罪の轍

著者 :
  • 新潮社
4.23
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本棚登録 : 386
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (587ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003533

作品紹介・あらすじ

刑事たちの執念の捜査×容疑者の壮絶な孤独――。犯罪小説の最高峰、ここに誕生! 東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。浅草で男児誘拐事件が発生し、日本中を恐怖と怒りの渦に叩き込んだ。事件を担当する捜査一課の落合昌夫は、子供達から「莫迦」と呼ばれる北国訛りの男の噂を聞く――。世間から置き去りにされた人間の孤独を、緊迫感あふれる描写と圧倒的リアリティで描く社会派ミステリの真髄。

感想・レビュー・書評

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  • 「お前、本当に莫迦なのか?」
    宇野寛治は莫迦なのか、莫迦なところに同情し、莫迦なところに腹を立てる。
    そして、最後は虚しさが残った。

    金に困ると平気で空き巣に入る宇野寛治。
    彼はそれを悪い事とは思っていない。
    そんな寛治に、元時計商殺人事件、吉夫ちゃん誘拐事件の容疑がかかる。
    刑事の手が伸びてきても空き巣を繰り返し、取り調べさえ話し相手が出来たと喜ぶ寛治。
    本当に寛治が犯なのか?
    刑事たちは寛治の心を捕まえる事が出来るのだろうか…

    容疑者の壮絶な過去、刑事たちの執念、子供を待つ被害者家族の想い、どの場面も入念に描かれ、私もそこにいるような錯覚に陥り言葉をかけたくなる。
    でも、誰に、何を?言葉が見つからない。ずっと苦しかった。みんな苦しかった。

    生まれて来なかった方がいい人間もいる。
    そんな事ないよってはっきりと否定してあげられないのが悲しくて哀しくて。

    刑事が赤電話を探して連絡をとる姿に驚く。そうだ、昭和38年なんだ。
    そんな時代の誘拐捜査。
    赤電話の存在をすっかり忘れていたな。

    587ページ読んだぞ〜と叫びたい。

    • くるたんさん
      こんにちは♪

      出たね!五つ星!
      苦しいのかな⁇悲しさもあるのかな⁇
      読み応えありそうだね。

      順番あと一人になったよ、追いかけるよ(*・∀...
      こんにちは♪

      出たね!五つ星!
      苦しいのかな⁇悲しさもあるのかな⁇
      読み応えありそうだね。

      順番あと一人になったよ、追いかけるよ(*・∀・*)ノ
      2019/09/17
    • けいたんさん
      くるたん♪

      こんばんは(^-^)/
      いつもありがとう!

      なんだろう…悲しくて苦しくて、虚しさが残る感じ。
      ジレンマもある。...
      くるたん♪

      こんばんは(^-^)/
      いつもありがとう!

      なんだろう…悲しくて苦しくて、虚しさが残る感じ。
      ジレンマもある。
      登場人物も多いし読み応えあるよ!
      あとひとり、楽しみだなぁ♪
      レビューも気になるし、何日で読み終わるかも気になる(*≧艸≦)
      2019/09/17
  • ケチな空き巣狙い、子どもたちからも「莫迦」扱いされる礼文島出身の若者。親から愛されることなく育ち、仕事仲間からも搾取され記憶障害も持つ、同情すべき男。
    オリンピック前年に起こった誘拐事件を追う刑事たち。
    二つの線がとある強盗殺人事件で重なり見えなかった真実へと進んでいく。読みながら、その結末を私は望んでいない、と強く思う。そんなはずはない、そんなことできるはずはない、だって彼は愛すべき「莫迦」なのだから…なのに…
    奥田英朗、さすがに面白い。この分厚さをぐいぐい引き込みながら突き進んでいく。

  • 面白かった!
    久しぶりの本格的犯罪小説。
    殺人事件から誘拐事件へと話が進みどんどん引き込まれていく。
    事件を追うことに執念を燃やす刑事と、同情してしまいたくなる容疑者が最後の最後までバトルを繰り広げる。
    最後までどうなるのとハラハラさせられた。
    読み終えて、読んだ〜!って感じがした。

  • 文句なしの読後満足感。昭和38年の男児誘拐事件がモチーフの犯罪ミステリー作品。

    警察小説は多数の登場人物が沢山いて、権力争いやメディアとの攻防で、途中でお腹がいっぱいになる作品が多かった。

    しかし本作は抜群の匙加減。描き過ぎず、物足りなさもなく絶妙である。
    もちろん警察組織間の攻防や、メディアとの軋轢は一角を成すが、それ以外にも当時の警察権力対活動家、或いは、労働者地区の成り立ち、在日一家の困難等が、バランスよく描かれ、頁を捲らせる。

    そして何よりも、誘拐犯人の男が抱える、出自由来の孤独の描き方に痺れた。
    「犯罪者の多くは、家族に愛された経験がない。寛治もそのうちの一人なのだ」

    寂しさや孤独は、人を病に追いやり、ある時は越えてはならない一線を越えさせる。
    大事にされた経験がない。可愛がられた記憶がない。
    「あの人が悲しむから…」と自制するきっかけになる誰かの顔が浮かばない寂寥感。ひとりぼっち。

    虐待という辛い出来事を記憶から消し去ることで人は生き延びる。そして類似した場面に出くわすと、魂を飛ばして、乖離を起こす。そんな彼の哀しい病理が丁寧に描かれる。

    「いけないことは、いけないんだ」と一元論由来の厳罰感情や、情のみで物語は動かない。捜査の段階での、行き詰まり、関係者の傍観あるいは、揶揄する姿勢等、庶民も含めた社会全体が醸し出す冷徹さや残酷さもスパイスとなる。

    出会えてよかった作品。書店新刊コーナーで、ビビッと装丁買いしてよかった。

  • ガツンと来ました。
    今まで読んだ奥田英朗さんの作品の中で私は一番かも。
    ユーモアや、人の黒い部分とかそういうのは無くて。
    それでもどんどん読み進む。
    電車乗り過ごしたのはサウスバウンドとこの作品。
    終盤は一緒に走った感じで息切れ。

  • 丁寧な人物描写は秀逸。
    昭和のお話だけど現代にも通じる人間模様に共感。
    リーダビリティの良さは流石。

  • 久しぶりに出会ったこんな犯罪小説。昭和のオリンピック前の時代背景に現れた社会派ミステリー。

  • 多分、今年のベストワン本。
    そして多分、奥田氏の今までの作品の中での最高傑作。
    吉展ちゃん誘拐事件をモチーフにした作品だが、当時の社会情勢や世相、刑事捜査が克明に描かれ、奥田流に最高の料理に仕上げている。何がスゴイって、まるで映画を観ているようなダイナミックな描写と細やかな心理描写の融合だ。これぞ小説の醍醐味。
    本田靖春「誘拐」は当該事件を題材にしたノンフィクションの最高傑作だが、手法は違えど「人間を描く」熱量は高いレベルで互角。是非「誘拐」も併読いただきたい。
    また作中でも紹介されるが黒澤明「天国と地獄」の鑑賞もオススメ。さらにさらに当時のオリンピックという意味では、奥田氏の「オリンピックの身代金」も必読かと。
    こういう本に出会えると同時代に生きていて良かったと本当に実感できます。

  • 犯人についつい感情移入してしまう作品だった。
    警察の面々も個性豊か。
    ドラマ化されたら誰がキャストされるだろう?などど
    想像しながら読むのが楽しかった。
    (犯人役は村上虹郎さん、明男は竜星涼さんが浮かんだ。)
    ラストは想像していたものとは違って
    少しあっけなく感じたので星3つ。

  • 世間から置き去りにされた人間の孤独を緊迫感溢れる描写と圧倒的なリアリズムで描く社会派ミステリーの真髄。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『家日和』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』『ヴァラエティ』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。

「2019年 『ヴァラエティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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