オラクル・ナイト (新潮文庫)

制作 : Paul Auster  柴田 元幸 
  • 新潮社 (2015年12月23日発売)
3.91
  • (5)
  • (23)
  • (5)
  • (0)
  • (1)
  • 本棚登録 :192
  • レビュー :19
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451168

作品紹介

重病から生還した34歳の作家シドニーはリハビリのためにブルックリンの街を歩き始め、不思議な文具店で魅入られたようにブルーのノートを買う。そこに書き始めた小説は……。美しく謎めいた妻グレース、中国人の文具店主Ⅿ・R・チャン、ガーゴイルの石像や物語内の物語『神託の夜(オラクル・ナイト)』。ニューヨークの闇の中で輝き、弦楽四重奏のように響き合う重層的な愛の物語。

オラクル・ナイト (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • ポールオースターは随分前に読んだ「偶然の音楽」以来の2作目。1作目もかなり好印象だった。日常的とも言える出来事の積み重ねの中に 少しずつある種の物語が浮かび上がってくる。特別な事件は何も起こらないのに 引き込まれていく。う〜ん、なかなか読後感も良かったです。
    他の著作も読みたくなります。

  • あとがきからの引用ですが、オースターによると、『幻影の書』が交響曲だったとすれば、『オラクルナイト』は弦楽四重奏だとか。室内楽の魅力。
    「オラクルナイト」とか、「ペーパーパレス」っていう語感からすでに予感はしてたけども、初めて読むのにもかかわらず、ものすごくオースター的(※)で、心地よい既視感を何度も感じました。
    けど他の作品と比べるまでもない速さで展開がころころ変わって、読み応えがあるし、単なる悲劇というわけでなく、結びもオースターらしいオープンエンディングなので、オースターをはじめて読む人にはこれを勧めたい。

    とはいえ物語内物語内物語は初めてのようです。 これが構造上、どんな役割を果たすのかわからないけど、物語自体に多面的な広がりは感じたし、 もしかしたら物語内物語内物語内物語…とマトリョーシカのように物語構造がどんどん続くこと(つまり、わたしたちの生きている現実もフィクションでありうる、ということ) が示唆されているのかもしれないとも思いました。さすがに深読みしすぎかもしれないけど。
    けど少なくとも、夢であれ、現実であれ、出口はあるものなのだというメッセージは込められていると思う。

    そう考えてみればグレースの例のセリフってラストだけじゃなくて作品中でもすごい活きるんですよね。
    「それがね、私の夢はそこで終わったの。あなたは怯えた表情を顔に浮かべていたけど、私が何をしてあげられる間もなく、目が覚めたのよ。そしたらあなたはベッドにいて、両腕を私の体に回していて、夢でしてくれたのと同じように私を抱きしめていた。素敵だったわ。目覚めたあとも、夢がまだ続いてるみたいだった」
    「じゃあ僕たちが閉じ込められたあとどうなるかは知らないんだね」
    「そこまでたどり着かなかったわ。でもきっと、何か出口が見つかったはずよ。人間は自分の夢のなかで死んだりしないのよ。ドアに鍵がかかっていても、何かが起きて、私たちを出してくれたはずよ。そういうふうになってるのよ。夢を見ている限り、いつだってかならず出口はあるのよ」(pp.182-183)

    気になるのは、これって9.11の直後に書かれた話なんだな、ということ。
    オースターが9.11以降、作品にそのエッセンスを盛り込んでいるのは自明のことなのだけど、当時の惨事が、ミニマルな形ではあれすごくストレートに反映されているなと思いました。
    1982年の9月の出来事を、20年前とシドニーが回想していることはもちろん、閉じ込められてしまうという構図(9.11後のアメリカの状況にはまってしまったことから予想外にヒットした"Stuck In America"っていう曲を思い出してしまった)や、 家をめちゃめちゃにされて、子供も流れてしまって、夫婦間の信頼関係も壊れてしまった、0になってしまう形って、もろに9.11の影響を受けているなと思いました。
    ノートの物語内物語が中途半端に終わってしまうのも、テロによってこれまでの日常がある日突然終わってしまうことを示しているのだろうな。
    読んでるときは物語内物語が中途半端に終わって残念だなと思ってたけど、ラストまで読むと、白紙のページを捨ててしまったことって、未来を捨てることのようにもとれるから、やや不安になる…。

    シドニーが物語を書くことで、彼の日常は動き出し、さまざまな変化を導いたのだけど、 もし偶然ペーパーパレスやあのノートに出会わなければ、というパターンを考えると、この物語が二度楽しめるだろうし、 グレースの夢のことも、執筆中のシドニーに電話の音が聞こえなかったことも、もしかしたら偶然なのかも、と偶然と必然の線引きを考えるのも、すごく楽しいです。 (きっとそれがオースター作品の真っ当な楽しみ方)

    その他
    ・M・R・チャンがチャイニーズなのはオースターが親日家だからなのかなとか考えてしまう。
    ・ジェイコブの施設でのミーティングな話がジェイコブ自身が言うようにけっこうおかしかったです。
     司祭さまの格好して万引きのエピソード、好きだわ。
    ・トラウズの昔の作品の『骨の帝国』の設定がまんまいまの日本と一致していてつらい。いまの日本でなく戦時中のアメリカや日本をモチーフにしているのであろうということが余計つらい。
     ポイントは、政府はつねに敵を必要とする、たとえ戦争をしていなくても、ということだ。(p.227)
     連邦を維持するために人民を十分怯えさせておくには、いまにも蛮族が攻めてくるというふりをするらしい。
    ・ジェイコブがわかりやすいくらいに父殺しでアメリカ的。

    ※わたしの考えるオースター的物語
    ・語り手はもちろんブルックリン在住の作家
    ・物語内物語(すごくおもしろいのにクライマックスを超えた途端にそのおもしろさが急降下する)
    ・誰かしら怪我を負っていたり、病気であったりする
    ・幻想的なアイテムや空間
    ・あやしい異国人
    ・果てしない作業
    ・偶然性
    ・家族とは(これはむしろアメリカ的)
    ・過去と未来の対比
    ・そこそこ大きなお金が動く
    ・わりと主要人物が命を落とす
    ・たまに終盤で答え合わせ

  • すんごく面白かった。
    80年代の『バシャール』の概念を思い出した。
    パラレルワールドとか思考の現実化とか…。

  • 高校生のとき「ムーンパレス」を読んで感動して以来、20年ぶりのオースター長編。漂う空気、人物の輪郭、優しさの漂うストーリーはやはり良い。ラストはやや急速に悲劇的に収束していくが、オースターが人間に向ける眼差しが常に優しいためなのか、最後まで慈愛に満ちた物語のように感じる。おそらくそこがこの作家ならではの魅力なのだろう。映画「スモーク」が好きなら本作もやはりおすすめだ。

  • 青いノート
    不可思議な妻の言動
    心の師が語らぬ裏切り

  • 描写が美しい。映画を観てるような感覚だった。
    訳も良いのだと思う。複数のストーリーが折り重なる。自分も物語が描きたくなる。書けないけど…

  • 不幸や不運はいろんな顔でふいに現れるけど、ひとつの愛があれば、それらを凌駕できる。というたいへんシンプルでゆるぎない構図。こう書くと安直でメルヘンチックに聞こえるけど、世界の秘密に触れそうで触れられない、見えない影を追うような、なにか力強い何者かに突き動かされるような寓話。

  • 2017/4/18購入

  • いままでのオースター作品で重要な役割を担ってきた様々なアイテムがこれでもかと投入されミキサーにかけられ、予想だにしなかった結末を示された、そんな混乱。さすがだ。

  • 物書きを生業にする男とその男の知人であるやはり物書きを
    生業とする男の物語(現実)、
    その男が奇妙なノートブックに綴る物語、
    その物語の主人公のもとに送られてくる物語の中の物語、
    知人の男が過去に描いていた物語、
    男が映画原作のために描いている物語、
    男の妻や近所の文具店店主に対する虚実入り乱れた想像、
    それらが緻密に組み上げられ描かれた、
    言葉と愛情をめぐる一篇の物語。
    最近のオースター作品の主人公、
    触れようとしたら触れられそうなくらいには現実感が伴っている
    (実在してそうな感じ)。
    初期作品群を覆っていた、絶対的な孤独感、
    透徹とした喪失感が
    ちょっと恋しくなったりもする。

全19件中 1 - 10件を表示

ポール・オースターの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
チャールズ ブコ...
宮下 奈都
ポール オースタ...
ポール・オースタ...
伊坂 幸太郎
スティーヴン・ミ...
ピエール ルメー...
カズオ イシグロ
又吉 直樹
カーソン マッカ...
有効な右矢印 無効な右矢印

オラクル・ナイト (新潮文庫)に関連するまとめ

オラクル・ナイト (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする