ヒップホップの詩人たち

  • 新潮社
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  • 本 ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103014324

感想・レビュー・書評

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  • 本書を読み終えるのに3週間くらいかかってしまった。内容が面白くない、もしくは難解であるからではない。本書に収められた詩を実際の楽曲を聞きながら、ゆっくりと噛み締めていたからである。

    2013年に出版された本書は、15人の日本人ラッパーへのインタビューとその楽曲の詩を収録したものである。15人の顔ぶれは、日本語でのヒップホップの黎明期から活動してきたTwigyやANARCHYなどから、音源を数枚しか出していない若手も含めて非常に幅広い。

    都築響一のパーソナリティ故だと思うが、各人は犯罪歴や複雑な家庭事情なども含めて、自身の半生やヒップホップに対する思いを非常に生々しく聞き出すことに成功している。個人的には、その詩の世界観と、昭和的な世界観を見事に現代に映し出すことに成功しており愛聴している鬼のインタビューなどは読み応えがある。

    本書のラストは、THA BLUE HERBのILL-BOSTINOである。彼の言葉を噛み締めながら久しぶりに名曲「未来は俺等の手の中」を聞いていたら胸が熱くなった。

    https://www.shinchosha.co.jp/hiphop/

  • ヒップホップがファッションでもスタイルでもないコトバの表現行為であることに改めて撃たれました。むかしむかしロックに日本語の歌詞が乗るか?という論争があったそうですがR.U.M.DMCやエミネムの圧倒的な存在があったとしてもこの国のヒップホップは、はじめに日本語ありき、なのだと思いました。ラッパーが言う「リリック」(インタビューでは誰もが絶対「歌詞」とは言わない!当たり前?)とは、まだ言霊が信じられていた万葉の時代の「歌」なのではないでしょうか?いまヒップホップは安定という幻想の底が割れた時代の万葉集!万葉集に東歌というジャンルがあるように地方での仲間、生活を中心にリリックを紡ぐという表現活動はこの国の希望なのかもしれません。

  • ジャパニーズヒップホップ好きなら必読です。人選も絶妙です。インタビュー間の楽曲を聴きながら読むと、読み応えばっちりでした。

  • 読み終わって日本のHip-Hopへの先入観が少し減った。

  • とても面白く読みました!ヒップホッパーの生い立ちがよくわかり、詩の意味などを深く考えられるようになりました。

  • それぞれの生い立ちを照らし、その人生を鳴らすヒップホップ。楽しいだけが音楽じゃない、しかしどうにも気持ちいい。技巧的に歌うでも話すでもない真っ直ぐに放たれた言葉達は正しく強い。

  • 日本のラッパー15人のストーリー。この手の音楽聞いたことなかったけど、この本に載ってる彼らのリリックはすごく素直に入ってきた。こういうのあるんだと。とても良かった。いろいろ聴いてみようと思う。この本に感謝。http://www.shinchosha.co.jp/hiphop/

  • 詩歌
    ノンフィクション
    音楽

  • 日本語ヒップホップを現代詩と捉え、業界で活躍するラッパー15人を取り上げたインタビュー集。なんと600p近くあり、読了までに時間を要した。
    2012年のものなので少し古いが、読みごたえがあった。

    インタビューで語られることがアルバムや音楽性などではなく、「自身の半生」であることから、掲載されるリリックのリアリティが強く感じられる。黎明期からの話や、この当時の流れが語られるのでヒップホップファンでなくても楽しめる。
    合間に掲載されるリリックをインタビューと併せて読むことで、確かに現代詩という切り取り方をしても差し支えないように思える。歌詞ではなく、リリック。言葉に力がある。

    自分はあまりこの界隈に詳しくはなく、あぁ知ってるという人はほんの数人であったが、大御所から当時デビューしたばかり、それも地方で活動しているラッパーを選出するなど偏りはあまり感じられない。
    インタビューにけっこう人間性が出ていて面白い。

    どうしてもギャングスタラップは日本では嘘っぽいというか、作り物っぽいマッチョな価値観だと思うが、本人たちから語られる内容はそれがリアルな世界もあるのだと一部認識を改めた。どうも自分には合わないが。

    かなり内省的な、文学的なニュアンスの独自世界を持つラッパー(志人などはもはやヒップホップの枠をこえている)のインタビューは特に面白い。言葉選びからそういう人特有の傾向が見られるというか、意外といい家庭で育っているラッパーが多いのだ。ヒップホップにおいても前衛よりだとやはりこうなのか。

    基本的に凡その人に共通するのは、意地を貫こうという意思である。全然現代のロックよりロックなのだ。
    そして文学や詩をリリックの材料として吸収するラッパーが多く、けっこう生みの作業は苦しみを伴うようである。それを語る人が意外と言えば意外であった。

    目まぐるしく変化するシーンであり、この本が出て6年が経ち新世代が登場し自分が知ってる限りでも状況はかなり変わったように思える。
    しかしラッパーのパーソナルな部分を深く掘り下げることに成功している本書は、今でも充分読み応えある普遍性を持った一冊である。

  • この本が置いてある本屋は信用できる。自分にとってはそんな本。

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著者プロフィール

1956年東京生まれ。1976年から1986年まで「POPEYE」「BRUTUS」誌で
現代美術・デザイン・都市生活などの記事を担当する。1989年から1992
年にかけて、1980年代の世界現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻
の現代美術全集『アートランダム』を刊行。以来、現代美術・建築・写
真・デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集を続けている。1993年、
東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』を刊行。1997年、
『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。現
在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続けている。2012年よ
り有料週刊メールマガジン『ROADSIDERS’weekly』を配信中。近著に
『捨てられないTシャツ』(筑摩書房、2017年)、『Neverland Diner 二度と
行けないあの店で』(ケンエレブックス、2021年)、『IDOL STYLE』(双
葉社、2021年)、『Museum of Mom’s Art 探すのをやめたときに見つかる
もの』(ケンエレブックス、2022年)など。

「2024年 『Outsider Photography in Japan』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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