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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784103003366
みんなの感想まとめ
人間の思いや愛の複雑さが描かれた物語は、重苦しくも不思議な雰囲気を醸し出し、読者を深い思索へと誘います。誰かを思うことが、他の誰かを傷つけることにつながるというやるせなさや、愛が善悪で測れないというテ...
感想・レビュー・書評
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なんていえばいいのだろう、このやるせなさを。
誰かを強く思う、ということは、ほかの誰かを切り捨てるということなのか。
誰かを大切に守り抜くためには、ほかの誰かを傷つけることも厭わない、それが人間というものの性なのか。
読んでいるあいだ、ずっと土のにおいがしていた、それも湿った土のにおいが。
都会の乾いた世界にはない、重くて湿度の高い「ヒトの思い」が土のにおいを運んでくるのだろうか。
初期のころの道尾さんの作品を思い出させる物語で、好き嫌いが分かれるかもしれないけれど、私はこの重苦しくて不思議でじわじわと心にのしかかってくる世界にたっぷりと浸らせていただきました。
愛は善悪という基準でははかることができないものなのだ、とつくづく思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
事実が複雑に絡み合っていて混乱。道尾さんらしい気味の悪い世界は味わえた。
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「向日葵の咲かない夏」を彷彿とさせるような、ザ道尾
作品で嬉しい。
私は、いい話道尾作品よりこっちが好き。
途中、幕間のように出てくる夢の話は、夢だけあって訳が分からないけど、それがまたこの本に怪しげな得体のしれない空気を漂わしている。
人の思いが少しずつずれて、最終的に大きな誤解となり取り返しのつかない事に発展する。
田舎の因習と方言。金田一耕助世界でした。 -
終わりの秀逸さより物語の起点のほうが気になりました
自覚のない外にでても単なる愚痴で終わるような小さな悪意でも集まることで大きくなり形がはっきりすることでさらに増幅する
実社会でもあることで
止めたり消したりすることは出来なくてもせめて飲み込まれないようにしたい
と思いました -
少しずつたくさんの人が勘違いしたことにより、悲劇が重なる。ストーリーは楽しめたものの、途中で差し込まれる夢の中の描写が突然すぎて、これまでの描写と違いすぎてストーリーとどう絡んでいたのかがいまいち分かりにくかった。得るものはあまりなかったかな。他作品に期待。
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入り込むのに時間がかかりました。
情景描写がさすが。
長野県の寒村や、山にある穴堰が目に浮かびました。
ちょっとした思い込みや誤解、
言葉の足りなさが悲劇を生むという
今までの道尾作品にもあるテーマでした。
新しさはなかったかなぁ。
あやねさん、いいキャラなのでまた出てきてほしい。 -
先日NHK BSで八つ墓村を紹介していた番組で、コメンテーターとして出演していた道尾さんが、全く意識せずにこの作品を書いたのに影響を受けていたのでしょうかと言われていたので読んでみた。実際そう思って読むと八つ墓村を彷彿とさせるところが随所にあった。なかなか面白かった。
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『薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具仕立てを駆使したトリックで驚愕の世界に誘う』という帯の謳い文句に偽りなし。ホラーっぽいが王道ミステリで読み応えは抜群。というか、もはや純文学の領域。
方言がとても良い具合。傑作。 -
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元妻に引き取られた息子との「最後の」日々を、主人公は生まれ故郷で過ごすことにした。そのひとつの端緒には、彼に縁の深い女性が目の前で死んだことがあった。悪夢に悩まされつつ故郷へ訪れた彼が遭遇する新たな事件と、過去の真実、そして夢の意味するものとは…。
という物語、幻想味を大目に含みつつ、閉鎖性のある田舎の風情を丁寧に描きながら、幾重にも絡まった糸の隙間を慎重にあけていくように、徐々に真実を明らかにしていきます。
夢の部分には抽象的な描写が多く、それをちゃんと理解できたかとはいえないのですが(なさけない)それでもそこにある異常、畏れ、不可解を感じ取れるので、読み進むうちに、じわじわと主人公の感じている怖れを理解できてきます。閉鎖的状況が呼び起こす孤立感、というんでしょうか、「逃げ場のない」恐ろしさがだんだんと引き立ってきました。
そしてひとつの軸でもある息子と父の絆の描き方がほろ苦く、いとしくもなりました。終盤ではどうにか希望ある未来が待っていてほしいと願うばかりでした。
事件はかなり大がかりともいえるもので、ただそれは何人もの人の思い違いが含まれていたので、かなり虚しく切なく感じさせられました。悪人がそこにいたわけではない事件は、どうしてもそういう複雑な感覚をあとに残します。
幻想に踊らされつつ、ロジックに驚く、そんな読みがいのあるミステリでした。 -
じつに居心地の悪い話であった。(褒め言葉)
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過去に見た忌まわしい現実が精神のバランスを崩壊させる。時を経ても消えない現実逃避の悪夢。ひたひたと心を蝕み翻弄する。個人の力ではどうすることもできない理不尽と圧倒的な絶望感。押しつぶされそうになりながらも自らに決着をつけるべく懸命に道を模索する。人は弱いが強くもなれる。すべてを成し遂げ静かに安らかに目を閉じる主人公が印象的であった。
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(No.14-13) ミステリです。
『大槇辰男は一年前に離婚。小学生の息子・俊也とは月に一度会っている。その面会日の帰りの駅のホームで女性が辰男を見ていた。彼女の身体が傾き入ってくる電車の前に転落。その時も彼女は辰男を見ていた。あの人だ・・・。
辰男は子供の頃、ある事件で父を亡くしている。その後母と辰男は母の実家に戻り、姓も母の姓に変えた。記憶に蓋をして成長した辰男は、あの時何があったのか分からなくなっていた。息子の俊也があの頃の辰男の年齢に近づいたためか、辰男は悪夢を見たり何か聞いたりするようになり心を病み、それが離婚につながった。
元妻から勤務の関係で、学校が休みの間俊也を預かって欲しいと頼まれた辰男は、俊也を連れて故郷を訪問することにした。
あの人は何故あの時駅のホームにいたのか、かつて何が起こったのか、聞こえてくる音は・・・。
過去と向き会うつもりだ。その時を俊也とともに過ごしたい。』
ストーリーの合間合間に出てくる悪夢。目が覚めると辰男は忘れているらしいのですが、いったいその夢にどういう意味があるのか、何故そういう夢を見るのか気になって仕方ありませんでした。
辰男は、思い出したくないけれど、思い出したい。思い出したいけれど、思い出すのは怖い。矛盾しているようですが、きっとそういう気持ちなのでしょう。
皆が少しずつ、誤解したり勘違いしたり軽い気持ちで何かやってしまったりして、過去に悲劇の連鎖が起こりました。
落ち着かない気持ちで、のめりこむように読みました。
父に保護される立場の俊也が、ある時から父を守ろうと変わっていきます。大丈夫かな?無理やり成長してしまって。でも、そうだね、子供でも大事なことにちゃんと向き合う方が、真実を隠されて不安なまま大人になるよりきっと良いのだと信じたい。
そうでないと辰男の苦しみを俊也が再現しかねないから。
途中かなり暗かったし読後感は爽やかとまではいきませんが、何か救いを感じて最後にはちょっと気持ちが軽くなりました。
一気読みして満足しました。 -
近年、自らの作品をミステリーではないと殊更に強調していた道尾秀介さんだが、久々に正真正銘の本格ミステリーが届けられた。
「悪夢」にうなされ、妻と離婚し、職も失った男。月に一度の息子との面会の帰り、女が電車に轢かれるのを目撃してしまう。男は、その女に見覚えがあった。32年前、生まれ故郷の信州の寒村で発生した、忌まわしい事件の記憶が呼び起される…。
狭い村である。32年前に父が関わった事件により、男はいじめられ、やがて母と共に転居を余儀なくされた。今では薬を手放せない男が、あの女の死を目の当たりにしなければ、32年ぶりに故郷に足を踏み入れることはなかっただろう。
まず、村の舞台設定が大変よい。かつて村の偉人によって築かれた地下水路が残る。ダムが完成し、地下水路は使われなくなったが、現在でも偉人を偲び、その命日には放水が行われる。32年前の事件は、この地下水路を抜きには語れない。
このおどろおどろしい雰囲気は、道尾作品では『骸の爪』以来か。地元在住の友人が何かと世話を焼いてくれるが、男が32年前の関係者と知られると、滞在が難しくなる。迷惑はかけられない。一旦村を出ようとしたとき、男に降りかかった事件とは…。
そんな本作が極端に暗くなっていないのは、写真家を名乗るある人物の存在が大きい。彼のひらめきがなければ、最悪の事態になっていただろう。立役者と言える、訛り混じりに話す名人。田舎に閉鎖的な面はあるが、本質的に温かい。
全体の構図は緻密にして明快。それぞれがちょっとずつボタンを掛け違えた結果、とだけ書いておきたい。それぞれ、根底にあるのは愛。しかし、愛の形を曲解してしまった。それだけに、こうなるしかなかったのか、悲しみが募る。
ところどころ挿入される悪夢の描写は、すべて解明されてみれば、なるほど意味がわかる。男は悪夢を振り払うことができたのか。そしてこれからどうするのだろう。新たに負った傷はあまりに深い。それでも、男には前を向かなければならない理由がある。 -
自分ではどうしようもないことで不遇な状況に置かれる人、というのが、この著者の作品にはよく出てくる気がする。
特に子どもは、圧倒的にそういう境遇が多い。そこに著者の価値観を感じることもある。
本作も、どうしようもない環境が生み出した悲劇の物語。
何かことが起きた時に、隠したり、なかったことにしたり、ウヤムヤにしてしまう。そうやって、目を背けたこと、隠したことは必ず後になって問題を起こす。
逃げないで、すべてを明白にすることが結局は幸福につながると理屈ではわかっていても、どうしても人は姑息な手段に走ってしまう。だから悲劇が絶えない。
この作品の主人公も、「逃げる男」である。いろんなことを隠し、ごまかし、目を背けて生きてきた。
最後の最後で、わずかな救いが訪れるけれども、読んでいる間じゅうずっと、重苦しい気持ちになった。
「言わないこと」「隠していること」が生み出すすれ違いは、大きな不幸の元になる。
まあ、それが人間の本質なのかもしれないが。
読み終わってから「あ、これ、ミステリーだったんだ」と初めて気づいた。
人の心の謎、という意味では確かにミステリーだったが、トリックの存在はよくわからなかった。 -
世界観に浸れればよいかも。自分は、夢の描写と現実が入り乱れているところで若干混乱して、読みにくかったです。
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暗いし重い。方言と夢の話が、話を逸らすようで読み進めにくかった。夢の意味は、結局、イマイチ分からなかった。あと、時の経ちかたが残酷。でも、嫌いじゃない。道尾さんってこういうのだったと思い出した。
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