流れ星が消えないうちに

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103007517

作品紹介・あらすじ

大好きな人が死んじゃうよりも、世の中にはもっと悲しいことがある…。つらくって一睡も出来なくても、朝は来るし。涙が涸れるほど泣いてても、やっぱりお腹は空くもので。立ち直りたいなんて思ってなくても、時間はいつでも意地悪で、過ぎ去った日々を物語に変えてしまう-。玄関でしか眠れないわたしと、おバカな僕と、優しすぎる彼を繋ぐ「死」という現実。深い慟哭の後に訪れる、静かな愛と赦しの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 恋人だった加地を、事故で亡くしてから、玄関でしか眠れなくなってしまった奈緒子。
    加地の友人でもあり、奈緒子の今の恋人である巧。

    と、ここまで書くと、「もう加地のことは忘れろよ!オレを見ろよ!って話?」と想像するかもしれませんが、巧は残念ながら(?)そんな男ではなく、むしろ人間としての器は加地より大きいかもしれない男です。

    奈緒子と巧の関係は、「加地の死」という傷が、お互いにあることこを知りながらも、見ないようにして一緒に居る関係でした。
    奈緒子と巧は、加地がいた過去を、それぞれの胸のなかで繰り返し、思い出します。
    けれど、そうした2人の生き方をすこしずつ溶かすきっかけをくれたのは、今はもういない加地その人の言葉と、巧宛てのある葉書でした。

    この物語に書かれているのは、過去の忘れ方でも、時間を止めた生き方でもありません。

    どこまでいっても、加地はもうこの世にはいなくて、加地と奈緒子がお互いを想いあっていたことも、消えることはありません。
    ならば「なにを」「どう」変えれば、過去を生きることをやめられるのか?
    そのヒントは、2人がそれぞれに見つける「過去」の見つめ方の変化と、「愛」のかたちのなかにあります。

    「流れ星が消えないうちに」、ゆっくりとした物語のなかで、過去のなかに生きることをやめた2人の姿を、ぜひ感じていただけたらなと思います。

  • 主人公の姿は、私の2年前の姿と重なった。
    とても受け入れ難い出来事を、受け止めようとして心が壊れた。歪なかたちでしか受け止める事が出来ずに多くのものを手放しかけてしまった。
    この本は、大切になっていく本だと思う。出逢えて、よかった。

    『手を伸ばしたら、ちゃんと触れられる人がよかった。なにも考えず、ただまっすぐ歩ける人でなければ、私は耐えられなかった。』

    『ふいに感情が波のようにやってきた。押し寄せては引き、また押し寄せて...そうして私という砂浜を絶えず洗っていく。』

    『彼と過ごした日々の記憶があまりにも美しく、そして過ぎゆく時間と共にますます澄んでいくものだから、私は加地くんをそのままきれいな場所に置いていきたかった。加地くんの姿も、思いも、純粋さも、届かぬ星の光のように輝き続けて欲しかったのだ。』

    『立っている場所が変わると、同じ風景でも違うように見えるものなんだ、それは加地くんの言葉。覚えていた巧くんが、お父さん似言った。そして今度は、お父さんがわたしに言っている。言葉や思いは、こうして巡っていくのだ。』

    『最愛の恋人を失うのは、とても辛いことだった。この一年半、わたしは呼吸をしていただけで、ちゃんとは生きていなかった。思い出そうとしても、まるで陽炎のようにしか記憶は蘇って来ない。多分、一度、私の心は壊れてしまったのだと思う。不幸なんて、いくらでもある。珍しくもなんともない。けれど、ありふれているからと言って、平気ですごせるかといえば、そんなわけはないのだ。じたばたする。泣きもする。喚きもする。それでもいつか、やがて、ゆっくりと、わたしたちは現実を受け入れていく。そしてそこを土台として、次のなにかを探す。探すという行為自体が、希望になる。とにかく、終わりが来るそのときまで、わたしたちは生きていくしかないのだ。たとえそれが、同じ場所をぐるぐるまわるだけの行為でしかないとしても、先を怖がって止まっているよりは何百倍も、いや1万倍もましだ。だから、わたしは進もうと思う。恐れながら、泣きながら、進もうと思う。』

  • 恋人の死をテーマに書く恋愛小説がありふれているせいで平凡な話。おなじテーマにしても、セカチューや、吉本ばななのムーンライトシャドウ、特に本書の「綺麗さ」が後者に似ていると思ったんだけど、あれくらいに美しい話ならもっと心に響いたと思う。
    綺麗にまとまってるしいい話なのに、「この表現いい!」とか「あのシーンが素敵!」とか、そういうのが不思議と一切ない。加持くんの死に方>父親の家出>その他 って感じで、例のプラネタリウムのシーンもただの出会いのきっかけになってしまっててとても印象が薄い。
    個人的には島本理生に焼き直してほしいな。そしたらもっと人間くさくてどろっとした深みのある話になる気がする。

    ところで、あまり関係ないけど単行本の表紙と帯の色合いが個人的にすごく好き(カバーは黒×白×緑、帯が青×白×薄ピンク)。文章のやわらかさと合っていたのがすごく良かった。帯の色校がいい本ってなかなかないので、手に取るのはちょっと楽しい。

  • この方はこう…心にじんわり来るようなお話を書かれますよね。大好きな人が亡くなって、世界の終わりのように感じても、残された私達は生きていかなきゃいけなくて…。【静かな愛と赦しの物語】という帯がぴったり。

  • 心が暖かくなった
    巧君と巧君のお姉さんとお父さんが好き

  • 最後にそれぞれ、なにを願ったのだろう。プラネタリウムの流れ星に?

  • 『考えてばかりではなくて、
    動いてこそ、見えてくるものがある。
    状況は変わらないかもしれないけど、
    それを見る目が変わるかもしれない。』

    それは、大切な人が大好きな人がくれた言葉。
    その人が、突然、目の前からいなくなってしまった。もう二度と会えない場所へ。

    自分だったらどうなってしまうだろう…
    そう思いながら読み終えた。

  • すごく綺麗なストーリー。
    でも、巧と奈緒子の間に加地が生き続けるってのは、親友とはいえ、男としては複雑で、同感できなかったかな。。

    葉書に書かれてた「キスだけ」ってのは、絶妙なレベル感だと思ったけど。。

  • 何気ない日常の中でも幸せがある、ということの描写が織り込まれていて、すごく良かった。
    ラストが少し無理矢理感を感じたのが残念。

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