生きてるだけで、愛

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103017714

感想・レビュー・書評

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  • 生きてるだけで「疲れる」主人公の、つまりそれは「愛」なんだなと思った。

    すごく、感情移入できた。

  • 随分昔に読んだものを再読。と言うか、最後のシーンを読んでいて、10年以上前に読んだことを思い出した。まあ、それだけ最後のシーンが印象的だったと言うことで…。主人公がパニックに陥っている時の心理描写、その臨場感が凄い。

  • 最初の1ページ目で、ああ 言いたいことすごく分かる、ってなった。

    主人公の寧子は、究極にめんどくさがりなくせに、葛飾北斎のざっぱーんのことは彼女なりに分析する。そこは追求して考えるんだなってゆう二面性。
    メンヘルだって、過眠症だって、ただそれだけじゃない。
    人間ってみんなそうじゃないかな。自分はこうゆう人間だって決め付けてもそれが全てじゃない。だから生きられるんだ。
    人生がどれだけしんどくても、生きてるだけで、愛

  • 本谷作品で最も好きな一冊です。
    帯に記された「過眠、メンヘル、二十五歳。」この言葉に少しでも惹かれた方ならば必ずどこかに共感できる部分があると思います。そうじゃない人は、理解できないか、嫌悪感を抱くのかも。

    冒頭の一文から、主人公の歯止めの利かない感情への対症方法が描かれている。
    美人だけど感情の起伏が物凄くて、それに応えるための行動もいちいち振り切れていて、他人も自分も振り回して生きているだけで疲れちゃう主人公。
    遺伝だったり、環境要因によるものなのかもしれない、生きてく中で獲得してきてしまったこういう部分は自分から切り離すことは難しく、世の中にうまく組み込める生き方が見つからなければ、それははみ出した人間として「過眠」「メンヘル」のようなレッテルのもと隅へ追いやられてしまうものなのだと思う。絶対に人と自分が完全に分かりあえるなんてまずないんだと諦めてしまう。主人公の語りの文章も、どこか諦めのような投げやり感が漂っている。
    けれども、たった一瞬だけでも自分の心の姿が人の脳裏に伝わったなら、それを頼りに生きていけるかもしれない。富嶽三十六景にそれを見出せるのがすごいと思う。


    わたしが本谷さんの作風で好きなのが、所々に盛り込まれる小さなエピソードや、日常の中で感じた不快感やツッコミの類の描写です。ひとつひとつは特筆すべきような大したことないかもしれないけど、リアルで共感できるからこそ面白い。コップの表面に浮く脂ぎったリップの残骸を見て真冬の海に飛び込みたくなるほど気が滅入るとことか・・・
    素揚げ女の嫌がらせの件など現実味はないけどもやたら人間味があり濃く感じるエピソードがいくつかあると思いますが、本谷有希子さんのブログあるいは劇団の各演目のHPを細かく読んでみるとそれらが実際に本谷さんが経験したエピソードを元に描かれていることが分かります。仕事への熱意に温度差のあるバイト先のミーティングとかも。どうりで、やけにおもしろいわけだ。

    自身の日記で「私はよくノイローゼの人、それも女子に絡まれる。」と語られているように、本谷さん自身もこの主人公と同じように巻き込まれ体質なのでしょうね。

  • どうしても輪の中に入っていけず空回りしてしまう自分。
    それをどうする事も出来ずに、鬱状態になる。
    そこから抜け出そうと行動すると、
    また思ってるように物事が進まず、悲しくなる。
    その繰り返し。

    でもそんな自分でも誰かが分かってあげたいと思えば、
    愛になるのだ。

    本題より、「あの明け方の」の方が普通で好き。

  • 真っ暗な部屋の中を手探りで進もうとしてはあちこちぶつかってもがいているようなメンヘラの女の子が主人公。

    自分は彼氏の津名木くんと性格が近いと思うので
    「あたしと同じだけあたしに疲れてほしい」なんて言う恋人は
    1番めんどくさいタイプだなと思ってしまう。

    それでもラストの屋上でのシーンは痛快。
    寧子の言葉がぐさぐさ心に刺さってくる。
    誰だって自分とは一生別れられない。

    今まで意識した事なかった葛飾北斎の富士山に波がざっぱーんの絵が
    とてつもなくロマンチックなものに思えてくる。

  • 本谷好きになったきっかけの一冊。何度も読み返した一冊。

  • 「あんたが別れたかったら別れてもいいけど、
    あたしはさ、あたしとは別れられないんだよね一生」
    「いいなあ津奈木。あたしと別れられて、いいなあ」
    印象的だったセリフ。
    本谷さんの作品は会話が自然で、勢いがあって好き。
    ざっぱーん。確かに葛飾北斎の絵は、ざっぱーんだわ。
    もうこれから、そうとしか表現できない。

  • 躁鬱病(いまは鬱状態)の女は部屋に引きこもって過眠生活を続ける。同居する年上の彼氏にも八つ当たりをしてしまうが、彼氏はそれをぼんやりとやり過ごす。
    彼氏の元カノが現れ、ヨリを戻すために邪魔な女を部屋から出ていかせようとするが女は無職だから出ていけるわけがなく、女はレストランでバイトさせられることになる。
    フレンドリーな職場で意外にもうまくやれそうな女だったが、やっぱりうまくいくわけがなくて、周囲の車を破壊し、レストランのトイレを破壊して逃げ出してしまう。
    仕事で疲れ切った彼氏を雪の降る屋上に呼び出した女は、全裸で愛を嘆く。

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    とんでもなく勢いのある話だった。ときおり破滅的な行動をしてしまう女と、それをやり過ごす彼氏。
    生きてるだけでつらい女は、彼氏も一緒につらい思いをしてほしかったんだな。だけど、仕事もあるし、忙しい生活のなかでめんどくさい女と向き合ってる時間もつくらなかった彼氏。
    一緒に苦しんで感情を共有し続けたら共依存になりそうで、それもどうなのかなとは思うけど、それが愛だって言われたら愛なんだと思う。人によって違うものだろうし。

    風邪をひいて体調がよくないとき、優しくしてくれる母に八つ当たりしてしまったことがある。あたかも具合がわるいことが偉いかのように。
    きっと自分を甘やかしてくれる存在だとわかっていたから、母に威張ってしまったんだと思う。
    自分は、彼氏に八つ当たりをする女と同じだな、と思いながら読んだ。親孝行したいな。

  • 過眠症でメンヘル、25歳の寧子の話。

    芥川賞の受賞を聞いて知った作家さん。

    なんじゃこりゃと、ぶっ飛んだ主人公に面食らい
    ながらも、気がつけば一気読み。
    最後まで不思議な感覚が抜けなかったけれど、嫌いじゃないです。

    寧子がバイトする事になったイタリアンレストラン、ラティーナのみんなが魅力的だったのに、あんな形で終わってしまったのは残念。

    私には分からない世界ではあるけれど、津奈木と寧子は、このまま上手くいくのかもしれないですね。

    もう一つの短編「あの明け方の」の方が好みでした。

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著者プロフィール

小説家・劇作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

本谷有希子の作品

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