、お茶目ぶりや没頭していく様など性格設定的にもなかなか親しみが持てますね。(笑)それに登場してくる個性的な面々。破天荒な話ぶりの調査依頼主に加え、尾行対象の破天荒なふるまいにどんどんと物語に引き込まれていきます。そして深まる謎・謎・謎・・・。
    繰り返される街の描写に、そこに行き交う人々、メシ屋の雰囲気にニューヨーク・メッツの話題など、書名のごとく透き通るように描かれる街・ニューヨークの片隅でクインが出くわした事件には、ジャズ・トランペットのBGMがよく似合っています。
    物語の方はだんだんと錯綜の度合いを含めていき、ポール・オースター本人(?)が語るドン・キホーテ論とのパラレルな世界の中で、幾重にも施される主体の転回が読者を幻惑させ、一層、万華鏡の迷路の世界へ引きこまれていくかのようです。

    世の中とそれまでの個から分離すると一体どこへ向っていけるのか・・・?謎なんてさして重要なものではないのかもしれない。

    • nejidonさん
      mkt99さん、こんにちは♪
      いいですね!ポール・オースターは好きな作家さんです。
      特に【トゥルー・ストーリーズ 】などはとても好きです...
      mkt99さん、こんにちは♪
      いいですね!ポール・オースターは好きな作家さんです。
      特に【トゥルー・ストーリーズ 】などはとても好きです。
      残念ながらこの本は未読ですが、レビューを読んで私も読みたくなりました。
      ところでポール・オースターの【スモーク】と言う映画はご覧になりましたか?
      mkt99さんのレビューを読みたいなぁと思って(笑)
      「ハーヴェイ・カイテル」と言う俳優さんが好きで好きで、出演しているものを片っ端から観たときに出逢った作品です。
      なんて、話がズレててすみません。
      2014/04/29
    • mkt99さん
      深川夏眠さん、いらっしゃ~い!(^o^)/
      いつもコメントありがとうございます!

      「訳者あとがき」によると、柴田元幸さん、版権の関係...
      深川夏眠さん、いらっしゃ~い!(^o^)/
      いつもコメントありがとうございます!

      「訳者あとがき」によると、柴田元幸さん、版権の関係上できなかった翻訳が今回可能になって非常に喜んでおられるとのことでした。

      確かにこの不条理感、何とも言えないですね。しかし、「訳者あとがき」にもあるように、このようなゼロリセットはむしろ快感かもしれません。自分もこんな感じでどこかに行ってしまえたら面白いのになあと思いました。本書のように汚い思いはいやですが・・・。(笑)
      2014/04/29
    • mkt99さん
      nejidonさん、こんにちわ。(^o^)/
      いつもコメントありがとうございます!

      ポール・オースターは人気がありますね!なので自分...
      nejidonさん、こんにちわ。(^o^)/
      いつもコメントありがとうございます!

      ポール・オースターは人気がありますね!なので自分も読んでみようと思い、実は初読みです。(笑)今回読んでみて、まずは「ニューヨーク三部作」を制覇しようという気になりました。(笑)

      ハーヴェイ・カイテルはいい俳優さんですね。僕も彼の出演作品はいくつか観たことがあります。『U-571』とか『ナショナル・トレジャー』とかで憶えていますが、特に『ピアノ・レッスン』なんかは印象深かったですね。
      『スモーク』は先ほどいろいろとレビューを読んでみましたが、たぶん未見のような気がします。お薦めなら観てみますね!
      そして、「レビュー」ですね!(^o^)
      2014/04/29

  • 妄想と現実が入り混じり、
    探偵小説の体から始まるが、途中から
    己の狂気に閉じ込められた人間像について、
    リアルに描かれていて文学作品のよう。

    途中、ドンキホーテ論を交わす場面があるが、
    最後に主人公のクインの赤いノートだけが残り、またそこで初めて、物語の作者が、
    ポールオースターの友人なる『私』の存在が、
    明らかになる。
    まさにドンキホーテのように、4番目なる人物が
    ストリーテラーだったというオチ

    同胞たる人間たちの信じやすさを試す愉しみ
    とあるように、幾十にもなっている入れ子の
    小説になっている。

    読書後も、登場人物のあの人は、夢か現実か
    はたまたクインの妄想か、不思議な余韻が残る
    読書感だった。

  • クインという作家が残した赤いノートをもとにオースターの友人である「私」という人がこの物語を書いた体になっている。けど、そもそもクインの体験したことが本当かどうかも分からないし、仕事をクインに依頼したピーターたちの存在、尾行対象だったスティルマン自体が本当に追っていた人物かどうかも、なにもかもがあやふやで消え入りそうなお話だった。それはまるで冒頭のニューヨークという街の特性を表すかのように。
    (途中色んな古典作品の話(ドン・キホーテなど)がでてくるのだけれど、それも知っていたらもっと面白く読めたのかもしれない)

  • 2025/3/20読了
    『ムーン・パレス』以来のポール・オースター。
    探偵小説みたいな粗筋だが探偵小説ではない。そもそも、主人公のクインは“探偵”としては何も解決しないし、読者に対しても何があったのかは明らかにされない。もっと言えば、ポール・オースターの友人である「私」がクインの書き残した赤いノートの内容を元に書き起こしたというこの物語の体裁からすると、全てがクインの妄想の可能性もある。示唆的なのは、(作中人物)ポール・オースターによる『ドン・キホーテ』論で、ナンセンスな言動でもそれが人を愉しませるものなら許容されるということを、ドン・キホーテ自らが狂気に墜ちたフリをして実験していたというもの。クインもドン・キホーテも、片や探偵、片や遍歴の騎士という物語中の人物になりきった点で似た様な存在として描かれている(作中でもいわれているが、2人共イニシャルはD・Q:Daniel QuinnとDon Quijote で、類似性が強調されているように思われる)とすれば、この物語はクインの“自作自演”の可能性もありそうだ。――と、色々解釈の余地がありそうなお話だったが、真相は、個々がガラスのように無機質で透明になってしまう都会の中に消えてしまって、そのまま……?

  • 主人公である作家は、言葉を失ったとき、ガラスのように透明になって消えてしまったのか?
    街も人も、何をかも為さず存在すら不透明な世界。

  • オースター初期、ニューヨーク3部作のうち「孤独の発明」と「幽霊たち」は読んだ記憶があるのだが本作は未読。追悼特集で平積みになっていたところでついに手に取った。
    探偵小説のような体裁で書かれているが、探偵小説のような謎解きも、事態の進展もない。
    馴染みがありそうな例えをするならば、村上春樹的な不思議空間に迷い込み、探偵のようなことをさせられた男の物語といったところだろうか。

    いささか実験的小説のような印象も受け、いろんな手法とテーマが混ざり合っているのだが、敢えて軸となるテーマを探し出すとするのであれば「言葉」と「狂気」と「認識」だろうか。
    虐待を受けて育ったクライアントが用いる違和感のある言葉。
    虐待を与えた側が過去に記した言語をテーマにした(バベルの塔)論考。
    そして物語終盤で取り上げられる、ドンキ・ホーテの狂気に関する論考。
    最終盤で狂気の領域に陥った主人公の、狂気ではないように見える認識。
    合ってるかな、わからないな。

    オースターなので、初期の作品とはいえ文章はとても整っており美しく、読みやすい。
    ただし、読みやすいのと理解しやすいのは全く別。
    本を閉じた後、だいぶ考えた。
    もちろん、こういう考える時間があるのは読書の醍醐味であり、それを提供してくれたという点でとても素晴らしい作品だと思っている。

    「オースター読んでみたい!」という人に最初にお勧めできる作品ではないが、彼の作品が好きで、より彼の作品を深く吟味したいと思う人には是非読んでみて欲しい。
    短いし、チャレンジはしやすいと思う。

  • デビュー作から異彩を放っているポールオースター。先が気になる予想できない展開に加えて類稀なる表現力と文章力。訳者もすごい。最後の物語の締め方も良かったです。

  • ポストモダン的な話とかドンキホーテの話とか聖書の話とか教養がないからむずい。これ推理小説なのか?
    ムーンパレスと雰囲気近いけど、ムーンパレスの方が読みやすかった気がする。

    ニューヨーク行く機会あったらもう一回読みたい。

  • 挿画と著者に惹かれて。
    ある表現がとても印象的で
    今年はまさにそういう一年だった、
    きっとしばらくそう。

  • この小説、括りはミステリなのだろうか。著者はミステリにカテゴライズされることに不満を持っていたらしいけど。
    不思議な物語だった。
    問題が解決されないまま終わるのはミステリ的じゃないけれど、つくりというか、物語自体に大きな仕掛けがあって、それがすごく面白かった。

    読み終えたあとの余韻。
    空虚感?
    空白感?
    何にも残らないのに、しばらく引きずるような感覚。

    …感想になってないけど今回はまぁいいか(笑)

    この著者の他の小説も読んでみたい。

  • ひょんな間違い電話から探偵家業に手を出し、奇妙な白紙の世界に足を踏み込んでゆくダニエル・クイン。
    この物語は必ずしもバッドエンドではないと憶測する。僕にはクインが、初めからこの謎の世界に憧れていたと思えるのだ。

    映像でしか見たことのない、レンガとガラスの壁に囲まれたニューヨークの街並みが朧げに眼前に迫ってくる。憧れと不思議な懐かしさを覚える風景。

    僕はまた、この本を一種のオジサン文学の萌芽と見たい。勘違いしたクインが、若い女性に蔑まれるシーンがあり、滑稽な笑いをもたらしている。

    この人の作品を、もう少し読みたくなった。

  • 「試写室の旅」を読んだら、久しぶりに読み返したくなった。初読時は主人公がどうなっていくのかにハラハラして一気に読んだ。
    改めて読むと、言語や存在を巡る考察も楽しく読める。
    新訳で読めたのも嬉しい。

  • ポール・オースターの小説はいつも破滅的で諦観していてある程度一貫性が無く、実際に起こる出来事ではなく物語は人の脳内で進むので、現実逃避に効く。
    radioheadの小説版って感じ。

    本書はオースターの中では比較的理路整然としてビギナー向けといった印象。

  • 頭おかしく話するシーンはほんとうに頭おかしくなりそうだった。
    なにかを演じるみたいなことは日頃みんながしていることだと思うけど、それにのめり込みすぎるともとの自分がどこにあるのか分からなくなりそうだと思った。

  • ポールオースター、ニューヨーク三部作の一作目
    奇妙な物語。

    読みながら、この物語はどのように成立しているのか、ということがだんだん気になり出しました(というか物語として最終的に成立するのか?)

  • 本書は主人公の意識と登場人物の会話で大部分が成り立っているのだが、読み進むにつれて、真実と虚構の区別があいまいになってくる。そのような文章は通常読みにくいものだが、本書は逆にわくわくしてくる。そのようなことを楽しむ作品なのだろうと思う。

  • 思索の過程に浮かんでは消えてゆく言葉の数々を残らず捉え、文字として残す。それら言葉の連なりは、もしかしたらそれ自体が物語なのではあるまいか。もう一人の自分が居るとして、その存在を捉えることができたなら、僕は彼の人生を同じく歩いて行くことができるだろうか。世の中は不思議で、不思議なものだと決めてかかれば、さほどでもなく、何事にも頓着しなければ、しないなりに、どうにも説明のつかない事態に巻き込まれてしまうこともある。先入観では語り尽くせないのが人生で、世界は、その目に映るすべての物事でしかない。想像はあくまで想像で、現実にリンクしたら、それは想像ではなくなってしまう。あれは、こうだ。それは、ああだ。皆最初から決めてかかるけれど、ならば答えは、すでに目の前にある。

  • ある日、ミステリ作家のクインのもとに間違い電話がかかってきた。電話の向こうの人が発した第一声は、「ポール・オースターですか?」。私立探偵のポール・オースターとやらをクインは知らなかったが、常々ミステリを執筆するとき探偵になってみたかったため、その私立探偵のふりをすることにした。そこから不思議な依頼をうけ、歯車が狂い出してゆく。みなさんも知っている通り、ポール・オースターはこの本の作者の名前でもある。私好みのメタ・フィクションの香りがするぞ……。ページをめくる手が止まらず、秀逸な展開に唸った。

  • 最後まで真相は掴めず。それが読み手の想像を掻き立てるのだろうが、不完全燃焼にもなってしまう。
    なかなか強敵だった。ポールオースター著書は繰り返し読むと新しい考察が生まれるから、少し時間を置いて再読したい。

    叶うならニューヨークの街の中で読めたら最高ですね。

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