雷神

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003373

作品紹介・あらすじ

どんでん返しの先に待つ衝撃のラスト……。道尾ミステリ史上、最強の破壊力! ある一本の電話が引き金となり、故郷へ赴くこととなった幸人。しかし、それは新たな悲劇の幕開けに過ぎなかった――。村の祭が行われたあの日。一筋の雷撃がもたらした、惨劇の真相と手紙の謎。父が遺した写真。そして、再び殺意の渦中へ身を置く幸人たちを待ち受ける未来とは、一体。著者の新たな到達点にして会心の一撃。

感想・レビュー・書評

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  • 叙述トリックによるミスリード、絡み合う伏線。
    ミステリー好きの方には間違いなくオススメの作品。

    容易に筋が読めるようであり、読み切れない。そんな作品だった。それは勿論、作者の意図と筆力によるものだ。

    序盤で大きなミスリード要因が提示され、読者はおそらく誰もがそこに留意する。この後 何も信じられないかもと身構えるだろう。
    しかし それに気付きながらも、さらに何重にもある罠により、読者が正解(?)に辿り着くのは難しい。

    ミステリー要素と人間ドラマ、どちらも堪能できる作品だった。

  • 父の経営する和食料理店で働く藤原幸人は妻の悦子に交通事故で15年前先立たれ、その責任が自分にあるとし、父の南人が亡くなったのをきっかけに一人娘で写真科の学生の夕見と姉の亜沙実と三人で父と共に以前住んでいた新潟県羽田上村を訪ねます。

    31年前幸人の母は川で溺死し、翌年その村では雷電神社で行われる神鳴講で四人のしんしょもち(金持ち)が毒キノコ入りのコケ汁を食べ、二人が死亡。その日落雷に遭い高校生の亜沙実は片耳の聴力を失い火傷も負います。幸人は記憶障害を持ちます。

    父の南人は宮司の太良部容子が自殺する前に遺した手紙からコケ汁の事件の犯人と疑われますが亜沙実の「父はずっと家にいた」という証言により疑いを解かれますが、村にいられなくなり家族三人で、埼玉に逃げたのでした。

    幸人ら三人は三十年前の事件の謎を追いかけますが、村では生き残ったしんしょもちのもう一人が殺されるという事件からまたしても30年前に続く事件が起こり始めます。

    決して明るい解決編のある物語ではありません。
    けれど最後まで読んで複雑にからみあったすべてのピースが繋がったときは家族同士がお互いを思いやる気持ちが伝わってきて、事件の結末には、深く頷くことができました。
    決して明るい結末ではなかったけれど心に残る結末でした。

  • 雷と人の怨嗟の響めきに背筋がぞっとしっぱなし。
    物語の舞台は冬だけど、夏に読むのに最適なミステリー。

    2021年6月からの図書館予約待ちでした。長かった。

    全編スリリングでとても面白いんだけど、プロローグは結局最後まで僕には響かなかったんだよな…
    「あれれっ」って感じで、心の伏線が回収され損ねた、というか。スッキリしてないです。
    単に相性の問題だと思います。

    • アールグレイさん
      たけさん、こんばんは★

      以前私も雷神読みました。そう、あのプロローグは邪魔な気がしていました。
      確か本1冊の中で、7人が亡くなっていたと思...
      たけさん、こんばんは★

      以前私も雷神読みました。そう、あのプロローグは邪魔な気がしていました。
      確か本1冊の中で、7人が亡くなっていたと思います。背筋をゾクゾクさせながらひとりで読んでいると、本当に怖くて・・・・
      あのかいしょもち、たちが憎らしくて仕方なかったです。
      夏のミステリー・言えていますね。
      \(・o・)/
      2022/08/28
    • たけさん
      アールグレイさん、こんばんは!

      この本、アールグレイさんとの会話の中でチェックした記憶があるんですね。
      だからコメントいただけてうれしいで...
      アールグレイさん、こんばんは!

      この本、アールグレイさんとの会話の中でチェックした記憶があるんですね。
      だからコメントいただけてうれしいです。

      再度レビュー読ませていただきました。
      読後感、スッキリしないですよね。
      でも、背筋をゾクゾクさせる展開は流石だなぁと思いました。

      夏におすすめの一冊、に決定ですね!
      2022/08/28
  • ◇◆━━━━━━━━━━━━
    1.あらすじ 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    幸せな日常の様子が一変するところから、物語がはじまります。その後、あることがきっかけで、過去の疑問を解明するために、幼少期を過ごした羽田上村に旅に出ます。そこで過去に起きたことと対峙する中で、真実が明らかになっていきます。

    物語はスピード感があり、次からは次へストーリーが進んでいく感じです。雷神というタイトルが実に作品にあっていると感じました。読んでるこちら側が雷に打たれてるような、そんな感覚を何度も味わいました。

    藤原幸人の視点で物語は進んでいきますが、その感覚の表現が実に多彩で、雷とは対象的に、とても幻想的な感覚をたくさん感じました。

    モヤッとしたものが積み重なっていき、後半に向けて、雷がガンガン落ちていく、そんな展開です。


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    2.感想
    ━━━━━━━━━━━━◆
    これは、、よかったです。
    ただ、すご〜く悲しいお話でした。

    まさに夢中になって読んでしまう一冊だと感じましたが、読後感は悲しみしかないです。悲しみの引き金が、誰かのダメな行為によるものだと、ほんと、憎しみしか生まれなくて、現実の世界でも、それをプラスに考えることは、やはりできないよな…と、感じました。

    物語の中では、悲しみは、サクッと流れていく感じでしたが、いろいろ振り返ってみると、ほんと、悲しみしか残らない…です。

    いろんな箇所に対して、真実が見えていなかったです。
    帯に「ミステリの神業を見よ。」と書かれていましたが、ほんとそうでした!!
    ただ、あまりにも、そんなことが多いので、うまくできているな〜という方向に意識がいってしまったことが、ちょっとだけ残念だったかもしれないです。


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    3.主な登場人物 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    藤原幸人
    藤原悦子 幸人妻
    藤原夕見 幸人娘

    藤原南人 幸人父
    藤原英 はな 幸人母 美人
    亜沙実 幸人姉


    しんしょもち 金持ち
    黒澤
    荒垣
    篠林
    長門

    太良部容子
    太良部希恵 容子娘、亜沙実同級生

    八津川京子
    八津川彩根 京子一人息子

  • 伝統文化を継承している村の中の雷電神社が物語の中心にあるため、神話と神職と雷に打たれた姉弟と村ならではの人々の信仰と風習が折り重なり「雷神」、タイトルが秀逸。

    凄く面白い作品だった。
    ストーリーは伏線とミスリードが上手く絡んでいて興味深く読むことができる。

    秀逸なのがテーマで、「真実と嘘」が中心を占めている。皆が嘘をついているのだがその嘘が必ず誰かの為に犠牲になる様な優しさを纏った嘘であり、だからこそ事件の真相が深まり真実がねじまがる。そこが人間の持つ優しさに似た愛情のように感じられた。

    最後語られなかったが、幸人は夕見に母親が亡くなった真実を話すのだろうか?
    自分は話すと確信している、自分の父親が娘である姉の罪を背負った結果、最終的には姉は記憶を取り戻し30年後また復讐を遂げ自殺。あまりに悲しい嘘の結末に夕見を姉に重ねると推測。
    知らないでいた方がいいと思いやる嘘もいずれタイミングによっては暴かれてしまう時が来るかもしれない。
    真実が作られたフェイクになるよりも、きっと純粋な真実を話す選択をする気がする。

    物語の中ではあえてその部分に触れないで終わるのも秀逸かと自分は感じた。

    • アールグレイさん
      NSFMさん♪こんにちは

      雷神、レビューを読ませて頂きました。
      そして、自分のレビューも読み直しました。本当にゾクゾクしながら読んだ本でし...
      NSFMさん♪こんにちは

      雷神、レビューを読ませて頂きました。
      そして、自分のレビューも読み直しました。本当にゾクゾクしながら読んだ本でした。
      一冊で殺人など、7人程亡くなってしまう、残酷なお話でした。
      今でもわからないことがあります。あのカメラマンは何者?
      ハテナ
      2023/08/04
    • NSFMさん
      こんにちは
      この探偵みたいなカメラマンが自分も分らないまま読み進め疑問に残っていたのですが、先程皆さんのレビューを読ませていただいていた際、...
      こんにちは
      この探偵みたいなカメラマンが自分も分らないまま読み進め疑問に残っていたのですが、先程皆さんのレビューを読ませていただいていた際、以前道尾さんの別作品で登場している人物らしいことを知りました。
      2023/08/04
    • アールグレイさん
      返信ありがとうございます

      ・・・・他の本にも登場する探偵さんでしたか。
      探偵は依頼を受けて捜査する、と考えます。この本では、何故この人が登...
      返信ありがとうございます

      ・・・・他の本にも登場する探偵さんでしたか。
      探偵は依頼を受けて捜査する、と考えます。この本では、何故この人が登場したのでしょう?
      やはり謎です。
      2023/08/04
  • 亡き父のあと、小料理屋を営む藤原幸人のもとにかかってきた脅迫電話。
    秘密を知っている。娘にぜんぶ話す。これは、誰が何を見たのか、何を知っているのか?
    19歳の一人娘に言っていない妻の死の真相なのか?
    それとも故郷での出来事なのか?

    姉を誘って娘と故郷へ…
    そこで見聞きしたこととは…。
    隠されたことによって闇へと葬られ、忘れ去られていた過去。
    幸人の父が隠し続けたことの重さ。
    それによって避けることのできなかった不幸な死。
    哀しくて苦しい結末。


    ラストの娘が言った
    「同じ花なのに、生えてる場所で背の高さが違うのが不思議で、あたし亜沙実さんに訊いたんだよね」
    「そしたら、お日さまがあたるとおっきくなるんだよって教えてくれて」

    何気ないひとことで変わってしまう人生。
    言わなければ、聞かなければ違ったのかも。

  • 久しぶりの道尾秀介さん
    久しぶりのサスペンスホラー

    最後にすとーんなる感じはさすがっす!

    この間ちろっと昭和についてみんみんとやり取りしたんですが、このお話も昭和感が肝だったような気がします

    なんだよ昭和感て!

    うーん、何ていうか昭和自体が凄く長く続いてるんでそれこそ戦前、戦後、後期とではかなり違うと思うんですが、平成、令和との違いは「解明度」の違いだと思うんですよね
    「なんだかよくわからないこと」ってのが今より圧倒的に多かったと思うんですよね
    そしてその「なんだかよくわからないこと」ってのがサスペンスホラーとの相性がばっちりなわけで、舞台設定としての昭和が得体のしれない静かな恐怖を演出してたわけです

    それは別に神様のせいじゃないんだよって解明しなくても良かったんじゃないの?ってことけっこうありますよね

    いいじゃない、雷神のせいにしといても

    • みんみんさん
      なるほど〜
      道尾秀介は昔たくさん読んでたけど…
      最近はちょっとご無沙汰です(u_u)
      伊坂も石田衣良も…
      なるほど〜
      道尾秀介は昔たくさん読んでたけど…
      最近はちょっとご無沙汰です(u_u)
      伊坂も石田衣良も…
      2022/10/01
    • ひまわりめろんさん
      道尾さんらしいと言えばらしいかな

      伊坂幸太郎さんはあんまり読んでないのよ
      石田衣良さんにいたっては未読っす
      道尾さんらしいと言えばらしいかな

      伊坂幸太郎さんはあんまり読んでないのよ
      石田衣良さんにいたっては未読っす
      2022/10/01
    • みんみんさん
      50過ぎたら味覚も変わる…
      今は美味いと思えないって感じかな笑
      50過ぎたら味覚も変わる…
      今は美味いと思えないって感じかな笑
      2022/10/01
  • すごく楽しみにしていた作品でしたが、自分自身の読解力の無さに打ちのめされた感満載のまま読み終えました。

    わからない...

    相関図すら理解出来ずに読み終えましたし、途中で何度も誰が語っている言葉なのかすら見失っていました...



    説明
    内容紹介
    雷撃に襲われたあの夜
    私たちは何を見て、
    何を見てはいけなかったのか。

    「昔の自分には絶対不可能だったと言い切れる、自信作です。僕が理想とするミステリーのかたちがいくつかあるのですが、そのうちの一つが書けました。
    これから先、僕が書く作品たちにとって、強大なライバルにもなりました。」――道尾秀介

    【あらすじ】

    埼玉で小料理屋を営む藤原幸人のもとにかかってきた一本の脅迫電話。それが惨劇の始まりだった。
    昭和の終わり、藤原家に降りかかった「母の不審死」と「毒殺事件」。
    真相を解き明かすべく、幸人は姉の亜沙実らとともに、30年の時を経て、因習残る故郷へと潜入調査を試みる。
    すべては、19歳の一人娘・夕見を守るために……。
    なぜ、母は死んだのか。父は本当に「罪」を犯したのか。
    村の伝統祭〈神鳴講〉が行われたあの日、事件の発端となった一筋の雷撃。後に世間を震撼させる一通の手紙。父が生涯隠し続けた一枚の写真。そして、現代で繰り広げられる新たな悲劇――。
    ささいな善意と隠された悪意。決して交わるはずのなかった運命が交錯するとき、怒涛のクライマックスが訪れる。

    キャリアハイ、著者会心の一撃。
    著者について
    1975(昭和50)年、東京都出身。2004(平成16)年『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、デビュー。07年『シャドウ』で本格ミステリ大賞、09年『カラスの親指』で日本推理作家協会賞を受賞。10年『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞を受賞する。11年『月と蟹』で直木賞を受賞。ほかに、『向日葵の咲かない夏』(新潮文庫版)はミリオンセラーに。近著に『貘の檻』『満月の泥枕』『風神の手』『スケルトン・キー』『いけない』『カエルの小指』などの作品がある。

  • 久しぶりに道尾秀介さんを読んだ。
    複雑な話で、悲劇の連続だった。

    いっしょもち・・・村の権力者たち。
    縦のものが横だったと言っても村人は
    疑わず、それに従う。あんな奴らさえ
    いなければ、一連の悲劇はすべて起こ
    らず、村は平和に祭りも無事に行われていただろうと思う。

    31年前、母が亡くなる。
    30年前、雷の悲劇。食中毒事件。
    祭りで振る舞われるキノコ汁は、特別だった。だから・・・・

    この本はやはり、いくつもの箇所で騙される。文章の表現方法、構成、写真の秘密も・・・・

    31年前の復讐が、今始まる。
    私は、不思議で仕方のない人物のことを最後まで思う。カメラマンとはいうけれど・・・・何者なのか。あんなにも細かく事情を知る男。
    父は、娘を守りたかった。姉を深く思った。真実が切ないから・・・・
    ドキドキしながら読んだ。
    怖さを感じながら・・・・

    読みながら騙されていたが、ラストにはどんでん返しが待っていた。あれもこれも・・・あっ、確かに・・・そうそう・・・・
    あまりスッキリした終わり方ではなかったけれど。

    もっといろいろと、あらすじも書きたい。でも、ネタバレだらけになってしまう。
    殺人事件は確かに多い。
    何人もの人が死んでしまう。
    様々な形で・・・・

    2021、9、16 読了

    • ポプラ並木さん
      ゆうママさん、道尾作品には毎回騙されてしまいますよね。叙述トリック、大どんでん返し。でもそれがデフォルトとなってこっちも当てにいく。でも外れ...
      ゆうママさん、道尾作品には毎回騙されてしまいますよね。叙述トリック、大どんでん返し。でもそれがデフォルトとなってこっちも当てにいく。でも外れる。この繰り返し。でも病みつきになる。これぞ道尾作品!お疲れ様!!
      2021/09/18
  • 過去と現在に繰り広げられる悲劇の繋がりに引き込まれました。
    何を見て、何を聞いて、日々過ごしているか、
    思い違いではっと我に返ることってあると思います。
    何故気づかなかったとか、あの時止めていたらとか、
    言い出したら切りがないことで。
    人の、幸、不幸は予測はできない。悔いる事は前進できることと思いたいです。
    そういった、人が持ち合わせがちな本質を、小説でしか味わえない世界観で表現されているところが凄い。
    間違っていない
    確かにそう感じた
    記憶がポイント
    辛いストーリー、長い、最後まで読み切れるかなと。
    しかし、絡んだ謎がそう回収されるのかと、特に中盤からスルスル入り込め、没入感を得ることができた。
    一本の電話を皮切りに惨劇がはじまる。
    冬の雷に打たれる衝撃、村祭り、神鳴講、ハタ場、しんしょもち(嫌だなぁ)等、とても情景が浮かぶ。
    哀しい結末ですが、ラストに家族愛(著者が描く家族は哀しく優しい)、そして友情もみることができよかった。読後は心にずしんときて、読み応えがありました。

    無数に渦巻いているかもしれない殺意…かなしい

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

道尾秀介の作品

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