ヒア・カムズ・ザ・サン

著者 :
  • 新潮社
3.45
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本棚登録 : 4928
レビュー : 741
  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103018742

作品紹介・あらすじ

真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた…。わずか7行のあらすじから誕生した二つの小説。大切な人への想いが、時間と距離を超え、人と人とを繋げていく。有川浩meets演劇集団キャラメルボックス。小説×演劇の全く新しいクロスオーバーから生まれた物語の光。

感想・レビュー・書評

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  •  綺麗な装丁。青い表紙に、一面太陽の光をさえぎるように右手が写し出されている。
     
     父親の、娘への愛。娘の、父親への愛。たぶん、父と娘という組み合わせの愛情って、一番伝わりにくいものなのだと思う。
     HALこと晴男の、カオルへの愛。手紙にこもった痛々しいほどの愛情。ただただカオルに会いたいという、あの単純で激しい思い。生まれつき、ものに遺された人の思いを感じ取る能力を持つ真也が、父ちゃんの思いに触れたときの描写は、もう読んでいてたまらなくなった。
     
     痛くて、切なくて、この世に、どうしてこんなにも切なく強い思いが存在するのだろうと思った。その思いは、たとえ何年、何十年たとうと薄れたり消えたりしないものなんだろう。本当に、このようにどうしてこんなに強い思いが存在するのか、と考えてしまう。

     個人的には、「ヒア・カムズ・ザ・サン・パラレル」の方が好き。だめ男父ちゃんと、いい男真也。2人の掛け合いがいい。
     男は、好きな女にはカッコつけたがるものなんだなあ。それはいくつになっても変わらない。
     けれど、その見栄を全部とっぱらって、裸の自分を見せられるオトコが、真のいいオトコといえるんだろうなあーって、思った。

     そんないいオトコって、現実世界に、いったい何人いるんだろうかー。

  • 新年一発目は有川作品で行く!
    と決めて、中々読み終わらなかったが…。

    劇団キャラメルボックスとのコラボで
    真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。
    彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。
    強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた…。
    という、7行のあらすじから生まれた物語。

    感動しました。
    自分の生まれ持った能力のせいで、他人の悪意に気づいてしまっても…。

    • しをん。さん
      ですよね!
      コラボに作家さんに・・・何でも出来て本当に尊敬します!!

      「旅猫リポート」!
      私も見に行きたいと思っているのですが中々日程が合...
      ですよね!
      コラボに作家さんに・・・何でも出来て本当に尊敬します!!

      「旅猫リポート」!
      私も見に行きたいと思っているのですが中々日程が合わずに、「キャロリング」の方は観にいけなかったので今回こそ行ってみようと思います♪

      なんせ「猫」が主人公ですからね(^^♪
      2013/01/10
    • kuroayameさん
      レビューを拝見させていただき、演劇ではどのように演じられているのだろう?と想像するとわくわくしました♪。
      実際に本を読んで、劇も見てみたくな...
      レビューを拝見させていただき、演劇ではどのように演じられているのだろう?と想像するとわくわくしました♪。
      実際に本を読んで、劇も見てみたくなりました★。
      いつも素敵なレビューを拝見させていただきありがとうございます♪。
      2013/01/11
    • しをん。さん
      確かに♪
      この劇を観たかったのですが、観れなかったので頭の中で想像して…。

      こちらこそ、いつも丁寧なコメントありがとうございます(●^o^...
      確かに♪
      この劇を観たかったのですが、観れなかったので頭の中で想像して…。

      こちらこそ、いつも丁寧なコメントありがとうございます(●^o^●)
      2013/01/11
  • 誰を、何を、自分の太陽に見立てて眩しく振り仰ぎ、
    追いつきたいと手を伸ばすのか。

    1篇めの『ヒア・カムズ・ザ・サン』では
    まっすぐ相手にぶつかり、愚直に懸命に仕事をして信頼を勝ち取るカオルを

    生まれながらに物に残された記憶を感じ取る能力を持ち、
    その「余分な」気づきのおかげで一人前の仕事ができているのだと
    うしろめたさを抱えて生きる真也にとっての眩しい太陽として。

    劣等感を燃やし尽くし、圧倒的な才能として開花させてしまう白石は

    彼の才能を誰よりも理解し、全幅の信頼を得ることで
    彼に静かな影響を与えられる特権に喜びを抱く榊にとっての
    自分という月を照らす、エネルギーに満ちた太陽として描き、

    2篇めの『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』では
    自分の才能に見切りをつけられず、華やかな嘘で自分を飾り立ててしまう春夫を
    「売れっ子脚本家」という太陽に無謀に手を伸ばして、
    翼を焼かれるイカロスさながらに描く有川さん、さすがです!

    舞台に着想を得て書かれた『Parallel』よりも、
    やはり1篇めのほうが有川さんらしさが存分に発揮されていて

    ずっと白石という太陽の陰に隠れた月として生きてきた榊に
    太陽から照射された光を、卑下することなく受け取って
    大切な誰かを照らすことに使ってもいいのだと気付かせ、
    父に関してはあくまでも頑固なカオルの心を解くのが
    真也の、昇り始めた太陽の光のような温かい気遣いであることが胸を打ちます。

    物語に寄り添うという、編集者にとって一番大切なことを忘れて
    作家の原稿に自分の物差しを押し付けた無神経な校正を入れる編集者への憤りの描写や
    「親も単なる人間だ。親を諦めろ」と親への幻想を打ち砕く台詞に
    『ストーリー・テラー』同様、作家活動や親戚づきあいでのジレンマが垣間見られて
    有川さん、つらいのかなぁ?とちょっと心配になったりもしますが

    手の届かない誰かや何かを眩しく見上げるだけではなく
    自分にできることを見つめ直し、丁寧に努力を重ねることで
    誰もが誰かの小さな太陽になることができるのだ、と思わせてくれる
    タイトルそのままに温かい1冊です。

  • 長かった冬に別れを告げ、春が来たことを歓迎する。
    ジョージ・ハリスン(ビートルズ)の「ヒア・カムズ・ザ・サン」からこの本のタイトルを取ったのかな?とふと。

    『ヒア・カムズ・ザ・サン』
    『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』
    の2編。

    真也は30歳。出版社で仕事をしている。
    幼い頃から、品物や場所に残された、人の記憶が視えてしまう。視ることができてしまう。
    それだけが共通の題材。それ以外は異なるお話。

    異能者の苦悩を描いた物語...ではなく、長い間すれ違っていた人の想いに温かい日差しを届けるお話です。

    『ヒア・カムズ・ザ・サン』と『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』。
    好き嫌いでいうと『ヒア・カムズ・ザ・サン』の話が好き。
    だけど印象に残るのは『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』。

    Parallelにある「親を許す前のいっこ段階がある。親を諦める。」に自分を重ねた。
    「愛している」という言葉が物語に彩りを添えた。


    有川浩さんらしさが薄口な物語でした。

  • たった7行のあらすじから、有川浩が完全オリジナル小説「ヒア・カムズ・ザ・サン」と、演劇集団キャラメルボックスの劇作家 成井豊の舞台から着想を受け創作した「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」を収録。

    こういうお題を与えられて創作するのって、一から紡ぎ出すのに比べたら敷居が低いというか、自分にも書けそうな気がしてしまう(錯覚)。実際出版社のエントリーシートや筆記試験にはお題ありの短編創作課題があった。配点がどれくらいかは分からなかったけど・・・

    相変わらず有川さんの作品は熱いです。
    日和ることを弾劾するキャラクターは共通、自身のフィールドでもある作家と編集者の関係の描き方は有川さんと関わる編集者の皆さんにとっては耳が痛いんじゃないかしら。。

    あらすじは下記の通り。
    出版社で編集の仕事をしている古川真也。彼は幼い頃から、品物や場所に残された人間の記憶が見えるという特殊な能力を持っていた。ある日、真也は同僚のカオルと共に成田空港へ向かう。カオルの父が20年ぶりに帰国したのだ。彼はアメリカで脚本家として名声を得ているはずだったが、真也には全く違う景色が見えた。

  • 愛情の表現方法には色々ありますが、それが相手の欲しい形と一致しない時もあり、そのせいですれ違ったり、離れたり…
    誰かを大切に思い、愛するということを改めて見つめ直す事ができるお話です。
    二つの物語が納められていて、ワタシは後の方のが、より好きです。

  • 2作収録。
    7行の設定から書いた小説と、同じ7行から舞台化されたものを見て書いた小説と。
    登場人物は同じだが、途中からの展開が違う。

    古川真也は出版社に勤める30歳。
    実は物に触ると、そこにこめられた過去の感情記憶を読み取ることができる能力があるサイコメトラー。
    普段はできるだけ封印しているが、編集者としての仕事に活用できる場合もある。

    同僚の大場カオルとは恋人同士。
    カオルの父親が渡米するときに両親が離婚して、以来20年父とは会っていなかった。
    今回帰国したHALというペンネームの映画脚本家・白石晴男を雑誌「小説ポラリス」で取り上げることになるが、それがカオルの父なのだ。
    売れない脚本家だった父は、夢をあきらめられず、アメリカで再出発する決意をしたのだったが、母はついていくことを拒んだのだ。

    アメリカではなおさら成功するわけもないという苦い現実。
    一度も帰ってこない父への不満と葛藤。
    20年会っていない間に何があったのか?という謎が、パラレルな二つの物語の存在を可能にしています。
    面白い企画ですが~読み終わると、ちょっと混ざっちゃいますね。
    帰国を待ちわびた少女の頃のカオルがかわいそうで。
    この父親、痛々しいし‥
    いや、父親の実像が二つの話で違うのが~だんだん見えてくる話なんですけどね。

    カオルの父親の話を親身に聞こうとする真也。
    やたらと景気のいい自慢話をする父親に、そこまでのはずはないといたたまれない思いもしつつ。
    時には能力を使って真実を探り、カオルのために良かれと願うのです。

    なんだか恋人が父の味方になってしまったように感じるカオル。
    何も悪いことをしていない自分のほうが、なぜ折れなければならない?
    野暮に見える編集長が、真也の気持ちをカオルに気づかせます。
    親を許せないままでいると、後悔することになるのを心配しているのだと。
    いつか死なれたら、カオルが自分を責めることになる。

    真也もまた、カオルがどうしたいのか聞くという基本を忘れていました。
    一度でいいから謝ってほしいというカオルの思い。
    このあたりはなかなか面白くて、さすが!有川さん。

    結婚を控えて、真也が自分の能力を告白しなくてはと思いつめますが、この件は?
    カオルは太っ腹に受け止めます。

    一つ目の作品のほうが印象が強いです。
    2作目はたぶん、舞台の上で俳優が演じたら、意外な展開が光ってくるのでしょうね。

  • 冒頭の7行のあらすじから生まれた物語だなんて……。
    作家って生き物は不思議だ。
    『パラレル』よりも前に書かれていた物語のほうが好み。
    えー、帰国した父親は別人だったの?
    と疑問に思わせて、実はいろいろな事情があったというドラマチックな展開がいいわ。嘘を吐いている父親よりは理解できそう。

    物を触って、その品物に関係する人の気持ちがわかるというのは一見便利そうで実は楽しみのない人生かもしれない。
    どうなんだろう?
    とかあれこれ考えるのが楽しいのではないかしらん。
    その楽しみを奪われるって…。
    その能力を生かした人生にしていくしかないか。

  • やっぱり有川さんの本は出先で読んではいけなかったな…。
    情けなくても、いや情けない人だからこそ、敬意をこめて愛せるのだろうか。
    家族ならなおさら…。
    こんな風にお互いを思い遣り、尊重し、寄り添える家族になりたいな。
    来年舞台になるみたいなので、観に行きたいと思います。
    オリジナル?パラレル両方が一冊になっているギャップもよかったと思う。
    それから視力が悪いせいか、太陽と大場を見間違えたところがあった。

  • 図書館借り2冊め。ちょっと、モヤモヤするクライムサスペンス続いてたので、お口直し的な?

    どうも舞台のノベライズに近いらしいのだけれど、舞台は全然知らなかったな。

    本編と、ほぼ登場人物変わらないパラレルワールドなお話の2編。

    どっちがどう、では無く単純にパラレルな方の春男さんがいいなw
    と思ったよ。

    あ、冒頭に出てくる作家先生のひとこと。
    「猫を亡くした痛みが分からん人間とは仕事をしたくない」
    に激しく同感。仕事どころか付き合えないわ!

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著者プロフィール

有川 浩(ありかわ ひろ)
1972年高知県生まれ。PN由来として、「有川」は書店に本が並んだ時に「あ」から始まる名前として、著者五十音順で棚の最初のほうにくるから。「浩」は本名から。
2003年『塩の街 wish on my precious』で第10回電撃ゲーム小説大賞を受賞。2006年『図書館戦争』で「本の雑誌」が選ぶ2006年上半期エンターテインメントで第1位を獲得し、さらに2008年には同シリーズで第39回星雲賞日本長編作品部門を受賞。映画化もされた代表作となる。
『植物図鑑』で第1回ブクログ大賞小説部門大賞、『キケン』で第2回ブクログ大賞小説部門大賞を2年連続で受賞。2011年には『県庁おもてなし課』で「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2011」で総合1位と恋愛小説1位、第3回ブクログ大賞小説部門大賞を3年連続で受賞。2012年『空飛ぶ広報室』が「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2012」で小説部門第1位。
その他、ドラマ化作『フリーター、家を買う。』、映画化された『阪急電車』『県庁おもてなし課』『植物図鑑』などが代表作。

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