苦役列車

著者 :
  • 新潮社
3.24
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レビュー : 523
  • Amazon.co.jp ・本 (147ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103032328

作品紹介・あらすじ

友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている十九歳の貫太。或る日彼の生活に変化が訪れたが…。こんな生活とも云えぬような生活は、一体いつまで続くのであろうか-。昭和の終わりの青春に渦巻く孤独と窮乏、労働と因業を渾身の筆で描き尽くす表題作と「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を収録。第144回芥川賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 診察の待ち時間対策に図書館で借りて読んでみました。
    文体も平易ではないけどするするっと読みやすいし
    19歳の若干自意識過剰の心理描写もまぁまぁわかり易かったです。ただこれ映画になったらしいですが心理描写で勝負してるこういう作品って映像化するってどうなのって思いました。つまんなくなっちゃうような。

  •  2011年の第144回芥川賞は二人の対照的な著者に送られた。一人は慶應義塾大学院で近世歌舞伎を専攻し、詩人を父にもち、親戚に政治家などもいてお嬢様とも言える朝吹真理子。そしてもう一人が本書の著者の西村賢太だ。著者の経歴は異色という言葉では言い表せないほどトンデモナイ。

     父が強盗強姦事件を起こして逮捕されたと知り、中学校を不登校になり、成績が悪いため、高校は全寮制のところにしか行けなかったが、寮を嫌がり進学をしなかった。その後家を出て、安アパートを転々としながら、家賃滞納と強制退去を繰り返した。この間は、港湾荷役や酒屋の小僧、警備員などの肉体労働で生計を立てていた。また酔った勢いで暴力をふるい逮捕経験もある。

     劣等感とやり場のない怒りを溜め、港湾の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の徒事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる傍観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。解説・石原慎太郎
    裏表紙より印刷

     芥川賞の選考委員の一人である東京都知事の石原慎太郎の評価が本書はとても高かった。
     小説の真価はたとえその、一部、そのフラグメントであろうと読む物が己の人生のある部分を照射され作品と重ねさせられる密かな響きにある。
    と解説で述べている。
     
     著者の人生のようないわゆる最悪な人生は誰もが恐怖を抱くが、そんな人生の底辺を隠すことなく、私小説の世界でさらけ出していることに読者は魅力を感じるのかもしれない。「こんなの小説の世界だけだよ」ってよく言うが、私小説だけにリアリティがあり、読んでいて響くものがあると感じた。読んでいて楽しい本ではないかもしれないが、一人の人間の「裸」を覗ける面白い本である。

  • ☆は4つ。 たとい芥川賞受賞作でも☆5つはちぃーとむづかしいのであった。

    著者西村賢太19歳の頃の出来事を『曩日北町貫多の一日は・・・』という書き出しで綴り始めている。こういうとってもむづかしい、というかその昔は文語体としてのみ使っていた言葉をあちこちに散りばめて西村賢太の私小説は造られている。

    のっけからそのようなむづかしい言葉が出てくると、読者はついと辞書をひいてしまうのであった。まあ、今時はPC/スマホとNETの時代なので、ぐぐる、というのが正しいのですかね。(で、曩日・・の意味は、自分で調べてくださいませね)

    文中、自分のことをさして「根がスタイリストにできているから」という表現をしばしば使っている。この言葉をカッコイイと言う読者もおられる様子だけれど、わたしはあんまし好きではない。スタイリストという言葉は、他人のスタイルを造る人のことであって、西村賢太の様に、実は自分はおしゃれなんだぜ、というような意味に使うことは、まあ現時点では間違っていると思う。でも、言葉は生きていてどんどん変わっていくので、この「根がスタイリストにできているから」というのもそのうち正当な日本語としての市民権を得てしまうかもしれんね。

    一方で非常に読むのに耐えない内容を、すらすらと書き綴って読み手の基を引いている。あからさまな性描写や暴力行為の描写、あるいはとんでもなくひどいレベルの罵詈雑言。この書き方は、西村賢太の最近著『一小説書きの日乗』を読むと、これはおもいきり意図的に計算づくで行われている作業なのだなぁと言う事が解る。

    わかっても別にどうだというのではなく、そこが面白いからでの塵芥賞なのだと思うしそれでいいのだ。 すまんこってす。すごすご。

  • 面白い!生命力溢れる、だけどどうしようもなく落ちぶれた青春物語。出だしも最後の一段落も最高、なによりタイトルのセンスが素晴らしすぎる…

    たぶん多くの人が「面白くない」と感想をネットで書き散らしていると思いますが構うもんか、面白いもんは面白い。70年代のギャグマンガみたい。あと文壇での名誉に対する執念と未練が、同じ文弱青年として泣かせるんですよ。

  • 怠惰で卑屈で自意識過剰、心根の明るさもない主人公。でも100%憐れみきれない自分の感情に戸惑う。共感まではいかないけれど。文章力が高く非常に読みやすい。この著者でなければ薄汚いだけの小説になってしまったかも。読後感が悪くないのは「いずれ芥川賞作家になる」著者と主人公を重ね合わせて読んでしまうからかも知れません。

  • 私小説かくあるべき。同時に、私小説とはジャンル自体がやはり明治のにおいを色濃く残しているなあと。

  • 苦しい気分で読み進めた、
    小説でしたけれど、
    最後の3行で、
    広い場所に出た爽快感と、
    開放感がありました。
    小説というのは、
    最後の最後まで読まないと、
    わかんないものですね。
    最後の3行は、
    なんだろう、
    凄いと思います。
    僕にとっては、映画でいう、
    どんでん返しみたいな、ラストで感動しました。

  • ・読後大変なダメージを受けた。どれだけの読者が貫多側で読むのかわからないけど、完璧に貫多側で読んだ。ひたすら主人公の情けなさをさらけ出し続ける私小説。
    ・自分も高卒で30超えた今でも何もしないくせにコンプレックスばかり膨れ上がっているのでわかり過ぎて痛かった。それなのに、この貫多よりはマシだと少し考えてる自分もいてそれも痛すぎる。
    ・内容は異なるけど、肥大し過ぎた自尊心を描いた山月記に近い読後。ダメージは遥かにそれ以上。
    ・親が性犯罪者だったり夜逃げしたりにはあんまり興味は無いんだよな。それが無くても主人公のねじ曲がった人格だけで十分なんだけど、言い訳じみたそれを臆面無く書かずにいられないさらけ出しっぷりにも色々感じた。

  • 芥川賞の受賞会見での受け答えがユニークだったので、相当期待して、この本を手に取った。あっという間に、読み終わる。ぐいぐいページをめくらせる。

    なぜか? 

    独特の言葉のリズム、言い回しもさることながら、主人公・北町貫太のキャラの立ちっぷり。「私小説」と帯に書かれてはいるが、まさか、これが実話なわけないだろうと思いながら、読み進めた。読み終わって、ネットで作者の来歴を調べる。どうやら実話らしい。素直に驚きだ。

    そして多分、作者・西村さんは、いろんな人からの賛辞を基本的に拒否するんじゃねえかなあと感じる。特に、私なんかダメだろうなあと。会ってみたいという想いと、拒否られるだろうなあというところで、多少揺れた。近いうちに会える気もするけど、そのときに備えて、ほかの作品も読んでみたい。

    貫太の語りに、飽きるかもしれない。それでも飽きるまで、とことん付き合ってみたいと思わせる作家。同時収録「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」も秀逸じゃないか。まるで安吾みたいだ。だけど西村さんには、安吾にある甘えが感じられない。

    久しぶりに、芥川賞作品で読むに値するものを読んだ。

  • 漫画「デトロイト・メタル・シティ」に通ずるものを感じた。リア充爆発しろ的な。
    主人公はロクデナシだけど嫌いになれず。かといって好きにもなれず。
    読後は薄ら寒い寂寥感、諦念、虚しさが残りつつもどこかサッパリとしており不思議な感じ。

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著者プロフィール

1967年7月、東京都江戸川区生まれ。中卒。
2007年『暗渠の宿』で野間文芸新人賞を、2011年「苦役列車」で芥川賞受賞。刊行準備中の『藤澤清造全集』を個人編輯。文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』を監修。
著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『廃疾かかえて』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『小説にすがりつきたい夜もある』『一私小説書きの日乗』『東京者がたり』『棺に跨がる』『無銭横町』『形影相弔・歪んだ忌日』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』などがる。

「2018年 『夢魔去りぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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