寒灯

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 198
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103032335

作品紹介・あらすじ

「ぼく、おまえをずっと大切にするから、今後ともひとつよろしく頼むよ」待望の恋人との同棲生活の始まり。仲睦まじく二人で迎える初めての正月に貫多の期待は高まるが、些細な事柄に癇の虫を刺激され、ついには暴言を吐いてしまう。二人の新生活にあやうく垂れ込める暗雲の行方は-。

感想・レビュー・書評

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  • 所謂「秋恵」もの4つ。
    どれを切っても面白いんだけど、金太郎飴みたいな感じ。
    作家になって以降の小説がほとんどないから、今ものすごいお金が入ってその後のこととかを読んでみたい。

    「陰雲晴れぬ」
    引っ越し、管理人とのトラブル。

    「肩先に花の香りを残す人」
    整髪料。

    「寒灯」
    正月。

    「腐泥の果実」
    作家になってから、「秋恵」との生活を振り返る。
    皮のペン置き。

  •  いつも通りの短編集。芥川賞受賞後初の短編集らしいが、受賞前と何が違うのか、あるいは何かが違っているのかは知らない。

     個人的にもっとも面白かったのは「腐泥の果実」。木枯しの吹く寒い日、主人公北町貫多は文具店で以前交際していた女性が誕生日にプレゼントしてくれたものと同じペン皿が売られているのを見つける。自身が犯した過ちを悔いるとともに思い出の世界に没入するが・・・そんな話。

     秋恵に未練は無いと前半で言っておきながら終盤で「今もただ一人の女性」と認めてしまうところは安定の面白さ。しかもどうしょもないオチまで付いている。

     ただ、大切な恋人を失ったと言うより、心の寂しさを埋めてくれるピースを無くしてしまった・・・という感じの印象を受けるのは何故だろう。
     甘えさせてくれる対象を求めるマザコン、とも違う気がする。ボロボロの家に入り込む隙間風から必死で身を守ろうとしているような・・・

     こんなモノを読んでしまっては、誰かに好意を抱くたびに「それは愛情なんかじゃなくて自分の空虚・寂しさを埋めようとしてるだけなんじゃないの?」と自分に問いかけたくなってしまう。余計なことは考え過ぎない方が幸せになれるだろうに。

  • めんどくさい女子って話はよく聞くけど、本作はほんっとめんどくさい男子が出てくる。その男貫多の夢の同棲生活、相手とのやりとり、全体的にレトロ感ただようのに、なぜか新しいおもしろみがあるのは、さすが平成の四畳半小説家のなせる技か。

  •  芥川賞受賞第1作となった表題作を含む最新短編集。収録作4編はいずれも例の「秋恵シリーズ」――同棲していた女性との暮らしに材をとったもの――である。

     そのうち3編はこれまで同様、主人公(作者の分身)がささいなことで秋恵に対してブチキレ、暴言を吐いたり暴力をふるったりして修羅場となるストーリー。

     なじみの読者から見ると、主人公がブチキレる瞬間がクライマックスで、そこに至るまでのじわじわと進む盛り上がりが、ジェットコースターがゆっくり坂をのぼるプロセスのように思える。

     西村の高い筆力ゆえ、他愛ない話でもそれなりに読ませるが、さすがにもう飽きた。
     くだんの女性と暮らした期間は1年余だそうだし、たったそれだけの生活でたくさんの短編が書けたのだから、もういいんじゃないのと言いたくなる。おいしいネタから先に小説化しているだろうから、だんだん出がらしみたいになってきたし。

     残りの1編――最後に収録された「腐泥の果実」では、現在の西村(作中では北町貫多)が秋恵との同棲生活を思い出す未練たらたらの姿が描かれる。文中に秋恵への「惜別の辞」めいた言葉がちりばめられており、「お、もしかしてこれで秋恵シリーズは打ち止めかな?」と思わせる。

     まあ、あとは秋恵が他の男のもとに走って西村を捨てる“クライマックス”が書かれずに残っているけれど……。

     それにしても、秋恵シリーズを読むたびに思うことだが、秋恵という人はなんとよくできた女性であることか。こんな身勝手なサイテー男を相手に、よくまあ1年以上もガマンしたものである。
     秋恵は東北出身だと作中に書かれているが、東北女性の美点を一身に体現したような女性だと思う。

     こんなサイテー男のサイテーな行状を書きつらねた小説が面白いのだから、文学ってつくづく不思議だ。

  • もう秋恵ものは辛くて読めぬ。

  • 秋恵シリーズの4作からなる短編集。
    秋恵ものは同じワンパターンでも気分良く読めないからあんまり面白くない。

  • 芥川賞を授賞した西村賢太氏が受賞後に最初に発表した作品「寒灯」を読了。彼の授賞前の私小説にも出て来た貫多と秋恵の同棲生活を描いた短編を集めた作品だ。糊口を凌ぐすべとしてかける物が自身の赤裸々な過去だったのだろうが、読者としては他人の生活をのぞいてしまっている気まずさみたいのが読み始めてからずっとありあまり気持ちよい読後感はなかった。まあ本当に簡単に読めるという意味では軽い物を読みたい人にはいいかもしれないが、先に書いたが他人の恋愛での失敗模様を読みたいかどうかで購入を決めた方がいいかも。そんな最近ではめずらしい私小説を読むのに選んだBGMは

  • 資料ID:21302253
    請求記号:913.6||N

  • 北村貫多と秋恵の夫婦喧嘩を克明に記載していることに驚嘆した.これらの喧嘩を演じた作者の記憶力も大したものだが、かなりのドメスティックバイオレンスだな.表題作の暮れの出来事、帰省や年越しそばの話しが面白い.

  • 著者お得意の「秋恵と貫多」シリーズが4話。空気を読めない秋恵のちょっとした無神経っぷりが空回りし、貫多の怒りは段階を経て沸点に達する。そして、爆発。しかし、すぐに後悔する貫多。そして土下座謝罪。

    基本的にどの短編もこの流れ。安定感のある西村作品の王道だ。マンネリなんだけど、純文学を思わせる芸術性のあるタイトルと中身のギャップ、そして、貫多が沸点にたどり着くプロセスが抜群におもしろい。

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著者プロフィール

1967(昭和42)年7月12日、東京都江戸川区生まれ。中卒。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂、解題。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『暗渠の宿』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『一私小説書きの日乗』(既刊六冊)『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自薦短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集 一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』などがある。

「2019年 『狼の吐息/愛憎一念 藤澤清造 負の小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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