満願

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 874
  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103014744

感想・レビュー・書評

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  • 夜警・死人宿・柘榴・万灯・ 関守・ 満願の6篇からなる短篇は、全作秀作。
    伏線は張られ完璧なオチもついている。ミステリ、サイコ、不条理。しかし、読後は、後味が悪くどんより引きずる、最低だ。湊さんの『告白』に次ぐ。
    私は、死人宿が好きだ。

  • 一つ一つの密度が濃く濃密な短篇集。単に謎を提示して解決するだけでなく、解き方や明かされたことによる結果などが一ひねりしていて味わい深い余韻を残している。特に表題作の『満願』のひねり方は素晴らしく、不幸な生活に苦しむ中で、彼女の満願とは苦学生なのか、それとも一見するとクズのあの夫なのか、という二つのミスリードを誘いつつ、掛け軸という自分が守るべき「矜持」と、それを伝えた主人公の、過去の切ない思い出がダイレクトに繋がるこのオチはとてもいい。不幸な結婚生活の中で、先祖代々受け継がれて来た掛け軸とその教えがおかみさんの誇りだったわけなのだが、その誇りすら借金のカタに奪われそうになり、それに血痕を飛ばして殺人事件の「証拠品」にする事で、奪われることを防いだわけで、主人公にあれだけ真摯に助けたのも、ようはその掛け軸の時に語っていた先祖を模倣したわけである。それが彼女にとっての誇りであり、タイトルの「満願」であり、最後にそのことに主人公がそのことに気づいてしまったという苦いオチの一本なのだ。争点は「殺人事件に計画性があったか否か」で、主人公は現場に掛け軸が出ていたことを理由に「もし予め殺人を計画していたなら、大切な掛け軸を汚す可能性のある殺人現場に出すはずがない」と弁護したわけだが、その掛け軸を汚すことこそが殺人の理由の一つだったというひっくり返しで、ぱっと見は地味に映る短編だが、物語性と謎のバランスが最高の一作だろう。他の各短編ともにシチュエーションが面白く、特に謎の発生から解決に至るまでが非常に淀みがなくスムーズである。個人的にお気に入りは『夜警』で、警官特有の行動状況から、伏線の配置、手がかりなどが心理に寄っていて、動機が明らかになるまでの流れが非常に面白かった。遺書という僅かな手がかりから解決を導き出す『死人宿』も面白い。個人的にはやや一発アイデアじみた短編『柘榴』と、ある程度のオチが読めた『関守』などは前述の短編よりは興味を引かなかったが、短編全体に漂う昭和感というか、昔語りのような雰囲気は実に良かった。

  • 米澤穂信さんの作品に学生時代はまっていたこともあり、久しぶりの読書にこの作品を選びました。
    短編集なので、一冊で多くの擬似体験ができ、また米澤穂信さんの読みやすい書き綴りが良かったと感じました。タイトルの「満願」より他の短編作品「関守」が背筋を凍らせるラストに良さを感じました。

  • 米澤穂信の小説を読むのは初めてだったが、どうやらその筋ではかなり力を認められ、ファンも多い作家さんのようだ。
    確かにそれも理解できる力量を感じた。
    ここでいう力量とは構成力のことである。
    自分の嫌いな伊坂幸太郎のような小手先の構成力ではなく、もっと骨太のものを感じる。

    ただ、構成力が素晴らしい分、やや採点が厳しくなるというか、人物造型やサスペンスの描き方にもう一歩の物足りなさを覚える作品もあった。
    以下、作品ごとの短評。

    『夜警』
    実は一番好み。
    ベテラン警官と新人警官のキャラクタライゼーションに真実味があり、それが小説内での言動やもたらされる帰結と溶け合っている。
    単に自分が職業小説好きだからかもしれんが。

    『死人宿』
    自殺者が多く出ることで有名な旅館を舞台に…とだけ聞けば陳腐だが、仲居になった元カノと主人公の価値観のすれ違いぶりの描き方がリアルで、悪くない。
    ミステリとしてはやや浅い。

    『柘榴』
    好きな人は好きだろうが、自分にはイマイチ。
    オチの方向性は早い段階で分かってしまった。
    父親の人物像にもっと迫ってほしかった。
    謎めかして書くには艶かしさが足りない。
    女性読者へのウケはどうなんだろうね?

    『万灯』
    これも職業小説的。
    というか映画的。
    バングラデシュの資源開発に執念を燃やす商社マンが主役。
    いきなり舞台が世界に広がり、アクション性も盛り込まれる。
    気に入った。

    『関守』
    都市伝説を取材するライターが死亡事故の続出する峠のドライブインを訪れる。
    一番一般ウケしそうだが、個人的にはイマイチ。
    これも早い段階でオチが分かったし、オチに向かって逆算して書いている感がありあり。
    形式として新しくない。

    『満願』
    かつて世話になった下宿先の美しい奥方が起こした殺人の弁護を引き受けた弁護士の回想。
    ちょっと青春小説っぽい趣も。
    どことなく聞いたことのあるような設定だが、オチには意外性あり。
    が、意外性を補強するだけのリアリティには描き込みがやや足りないかな。

    総じて読み応えはありました。

  • ミステリ短編集。
    米沢穂信の本はどうも相性が悪い気がしていたのですが、この本は面白かった。
    「関守」が一番好き。人の好いおしゃべりおばあさんが、じわじわと不穏な空気を醸し出してくるところが怖い。ことの真相にもゾッとした。

  • ちょっとした手がかりから ストーリーが 一気に展開する 良質な短編集である 特に心理描写が克明に描かれている 全体的に後味の悪い短編。

  • 夜警
    警官になってはならない人間がいる…こわい。実際に警官による事件も起きる世の中、リアリティありすぎ。

    死人宿
    死を意識した人の気持ちと常識と…

    柘榴←ざくろ
    美しい母の元に生まれた美しい娘二人。
    働かないが魅力的な父。
    親権争いの果てに娘が選ぶのは、その理由に驚愕(°▽°)

    万灯
    因果応報というのか、、

    関守
    田舎の峠のドライブインと老婆、
    次々と人が亡くなる道、お地蔵さん、怪談。

    満願
    下宿先の親切なおかみさん、司法試験の勉強をしていた学生。数年後、殺人犯と弁護士としてかかわる。
    おかみさんは本当に罪を犯したのか。

  • 短編集。どの話も最後にひっくり返されておもしろかった。

  • 殺人は、日常と全くかけ離れた世界での行為な気がするが、現実の世界で毎日起きている。
    その非日常的な行為が、ある日、日常の中で起きるのは、こういうことなんだなあと思い知らされる。なるほどなあと感心してしまう。
    誰もが持つ、ちょっとした性格のくせや、その人が大事にしているものや、大事にしている人。誰もが持っているものが、殺人の発端になっているんだ。

  • 全部で6つの話が入っています。全て短編なのが勿体無く思えます。もっと長く読んでいたいけど、結末も知りたいという感覚になったミステリーです。6つの話とも、こういう終わり方かなと想像していたのがいい意味で裏切られました。背筋が寒くなるというのはこういう事なんあなと思いました。私は特に「柘榴」「万灯」「関守」が好きです。

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著者プロフィール

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年、岐阜県生まれの小説家、推理作家。金沢大学文学部卒業。
大学在学中から、ネット小説サイト「汎夢殿(はんむでん)」を運営し、作品を発表。大学卒業後に岐阜県高山市で書店員として勤めながら、2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューに到る。同作は「古典部」シリーズとして大人気に。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。『満願』は2018年にドラマ化された。直木賞候補にも度々名が挙がる。
その他代表作として週刊文春ミステリーベスト10・このミステリーがすごい!・ミステリが読みたい!各1位となった『王とサーカス』がある。2018年12月14日、集英社から新刊『本と鍵の季節』を刊行。

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