歪んだ忌日

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 130
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103032359

作品紹介・あらすじ

芥川賞受賞作『苦役列車』の主人公・貫多が抱く身内への思い、憤懣と怨念。同棲する女に怒罵と暴言を浴びせかける貫多。人生の先行きに不安と畏れを抱く15歳の貫多。没交渉だった母親からの手紙に心揺らされる貫多。大切な師の〈淸造忌〉を陰鬱な気持ちで挙行する貫多。出ていった女への後悔と幻影に涙滲ませる貫多。43歳で芥川賞を受賞した故の悩ましき日々と、不穏な苛立ちを炙り出す私小説六篇。

感想・レビュー・書評

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  •  6編を収録した最新短篇集。とはいえ、そのうち半分はほとんど掌編に近いので、あっという間に読み終わってしまう。ページ数も140ページほど。

     中身も、西村賢太にしては総じて薄味だ。
     6編とも、骨子だけを取り出してみればすごく面白そうなのに、思ったより盛り上がらない。たとえば――。

     「感傷凌轢(りょうれき)」は、長年音信不通だった母親から北町寛多に手紙が届く(報道で芥川賞受賞を知ったという)ところから始まるもの。そこからのドラマティックな展開を予想させながら、けっきょく寛多の手紙に対する思いだけを描いて尻切れトンボに終わってしまう。

     「膣の復讐」(かつての「腋臭風呂」に匹敵する下品タイトル)は、秋恵が出て行ったあとの小さな一挿話を描いたもの。読者がいちばん読みたい秋恵との修羅場は描かれず、寛多が腹いせに買春に出かける顛末が描かれるのみ。
     本チャンの修羅場は別の短編で描くつもりなのだろうが、これではまるで、目的地周辺まで来た車が周辺をぐるぐる回っているようなもの。慊(あきたりな)いったらない。

     それなりに楽しめる1冊ではあるが、西村がちょっと「守りに入っている」というか、力を出し惜しみしている印象だ。「いま持っている力を全部注ぎ込んだ」という迫力みなぎる短篇集が、そろそろ読みたいところ。

  • 芥川賞受賞後の状況変化を描いた作品が大部分を占める。
    印象に残ったのは「感傷凌轢」。
    20年来音信不通だった母親からの便りにざわめく心境を綴る。毒づきながらも「(三百万までだな)」との具体的な金額の提示は手紙に「すべてを取り寄せてもらったのです。」と書いて寄こした母へのメッセージと受け取った。
    ところで、“三百万円”という金額で思い出すのは秋恵の実家からの借金のこと。こちらは返済したのだろうか。

  • この本は芥川賞もの、秋恵もの、母親もの、藤澤清造ものと多彩だ。秋恵ものは最後の別れのエピソードであり完結編だ。芥川賞をとってガラリと変わるかと思いきや、そうでもなかったり、生き別れた母親への複雑な感情や、師匠である清造への想いが伝わる小説で、いずれも人間の心を実によく描写している。著者ならではの世界観だが、もうそろそろこの手のテーマだけで小説を書くのも困難な気がする。それを跳ね除けて、ここを更に深化させることが出来るのだろうか。西村氏なら出来る気がする。

  • おもろい。笑った。

  • 西村賢太作品8作目を読み終えた。相変わらず読後の胸糞悪さは残るが、なんだろ、今になって不思議と貫多に変な愛着みたいなものがわき始めている。

  • 私小説。

    藤澤清造への思い。お金を払うことのない心の通いあった久々の恋愛からの同棲の結末。

    音信不通だった母からの突然の手紙。若かりし頃、親にお金をせびることと不純なことで頭がいっぱいだった短絡的な日々。
    芥川賞受賞後の、尊敬する藤澤氏の命日を邪魔されることへの恐れを不快感。

    苦役列車の続きみたいな感じ。ま、私小説だからw

    貫多は根は〜〜みたいなくだりが多すぎるw
    p26〜短期で粗暴、下品で酒好き、女陰好き。それに加えて邪推癖があり猜疑心も強く、小心で人見知りで弱い物苛めを好み、ケチで不潔でつけあがり体質、〜とか笑ったw

    読んでいるだけだから単にうけるだけだけど、実際にこんな人いやだw)^o^(

  • 正直かなり苦手な記述もあったんだけど,止める気にならず読み進めることになったのは,良い・巧い本だからなのかなと思う。

  • 一気に読み切った。
    『棺に跨がる』の秋恵ものの連作に比べ、少年期、秋恵もの、家族、藤澤清造など、短編のテーマがややばらつき、一作一作の印象が薄まり、寄せ集め的な短編集になった印象は否めない。
    だが、どれも読み応えがある作品だった。
    特に秋恵ものを書かせると、この作家は冴える。
    「膣の復讐」は何とも言えない男の悲しみがあって、胸に堪える作品だ。

  • 相変わらず、浸っていたい文体リズム。まだ、読める。材が尽きようとも。

  • にわか藤澤清三ブームについての腹立たしさ。
    描き方がうまかった。

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著者プロフィール

1967(昭和42)年7月12日、東京都江戸川区生まれ。中卒。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂、解題。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『暗渠の宿』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『一私小説書きの日乗』(既刊六冊)『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自薦短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集 一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』などがある。

「2019年 『狼の吐息/愛憎一念 藤澤清造 負の小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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