想い出あずかります

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103006336

作品紹介・あらすじ

海辺に住む不思議な女性と女子高生の、切なくも幸せな出会い-。嬉しいのに涙が出て、傷ついても信じてみたい。自分にそんな感情があることを、初めて知ったあの日。こんなに大事な想い出も、人は忘れてしまうもの?毎日が特別だったあの頃が、記憶の海からよみがえる。

感想・レビュー・書評

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  • 岬のはずれの一軒家に魔法使いのお姉さんが住んでいる。
    そこは子供たちの想い出をあずかってくれる質屋さん。
    あずけた想い出は、二十歳になる前に取り戻さないと、「ヒトデ」として海の底に沈められてしまい、
    それと同時に、子供たちは魔法使いのことも忘れてしまう───。

    魔法使いが言っていた、記憶と想い出の違い。
    「お母さんのオムライスがおいしかった。」これは記憶。
    「めったにオムライスを作ってくれないお母さんが、久しぶりに作ってくれて、すっごくおいしくてうれしかった。」これが想い出。
    うん、なんとなくわかる気がします。

    もしも自分なら、どうしただろう…。
    齢を重ねた今、楽しいことも、悲しいことも、何もかもひっくるめて今の自分がある。
    そう肯定しているつもりでも、できることなら手離してしまいたい苦い記憶もあるわけで…
    悩む……。

    ある日を境に、忘れられていく魔法使いが、淋しげでせつなかったです。
    何一つ変わらないようでも、見えなくなっているものってあるんだろうな…。

    最後、母の思い出を買い戻しに来た遥斗に、ホロリとさせられました。
    前向きな里華にエールを!
    そして、雪成にはゲンコツを!(笑)

  • 吉野さんは『シネマガール』に続いて2冊目。『シネマガール』が漫画のような軽いノリだったので、あまり期待してなかったんだけど凄く素敵なお話だった!私にも質入れしたい忘れたい想い出があるし、ずっと忘れたくない想い出もある。最後の里華と魔法使いの件と、遥斗くんが想い出を一度に取り戻すシーンが良かった。私が質屋を覚えてないのはもう20歳を過ぎちゃったからなんだなぁ。2011/522

  • 人は忘れる生き物で、それを具現化したのが魔法使いさんであるようにも感じた。
    だけど自分で忘れたいと思って忘れることはできないし、
    忘れたくないことこそ忘れてしまう。
    だけどふとした瞬間に引き出しが開いて、
    いい記憶も嫌な記憶もいつかの私を救うかもしれないとも思えた。
    里華もいつかそうやって魔法使いさんを思い出すかもしれないし、ずっと忘れないでいられるかもしれない。
    里華にとっての想い出にならない人は、魔法使いさんであるようにも、芽依であるようにも、遥斗であるようにも思えて、将来が楽しくなる読後感だった。
    一番好きなのは大和がバラを掲げてお母さんに話しかける場面。

  • お金欲しさに思い出をこんな形で預かるとは思いもしなかったなあ。
    イヤな思い出…楽しい思い出が薄っすらと消えかかって来てる年齢なのかな
    ふと思い出しては記憶を辿ってみたりして。
    一緒の時間を過ごしてもお互い想い出話をしても、ん?なことあったけ?みたいな事が良くある。噛み合わなったり誤解も生まれる。
    少々、童心に返りつつの読書になりました

  • 想い出限定の質屋さん。魔法使いがやってる質屋さん。
    お客さんは子ども限定。

    大人になると想い出限定の質屋さんのことは
    すっかり忘れてしまうシステム。

    いやな想い出だけを質入れする子、
    いい想い出もいやな想い出も執着せずに手放す子ども。
    決して手放さない子ども。

    魔法使いは世話をやくこともなく、
    突き放し過ぎることもなく
    やってくる子ども達を迎える。

    魔法使いとの想い出も素敵な想い出なのに忘れちゃうんだ。
    実は、きっと魔法使いは寂しいのかもね。

    どの想い出も大人になる自分を作ってきたもの。
    手放さないでと子ども達に言いたいな

    手放さなくても、
    忘れちゃうことなんてままあることなんだよなぁ。
    これが。
    いい話でした。

  • 小さい頃、こんな不思議で素敵な場所を
    見つけられなかったことが残念。

    私だったら、大切な思い出あずけるかな?
    子どもだったら、今ほど何も考えず
    あずけちゃうのかな・・。

    あの空間でリスが入れた紅茶がのめたら、
    それだけでうれしい。

  • 現代に生きるあっさりとした"魔女"。その姿は、「西の魔女が死んだ」に通じるところがあるけれど、この作品の魔女は「もっと魔女的」だ。ほのぼのとした子ども時代の思い出に囲まれた時から、いつしか大人になるってこういうことなんだね。年を重ねることの意味を、魔女と魔法を通じて教えて貰えた気がする。

  • 「おもいで質屋」という、子供にしか見えない魔法使いが店主の質屋のお話しです。
    ここでは、想い出を質にいれお金をもらい、二十歳の前日までに代金をもってくれば思い出も帰ってくるという質屋。
    もっとほんわかしたお話しかと思ったら結構シビアでした。
    私は「雪君、そりゃないよ」でした。

  • 20歳になるまでは。
    些細な事すら質に入れていたからこそ思い出せた事もあるだろうが、忘れてしまわなければ違う結末もあったのかもな。
    取り戻しに来る者が少ないのは、忘れてしまった事すら覚えていないのかもしれないな。

  • 現代版ファンタジー的な話。魔法使いが出てくるのだがちょっぴりほろ苦く切ない。20歳になると見えなくなり忘れてしまう。いつの時代もファンタジーは子供だけの特権なのだろう。

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著者プロフィール

神奈川県出身。2005年『秋の大三角』で新潮エンターテインメント新人賞を受賞。『劇団6年2組』で第29回うつのみやこども賞受賞。作品に、『チームふたり』からはじまる「チーム」シリーズなど多数。

「2014年 『新装版 チームシリーズ 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吉野万理子の作品

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