ガラスの街 (新潮文庫)

制作 : Paul Auster  柴田 元幸 
  • 新潮社
3.63
  • (32)
  • (76)
  • (74)
  • (9)
  • (4)
本棚登録 : 793
レビュー : 83
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451151

作品紹介・あらすじ

「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開――。この作品で一躍脚光を浴びた現代アメリカ文学の旗手の記念すべき小説第一作。オースター翻訳の第一人者・柴田元幸氏による新訳、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 「そもそものはじまりは間違い電話だった。」

    雑多な人々が暮らすニューヨーク。そこで孤独に生きる作家クインの身に起きた、まるで万華鏡のような物語です。出だしはハードボイルド・テイストと思いきや、次第にオカルト・ミステリー・テイストも加わって、これが映画ならぞくぞくするような展開なのですが、よほど上手く結末を持っていかないと、映画の観客には許してもらえないような・・・。(笑)
    主人公のクインが様々な仮面を被り、幾重にもスライドする可能性がある個人という趣向はなかなか面白いです。また、人生を孤独に生きていると思いきや、お茶目ぶりや没頭していく様など性格設定的にもなかなか親しみが持てますね。(笑)それに登場してくる個性的な面々。破天荒な話ぶりの調査依頼主に加え、尾行対象の破天荒なふるまいにどんどんと物語に引き込まれていきます。そして深まる謎・謎・謎・・・。
    繰り返される街の描写に、そこに行き交う人々、メシ屋の雰囲気にニューヨーク・メッツの話題など、書名のごとく透き通るように描かれる街・ニューヨークの片隅でクインが出くわした事件には、ジャズ・トランペットのBGMがよく似合っています。
    物語の方はだんだんと錯綜の度合いを含めていき、ポール・オースター本人(?)が語るドン・キホーテ論とのパラレルな世界の中で、幾重にも施される主体の転回が読者を幻惑させ、一層、万華鏡の迷路の世界へ引きこまれていくかのようです。

    世の中とそれまでの個から分離すると一体どこへ向っていけるのか・・・?謎なんてさして重要なものではないのかもしれない。

    • nejidonさん
      mkt99さん、こんにちは♪
      いいですね!ポール・オースターは好きな作家さんです。
      特に【トゥルー・ストーリーズ 】などはとても好きです...
      mkt99さん、こんにちは♪
      いいですね!ポール・オースターは好きな作家さんです。
      特に【トゥルー・ストーリーズ 】などはとても好きです。
      残念ながらこの本は未読ですが、レビューを読んで私も読みたくなりました。
      ところでポール・オースターの【スモーク】と言う映画はご覧になりましたか?
      mkt99さんのレビューを読みたいなぁと思って(笑)
      「ハーヴェイ・カイテル」と言う俳優さんが好きで好きで、出演しているものを片っ端から観たときに出逢った作品です。
      なんて、話がズレててすみません。
      2014/04/29
    • mkt99さん
      深川夏眠さん、いらっしゃ~い!(^o^)/
      いつもコメントありがとうございます!

      「訳者あとがき」によると、柴田元幸さん、版権の関係...
      深川夏眠さん、いらっしゃ~い!(^o^)/
      いつもコメントありがとうございます!

      「訳者あとがき」によると、柴田元幸さん、版権の関係上できなかった翻訳が今回可能になって非常に喜んでおられるとのことでした。

      確かにこの不条理感、何とも言えないですね。しかし、「訳者あとがき」にもあるように、このようなゼロリセットはむしろ快感かもしれません。自分もこんな感じでどこかに行ってしまえたら面白いのになあと思いました。本書のように汚い思いはいやですが・・・。(笑)
      2014/04/29
    • mkt99さん
      nejidonさん、こんにちわ。(^o^)/
      いつもコメントありがとうございます!

      ポール・オースターは人気がありますね!なので自分...
      nejidonさん、こんにちわ。(^o^)/
      いつもコメントありがとうございます!

      ポール・オースターは人気がありますね!なので自分も読んでみようと思い、実は初読みです。(笑)今回読んでみて、まずは「ニューヨーク三部作」を制覇しようという気になりました。(笑)

      ハーヴェイ・カイテルはいい俳優さんですね。僕も彼の出演作品はいくつか観たことがあります。『U-571』とか『ナショナル・トレジャー』とかで憶えていますが、特に『ピアノ・レッスン』なんかは印象深かったですね。
      『スモーク』は先ほどいろいろとレビューを読んでみましたが、たぶん未見のような気がします。お薦めなら観てみますね!
      そして、「レビュー」ですね!(^o^)
      2014/04/29
  • この小説、括りはミステリなのだろうか。著者はミステリにカテゴライズされることに不満を持っていたらしいけど。
    不思議な物語だった。
    問題が解決されないまま終わるのはミステリ的じゃないけれど、つくりというか、物語自体に大きな仕掛けがあって、それがすごく面白かった。

    読み終えたあとの余韻。
    空虚感?
    空白感?
    何にも残らないのに、しばらく引きずるような感覚。

    …感想になってないけど今回はまぁいいか(笑)

    この著者の他の小説も読んでみたい。

  • 本書は主人公の意識と登場人物の会話で大部分が成り立っているのだが、読み進むにつれて、真実と虚構の区別があいまいになってくる。そのような文章は通常読みにくいものだが、本書は逆にわくわくしてくる。そのようなことを楽しむ作品なのだろうと思う。

  • 1985年の小説。クィンというミステリー作家が主人公で、ある間違い電話の依頼を受けてしまったことで物語が展開していく。このクィンという男は妻子を亡くしており、かつては文学を志していたものの今ではすっかり大衆的なミステリの商業作家として生きている。そんな彼が、あたかも別の人格になりきるかのように「ポール・オースター」のふりをして探偵を引き受ける、という物語。

    おそらく約10年ぶりの再読。10年くらい前のわたしはオースターが大好きで、夢中になって読んでいたのだけど、「ティンブクトゥ」以降心が離れてしまい、ずいぶんご無沙汰してました。で、今回久しぶりに読み返してみて、こんな本だったっけ?と驚いてしまった。内容をほとんどまるで覚えていないにも関わらず10年前の自分が何に惹かれて、どう読んでいたのかはなんとなく推測できる。そういう不思議な感触の読書になった。

    今回読んでみて、やっぱり素直にものすごく面白いなあと思った。虚無感、狂い、それらが全て極めて魅力的に描かれている。人生に絶望し、生きることそのものをどこかフィクションの役割を演じているかのような距離感で持ってみてしまい、そしてさらなる狂いを呼んでいく様子からは、現実を生きるためにフィクションを必要とする人間の痛切な実感が伝わってくる。フィクションが現実を侵食していき、自分の輪郭が曖昧になっていく様も含めて、彼の小説は徹頭徹尾「フィクション」の地位についてのものだと思う。のちにより詳細に展開される、オースター作品の小説的な御都合主義を超えた「偶然性」の用い方もそこに関わってる。わたしはそういうものにかつて強く惹かれていたのだった。今も好きだなと思ったし、きっと虚構と現実の二重性に対する感性を持ったものがわたしは一生好き。かつて愛したものを思い出せてよかった。

    が、今回読んでみて思ったのが、オースターの描くのはデビュー作から一貫して「妻子を失った男」、要するに「かつては持っていたが失ってしまった」人間なのであり、初めから持っていない人間の物語ではない、ということです。オースターはこの小説を「妻と出会っていなかった自分」を想像して書いたと言っており、結婚して、この『ガラスの街』が出た当初はそうでもなかったにしろのちには文学的成功もおさめる男が、「妻子を失い文学的成功もなしえず発狂する男」の物語を描くというのは、なんだかかなり嫌味なのではと思ってしまった。嫌味というか、「持ってる側」のナチュラルな傲慢さというか。切実さを感じる作品であることも確かなのですが、まあ意地の悪い見方をすれば結局のところコロンビア大卒のエリート男性のシャープで都会的な憂鬱とも言えるかもしれない。そのうえでなおもこの切実さをそれはそれとして愛しているのですが、とはいえわたしはまあ意地の悪い大人になってしまった。かつて素直に感銘を受けていたところからずいぶん遠くに来たな、と。

  • ニューヨーク3部作のひとつ。この作家の小説は初めて読みました。もと詩人だったからでしょうか? 言葉が自由に飛翔します。134頁のスティルマン氏の言葉が秀逸でした。

    依頼を受けてスティルマン氏の足取りを辿りつつ、ニューヨークの街を彷徨するクイン。作者と同じ名前のオースター氏とその家族に出会う場面がありますが、クインの失望が大変鮮明に描かれています。これは作家の仕掛けたトリックで、本作が書かれた意図がここにあることに、あとがきを読んで気づきました。

    ミステリー小説のようなストーリー構成もあって最初から引き込まれて読めました。

  • 初めて読んだポール・オースター初期作。
    冒頭数ページ、クインがニューヨークの街を散歩する節でがっつり惹きこまれていった。その辺り特に、初めての作品であるのに既読感に襲われてなんでだろうと考えていたら、以前何か(これが思い出せない)の書籍で引用を目にしていたからで、確かこの書籍は写真関連のものだったように思う。そのこともあってかなくてか、この散歩のシーンはすごく写真的、というかカメラ的か、澄んだイメージが抵抗なく身体に入ってきた。でもきっと写真をやっていなくとも同じ感覚になるだろう。

    「ニューヨーク三部作」の第1作目だそうだが、一見探偵ものなのかな?と思いきや、探偵ものの体を半分成しながら全く異なる不思議な物語であった。自己の消失と物語が持つ認識のトリック、ドン・キホーテや創世記の引用や解説が本作の中で意味があるのかないのか、探偵小説に不可欠な答えや真相は一切語られないまま私たちの頭の中で問われ続ける。

    読み終えて最初の感想は「これは誰の物語か?」

  • 180503読了
    今年36冊目今月1冊目。

    突き抜けた思索は、やがて外界と自分の内の隔たりを曖昧に、ひいては破壊するものなのかな。
    言葉と思索が自分の生きる道だと思っている私の頭の中では、この作品の中盤からずっと警鐘がなりっぱなしだった。

    これは面白い、が危険だ。

  • 柴田元幸さんは、日本語に翻訳しているというよりも、物語に翻訳しているといった感覚を持つ。
    素敵だなあ。

  • 探偵小説と思いきや、そうではなかった。
    はじめの書き出しの文章から引き込まれた。
    雑踏に埋もれる自分に安心感を覚える、あの感覚。
    物語もだけど、文章力が凄くて、どんどん読み進めてしまうのだった。
    あの夫妻は結局、何者だったのか、太った女は偶然なのか、とか、謎なところも多くて気になるのだけど、主人公は自分とは何か、という問いを突き詰めた究極形に思えてならなかった。誰にでも主人公のようになる可能性はある訳で、ちょっとぞっとした。

  • なんて表現したら良いんでしょうね…という小説

    文章も話の流れも綺麗だしぐいぐい引き込まれて
    でも最後に私の疑問には何も答えてくれない
    すっきりはしないんだけどそれはそれでいいような…

    ミステリーや探偵小説を装った『ひとりの孤独な男の物語』と思えばいいのかな

    ちょっと不思議な世界観
    またこの人の小説が読みたいと思った

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