一週間

  • 新潮社 (2010年6月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784103023302

感想・レビュー・書評

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  • p.132
    なぜ日本人は頼まれもしないのに鉄砲担いで海を越え朝鮮半島や台湾や中国へ押しかけて行き、ちがうコトバを話す人たちを殺したり苦しめたりしたのか。これにたいる報復はきっとあるにちがいないが、日本人はそれらのことについてどう思っているのか。

    p.338
     われわれ人間が生きていくためには、世界がどんなふうにできているかという世界観と、世界がそんな風にできているのならこう生きようという処世訓が必要だが、そのときそのときの利害に合わせて、この世界観と処世訓を簡単に変えてしまう人間が多い。彼らを信用してはいけない。

  • 読んでいて、何度も声を出して笑ってしまった。
    私、作者のユーモアにニヤリとすることはあっても、声を出して笑ってしまうということはあまり無いので、この作品はかなり面白い本ということが言えると思う。

    日本兵のシベリア抑留が、関東軍上層部の国際法に対する無知や身勝手さによって、捕虜達により一層過酷なものとなり、おそらく生還できたであろう多くの人々を死に至らしめたことは歴史的事実として明らかだが、そのような舞台にこのような面白い話を展開させた作者の力量には感嘆する。悲惨な出来事のなかに面白みを加えることにより、戦争の愚かさや権力の愚かさを際立たせてくれる。

    ちょっとラストの場面がもの足り無さを感じはするが、一級の娯楽小説であることは間違いない。

    かえすがえすも残念なのは、もう新作が読めないということだ。 

    最後に井上ひさし先生のご冥福をお祈りします。

  • 今年の夏、NHKスペシャル「引き裂かれた歳月ー証言記録 シベリア抑留」が放映された。シベリアに捕虜として囚われていた日本兵は60万人という。その数に驚かされ、戦争が終わっても引き揚げには数年を要し、6万人がシベリアで亡くなったという。この事実はテレビでも、本にも触れてあるが当時のソビエト連邦と日本の軍部のかけひきのようなお国事情があった。著者は小説的に面白おかしく描いている。それが反対にこの小説に重みを与えているように感じる。

    ロシア語に堪能な捕虜、小松の一週間。それは大国ソビエトを相手に日本に帰るために奇想天外なかけ引きをする。捕虜としての抑留生活、それだけにとどまらず、ロシアの社会主義の堕落、偉大なる革命家レーニンの出生の秘密の手紙、日本の軍部の退廃、ロシアの少数民族の迫害など、満州国溥儀やスパイまで登場する。

    「言葉」遊びのような文章が楽しい。

    確かな下準備の事実の上に想像力を屈指した物語の展開はみごととしかいえない。

    レーニンの手紙を預かった入江軍医があと一歩で脱走に成功するといった時に、自身の幸福より、その手紙を使って残った仲間の生活改善のために使おうとわざと捕まった場面は、作者の平和の追求、平等な精神といった人間性を感じた。


    それから、あらためて「知る」ことの大切さと「無知」であることの愚かさを教わった気がする。

  • 理不尽な運命に翻弄される主人公。
    なのにけっして重くなく、それどころか、どこか滑稽で。
    そして、その滑稽さには、哀しみと怒りがかくされている…。

  • ふむ

  • えっこのエンディングある?

  • なんという大作。そして、なんという虚無感。
    結末に至る赤裸々な、またドラマティックな展開もさることながら、最後のこの落とし方。
    これは、結局こうするしかなかったんだろうか。

  • 語学、歴史、地政学、体験譚を相当な編集力で再構築してからではないとこんなすごい作品は書けない。現存の日本人作家の誰がこれを書けようか。ものすごく集中し、一命を賭した平野啓一郎あたりか?
    やけに日本語達者な外人だらけが気になるが、それもギャグとしているような。
    井上ひさしの左一辺倒では決してない正義、それも最終形態を示してくれている。これが実はもっとも刺さった。
    本当にすごいのはこれがおもしろいということだ。ジェームスボンドみたいなのだ。本当に。

  • ソ連捕虜となった日本人の反乱

  • 極寒と恐怖に支配されたシベリア抑留のシリアスな状況が継続するにも関わらず、コミカルな空気が通底。
    その軽妙さが却ってブラックな妙味を生んでいます。
    惨い私刑だとか拷問だとか、会話の中には登場するけど、登場人物が直接そういう目に遭う場面が描かれないことがポイントなのかも。

    それにしても、軍国主義と共産主義の欺瞞に対する強烈な嫌悪感が小説全体から横溢している感じで、井上ひさしという作家の生き様が滲み出ている点では遺作に相応しいと言えるように思います。

    もともと文芸誌へ連載された作品で、単行本化にあたり加筆・修正が予定されていたところ、著者の逝去により叶わなかったという事情があるとのこと。
    全体の整形がされていればさらにエクセレントな出来栄えになったろうに…と思う一方、この荒削り感が小説の雰囲気には合っていると言えるのかもしれません。

  • シベリヤのある収容所での一週間の出来事。

  • 井上ひさしの絶筆となった作。らしいのだがこの大御所の本を読んだのがまず初めて。500頁超の大作だったが途中からのめりこみすぐ読了。これを読むまで、大戦後のシベリア抑留問題についてはほぼ知らなかった。恥ずかしい…。
    そこにあった問題は、ソ連の対応だけでなくこの本で描かれる帝国陸軍の持ち込んだ問題も現実なんだろう。
    ソ連と大本営を含む祖国の戦争そして戦後の対応を批判しつつ、それに抗い闘おうとする1人の捕虜の物語。本当に長すぎる一週間。ジャック・バウアーの24時間に匹敵するとも劣らない。
    寂しすぎるほどあっさりしすぎるラストも、この物語にふさわしいような気がする。
    著者の他作も読んでみたい。ありがとう。

  • 著者の井上ひさし氏が2010年4月に肺がんで亡くなった後、その年の6月に刊行された遺作「一週間」を読了しました。
    第二次世界大戦後、シベリアに抑留されている小松修吉のある月曜日から日曜日までの一週間を描いた物語です。

    この作品の魅力の一つは、徹底的なリサーチに裏付けられた、圧倒的にリアルな描写です。
    そのことについて、大江健三郎氏は次の様に述べています。
    『シベリアの苛酷な風土、市街の景観、日本語をそれぞれ高度に習得した赤軍将校たちの自己表現。ていねいに、しかし何気なく示されるそれらのいちいちが、じつにふんだんに集積された情報を注意深く整理したものであることを感じとる読者は多いでしょう。井上さんはロシア文化を、日常レヴェルで多面的に体得していられる夫人、その姉の米原万里さんのお二人に、徹底的に学習されたはず。こうした確実な細部の基礎がためこそが、ディケンズ以来、本当に偉大なエンターテインメントの条件です。(新潮社『波』より)』
    まさに小松氏が現実にシベリアで文章を書いているかのような、現実味に引き込まれます。

    また、ハラハラドキドキさせ、あっと驚かせるミステリー小説の様な展開の妙や、深く痛烈な社会批判も、この作品の主要な魅力です。

    軽い文体ですが、ずっしりと重い読み応えのある作品でした。
    超オススメです。

  • 著者の絶筆ともいうべき作品です。終戦直後のシベリアを舞台とした旧ソ連、そして旧日本陸軍(関東軍)の非道さを告発する内容ですが、ユーモアに富み楽しく読ませてくれます。チェチェンの民族問題が当時からの問題として出てきており、スターリンの罪状の大きさを感じます。 また魯迅・周恩来・宣統帝(ラストエンペラー)などが非常に自然に物語の中に出てくるということで、リアリティを高めていました。ユーモア小説であることを忘れ真剣に読んでいたときに、主人公の小松が元軍医・入江に会って大変だった脱走記を書こうとしたらロシア女にモテモテの大名旅行だった!で初めてパロディを感じたというところでした。また入江から渡された若き日のレーニンの手紙がソ連の体制を揺るがしかねないという内容でそれを、小松が、ソフィアに託した際のソフィアの反応が笑わせる楽しい内容だと思ったのですが、これはどんでん返しがありました。月曜日から始まり、土曜日になったところで、展開が速くなりすぎ、もしかすると、中途半端で著者が絶筆に成らざるを得なかったのかとその点が残念ですが、十分楽しかったです。恐らく目次だけがある日曜日が完結編だったのでしょうか?

  • 流石に手練れの文章って感じで読了。設定舞台としては暗くて重いはずなのに、軽やかさがあるから読み進め易いんだろうな。主人公をはじめ登場人物たちもみんな魅力的。ラストはちょっと呆気なかった感もなきにしもあらず、だけど。

  •  久々に読んだ井上ひさし。が、残念ながらこれが遺作。あとがきによれば、雑誌に連載終了の後、単行本化の際に著者が加筆修正する予定だったのがかなわないまま逝去したのだそうだ。著者は多少不本意だったかもしれないけれど、とりあえず小説としては完結しているので、おもしろく読めた。
     主人公である日本人捕虜小松修吉の終戦後のハバロフスク収容所での一週間のできごとをつづっているだけだが、そこにいたる日本での地下活動のようすや、満州に渡ってからのあれこれなど、捕虜になるまでのもろもろの回想や、現地で発行されている日本新聞の仕事として聞きとり調査した、別の日本人捕虜の珍妙脱走記などの話中話が織り交ぜられて、起伏に富んだ内容になっている。
     もとより、坦々とした収容所での日常、ロシア人将校や関係者との会話ひとつとってもおかしみにあふれているところなど、著者の面目躍如というところだろう。後半はレーニンの怪手紙をめぐる虚々実々の駆け引きで盛り上がり、あと少しというところでどんでん返しがあるなど、最後の最後まで大いに楽しめる。もともと読者を喜ばせる技術は折り紙つきだし、さすがは井上ひさし。
     あと、読んでいておおと思ったのは、対照的な河の雪解け二様を表す「武開」と「文開」。ほんとにこんな素敵な言葉があるのだろうか。それからなんといっても、長い黒髪を白ナプキンで包んだ可憐なソーニャ。ソーニャという美しい名前は、罪と罰を思い出すまでもなく、特別に心に響く。

  • 2012/05/17

    ★★★★★

    純粹地讓你想起你有多喜歡閱讀的一本書。因為作者惜逝,並沒有結局,但實在是一本很精彩的傑作。

    小松修吉被送到西伯利亞的看守所。他本來是社會主義者,在從事地下運動,被捕後後來去了中國東北四處工作(一面找尋叛徒M),在戰爭最後被徵兵,成為蘇聯的俘虜。他被送到看守所,後來有機會進入新聞社工作,但因為捏造入江軍醫的逃亡記,加上窩藏列寧的書信(其實是少數民族混血,並且宣稱要為少數民族盡力的書信),於是和政治部諸位將校斡旋,想藉此趁機要求參加東京大審回到日本。不過經過好幾次的機智戰鬥,最後信就飛到水中了…小松被送往北西伯利亞。

    這本書前三天:月曜日~水曜日都是精彩絕倫的傑作,讀起來實在讓人手不釋卷,筆鋒幽默,揮灑自如,對話寫得機智風趣,行雲流水。很厚實,很具娛樂性,但又讓你思考:國家、階級、主義、制度與人。好棒好棒的一本書。可惜後面稍微有些無力(或許也和作者的體力有關)。很感謝這本書讓我認識了一個這麼棒的作家!難得閱讀又有了意外的驚喜,又是一次令我激動滿心的相遇。

  • 愛する児玉 清さんのおすすめだったので読んだ。
    最初はその分厚さにおののいたが、読み出したら読みやすく、どんどん読めた。
    井上ひさしさんの(ほぼ)遺作だが、語り口が穏やかで、引き込まれる。

    「シベリアに抑留されたある日本人の一週間を描く」という表現が簡潔だが、主人公の人柄がいい。(同じシベリアネタでも、『不毛地帯』とは違う感じ)
    また周りに出てくる人々も個性的。
    レーニンの手紙や、脱走兵のエピソードなども面白く、どうなるのか気になったところで、最後は急にパタっとあっけなく結末を迎えた感じがしなくもないが。。。

  • 途中までは良かったんですが最後は呆気なく終わってしまった、そんな感じです。

  • 【読書】井上ひさしの遺作とも言える本。戦後、シベリアに抑留された日本人をめぐる小説であり、詳細にシベリア抑留について研究している長編小説。主人公小松修吉は、抑留者向けの日本新聞執筆に携わる中で、究極の国家機密である、レーニンの秘密を入手し、ソ連政府に対し一人立ち向かう。戦後の旧日本軍の複雑な状況、ソ連の国内民族問題等のフィクションの小説とは到底思えないほどの状況描写、いわゆる三重苦といわれる抑留者の心理描写、凄みのあるストーリー展開、本当に引き込まれる本であった。シベリアに抑留された方々の労苦を改めて感じる本。新宿の平和祈念展示資料館の見学とあわせて、ぜひともオススメしたい。

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著者プロフィール

(いのうえ・ひさし)
一九三四年山形県東置賜郡小松町(現・川西町)に生まれる。一九六四年、NHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を執筆(共作)。六九年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした『日本人のへそ』で演劇界デビュー。翌七〇年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー。以後、芝居と小説の両輪で数々の傑作を生み出した。小説に『手鎖心中』、『吉里吉里人』、主な戯曲に『藪原検校』、『化粧』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『父と暮せば』、『ムサシ』、〈東京裁判三部作〉(『夢の裂け目』、『夢の泪』、『夢の痴』)など。二〇一〇年四月九日、七五歳で死去。

「2023年 『芝居の面白さ、教えます 日本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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