消された一家 北九州・連続監禁殺人事件

  • 新潮社 (2005年11月18日発売)
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本 ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784103005117

感想・レビュー・書評

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  • 過去にこの事件から着想を得た映画を見て、
    なぜそうなるのか、とかよく理解できなかったから、事件の内容を知りたくて読んだ。全く内容の異なる全容だった
     
    最初に殺害された服部清志の娘、恭子が7人の殺害後四年弱経って松永の元から逃亡して発覚した事件
    なぜこんなに時が経ってから逃亡したのか、と読む前なら思っていただろうけど、『学習性無力感』ってものだったんだ。純子が逮捕後は黙秘を貫いていたけど、罪に向き合い取り調べに応じるようになったのも、松永の支配によって制限されていた思考が元に戻ってきたからなんだな

    清志並びに純子の家族、緒方家の死体は巧妙に処理されており、松永、松永と犯行に及んでいた事実婚の妻純子、恭子の証言及び数少ない証拠が事件を紐解いていく
    松永は金を工面するためにまわりの人間を陥れていく。被害者の多さから、松永がどれほど魅力的に振る舞える人間かが窺える。女性の弱っている部分に付け込んで、甘い言葉を囁いて、欲しい言葉をくれるのに、希望を見出してしまう気持ちが少しだけだけどわかってしまう。こんな奴にみんなが翻弄されてしまうの悔しいけど、私もきっと出会っていたら、とも思ってしまう

    通電、食便を強いられ、排泄も睡眠もろくにできず、檻の中で眠る生活の清志が、死が迫ってきている中ですら純子のお腹にいる赤ちゃんを思いやっていたことを純子が供述している。
    純子の妹の娘の彩ちゃんは死亡当時10歳だったそうだ。母、父、弟の死を間近で見ている。母、弟に関しては殺害に関与している。
    彩ちゃんは口封じのために絞殺されるが、自ら首を浮かせて紐を通しやすくしたとあった。
    死ぬ間際の人間が慈しみの心をもっていたり、幼い子供が自ら死を受け入れて静かに息途絶えていったり、そんな瞬間がこの世界にあったと思うと言葉にできない何かが込み上げてきた
    本書を読んでいて何度か泣いたり途中で本を閉じた   りした。本当に信じられない未曾有の事件

    宗教とか神様とかよくわからないんだけど、被害者の皆様の魂が安らかであってほしいと強く願った


  • 2024年6月20日読了。学生時代から恐喝・詐欺を繰り返してきた松永太は、深い関係となった緒方純子を支配し、金づるとして彼女の両親・妹夫婦や子どもたちにも支配の手を伸ばした果てに…。北九州で実際に起きた連続監禁殺人事件の裁判傍聴記録などに取材したノンフィクション。七人を次々に殺害、しかも自らは手を下さず家族内で争わせ殺害をそそのかす・ほのめかすなどの手口は圧倒的に「異常」なのだが、この異常な状況をキープするために松永のとったマインドコントロール支配のやり方は完全に「合理的」だったのだなあ…自分がその場にいたら支配を免れ得ただろうか?という疑問が消えない。ネット記事などを読むと、本書ではぼかされているさらに人間性を逸脱した行為が現場では行われていたようだ…。たぶんこの事件、東京では起こりえなかった・起こってももっと発覚が早かったのだと思う。日本の地方都市はこわい。

  • 松永のあまりの鬼畜っぷりに読み進めるのが辛い。これが人間のやることか。虐待、通電、制裁、果ては自分の手を汚さず家族同士で殺して解体させるなんて。しかも裁判でも獄中でも全く悪びれていない。異常、なんて簡単な言葉では片付かない。彼は人間の皮を被ったナニカではないのか。

  • あまりにも凄惨過ぎて気分が悪くなってくるノンフィクション。しかも主犯は最後まで罪を認めず抗う。同事件の最新刊はあまりにも分厚過ぎて読むのを断念した。もうこの事件に関する書籍は一生読むまい。

  • 凶悪事件のノンフィクションを何冊か読んできたけど、こんなに残虐で、これほど何度も気分が悪くなり中断を余儀なくされた物はなかった。ほとんどの方が殺されてるので、どこまで真実が解明されたのかわからないけど、だいたいの流れはわかった。ただ松永の真の姿や生い立ちなどが描かれてなくてそこは残念だった。

  • 北九州一家連続監禁殺人事件。

    テレビでニュースを見た時、この事件どうなってるんだ!?って思って理解不能だった。
    身内で殺人?子供まで加わってる?そんなことが実際に起きたのか?って不気味で不気味で。

    緒方一家が松永に関わらなければ、こんな事件は起きなかった。

    監禁、通電、食事も睡眠もまともに与えられず、洗脳されていった緒方一家。

    実際、洗脳される怖さは知ってるけど、殺人を犯してしまうほどって本当に怖い。それだけ松永が口が上手いのだろうか。裁判の様子も書かれていたけど、取り繕う苦しさしか見えなかった。

    こんな事件、二度と起きてほしくない。

  • 一家監禁殺人事件がどのように惨いものであったか、裁判で明らかになったことを時系列で述べられています。とにかく松永の非人間的な言動への怒りと一家が殺されていく非現実的にも思える洗脳の怖さが際立っています。子供たちがとにかく可哀そうで、同じ年頃の子供を持つ親としてどうやってどんな気持ちで過ごしていたのか、読むのがつらかったです。ただ、著者も書いておられましたが、松永の本当の気持ちや生い立ちについての内容が薄く、どうしたらこのような人間が形成されるのか、どうやって生きてきたのかもっとし知りたかったです。

  • 現実とは思えない話。
    極限状態に置かれたら人は何をするかわからないという怖さを知った。
    松永は頭がおかしい。だけど他の人もどうしてそのようになってしまうのかが理解できない。
    なぜ松永と男女関係になるのか。そして離婚してしまうのか。女の場合はそこから狂っている。

    私は大丈夫と思っている人ほど危ないのかもしれない。また、下手に頭の良い人間、今まで穏やかな人生を送ってきた人間ほど、刺激的なことに手を染めてしまうのか。

    ある宗教集団の持っている狂気も垣間見えた。そして戦争中にやはり不本意にも命令で人殺しをしてきた人たち。命令だったから、やらないと自分が殺されるから。ナチのカポーが良い例のようだ。そもそも戦争という場を作ってはいけない。
    だから、何が何でも現在の首相の思い通りにさせてはいけない。日本人は戦争放棄だ。他の国に何を言われて良いではないか。今までたどってきた間違いを何の教訓にもできないようでは日本はおしまいだ。

    人は極限に置かれれば何でもする。それを強く思った。

  • 緒方一家の不幸の全ては、松永との出会いから始まった。
    松永の支配下に置かれた人たちの行動に疑問は尽きないが、ナチスのカポーを例に挙げられると、マインドコントロールの恐ろしさの尾を掴むことができる。
    最初に殺害された男性の娘が二度目の脱走に成功しなければ、完全犯罪に成り得たと思うとぞっとする。
    どのように松永の人格形成がなされたのかが明らかにならないことが、残念。
    図書館借り出し。


  • 2017.6.3
    胸糞が悪くなるような殺人事件のノンフィクションを読むのがたまらなく好きなのですが、さすがの私も読んでて気分が悪くなり、何回も気分転換しながらじゃないと読み終えられませんでした。
    あまりに凄惨すぎて報道規制されたというのも納得。
    そんきょのポーズは完全にトラウマです。
    金を巻き上げられ、汚物を食べさせられ、通電され、家族で殺し合いをさせられてもなお松永に従い、逆らいもしない被害者の姿にも戦慄を覚えます。マインドコントロール怖い。怖すぎる。
    少女が逃げ出すことに成功しなければ、この犯罪が完全犯罪になっていた可能性が高いことが何より恐ろしいです。
    今までで知った中で間違いなく一番胸糞の悪い事件です。
    いったい松永のマインドコントロール術とは…想像もつきません。
    もし、松永のような人物が自分の近くに現れでもしたら…どうしたらいいのでしょうか?逃げられる気がしません…。

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著者プロフィール

1966(昭和41)年、東京生れ。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨークの日系誌記者を経て、ノンフィクション作家に。戦争、犯罪事件から芸能まで取材対象は幅広く、児童書の執筆も手がけている。『ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦』(講談社)は、厚生労働省社会保障審議会の推薦により「児童福祉文化財」に指定される。著書に『妻と飛んだ特攻兵 8・19満州、最後の特攻』(角川文庫)、『消された一家』(新潮文庫)他多数。

「2018年 『ベニヤ舟の特攻兵 8・6広島、陸軍秘密部隊レの救援作戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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