累犯障害者

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 506
感想 : 90
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103029311

作品紹介・あらすじ

「これまで生きてきたなかで、ここが一番暮らしやすかった…」逮捕された元国会議員は、刑務所でそうつぶやく障害者の姿に衝撃を受けた。獄中での経験を胸に、「障害者が起こした事件」の現場を訪ね歩く著者は、「ろうあ者だけの暴力団」「親子で売春婦の知的障害者」「障害者一家による障害者の監禁致死事件」など、驚くべき事実を次々とあぶり出す。現代日本の「究極の不条理」を描く問題作。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったというよりは大変勉強になった。

    受刑者の三割弱が知的障害者と認定されるレベルという数に驚き、そこにつけ入る健常者の話を読み、犯罪を起こすというより、巻き込まれやすい現実がよくわかった。

    2006年刊行の本だし、主に身体に障害を持つ方の暮らしを支える立場の私としては障害者を取り巻く環境は少しずつ良くなっていると感じる。

    それが知的障害者や聴覚障害者の周りの環境も良くなっていることを望みたい。

    オススメです

  • 何度も犯罪を繰り返し刑務所に戻ってきてしまう人たち。障害者たちが暮らしにくい世間に問題があること、刑務所で再犯を防ぐような教育がなされていないこと、刑務所を出た後のサポートが不十分なことなど。知ることができてよかった。

  • 再読
    2012年5月31日レビュー

    強烈なのは、第三章・・・ 売春する知的障害女性の箇所だろう。知的障害の80%以上が軽度の知的障害者であり、一見見た目では判断できないのだとか。その子が同じ知的障害者と結婚し出産すると、軽度をはじめ中度または重度の知的障害者児童を産むことになる。そして負の連鎖がはじまる。彼らに周囲の助けがなければ職にもつけず犯罪に巻き込まれ、最後には刑務所が安住の地となるのである。刑務所にいる受刑者の3割の人が、知的障害者なのだという現実が哀しすぎる。
    ________________________

     聾学校の高等部を卒業しても9歳レベルの学力しか身につかないとある(P245参照)小学4年生程度の学力って・・・さらに驚くのは彼らは、健常者との関わりが希薄なため社会常識が著しく欠如してしまうことらしい。聾社会だけの独特の文化を彼らだけで共有している。聾者との意思疎通をはかる手話とは健常者のためのものであって、聾者同士の会話は手以外の動作が大きな役割をはたす。手話が出来る人でも聾者同士の会話の半分も理解できないという。再読して更に関心がます。

  • まさに、答えのない問題。
    書かれた当時と今では状況が改善している部分もあるだろうが、マスコミ報道のあり方とかはそこまで変わっていないような気がする。
    どの話も衝撃的だったが、とりわけ聴覚障害のある犯罪者の話は、いろいろ考えさせられるものがあった。

  • どうしようもなく気分が落ち込んでしまう
    目をそらせてはいけない事実だとはわかっているのですが…
    でも この現代という時代に生きている私たちこそ
    知っておかなくてはいけない事実でもある

    全てが「善」であるものは この世に存在しない
    全てが「悪」であるものも この世に存在しない

    私たちが 今 考えなくてはならないこと
    私たちが 今 意識しておかなくてはならないこと
    私たちは 今 こんな時代に生きているのだということを

  • 五体不満足だのリアルだの読む前に
    こっちを読んだ方が100倍いい。

    福祉というセーフティネットから漏れた
    障害者たちの行き着く先。

    ヤクザに飼われるろうあ者(耳と口が不自由な人)、
    売春にしか生きがいを感じられない知的障害者、
    障害者だけの暴力団、ろうあ者同士の不倫殺人…

    マスコミが絶対報道しない、日本社会の暗部。
    障害者とは、人権とは、そもそも人間とは。

    作者の視点には異論と疑問が残るものの、
    歴史に残る屈指のノンフィクションルポ。

    知らずに生きるか、知って悩むか。
    見つめて進む勇気はあるか。

  • 【きっかけ】
    社会派ブロガーちきりんさんのVoicyで、軽度知的障害のある成人が、犯罪に巻き込まれやすいという事実について解説していた際に紹介されていて、気になっていた本。

    【感想】
    障害者が犯罪の加害者になることについて、なぜ起こるか、起こった後どんな経過をたどるのか、個別性はもちろんではあるが、社会の構造的な背景についても、日本で現実に起こっていることを述べている。著者自身が刑務所で服役を経験したと当事者でもあり、刑務所の内と外から見えることとその考察が非常に深い。
    重苦しい内容といえばそうだが、文体が読みやすく、割とすぐに読めた。
    刑務所では、障害の有無にかかわらず、同じ建物で過ごすらしい。障害の特性・程度も考慮されない。社会復帰にむけた更生をめざす施設であるはずが、療養・介護・社会的入院的な施設になっている現状がある。刑務所に入るときも出た後も、しかるべき福祉的な支援につながっていない現実がある。これについては、医療で病院から在宅に帰るときの「退院前カンファレンス」のように、「出所前カンファレンス」を設けたらよいのではないかと思うが、その人材もカネもつかない(社会の優先事項として扱われない)のだろう。刑務所が福祉の要素まで担うのは限界がある。警察・裁判所・司法・福祉がうまく連携できないものだろうか。
    昔、聾学校では、口話主義の教育が行われ、卒業時に学力が身についていない、学校教育を受けてもなお「知的に低い」という人がうまれてしまっていた過去の事実にびっくりした。

  • 文章がうまい。毎晩寝る前に読み進めていたが、寝る前に読むにはあまりに合わない本だった。障害者の起こした事件は報道されない。

  • よかった。次のネタか?
    @@@
     この国の司法はいま、彼ら知的障害者の内面を伺う術(すべ)を持ち合わせていない。結果的に彼らは、反省なき人間として社会から排除され、行き着く果てが刑務所となる。こうした現実に、社会はどう向き合えばいいのだろうか。山口被告のような人間は、社会の中でどう生きればいいのか。また社会は、彼のような存在をどう受け入れればいいのか。
    @@@

  • 無知は罪である。
    レッサーパンダ帽の男、
    確かに捕まるまでのメディアの過熱ぶりは覚えてるけど
    犯人がどんな人でどうして捕まったから知らなかった。
    難しい。
    私の元彼のお兄さんも後天的知的障害者、
    身近にもダウンの子がいる。
    わからないだけで、道筋が変わってしまうのはとても辛い。
    服役中に母親が亡くなって、
    それがわからずに元家に入って住居侵入罪に問われた四十代男性、
    おかーたーん
    という泣き声が辛い。

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著者プロフィール

1962年生まれ、元衆議院議員。2000年に秘書給与詐取事件で逮捕、実刑判決を受け栃木県黒羽刑務所に服役。刑務所内での体験をもとに『獄窓記』(ポプラ社)、『累犯障害者』(新潮社)を著し、障害を持つ入所者の問題を社会に提起。NPO法人ライフサポートネットワーク理事長として現在も出所者の就労支援、講演などによる啓発に取り組む。2012年に『覚醒』(上下、光文社)で作家デビュー。近刊に『エンディングノート』(光文社)。

「2018年 『刑務所しか居場所がない人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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