貘の檻

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 新潮社 (2014年4月22日発売)
3.22
  • (29)
  • (149)
  • (208)
  • (71)
  • (16)
本棚登録 : 1177
感想 : 184
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784103003366

みんなの感想まとめ

人間の思いや愛の複雑さが描かれた物語は、重苦しくも不思議な雰囲気を醸し出し、読者を深い思索へと誘います。誰かを思うことが、他の誰かを傷つけることにつながるというやるせなさや、愛が善悪で測れないというテ...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • なんていえばいいのだろう、このやるせなさを。
    誰かを強く思う、ということは、ほかの誰かを切り捨てるということなのか。
    誰かを大切に守り抜くためには、ほかの誰かを傷つけることも厭わない、それが人間というものの性なのか。

    読んでいるあいだ、ずっと土のにおいがしていた、それも湿った土のにおいが。
    都会の乾いた世界にはない、重くて湿度の高い「ヒトの思い」が土のにおいを運んでくるのだろうか。

    初期のころの道尾さんの作品を思い出させる物語で、好き嫌いが分かれるかもしれないけれど、私はこの重苦しくて不思議でじわじわと心にのしかかってくる世界にたっぷりと浸らせていただきました。

    愛は善悪という基準でははかることができないものなのだ、とつくづく思った。

  • 事実が複雑に絡み合っていて混乱。道尾さんらしい気味の悪い世界は味わえた。

  • 「向日葵の咲かない夏」を彷彿とさせるような、ザ道尾
    作品で嬉しい。
    私は、いい話道尾作品よりこっちが好き。
    途中、幕間のように出てくる夢の話は、夢だけあって訳が分からないけど、それがまたこの本に怪しげな得体のしれない空気を漂わしている。
    人の思いが少しずつずれて、最終的に大きな誤解となり取り返しのつかない事に発展する。
    田舎の因習と方言。金田一耕助世界でした。

  • 終わりの秀逸さより物語の起点のほうが気になりました
    自覚のない外にでても単なる愚痴で終わるような小さな悪意でも集まることで大きくなり形がはっきりすることでさらに増幅する
    実社会でもあることで
    止めたり消したりすることは出来なくてもせめて飲み込まれないようにしたい
    と思いました

  • 少しずつたくさんの人が勘違いしたことにより、悲劇が重なる。ストーリーは楽しめたものの、途中で差し込まれる夢の中の描写が突然すぎて、これまでの描写と違いすぎてストーリーとどう絡んでいたのかがいまいち分かりにくかった。得るものはあまりなかったかな。他作品に期待。

  • 入り込むのに時間がかかりました。
    情景描写がさすが。
    長野県の寒村や、山にある穴堰が目に浮かびました。

    ちょっとした思い込みや誤解、
    言葉の足りなさが悲劇を生むという
    今までの道尾作品にもあるテーマでした。
    新しさはなかったかなぁ。

    あやねさん、いいキャラなのでまた出てきてほしい。

  • 先日NHK BSで八つ墓村を紹介していた番組で、コメンテーターとして出演していた道尾さんが、全く意識せずにこの作品を書いたのに影響を受けていたのでしょうかと言われていたので読んでみた。実際そう思って読むと八つ墓村を彷彿とさせるところが随所にあった。なかなか面白かった。

  • 道尾作品を全部読んでる訳じゃないけど、これは現時点でベストの出来では。
    父の事件で母と村を追われ、長じてからは悪夢に振り回され、離婚に自殺衝動にと散々な主人公には気の毒なだけど、過去の事件と現在の事件に絡め取られ、でも何気に父子の交流もあり、いい味出してる三ツ森が実は大黒幕だったり、地味にお母さんがスゴイ行動派だったり。
    まあ、三ツ森の描写や言動がどうも若過ぎて、半世代年上と感じにくいとか(こういうのは、君づけと敬語じゃ、片付かん〜)、そもそも美禰子の復讐する気が本気であるなら、絶対に父と兄に振り回される地元より、都会でやろ、という気はするが。

  • 『薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具仕立てを駆使したトリックで驚愕の世界に誘う』という帯の謳い文句に偽りなし。ホラーっぽいが王道ミステリで読み応えは抜群。というか、もはや純文学の領域。
    方言がとても良い具合。傑作。

  • 暗めのミステリーです。
    ちょっと重かったけど続きが気になり一気読みでした。
    重いなと思いながら最後まで読んで、ほんと最後の最後に子供の温もりにやられました~。最後いいね!

  • 元妻に引き取られた息子との「最後の」日々を、主人公は生まれ故郷で過ごすことにした。そのひとつの端緒には、彼に縁の深い女性が目の前で死んだことがあった。悪夢に悩まされつつ故郷へ訪れた彼が遭遇する新たな事件と、過去の真実、そして夢の意味するものとは…。
    という物語、幻想味を大目に含みつつ、閉鎖性のある田舎の風情を丁寧に描きながら、幾重にも絡まった糸の隙間を慎重にあけていくように、徐々に真実を明らかにしていきます。
    夢の部分には抽象的な描写が多く、それをちゃんと理解できたかとはいえないのですが(なさけない)それでもそこにある異常、畏れ、不可解を感じ取れるので、読み進むうちに、じわじわと主人公の感じている怖れを理解できてきます。閉鎖的状況が呼び起こす孤立感、というんでしょうか、「逃げ場のない」恐ろしさがだんだんと引き立ってきました。
    そしてひとつの軸でもある息子と父の絆の描き方がほろ苦く、いとしくもなりました。終盤ではどうにか希望ある未来が待っていてほしいと願うばかりでした。
    事件はかなり大がかりともいえるもので、ただそれは何人もの人の思い違いが含まれていたので、かなり虚しく切なく感じさせられました。悪人がそこにいたわけではない事件は、どうしてもそういう複雑な感覚をあとに残します。
    幻想に踊らされつつ、ロジックに驚く、そんな読みがいのあるミステリでした。

  • じつに居心地の悪い話であった。(褒め言葉)

  • 過去に見た忌まわしい現実が精神のバランスを崩壊させる。時を経ても消えない現実逃避の悪夢。ひたひたと心を蝕み翻弄する。個人の力ではどうすることもできない理不尽と圧倒的な絶望感。押しつぶされそうになりながらも自らに決着をつけるべく懸命に道を模索する。人は弱いが強くもなれる。すべてを成し遂げ静かに安らかに目を閉じる主人公が印象的であった。

  • (No.14-13) ミステリです。

    『大槇辰男は一年前に離婚。小学生の息子・俊也とは月に一度会っている。その面会日の帰りの駅のホームで女性が辰男を見ていた。彼女の身体が傾き入ってくる電車の前に転落。その時も彼女は辰男を見ていた。あの人だ・・・。

    辰男は子供の頃、ある事件で父を亡くしている。その後母と辰男は母の実家に戻り、姓も母の姓に変えた。記憶に蓋をして成長した辰男は、あの時何があったのか分からなくなっていた。息子の俊也があの頃の辰男の年齢に近づいたためか、辰男は悪夢を見たり何か聞いたりするようになり心を病み、それが離婚につながった。

    元妻から勤務の関係で、学校が休みの間俊也を預かって欲しいと頼まれた辰男は、俊也を連れて故郷を訪問することにした。
    あの人は何故あの時駅のホームにいたのか、かつて何が起こったのか、聞こえてくる音は・・・。
    過去と向き会うつもりだ。その時を俊也とともに過ごしたい。』

    ストーリーの合間合間に出てくる悪夢。目が覚めると辰男は忘れているらしいのですが、いったいその夢にどういう意味があるのか、何故そういう夢を見るのか気になって仕方ありませんでした。
    辰男は、思い出したくないけれど、思い出したい。思い出したいけれど、思い出すのは怖い。矛盾しているようですが、きっとそういう気持ちなのでしょう。

    皆が少しずつ、誤解したり勘違いしたり軽い気持ちで何かやってしまったりして、過去に悲劇の連鎖が起こりました。
    落ち着かない気持ちで、のめりこむように読みました。

    父に保護される立場の俊也が、ある時から父を守ろうと変わっていきます。大丈夫かな?無理やり成長してしまって。でも、そうだね、子供でも大事なことにちゃんと向き合う方が、真実を隠されて不安なまま大人になるよりきっと良いのだと信じたい。
    そうでないと辰男の苦しみを俊也が再現しかねないから。

    途中かなり暗かったし読後感は爽やかとまではいきませんが、何か救いを感じて最後にはちょっと気持ちが軽くなりました。

    一気読みして満足しました。

  •  近年、自らの作品をミステリーではないと殊更に強調していた道尾秀介さんだが、久々に正真正銘の本格ミステリーが届けられた。

     「悪夢」にうなされ、妻と離婚し、職も失った男。月に一度の息子との面会の帰り、女が電車に轢かれるのを目撃してしまう。男は、その女に見覚えがあった。32年前、生まれ故郷の信州の寒村で発生した、忌まわしい事件の記憶が呼び起される…。

     狭い村である。32年前に父が関わった事件により、男はいじめられ、やがて母と共に転居を余儀なくされた。今では薬を手放せない男が、あの女の死を目の当たりにしなければ、32年ぶりに故郷に足を踏み入れることはなかっただろう。

     まず、村の舞台設定が大変よい。かつて村の偉人によって築かれた地下水路が残る。ダムが完成し、地下水路は使われなくなったが、現在でも偉人を偲び、その命日には放水が行われる。32年前の事件は、この地下水路を抜きには語れない。

     このおどろおどろしい雰囲気は、道尾作品では『骸の爪』以来か。地元在住の友人が何かと世話を焼いてくれるが、男が32年前の関係者と知られると、滞在が難しくなる。迷惑はかけられない。一旦村を出ようとしたとき、男に降りかかった事件とは…。

     そんな本作が極端に暗くなっていないのは、写真家を名乗るある人物の存在が大きい。彼のひらめきがなければ、最悪の事態になっていただろう。立役者と言える、訛り混じりに話す名人。田舎に閉鎖的な面はあるが、本質的に温かい。

     全体の構図は緻密にして明快。それぞれがちょっとずつボタンを掛け違えた結果、とだけ書いておきたい。それぞれ、根底にあるのは愛。しかし、愛の形を曲解してしまった。それだけに、こうなるしかなかったのか、悲しみが募る。

     ところどころ挿入される悪夢の描写は、すべて解明されてみれば、なるほど意味がわかる。男は悪夢を振り払うことができたのか。そしてこれからどうするのだろう。新たに負った傷はあまりに深い。それでも、男には前を向かなければならない理由がある。

  • 自分ではどうしようもないことで不遇な状況に置かれる人、というのが、この著者の作品にはよく出てくる気がする。
    特に子どもは、圧倒的にそういう境遇が多い。そこに著者の価値観を感じることもある。
    本作も、どうしようもない環境が生み出した悲劇の物語。
    何かことが起きた時に、隠したり、なかったことにしたり、ウヤムヤにしてしまう。そうやって、目を背けたこと、隠したことは必ず後になって問題を起こす。
    逃げないで、すべてを明白にすることが結局は幸福につながると理屈ではわかっていても、どうしても人は姑息な手段に走ってしまう。だから悲劇が絶えない。
    この作品の主人公も、「逃げる男」である。いろんなことを隠し、ごまかし、目を背けて生きてきた。
    最後の最後で、わずかな救いが訪れるけれども、読んでいる間じゅうずっと、重苦しい気持ちになった。
    「言わないこと」「隠していること」が生み出すすれ違いは、大きな不幸の元になる。
    まあ、それが人間の本質なのかもしれないが。

    読み終わってから「あ、これ、ミステリーだったんだ」と初めて気づいた。
    人の心の謎、という意味では確かにミステリーだったが、トリックの存在はよくわからなかった。

  •  世界観に浸れればよいかも。自分は、夢の描写と現実が入り乱れているところで若干混乱して、読みにくかったです。

  • 道尾秀介著『獏の檻』(新潮社)
    2014.4発行

    2017.11.24読了
    『眠れなくなる夢十夜』の短編からこの小説を知り、読んでみた。もとは連作短編だったものを長編小説にしたものらしい。おそらく人によって評価が分かれる作品だと思う。幼い頃に封じ込めた記憶に苛まれ、自殺未遂を起こした辰男。夢と現実を行き来しながら、少しずつ辰男の記憶を開示していくことで、謎が謎を呼ぶ仕掛けが施されている。

     ラスト、何かからずっと隠れて逃げ続けてきた辰男が、息子に助けを乞うシーン。辰男は初めて逃げ続けることを止め、現実で生きようとした。そして、息子はそれを受け止めようとした。父子草のように。

     檜場はなぜフィルムを売りさばいたのか。檜場には跡継ぎがいなかったことを考えると、檜場はEDだったのではないか。檜場は充蔵を通して女と交わっていたのだ。

     水分神社脇の息抜き穴の蓋に用いられていた岩。この岩に刻まれていた印は向日葵に違いない。なぜなら、辰男の夢で、老人が覗こうとした穴の縁に刻まれていた印が向日葵だったから、老人は息抜き穴を覗いて絶望したのだ。

     紋章の灰色の人型のものとは何だろう。

     檜場は遺体に小刀が刺さったままだったのも解せない。仮に見つかった時に疑いが自分に向くように仕向けるためか。

    URL:https://id.ndl.go.jp/bib/025387426

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 暗いし重い。方言と夢の話が、話を逸らすようで読み進めにくかった。夢の意味は、結局、イマイチ分からなかった。あと、時の経ちかたが残酷。でも、嫌いじゃない。道尾さんってこういうのだったと思い出した。

全165件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

2004年『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』がベストセラーとなり、以後、『シャドウ』で本格ミステリー大賞、『カラスの親指』で日本推理作家協会賞、『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞、『月と蟹』で直木賞を受賞。累計部数は700万部に迫る。

「2022年 『DETECTIVE X CASE FILE #1 御仏の殺人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

道尾秀介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×