大きな熊が来る前に、おやすみ。

  • 新潮社 (2007年3月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784103020318

感想・レビュー・書評

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  • どうしてそんな男を好きになってしまうんだよ、と思いながらも、どうしようもない男に惹かれる気持ちも分かってしまう。女って、どうして恋愛に関しては、斯くも非合理的な思考回路をしてるんだろう。種を存続させるためのバグとしか思えない(壮大)。

    特に表題作。亡き父親を憎悪しながら、そんな亡父に似ている男に「ポジティブではない」恋をしている女性の物語なんですが、「でもこの人にもいいとこあんのよね」と何気ない日常の中に小さな幸せを見出す様が、なんて言うかもう「私もそういう恋愛してたな〜」と面映くなった。てゆーか痒くなった。

    クロコダイルの午睡は、オチがめちゃくちゃホラーで、「さすがにそんなことはしねーだろ」と思いつつ、主人公がキレたきっかけに強烈なシンパシーを感じた。惚れかけてる男にそんなこと言われたらねえ…。

    書き下ろし作品が平和だったかな。いや主人公の過去は全然平和じゃないんだけど。彼女とにゃんこの前途に幸あれ。

    ◎大きな熊が来る前に、おやすみ…父を恐れながら、そんな父に似ている鉄平と同棲をしていた私は、ある日体調不良でかかった病院で妊娠を告げられる。鉄平はきっと喜ばないーーそう確信しながら、私は父のことを思い出していた。

    ◎クロコダイルの午睡…招かれざる客だった男は、私の部屋に入り浸ってご飯を食べるようになった。デリカシーがなくて、来世はワニに生まれ変わりたいという、そば粉アレルギーの男、都築新。自由気ままに振る舞う彼に、私はいつしか振り回されていた。そして、迎えた運命の日。その日を境に、彼は私の作るご飯を食べなくなった。

    ◎猫と君のとなり…恩師の葬儀をきっかけに、学生時代の後輩に思いを打ち明けられた私と、猫と、彼の物語。

  • 「大きな熊が来る前におやすみ」「クロコダイルの午睡」「猫と君のとなり」3話の短編集。男女の危うい恋愛バランスは読んでいてハラハラするんだけども、どこにでもありそうな話でもあり…。唯一最後の話だけは、ハッピーエンドで終わりそうでよかった。猫を虐める人だけとは仲良くなれないな。

  • 男の子たちがなかなか厄介。
    女の子たちが幸せでありますように。

  • 大好きな酒井駒子さんの絵が表紙になっていた本。
    それだけでわくわくしてしまう。

    3本の短編は暴力にあった女性達の物語。
    恋人と些細なことから口論となり彼から暴力を受けたり、幼い頃から母親がらみで苦労したり、元彼から受けた仕打ちがいつまでもトラウマになったり。
    トラウマを抱え一人思い悩む彼女達をそっと応援したくなる。

    眠る間際、毎晩のように必死で祈る彼女。
    今夜はどうか悪い夢を見ませんように…何度も何度も祈る。
    「早く寝ないと大きな熊が来て食われるぞ」
    幼い頃呪いの言葉のように父に繰り返し言われていた彼女も、トラウマを乗り越えそのままの彼と向き合うことに決めた。
    穏やかに粛々と。

    ラストの短編は飼い猫と彼女と彼の距離感がとても微笑ましかった。
    どうか猫好きの二人の恋の行方が明るいものとなりますように…静かにそっと祈りたい。

  • 嫌いなはずなのに、どうして。

    ジャケ買いならぬ、タイトル借り。タイトルが秀逸で、思わず手にとってしまった。

    ずっと言えなかった秘密。それが恋愛を歪ませる。嫌いなはずだったのに、許してしまう。好きになってしまう。決してキラキラした恋愛小説ではない。怖さもあり、そこそこ重い。動物をモチーフにした3篇の恋愛短編集。

    にしても、主人公の女性が簡単に男を部屋に入れすぎ。料理が上手いとかも共通の設定なんだろうけど。父ちゃん目線で心配になっちゃうよ。

    「クロコダイルの午睡」のタイトル。昼寝じゃなくて午睡にしたのは、誤推に掛けてるのかな?シロワニ知っていたけどね。

  • 大きな熊が来る前に、おやすみ。
    同棲してる彼との間に子供ができた。彼はDVちっく。
    クロコダイルの午睡
    彼女いる金持ち男がごはんを食べに来る。ユニットバス嫌。
    猫と君のとなり
    中学の部活の後輩がなついてくる。猫のまだら。

    どの作品にも動物が出てきたよー。
    熊、ワニ、ねこ。
    それから、恋愛も絡んできたよー。
    個人的には、猫と君のとなりが好きだったなぁー。
    ほっこりする話だった。

    逆にクロコダイルの午睡は、最後が怖かった。
    無神経だと分かっている男が、それでも本音を言う所に
    生きづらさを感じてしまったよ。

  • 『大きな熊が来る前に、おやすみ。』
    同棲する男女。ふとしたきっかけで女は男に暴力を振い、男もそれに応えやり返してしまう。
    暴力は尾を引く。ふたりの間に残る傷。

    『クロコダイルの午睡』
    ひとの気持ちがわからない男に惹かれつつも、自分の気持ちが整理できない女。
    何気ない男の言葉に女は傷つき、男に苦い薬を飲ませる。

    『猫と君のとなり』
    再会した先輩後輩。
    男女の仲になっていこうとするふたりを拒むのは、女のなかに居座る昔の男。暴力の記憶。

    ------------------------------------------------------

    3つの短編すべてが軽い恋愛小説ではなかった。

    ノーベル文学賞候補の作家はこう言っている。
    「高く、堅い壁と、それに当たって砕ける卵があれば、私は常に卵の側に立つ」
    これは軍事行動とその脅威にさらされる市民がいるという現状に対する批判であり、とても勇敢なスピーチだった。

    小学校の教師が、「女子は教室、男子は外で着替えるように」と指示を出したときのことを思い出す。
    もちろん男子からは不満の声が上がり、おそらく一番大きい声で文句を言ってしまった私が、何か意見があるなら言うように教師から指名された。
    男子を代表するような気持ちで、これは不公平ではないかと私は抗議した。教師は思惑通りといったように笑い、「男女平等とはそういうことじゃない。男は女を守らなきゃいけない。そういうものなんだ」と言った。
    クソフェミニスト野郎!と覚えたての暴言を吐かなくて本当によかった。
    教室は静まり返っていて、正論過ぎてどこかしらけたような空気が流れていた。

    教師の言ったことは間違ってはいないと思う。

    多くの場合、
    車と歩行者がぶつかったら壊れるのは歩行者であり、
    男と女が殴り合いのケンカをしたら傷つくのは女であり、
    弱いものは守られるべきということ。

    壁にぶつかって壊れてしまう卵があれば、いつでもその卵は守られるべきなのだ。

    なんだか前置きがすごく長くなってしまった。

    『大きな熊が来る前に、おやすみ。』のなかで、男は女のクッション攻撃にやり返してしまった。殴り、背中を蹴った。
    これが男同士だったらもしかしたら問題なかったのかもしれない。
    でも、相手は女だった。守られるべき卵だった。
    男女の間に暴力はあってはならない。
    力という点において対等ではないから。

    男女平等とかDVとかすごくナイーブな話題だと思う。
    欧米のようにレディーファーストが浸透していない日本では、どうしても不自然になってしまう。小学校の教師もそれを伝えたかったんだと思う。

    男女平等の世の中ではあるけど、男女の違いというか、その本質を理解しなくちゃ、ただのフェミニスト野郎になってしまうなあとか考えながら読んだ。かなり良作だと感じた。

  • 3つの話が収まった短編集。
    表紙とタイトルから、なんとなく嫌な予感がしていたのだけど
    テーマに共通するのが「暴力」だ。




    「大きな熊が来る前に、おやすみ」
    この本のタイトルにもなっているお話。
    一緒に暮らしている彼氏に、一度だけふるわれた暴力。
    普段は優しい彼が見せた、歪み。
    そこに、自身の父親の姿が重なる。
    それぞれに抱えたトラウマ。

    微かに見えた希望は、本当に希望なのだろうか、と考えてしまう。
    なんとなくリアルで後味がちょっと悪い。


    「クロコダイルの午睡」
    テンポよくすすんでいってたら、最後にちょっとびっくり。
    でも、これもまたなんかリアルでちょっと、怖い。
    無神経さって、怖いわ。


    「猫と君のとなり」
    いままでのふたつの短編とは違って、ちょっとほっとした。
    読み終わった後に、
    他の二作にあった黒いもやもやとしたものはなくて
    平凡だけど、あったかくて、ほんわかする。

  • タイトルと装丁に惹かれて読んでみた。
    特によかったなと思ったのは2作目。
    こう言った男性になんだか惹かれてしまう気持ちがわかる。
    最後のやり取りも含めてなんとも言えずよかった。
    過去を持つそれぞれの登場人物。
    やはり過去の傷はずっと考え方や生き方に影響が大きいなあと感じる。

  • 主人公がみんな料理をちゃんとする子で憧れる。
    自分が彼女たちの歳の頃、カップ麺とスナック菓子ばかり食べてた気がする。

  • 二篇目がとても好きだった。生まれついて貧乏な人間の描写がすごい

  • 恋人との穏やかな暮らしを揺さぶった、突然の暴力。それでも互いが抱える暗闇に惹かれあい、かすかな希望を求める二人を描く表題作など、恋愛によって知る孤独や不安、残酷さを繊細に描く三つの物語。

    誰かと生活を共にするなどして相手との距離がぐっと縮まると、良いところ、悪いところを否応なく認識させられる。時にはその人自身が意識していないことまで気づいてしまうかもしれない。誰かにもっと近づきたいと願い、相手の今まで知らなかった面を知って傷つきながら、主人公たちはもがいていく。絶望の中にいるにもかかわらず、相手を、かすかな希望を信じて進もうとする。

    「クロコダイルの午睡」では女子大学生の霧島が、同級生の都築に惹かれていく。しかし霧島は都築の、裕福な家に育ったがために金銭感覚がずれていたり、他人の気持ちを察する事ができない面をどうしても受け入れられない。この物語から、恋に落ちることと、誰かの人間性をすべて認めることは全く別のことだと思った。恋は相手に近づくということの動機であり、関係性の始まりでしかない。距離を縮めて相手を知っていった結果、人間としてどうしても理解できない部分を見つけてしまうこともあるだろう。この物語の主人公も「好き」という感情とどうしても埋まらない価値観のずれとの葛藤に苦しみ、都築を許せなくなってしまう。二つの相反する感情を両立させてしまう恋とは、本当に厄介なものであると感じた。

  • 住宅街をゆっくりと流れている時間を、電車の速度がぐんぐん追い越していく。実際の時間の流れと、体感時間の流れと、乗り物に運ばれていく時間の流れ、すべてがばらばらで、だから私は時々、意図的に徹平や自分の時間の速度を落とさなきゃいけないと感じる。日常の忙しなさは無意識のうちに体内の速度も上げていくので、気が付かないうちに、疲れているのだ。






    大学生ってこうだよねって思う。
    でもこんな大学生になるためには自宅生ではだめで。

  • 内容が重いわりにはドライな感じ。
    男女の間に恋愛が絡むと、
    こんなにあっさり暴力が介在するのか。
    1話目のラストなんて、
    自分が友人だったら絶対止めるよ・・・
    でも、当事者だったら相手の言葉を信じて、
    一度の暴力を水に流そうとするんだね。
    人間っておかしな生き物だ。

    2話目はおっそろしいけれども、
    出てくる女の子がわからないわけではない。
    切ないねぇ、恋って。

    3話目はふつう。

  • 表題作より他の2つが好き。
    「クロコダイルの午睡」は自己嫌悪の塊な女の子。
    痛いなー、と思いつつ、彼女を否定できない。
    女子に幻想を抱く男子もばかだけど、抱かせてるのは女子なのかも、なんて。
    「猫と君のとなり」は少女漫画みたいでかわいらしい。
    敬語の年下男子がすてきです。
    3つのお話のバランスがすごくいい短編集。

  • 3作の短編集。島本作品はいつも壊れやすい心の真ん中にそっと触れるみたいで、読む手が少し震えて優しい気持ちで読める。傷ついた心も体も人間関係も、都合よく忘れてしまうことも相手を消すこともできない。少しずつ少しずつ癒して進んでいくしかないんだ。そっち傷口に触れながら。そんな風に感じました。3作の中では2つめの「クロコダイルの午睡」の結末が忘れられない。

  • 「新しい恋を始めた3人の女性を主人公に、人を好きになること、誰かと暮らすことの、危うさと幸福感を、みずみずしく描きあげる感動の小説集。」と帯に書いてありました。
    内容は、本当に帯そのままなんですが、島本理生さんの描く世界観というか危うさが出ててすごく好きでした。
    誰かと暮らすのってとても幸福だけど、多く時間を共有するだけ、こんなにも危ういというか怖くもなった。

  • やっばい!

    めっちゃいい。
    この短編集。
    島本理生さんは、ツボおさえてる。
    女子の求めている恋愛を。

    男子はなかなかこうは動いてくれないけど。。。

    ・大きな熊が来る前に、おやすみ。
    恋愛って、トラウマのぶつかりあいだったりするのかな?
    似たもの同士がひかれたり、似てないもの同士がひかれたり。
    不思議なものだと思います。
    絶対くっつかないでしょ。てのもくっついたりすることもありえるのが恋愛だと思います。
    相手を掘り起こしたいけど、掘り起こしすぎもこわい。
    むずかしいけど、なにかを見いだせた時のうれしさとか、ふわっとひろがる気持ちは他では体験できないものだと思う。

    ☆気になったぶぶん
    「おまえと一緒にいると、時々、ものすごく嫌な気分になるんだよ。自分の卑怯な部分や、悪いところばかり思い出して、そんなところを知られたら終わりだとか、罪悪感がふくれあがって、すごくみじめな気分になる。そばにいればいるほど、自分がしてきたことが重くなって、そんなふうに感じさせるおまえを、好きなのか嫌いなのか分からなくなる。」

    ・クロコダイルの午睡
    苦手な男子、と過ごす時間。
    平気で傷つけるような言葉を口にする人。。いるなぁ。。と思った。
    かわせずにたやすく傷ついてしまう自分も嫌になるけど。
    結末はなんとも言えないけど、話全体に流れる、この話だけはなんか違うな~って空気はとても好きです。

    ・猫と君のとなり
    一番好きなお話。しあわせ。
    すてきなシーンがたくさんありました。
    ていねいにしてもらえるのはとても嬉しいことだと思う。
    ムードとかってめっちゃ大事。。
    こんな話がかける島本さんは、素敵な恋愛たくさんしてきたんやろな~。。て思いました。

  • レビューを読んだら、あまり評価が良くないようですが、
    私は、この人の作品で、今のところ、この本が一番好き。
    短編3作のうち、2作目の「クロコダイルの午睡」が特に秀逸。
    無神経な男と、無頓着な女の、恋でもなく友情でもない、微妙な関係が興味深かった。

  • 生きていれば誰もが傷つき、押し込め、隠そうとする。そうして心の陰になっている部分に、じんわりと光を当てていくような島本理生さんのお話の開き方は、ある意味とても魅力的で、とても恐ろしい。DV、虐待、共依存、障害、無邪気な加害、欲望と責任…。「子供が暴れるのは、泣くのは、自分の気持ちが通じなくて、だけど伝えたいと思うからなんだな。」徹平の言葉が胸に残った。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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