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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784103030089
感想・レビュー・書評
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<写楽=豊国説の妄言>
娘が大学の卒論で浮世絵を取り上げだので、その影響で何冊か浮世絵の本を読み、主要な浮世絵については、美術館や図版で見て自然と頭に叩き込まれた。
その上で、梅原日本学の実践を、つまり、梅原日本学を江戸文化にどのように展開するのかを楽しみにして読んだ。
しかし、梅原特有の粘り強い推理力は、今回は、残念、大不発であった。
写楽を当時の最大のライバル豊国に比定していくのだ。
そのスタートラインは名前の解明。
そして、時代背景から類推した状況証拠の提示。
更に、浮世絵の類似性。
確かにこれだけよく似た構図で、同時期に浮世絵を発表するというのは不思議ではある。
しかし、納得し難いのは、二人の浮世絵の与える印象の決定的な差異だ。
写楽の役者絵が持つのは、圧倒的な迫力と驚異のデフォルメーションだ。
それが、写楽の浮世絵を現代においても「モダーン」に感じさせる。
だが、その迫力とデフォルメーシャンは、豊国の作品のどこにも見当たらない。
写楽は人気作家豊国の構図を真似たかもしれない。
しかし、同じ構図であっても、写楽は豊国を超える自信があったに違いない。
写楽の絵のユニークさは、どの浮世絵にも見られないものだ。
そこが写楽の魅力であり、写楽の謎でもある。
「洒落臭い」なぞというふざけたペンネームで浮世絵に革命を起こして、さっさと居なくなる。
写楽の活動期間はたった一年なのだ。
たった一年で消えた写楽のことを大田南畝は、「真を写さんとして、すたる」とコメントしているが、この言が核心を突き、この言に全てが尽くされているのではないか。
結論は納得してし難い。
しかし、浮世絵の入門書としては活用できる。
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母が前に読み、写楽論はこれで決定だろう!と勧められました。図書館で借りて読みました。
口絵が豪華で、見ていて思ったのは確かに版を起こす人、版木を彫る人、刷る人の腕によっていかようにでも出来は違ってくるんだろうなあ、と思いました。総合芸術なんですね、浮世絵って。
個人的には鳥居清長の美人画が好きなのですが浮世絵と一口に言っても色々あるんだな、と思いました。
なぞ解きは確かにワクワクします。
梅原先生の論でいくところの写楽とその実在人物の二人の線を重ねてみると殆どブレが無いこと。雲母刷りなんてお金のかかる刷り方を全くの無名の新人にあれだけの量を作らせるか?などとの質問と答えにまったくもってなるほど、なるほどと思いながら読みました。
面白かったです。
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