罪の轍

著者 :
  • 新潮社
4.09
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本棚登録 : 1683
レビュー : 221
  • Amazon.co.jp ・本 (587ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003533

作品紹介・あらすじ

刑事たちの執念の捜査×容疑者の壮絶な孤独――。犯罪小説の最高峰、ここに誕生! 東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。浅草で男児誘拐事件が発生し、日本中を恐怖と怒りの渦に叩き込んだ。事件を担当する捜査一課の落合昌夫は、子供達から「莫迦」と呼ばれる北国訛りの男の噂を聞く――。世間から置き去りにされた人間の孤独を、緊迫感あふれる描写と圧倒的リアリティで描く社会派ミステリの真髄。

感想・レビュー・書評

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  • 東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。
    北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年、宇野寛治は、
    窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。
    東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。
    一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、
    南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、
    子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける―。
    同じ頃、浅草で男児誘拐事件が発生し、日本中を恐怖と怒りの渦に叩き込んだ。


    昭和のとても有名な事件「吉展ちゃん誘拐事件」をモチーフに描かれた作品。
    何度かドラマを観たはずなのに、事件がどの様に推移し
    どの様に解決したのか…犯人は捕まったのか…全く記憶が無かった

  • 圧巻の587p !
    読み進めるのが苦しい、辛い、哀しい、切ない
    でも読みたい、読まなければ、

    時は昭和38年、翌年の東京オリンピック開催に向けて、あちこちで準備が進み、浮き足立つ東京とかたや、かつてのニシン漁の賑わいが嘘のように寂れ、昆布漁で細々と生計を立てている礼文島のある町との対比

    南千住で起きた殺人事件、警察の捜査のうちに浮かんでくる北国訛りの若い男の影
    その事件が収束に向かおうとする矢先に起きた男児誘拐事件
    テレビの普及でそのニュースは全国に流れ日本中を恐怖に陥れる

    「何としても吉夫ちゃんを両親の許に返すんだ」と犯人探しに奔走する警察
    しかし、警察内の管轄争い、手柄の取り合い? 杜撰な指揮系統に翻弄される捜査陣
    この事件の捜査でも、北国訛りの青年の姿が・・・
    緊迫した東京スタジアムでの現金受け渡し
    犯人に北海道の地は踏ませないと追跡する仁井・落合・岩村

    可愛い息子を誘拐され、苦悩する両親の元に容赦のないマスコミと世間の心無い声

    東京に行きさえすれば明るい未来が待っていると信じていた青年宇野寛治の悲しい生い立ちと心の闇・孤独
    どれをとっても胸が騒ぎ熱くなる

    息つく間も惜しいぐらいに一気に読み終えた
    ただただ、奥田さんの筆力に脱帽!
    読み応えのある本に出会えた喜び、読書は、やっぱり楽しい



  • オリンピック前年、大きく変わりつつある東京で、発生した誘拐事件。犯人を追う警察は、誘拐事件の対応に手こずり、情報に翻弄されつつ、犯人を追い詰めていく。

    奥田英朗さんの小説は、最近は家シリーズなどで、ミステリー系は、「オリンピックの身代金」以来。「オリンピックの身代金」が好きだったのですが、その味わいを持った作品に感じた。

    事件自体は、実際の誘拐事件をモチーフにし、その際の混乱を入れ込みながらも、独自の犯人の話を織り込んでいく。

    オリンピックを迎え、電話やテレビなど情報量が増えてきており、その中で、事件も捜査も変わっていくというあたりが、今ではアナログ感のあるものでも、情報の拡大という観点で大きく影響を及ぼしているのが印象に残った。情報提供方法が簡単になることにより、幅は広がるが、不要な情報、誤情報の多さに対処できないというのは、現代にもつながっている。規模感が異なるだけで、情報量が変わるということでの対応や内容を変えていく必要があることの重要性は今も続く問題と思える。

    市井の描写など、その時代の雰囲気を味合わせてくれる。

  • 時は東京オリンピックを翌年に控えた高度成長期。

    この時代の流れと犯罪とを絡めた、奥田さんが描くザ・犯罪小説。

    時代背景も、文章、言葉から伝わる心情も、とにかく全てが丁寧に描かれていた圧巻の作品だった。

    この時代、未経験の事象に右往左往しながらも執念の捜査をする警察。
    後々、これらが教訓として活かされていくのかと思う箇所は味わい深く、誰もの全ての立場においての心情は感慨深い。

    その分、犯罪に対してのやりきれなさも半端ない。
    何がどうして…罪は覆せない。轍は消えない。
    寛治の過去を遡れば遡るほど増すやりきれなさ…心がしめつけられた。

    • けいたんさん
      共読だねヽ(*´∀`)人(´∀`*)ノ

      寛治のことをどう思えばいいのか、ただただ悔しいね。
      共読だねヽ(*´∀`)人(´∀`*)ノ

      寛治のことをどう思えばいいのか、ただただ悔しいね。
      2019/09/25
    • くるたんさん
      けいたん♪

      読めたよ♪
      圧巻の作品だったね。
      寛治は本当にバカだったのかしら…
      被害者側の立場を思うと哀しい。
      けいたん♪

      読めたよ♪
      圧巻の作品だったね。
      寛治は本当にバカだったのかしら…
      被害者側の立場を思うと哀しい。
      2019/09/25
  • 東京オリンピック開催を翌年に控えた日本。
    逆探知も携帯電話もない時代に起こる、いくつかの事件。

    犯行後も現場近くに居座る素人くささと、玄人のしたたかさ。
    相反する要素が混在する、事件の真相は?

    最後まで一気読み。

    もどかしくなる警察の能力だが、それでも頭と足を使い、着実に真相へと近づいていく。
    派手さのない地道な捜査でも、それぞれのキャラクターがしっかりしていて、引き込まれる面白さがある。

    後半は、吉展ちゃん誘拐殺人事件を思い出す。

    時代を感じさせる空気感も、うまかった。

    窃盗に罪悪感を持たない寛治。
    莫迦と言われつつも子どもに好かれる寛治が、犯罪者でありながら不思議とにくめない。

    ラストは、ぐっとくるものがあった。

    『このミステリーがすごい! 2020年版』国内第4位。

  • 舞台は昭和38年、東京オリンピックの前年。空前の建設ラッシュで山谷が日雇い労働者達であふれていた頃。南千住で元時計商の老人が無惨に殺害される。怨恨か強盗か? しかし、この老人が古くから暴力団と付き合いがあったことから、事件は違った様相を帯びてくる。そして警視庁と南千住署が合同捜査を開始した直後、今度は浅草署管内で幼児の誘拐事件が発生。当初全く関係ないものと思えた2つの事件は、徐々に意外なつながりを見せ始める。

    物語はいくつかの視点で語られる。落合、大場をはじめとする警察内部、山谷の宿泊所の娘で韓国から帰化したミキ子、そして不幸な生い立ちから高次脳障害があると思われる宇野等である。
    それぞれの描かれ方がとてもリアルで、さすが奥田さんと思わせる。特に宇野の内面の描写は圧倒的である。今なら医療観察法の対象だろうか。クライマックスに向けて周囲が熱くなる中で差し挟まれる宇野の内面は、明らかにいびつで、虚無的であり、周囲とのコントラストで不自然さが浮き彫りとなってくる。

    本書の事件には下敷きがある。予備知識のないままに読み始めたが、逆探知の段になって「あれ、この事件は」と気がついた。数々のドラマや歌が作られ、日本中の関心を集めた有名な事件である。本書と同じ年の誘拐事件で、初めて報道協定が結ばれ、警視総監がマスコミを通じて犯人に訴えかけた。

    マスコミの肥大化、移動・通信の高速化、中流庶民の誕生、格差社会…今につながる多くのことが、おそらく、この頃に生まれている。本来なら作中と同じオリンピックイヤーだった今年、この本を読めてよかった。

  • 昭和三十八年。北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年、宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける―。オリンピック開催に沸く世間に取り残された孤独な魂の彷徨を、緻密な心理描写と圧倒的なリアリティーで描く傑作ミステリ

    オリンピックの身代金(https://blog.goo.ne.jp/33bamboo/e/16ad71907781861100ee245b5eb05713)を9年前に読んでいる。読み応え十分、奥田英朗の世界にまたしてもやられた。事件の核心部になると寛治の記憶が薄れて曖昧な描写になっていたので、犯人が寛治じゃないかもと最後の最後まで念じながら読み続けた。寛治は4、5歳の頃から継父に当たり屋をさせられ脳に傷害を負い精神疾患を抱えていた。
    犯人の宇野寛治、捜査一課若手刑事の落合、山谷で母親の簡易旅館を手伝う在日韓国人ミキ子の3つの視点によって構成されている。更にミキ子の周りで山谷を守ろうとする左翼活動家たちも居る。警察やミキ子は、その左翼活動家たちを反権力だけを旗印に闘っている輩と毛嫌いするが、彼らの口から、寛治が空き巣に始まり誘拐事件を引き起こす原因となる解離性健忘症を匂わせたのが興味深かった。
    モデルとなった吉展ちゃん誘拐殺人事件が発生時に私も似た様な年頃だったと知ると複雑な思いもある。共働きしていた両親から「知らない人には付いていかないように」としつこく言われたのと「吉展ちゃん」の名前は暗く刻まれている。子供心に怖さはあったが本文で書かれているほどのものだったとは知らなかった。先日観た映画の「パラサイト」の犯人や寛治の育歴や背景となる社会情勢を知れば知るほど、犯人に同情し彼らだけに罪を負わせるのは不公平な気もする。しかし、一方では自らが被害者になっていないゆとりから来る感情かもと自責の念に駆られて心情が行きつ戻りつするのだ。
    逮捕後心開いた刑事に、寛治は「ひとり殺したら終身刑、2人殺せば死刑」と知らされる。そして寛治はある目的を果たすために再び逃亡する。せめてその目的を叶えさせたかったと思うのは罪なのだろうか・・・。
    「罪の轍」のタイトルに、一つの犯罪は連鎖してあらゆる罪を負っていると誰しも思わずにいられないだろう。

    • やまさん
      各位

      昨年ブクロクに登録した本の中からベスト7を選びました。
      なお、平成31(2019)年3月27日に読み終わった本からブクロクで管...
      各位

      昨年ブクロクに登録した本の中からベスト7を選びました。
      なお、平成31(2019)年3月27日に読み終わった本からブクロクで管理するようにしています。
      ① なんとなく・青空 / 工藤直子 / 詩 / 本 /読了日: 2019-12-11
      ② 螢草 / 葉室麟 / 本 / 読了日: 2019-12-16
      ③ あなたのためなら 藍千堂菓子噺 / 田牧大和 / 本 /読了日: 2019-04-10
      ④ 甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺 / 田牧大和 / 本 / 読了日: 2019-05-04
      ⑤ あきない世傳 金と銀(七) 碧流篇 / 田郁 / 本 /読了日: 2019-09-14
      ⑥ てらこや青義堂 師匠、走る / 今村翔吾 / 本 / 読了日: 2019-08-27
      ⑦ ひかる風: 日本橋牡丹堂 菓子ばなし(四)  / 中島久枝 / 本 / 読了日: 2019-07-23
      ※もしよろしければ、皆様の昨年感想を書かれたものの中からベストの順位を教えて頂けたら嬉しいです。

      やま
      2020/02/07
    • しずくさん
      やまさんコメントをありがとうございました! 恒例で、年末になると、本や映画のベスト10が挙げられるのは承知しております。私のベスト順位を教え...
      やまさんコメントをありがとうございました! 恒例で、年末になると、本や映画のベスト10が挙げられるのは承知しております。私のベスト順位を教えて下さいとの申し出ですが、残念ながらお答えしかねます。私は書籍の序列化はしない、というよりしたくないと思っていますので・・・。それぞれ好みが別れるので違って当然と考えます。
      申し訳ありませんがご容赦下さい。
      失礼いたします。
      2020/02/07
    • やまさん
      しずくさん
      こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      無理なことをお願いして申し訳ありません。
      やま
      しずくさん
      こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      無理なことをお願いして申し訳ありません。
      やま
      2020/02/08
  • 礼文島で漁師見習いの宇野寛治には盗癖がある。仕事先の先輩に騙され罪を犯しながらもなんとか逃れ東京へ。東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。浅草で男児誘拐事件が発生。警視庁捜査一課刑事・落合昌夫は南千住で起きた強盗殺人事件の捜査、北国訛りの青年の噂を聞きつける。
    時代を感じる小説だなあ。小さい頃聞いた昔話のことを思い出したりするけど、今の若い人たちは知らぬことのオンパレードなんじゃないかな。時代背景とともに宇野や落合の動き、人となり、結末が気になり一気読みでした。実際にあった誘拐事件がベースとなっているようですが、この本では宇野の物語でもあるように思える(最初は誘拐事件がメインになるとは思いませんでした)。宇野の哀しさったら。登場人物の人物像が良かったけれど、その中でも町井ミキ子の力強さが印象に残る。

  • 既読感があったので、著者の同じ時期を扱った「オリンピックの身代金」をチェックしてみると警視庁刑事部捜査一課第五係のメンツが揃っているではないか、著者はこのオリンピック前後をシリーズとしているのだろうか、全ての作を読んでいる作家ではないので分からないが、これならオリンピック後の作があっても良さそうだ。物語の流れから犯人宇野寛治がまさか殺しをやるとは予想しなかったが、多重人格の話に持っていくのかと思ったらそこまでには至らなかった。しかし悪質なマスコミ、左曲がりの弁護士、親による児童虐待、警察の縄張主義は現在も変わってない。

  • 文句なしの読後満足感。昭和38年の男児誘拐事件がモチーフの犯罪ミステリー作品。

    警察小説は多数の登場人物が沢山いて、権力争いやメディアとの攻防で、途中でお腹がいっぱいになる作品が多かった。

    しかし本作は抜群の匙加減。描き過ぎず、物足りなさもなく絶妙である。
    もちろん警察組織間の攻防や、メディアとの軋轢は一角を成すが、それ以外にも当時の警察権力対活動家、或いは、労働者地区の成り立ち、在日一家の困難等が、バランスよく描かれ、頁を捲らせる。

    そして何よりも、誘拐犯人の男が抱える、出自由来の孤独の描き方に痺れた。
    「犯罪者の多くは、家族に愛された経験がない。寛治もそのうちの一人なのだ」

    寂しさや孤独は、人を病に追いやり、ある時は越えてはならない一線を越えさせる。
    大事にされた経験がない。可愛がられた記憶がない。
    「あの人が悲しむから…」と自制するきっかけになる誰かの顔が浮かばない寂寥感。ひとりぼっち。

    虐待という辛い出来事を記憶から消し去ることで人は生き延びる。そして類似した場面に出くわすと、魂を飛ばして、乖離を起こす。そんな彼の哀しい病理が丁寧に描かれる。

    「いけないことは、いけないんだ」と一元論由来の厳罰感情や、情のみで物語は動かない。捜査の段階での、行き詰まり、関係者の傍観あるいは、揶揄する姿勢等、庶民も含めた社会全体が醸し出す冷徹さや残酷さもスパイスとなる。

    出会えてよかった作品。書店新刊コーナーで、ビビッと装丁買いしてよかった。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2019年 『ヴァラエティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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