満願

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 874
  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103014744

感想・レビュー・書評

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  • 期待していたほどではなかった印象。

  • 短編集。「満願」と「万灯」は既読ですが再読しました。

    「夜警」
    厳しい指導で部下を自殺に追い込み、刑事課から交番勤務になった柳岡。そんな彼のもとへ、血気盛んな新人・川藤が派遣されてくる。その川藤が殉職したところから話が始まる。
    川藤は一見普通の人間だが。柳岡は彼の異常性を見抜いていた。銃を撃ちたがるところ、ミスを過剰に隠そうとするところ。
    しかし一度指導の行きすぎで部下を失っており、柳岡は川藤に強く言えないでいた。
    そんな時、ある男が元妻の家に刃物を持って忍び込む事件が発生。現場に駆け付けた川藤は、柳岡の指示を待たずに銃を持って現場に突入し、威嚇射撃をして対抗。
    しかしその威嚇射撃に激高した犯人に刺されて命を落とす。
    しかし、この殉職には裏があった。川藤は誰もいないときに銃をもてあそんでいて暴発させてしまい、球が一発足りない状態だった。上司の制止も聞かずに威嚇射撃したのは、そのミスを誤魔化すためだった。
    柳岡は、川藤が警官に向いてないことを改めて思う。そして彼を止められなかった自分のことも。


    「死人宿」
    職場での悩みを打ち明けていた妻・佐和子を無視して仕事に打ち込んでいた主人公。佐和子は主人公に行き先を告げず、姿を消す。主人公は佐和子の行方を必死で探し、やがて彼女が働いている旅館を見つけ、訪ねていく。その宿は「死人宿」と呼ばれ、自殺願望のある人が最後の場所に選ぶことで有名だった。
    旅館で佐和子と再会した主人公は、宿の風呂場に落ちていた遺書めいたメモから、いま旅館に泊まっている自殺志願者は誰か突き止め、自殺を食い止めようと奔走する。
    遺書のあった場所や内容から、一人の男の死を食い止めた二人だが、翌日、旅館の近くで死体が上がる。
    それは遺書の持ち主ではないと判断した客だった。旅館には死を考えている人がもう一人泊まっていたのだ。


    「柘榴」
    非情な夫と離婚し、年頃の二人の娘の親権を取りたいと考えている主人公の女性。
    裁判になり、奮闘するが、親権は夫のもとへ行く。
    特に妻の自分に欠点はない、そう思っていたが、親権が夫に渡った理由は「娘たちへの虐待」だった。
    娘の視点に移ると、真相がわかる。娘、特に長女は父親を異性として愛していた。有責事項が多い父親に引き取られるには母親の虐待を捏造するしかなく、自作自演で自分たちの身体に傷をつけた。
    長女は父の愛を独り占めしたいと思っており、女としての魅力に芽生え始めた妹の背中に、わざと大きく傷をつけるというラストが秀逸。


    「万灯」
    主人公は仕事一筋の商社マン。バングラディッシュの奥地の開発を会社から託されるが、現地の民族から追い出される。しかし同じ民族の中でも考え方に違いがあるものがおり、商社マンはライバル会社の商社マンと一緒に、その民族の長の一人を殺すことになる。
    しかし罪の重さに共犯相手は自首しようとする。主人公は完璧なアリバイを作ったうえで彼も殺す。
    これですべてが終わりかと思いきや、実は殺した共犯者がコレラに侵されていたことをニュースで知る。もし医者に掛かれば、死んだ共犯者と一緒にいたことが露見し、犯行も明るみに出るだろう…ということろで話が終わる。


    「関守」
    主人公は雑誌ライターの男性。ネタに困ったライターは、先輩ライターから不思議なネタのファイルを譲り受ける。
    ある田舎の峠道で、不可解な事故が多発しているという。主人公はその峠の手前にあるドライブインに行き、店番をしていた老婆から事故のいきさつや被害者のことなどを聞くことにした。
    ドライブインのおばあちゃんが怪しいのは初めからわかる。
    まっすぐで安全な道なのに何故か事故が多発しているところは、何かがある。


    「満願」
    弁護士をつとめる主人公の男性。彼は学生のころ、ある屋敷に下宿していた。その屋敷の主は厳しく気性の荒い人物だったが、妻の妙子は美しくしとやかで、優しい女性だった。
    妙子は元はいい家のお嬢様で、彼女が嫁入り時に持ち込んだ掛け軸を自らの誇りのように思い、大事にしている。
    嫁いでからは夫に厳しく当たられ、夫の借金に振り回されているようだったが、主人公はことあるたびに、彼女の芯の強さのようなものを感じる。家賃が間に合わないとき、助けてくれたこともある。
    主人公が弁護士になってから、そんな妙子が殺人事件を起こす。殺したのは夫が借金を重ねていた相手・矢場。主人公は妙子の弁護を引き受けた。
    妙子の犯行は明らかで、争点は一つ。犯行が計画的であったか否か。
    主人公は凶器が現場にあったものだということ・妙子が大事にしている掛け軸に血が飛んでしまっていることなどから、咄嗟の犯行であり、しかも矢場は妙子に肉体関係を迫り、それを拒むための正当防衛だったと主張する。
    一審では、咄嗟の犯行と認められたものの、正当防衛は認められなかったが、二審では逆転できると考え、控訴。
    しかし妙子は、牢の中で夫の死を聞くと、そこで裁判をやめ、判決を受け入れると言い出す。
    何故妙子はここにきて控訴を断念したのか。あの日本当は何があったのか……。
    主人公は、妙子が「よくないこと」をするとき、部屋にあった達磨をうしろ向きにして「目隠し」をしておいたことがあるのを思い出した。
    はたして、殺人現場にあった達磨もうしろ向きだった(血痕の付き具合から)。
    同じく現場にあり、少しだけ血が飛んでしまった宝物の掛け軸は、裁判の間証拠品として国が保管している。
    妙子は殺人を周到に計画していた。
    夫の死により、掛け軸は正式に妙子に相続される。
    妙子の唯一の誇りと言えるその掛け軸は大事な証拠品なので、借金のカタであっても取り上げられない。
    妙子は掛け軸を守るため、夫の死まで裁判の渦中にいることを選んだのだ。


    どの話もじっくり荘厳で、読みごたえがありました。

  • 2017.10.4 文庫版

    読みたいと思っていて、文庫化されたので読んでみた。期待を超える面白さで久しぶりに夢中になって読んだ。短編集で全ての物語が外れなかったのは初めてかも。人には秘密とか本心とか目論見があり、本当のところに気づくことはとても難しい。それをなんだかんだで明らかにして、戦慄が走る!ような短編が集まってる。後味が良いものではなく、なんとなく暗くなれる。ブラックユーモア的な話が好きなら面白いはず。
    一番好きな短編は柘榴。精神病んでるよ絶対、、、

  • 図書館にて。
    どの作品もじんわりと怖くて楽しめた。
    現代の怪談といった感じ。

    でも、「柘榴」だけは納得いかない。
    父親をそんな風に愛することがあるのだろうか。
    しかも、その父親のせいで経済的に困窮し、働き詰めの母を見てきたはずなのに、そんな相手をただの男としてだけ娘は愛することはないと思うのだが。
    父親につけば明日からどうやって食べていくか生きていくか不安定なのがわかっていて、今までだって父親のせいでずっとそんな生活にさらされてきたのに。
    どれだけ愛していたとしても、何不自由なく生きてきた若い娘がダメ男の深みにはまるならともかく、貧乏を知っている女は現実が見えると思うのだ。
    逆ならあったかもしれない?
    でも、息子がダメな母親を愛する、そのために自分たちを育ててくれた父親を陥れるという逆の展開の小説は、米沢さん自身が男性だからリアリティがないのもわかっているだろうし、描けないし描きたくないだろう。
    だから結局、こう書いてしまうそこが男性の作家の描く小説だなと思う。
    若くて美しい娘がダメな父親を残酷なまでに愛する、これまた美しい母親を陥れて、という所詮ファンタジー。
    申し訳ないけど胸糞悪。
    表題作もダメな夫のせいで殺人まで犯すできた奥さんの話だったし。
    どうせ殺すなら夫のほうだろうと思うのだが・・・

  • 薄暗い願いを秘めた人々の話。自分の思いや願いが思うようにならない時に転がりだす物語。

    夜警 新人警官と拳銃の話
    死人宿 自殺の名所の宿屋での出来事の話
    柘榴 子どもたちに裏切られる母と裏切る娘の話
    万灯 バングラデシュでの自分への呪いのような話
    関守 事故を見守る老婆の話
    満願 先祖を守るために生きる女の話

  • 米澤さんらしい、意外な結末でも落ち着きのある読後感の作品集

    でも、全体的に暗い雰囲気なのが少し苦手

  • 罪を犯してでも守ろうとしたものがある。
    罪の裏側に隠した秘密が、事件の姿を僅かに歪める。
    六つの短編。

    『夜警』
    刑事だった柳岡は、過去の出来事のために交番勤務へと左遷されていた。彼のもとに配属された川藤。新人の青年を見ながら、柳岡は思う。彼は警察官にむかないだろう、と。刑事に向かない、と必要以上にきつく当たった新人が自殺した過去に、川藤に対して必要以上には踏み込まずにいた柳岡は、しかしまたしても部下を失うことになる。かねてから夫の嫉妬に暴力を振るわれるのではないかとよく交番へ相談に来ていた女から交番に緊急の連絡が入った。その仲裁に向かった柳岡、川藤、そしてもうひとりの部下。そこで逆上した男に発砲した川藤は、しかし男を止める前に刺されて死んでしまう。世間では勇敢な新人警官だと持ち上げるが、柳岡はその釈然としない思いを抱えていた。それを介抱してくれたのは川藤の兄に話を聞きに行ったときだった。あの事件の夜、川藤は兄にメールを打っていた。「たいへんなことになった」兄はいう。これは弟が自分に尻拭いをしてほしいときに送るサインのようなものだ、と。そして事件現場に落ちていた弾薬。柳岡の胸の中で組みあがった真実に、禁煙になった交番内で苦い思いを口の中に広げるばかりだった。
    『死人宿』
    かつて恋人の必死のsosに気付けず、彼女が去ってしまってからことの重大さを知った男は、恋人時代を知っている知り合いから彼女を見たというのを確かめるために会社を休んで車を走らせていた。そこは山奥の硫黄の温泉が売りの古い宿だった。彼女はそこにいた。その宿は自殺の名所のそばにあり、この温泉を最後の宿に選ぶ人間が多いために、『死人宿』と呼ばれていた。彼女はおもむろに男に一通の手紙を差し出す。それは誰かの遺書で、これを書いたのが誰なのか考えてほしい、と彼女は言う。宿には男のほかに三人の客が泊っていた。-その中に自殺志願者がいるのか?それともただの悪戯か。
    『柘榴』
    美しい娘は、大学で容姿はそれほどではないのに恐ろしく魅力的な男を手に入れる。そして結婚をし、娘を二人産んだ。二人とも美しく、妹には甘やかな儚さがあった。しかし男はいつまでもふらふらと定職に就かず、家計は女の稼ぎで賄われてた。それが娘たちのこれからに良くないと思いいたった女は男との離婚を決意するが、男は娘たちの親権を争う構えをみせた。積み上げてきたものが必ず親権を女にもたらすだろうと思っていた。それを覆したのはー。
    『万灯』
    エネルギー資源を会社に、母国にもたらし、あたたかな窓の灯を自分がともす一端を担う。それが男の矜持でありそのために犯した罪は、けして外へ漏れるものではなかった。そのはずだったのに、その罅を入れたのはー。
    『関守』
    うだつの上がらないライターをしている男のもとに都市伝説を取材していくつか書いてほしいと依頼がくる。男は先輩ライターからもらったとある峠での事故を取材に出かける。そこでは四年連続でおおよそ事故の起こらない場所で事故死が起こっている。共通項のない四人。その峠の手前にある小さな店のおばあさんに男は話をきく。彼女は話好きらしく、快く話をしてくれた。そして見つかる被害者たちの共通項。しかしそれを知った時、男もまた暗い視界のなかにいた。
    『満願』
    司法試験の勉強をしていた時の下宿先の奥さんが殺人の刑期を終えて出所したと電話あった。そしてその事件の弁護を担当した男は過去の記録を開きながら昔を思い返す。あの家は畳屋の主人と、美しい奥さんの二人暮らしだった。奥さんのできた人柄に比べ旦那は器も商売の器量も小さい男だった。誠実さを欠いた商売は右肩下がりに転げ落ちていく。そして酒に溺れ、体を壊した男は借金を作り、その金貸しを奥さんは刺した。それは借金をたてに関係を迫った金貸しから身を守るための正当防衛だったという主張は通らず、いくらか刑を軽くしただけだった。そして奥さんは刑期を終えた。そんな今、男は奥さんの本当の事件をおこした理由に思い至っていた。

    どれも読みごたえがあるいい短編だった。
    文章はなんだかより鋭さが増したきがする。
    ひとつひとつのタイトルの言葉が、読んだ後わずかに重たさを増して沈む気がする。
    個人的に柘榴が漫画で読みたい。満願はドラマの一話になったらみたい。

  • 9月-7。3.5点。
    短編集。2016このミス1位。
    さすが。どの短編も読ませる。どちらかというとホラーに近いか。
    最後の満願は、背筋が寒くなった。

  • 2017.09.警察の拳銃マニアの話,誰の遺書かを探す死人宿の話,女性の心を掴む男の話,仕事のために殺人を犯してしまう話,何故か死亡事故がおきてしまう峠の話,家宝の掛軸を守るために殺人を犯す話のホラー,ミステリーの6つの短編集.今一つだったかな.

  • 表題作を含む短編集。

    どの作品も読み進めながら背筋がぞくっとしてきて、でも止まらない。
    感情移入はできなかったんですが、世界観には入り込んだ感じ。
    ゾワゾワすると言われた意味がよくわかりました。

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著者プロフィール

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年、岐阜県生まれの小説家、推理作家。金沢大学文学部卒業。
大学在学中から、ネット小説サイト「汎夢殿(はんむでん)」を運営し、作品を発表。大学卒業後に岐阜県高山市で書店員として勤めながら、2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューに到る。同作は「古典部」シリーズとして大人気に。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。『満願』は2018年にドラマ化された。直木賞候補にも度々名が挙がる。
その他代表作として週刊文春ミステリーベスト10・このミステリーがすごい!・ミステリが読みたい!各1位となった『王とサーカス』がある。2018年12月14日、集英社から新刊『本と鍵の季節』を刊行。

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