花宵道中

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103038313

作品紹介・あらすじ

吉原の遊女・朝霧は、特別に美しくはないけれど、持ち前の愛嬌と身体の"ある特徴"のおかげでそこそこの人気者。決して幸せではないがさしたる不幸もなく、あと数年で年季を終えて吉原を出て行くはずだった。その男に出会うまでは…生まれて初めて男を愛した朝霧の悲恋を描く受賞作ほか、遊女たちの叶わぬ恋を綴った官能純愛絵巻。第5回R‐18文学賞大賞&読者賞ダブル受賞の大型新人が放つ、驚愕のデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 「男に惚れる事は死へと向かう事
    意地でも死んでなるものか、死んでも惚れてなるのもか…。」
    「目を瞑って、愛しい人を胸に思って、他の男に抱かれるんだ…。」

    江戸末期の新吉原遊郭にある「山田屋」という
    小見世を舞台に綴られた5編の連作短編集。

    ●『花宵道中』
     遊女朝霧は深川八幡様に行った折、半次郎と出会い恋をしてしまう。
     偶然顔を合わせたのは馴染み客・吉田屋藤衛門の宴席だった。
     初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧…。

    ●『薄羽蜉蝣』
     初見世を控えた茜には、密かに想いを寄せる男がいた。
     角海老楼の売れっ妓・水連の間男だった…。

    ●『青花牡丹』
     島原遊郭の大見世の番付女郎・霧里。
     大見世の看板女郎・菫のお客を取った事が原因で吉原に追放されてしまう…。

    ●『十六夜時雨』
    ●『雪紐観音』


    それぞれ、主人公は異なりますが、読み進むにつれ
    各主人公達の関係性がどんどん繋がっていき、
    交錯していくので物語に深みが増していきます。

    冒頭の季節外れの彼岸花のように寝巻を真っ赤に染めて死んだ
    朝霧の姉女郎が誰だったのか…。
    阿部屋の半次郎がどうして吉田屋藤衛門を殺さなければならなかったのか。
    登場人物達の関係が、次第に紐解かれていく構成は、とても面白かった。

    愛する男の前で辱められてしまう朝霧の哀しみ
    そして、朝霧は死んだ男の後を追っておはぐろどぶに身を投げた…。
    水連は、愛する男と共に生きる事を選び地の果てまでよと足抜けし…。
    三津は、ずっと隠してた罪を打ち明けて病で死んだ…。
    そんな三人を思い
    八津は「あたしは此処で生きて行く」輝くような一言だった。

    貧しさ故に親に売られたり、女故に攫われて売られる。
    彼女達のあまりに過酷で切ないエピソードに心が痛みました。
    でも、儚く残酷な運命の中でそれぞれが自分の道に
    花を咲かせ…そして散っていった。
    遊女の悲哀・生き様、女性の弱さと強さを切り取り鮮やかに描いています。
    でも、とにかく切ないです。

  •  時代小説は苦手で、ほとんど読んだことがない。この作品ははじめて心に残る時代小説になった。
     とにかく切ない。
     自分の存在しなかった時代のことをこうも見てきたように描けるものかと思う。
     これが彼女のデビュー作。うますぎる。

  • 最近のマイブームが時代小説で色々読みあさっているが、これはまた今まで読んでた時代物とは色の違うもの。
    R18文学ってものがあるんですね。
    官能的と書いてある通り性描写はかなり容赦ない。
    でもそれがイヤラシイかって言うとイヤラシクない。

    哀しくて切なくて美しい遊女達の素敵な作品でした。

  • 江戸吉原の小見世「山田屋」を舞台にした連作短編。
    「目を瞑って、愛しい人を思って、他の男に抱かれるんだ」
    毎日を精一杯に生きる遊女達の、情や業の深さと芯の強さに胸を抉られる。
    見世にとって遊女は単なる「商品」と見なされる。
    けれど単なる「商品」では終わらせない彼女達の、粋で凛と気高い生きざまにざわざわと心が揺さぶられる。
    そして短編が進むにつれ明らかになる女達の真相に切なすぎて泣けてくる。

    生きることは困難で、生き抜くことはもっと険しい。
    それでも吉原で生きていく覚悟を決めた女達の強さに感動した。
    「女による女のためのR-18文学賞」にとても相応しい作品だと思った。
    宮木さんの作品をもっと読んでみたい。

  • R-18文学賞のことは耳にしていたけれど
    この作品が受賞作とは知らなかった。

    今回読んでみて感じたことは、
    性描写云々よりも、とにかく哀しい。
    そして、この作者さんは文章でもって
    色鮮やかな世界を紡げる人だということ。

    読み続けていくうちに、登場人物達の関連が分かってきて、「ああ!」と納得した。
    因果だ。そしてやはり、哀しい。

  • はわわわ…!大満足でした。
    緑ちゃんの章まで一気読み。
    くすぶる熱に溢れる想い。
    足枷となる己の身分…。
    み、満たされました。
    幸せな結末でない。そこに思いっきり揺さぶられました。
    みんな幸せにしたげたい…。



    ↓以下ネタバレ

    朝霧・半次郎夫婦
    ラブストーリーは突然に。的展開で熱が一気に沸き立ったと思ったら不穏な流れに一気に熱が冷めて胸中でやめてやめてやめたげてよおお!!!連呼。
    初っ端から大きな恋(クライマックス)が終わってしまって次章から(自分が読み切れるか)不安になる。(勿論いらぬ心配だった)

    霧里東雲姉弟
    遠く生き別れた二人を繋ぎとめた朝霧の中に生きる霧里の魂。自分の手で好いた女の笑顔を守ってみせると決意した半次郎。
    『数年後に訪れるであろう細々と幸せな日々』に泣いた半次郎に私が泣いた。見たかった。
    あんたたちの幸せを…。
    嗚呼純愛。悶絶。ぱたり


    八津三弥吉夫婦
    三弥吉のイケメンぷりに翻弄(私が)。普段それほどまでの激情を内に秘めていたんか…。な本番にジタンバタン。まぢやってくれるなカリスマ髪結師。この調子でどうか八津ちゃんの年季明けまでお見合いスルーしまくって下さい。


    桂山さん
    一生ついてイキヤッス!


    三津緑
    まさかの緑ちゃん登場の百合展開…。抜かりない…。


    弥吉
    ロリコン疑惑が最後まで拭えないまま迷宮入り。多分純粋にいい人……なのだろうか。(悶々)

    はぁ素敵だった。

    渡辺多恵子さんの風光る(特に山南さんと明里さん辺り)を読んでから花魁のお話読みたいなぁと思ってたら、ダ・ヴィンチの女性向け官能小説で紹介されててこれだと思い借りてきました。(そうか…官能小説なのか…)

    多分何回読んでもときめきは失せないだろう作品。漫画も宮木さんの他作品も読んでみたいです。

  • ホラ・・・、今、花街ネタってちょっと、興味がありますやん・・・(某乙女ゲームの影響で)。

    そもそもは、この本を原作にした映画を安 達 祐 実氏が主演するっていうのを聞いて、
    「あ、ちょっと観たいかも」
    と、思ったのよね・・・。もう数年前の話やけれども。

    安 達 祐 実氏はわりと好きで(演技が)、テレビ版の「大奥」に(和宮役で)出てたときなんか、
    「あんな童顔なのに、あんな芯のしっかりして、なおかつ可憐な感じになるのか・・・」
    と、かなり惹かれたのよね・・・。

    あの幼い感じが、いかのも箱入りな和宮にピッタリやったのかもしれへんけど、そのときの大奥は二部構成で、その前は菅 野 美 穂氏がやっていたのけど(篤子役のほう・・・。綱吉ではなくて・・・)、あの菅 野 美 穂氏との差もすごかったんだよねえ~。

    さすが、北島マヤを演じた人・・・(笑)!

    おっとそれまくり。
    で、そんな安 達 祐 実氏が、今度は太夫あたりを演じるのかーと、若干興味をひかれたんやけど、いかんせんR15。
    R15の映画なんて、ごめん、よう見れない。@40才

    ちゅうことでしばらく忘れていたんやけど、さらに数年前、数年ぶりに古本屋へ行ったらこの本が売られていて
    「あっ」
    と、手にしてんけどねー・・・。

    ぱらぱらっと見て、
    「イヤイヤ、たぶんまだ私には早い」@40才
    と、また棚に戻したわけやけど、今回、図書館で借りて読むハコビとなりました・・・。

    (長っ)


    きっかけは、ツイッターかブログでお友だちの会話を目撃してやと思う。笑
    (なんせ、本を読む話にはものすごいいきおいでくいつくので・・・)

    おふたりがこの本について話してられたのを見て、
    「うお、私も読んでみたい」
    と、思ったのでした。前々から気になってる本やし、きっと読むなら今なんやろうな! とか。


    元々私は官能小説というのはほぼ手にせえへんねんね・・・。

    まあ、見ての通り基本ライトノベルばっかり読むし、作中でちょっとしたイチャイチャに
    「うわあああ―――!!」
    と、もえたりもするんやけど、私がもえマックスなレベルって、最近なら「いい加減な夜食」程度。

    (どこにイチャイチャがありました? 程度の)

    だからこそ、この本を読むのに数年かかってるんやけど、官能小説というのは(あ、男性向けはハナから視野に入れてませんスイマセン)、コトに至る過程どころかコト最中の描写をするという「官能」よりも、コトに至るほどむき出しになる「本能」を描写するものやと思うのね・・・。

    (わかりにくい・・・)

    ようは、コトに至るなんて本能のみで成り立ってるでしょう。
    そこを堂々とさらけ出せるほどの、なんやろう、勇気というか吹っ切れ具合というか、私にはそういうのが皆無なんだよね。

    こんなけアレコレ文章に書きたがるくせに、本能をさらけ出せるかというと、それがなかなか出せない。
    それってきっと、スキーでスピードを出せるとか、大きな声で歌を歌うとか、なにか自分の一面を切り崩す代わりに新しい世界を見る、みたいな、そういうスリルと向き合えるかどうかっちゅうかなんちゅうか誰か助けてまとまらんわ(笑)。

    まあそういうわけで、もっとこう、キレイゴトだけを並べたような作風が好きなのでライトノベルばっかり読むわけやね。
    官能小説というのは、(特に女性の)一番芯の部分を掘り起こすものなんやと思うわ。


    たまには、いい・・・。
    たまには、よかった・・・。
    さすが、「本能」だけあって、読み始めたらとにかく先へ先へとページをくっていっちゃって、イッキ読み。
    ほんで、たくさんの女性が登場したうちで一番グッときたのが八津でした(一番、「本能」に従えない子やと思う)。

    著者の別タイトルも読んでみようかなあ・・・。

    (2016.07.09)

  • 図書館より。
    マンガが気になって先に原作を読んでしまった。
    もの哀しい。
    本当は☆☆☆☆でもいいんだが、やっぱり哀しい読了感。
    最近、この手の哀しい本は避けていたからか。
    なんだか切なくなる。

  • どんな男に抱かれても、心が疼いたことはない。誰かに惚れる弱さなど、とっくに捨てた筈だった。あの日、あんたに逢うまでは――。
    初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑…儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。
    江戸末期の新吉原を舞台に綴られる、官能純愛絵巻。R‐18文学賞受賞作。

    艶っぽく、丁寧で情緒に溢れた美しい文章。そしてこの何とも粋な相関関係。
    うっとりとため息をついてしまう程こんなにも雅やかな小説は初めてです。気付けばいつの間にか、華やかで物悲しい江戸吉原の世界にぐいぐいと引き込まれていました。
    遊廓という場所で遊女としてありながら、叶わぬ恋をしてしまう女たち。淫靡で、繊細で、無常で……豪華絢爛な衣で隠した心は何を叫ぶのか。
    過酷な人生を必死に生き抜こうとする彼女たちの強さと、淡く切ない恋心に胸が締め付けられます。

    とにかく素敵。読み終えてしまうのがもったいなく、「ずっとこの世界に浸っていたい」と思わせてくれる麻薬的な魅力がありました。
    一つ一つの言葉を噛み締めながら、何度もじっくり楽しみたい小説です。

  • 「女による女のためのR18文学賞」なるものをとっている本作品。
    確かにそういう場面はふんだんにあるけれど、時代小説で舞台が遊郭という日常とかけ離れたものであるせいなのか、耽美的な描写のせいなのか、みだらな感じはしなかった。
    普通の恋愛モノとして読めてしまいました。
    もちろん大人女子向けですけどね。
    確かに、この話をリアルに捉えるより悲恋な物語として読むほうが女として楽しめると思います。

  • 読み終わってしばらく惚けた。花魁ものは物悲しい。でも自分の肉体のみで生きるその姿は凛とした美しさを放ってる。永遠につづく愛だけをしあわせとよぶわけじゃないと私は思うし、そうであってほしいと願う。

  • 第5回女による女のためのR-18文学賞で大賞と読者賞を受賞した作品です。

    江戸は吉原での遊女のお話。性描写があるので好き嫌いは分かれるかもしれませんが、女性作家のためか、きれいで切なく描かれています。

    ブログにて詳しいレビューしています*
    https://happybooks.fun/entry/2021/03/14/200000

  • 描写がすごい。しかし、花魁それぞれの考えに圧倒された。映画も見たいと思った。

  • 久々の耽美系宮木作品。清貧だけど強く美しい生き様に、読み終えるのが惜しくなるほどだった。当時の時代背景に詳しくなくとも楽しめるが、わかるとより一層楽しめるのではないかと思う。
    2013.07.14

  • 日本古来の美しい色彩、まがまがしい色彩、いろいろな香りや匂いにあふれる悲しく切ない物語。

  • 作家についての予備知識なしで読み始める。
    展開の微妙な強引さと、文章の若さが気になってプロフィール見たら、やっぱり若い新人さん。文章ってやっぱり出るもんだなあ。しかし予想以上に若かった。すげー。
    「青花牡丹」は「花宵道中」の説明っぽくてなんとなく無理矢理感が…。実はそういうことだったのか!って納得するにはちょい偶然重なりすぎなんじゃあ…って。蛇足だったかも。
    でもでもすごい才能だ。時代ものをここまで書ける若手はいないんじゃないか?
    吉原が舞台なので、濡れ場がよく出てくるけど、官能的なのに下品じゃない。このうまさは天才的だぞ。今後がすごく楽しみ。

  • 最近まとめ読み中の宮木さんのデビュー作。あんまり図書館で見かけないんだけど、先日行ったらたまたま棚にあったので借りてきた。

    おもしろかったー!
    江戸吉原の遊女たちのお話。
    4代くらいにわたる姉女郎と妹分たちが、時系列問わずそれぞれ語り手になっているので、話が繋がっていて引き込まれる。
    遊女たちの恋のお話はどきどきするし、自由になれないと諦めて慰め合う姿はなんだか哀しい。

    「女による女のためのR-18文学賞大賞作」だったらしいのでちょっと身構えて読み始めたんだけど、萌えるお話ばかりできゅんきゅんした。
    他の時代小説作品も読みたいー

  • 江戸末期の吉原の小見世「山田屋」の5人の遊女たちのお話。
    「花宵道中」「薄羽蜉蝣」「青花牡丹」「十六夜時雨」「雪紐観音」の5本が収録されていて、それぞれ少しずつ繋がっています。


    「花宵道中」
    あと数年で年季を迎える「朝霧」の話。
    この話自体は「よくある話」なのかもしれないけれど、他の話を読んでから読み返すと一番身悶える話。
    彼女の選んだ結末が後の遊女たちに与えた影響は計り知れないと思います。特に妹女郎として一番近くにいた八津なんか人生観変わっちゃったんじゃないかしら。


    「薄羽蜉蝣」
    もう少しで初見世を迎える「茜」の話。
    恋すら知らないのに男に貫かれなければならない少女の切なく悲しい話。…なのだけれど私のセンサーはひたすら茜の姉女郎の八津に反応してました。むしろこれは茜を主人公に据えてはいるけれど実は前作の「花宵道中」の為の話なんじゃないかしら。後日譚なんじゃないかしら。それくらい随所に朝霧を感じました。
    肝心の茜ですが、彼女は普通に逞しい遊女になると思います。朝霧よりも八津よりも強さを感じさせる終わり方でした。


    「青花牡丹」
    京都から売られてきた「霧里」の話。
    霧里は朝霧の姉女郎なので初見世前の朝霧が登場します。この霧里が朝霧をきちんと粋に育て上げたからこそ、更にその妹女郎の八津が朝霧好きになったんじゃないかなと思います。すいません私、霧里一番好きなんです。
    内容としては「遊女の悲劇」とは少し違う気がします。もっと救いようのない悲劇な気がする。そしてこの話を読んだ後「花宵道中」を読むと部屋中ローリングしたくなる気分になります。あちらこちらに霧里を感じるよ!


    「十六夜時雨」
    年季明けまで折り返しくらいの「八津」の話。
    姉女郎として茜を見ている八津と、妹女郎として朝霧に守られていた八津。どちらの描写もあるのが余計切ない。
    八津は登場人物の中で精神的に一番弱いんじゃないかと思います。結論。一番遊女に向いてないよ八津…!(そういえば要領よくないって朝霧が言ってた)(確かに要領よくないよ八津)
    この話の結末も嫌いではないのですが、どうせなら一人くらい違う選択をしてくれても良かったのになと思わなくもないです。


    「雪紐観音」
    山田屋の看板女郎「桂山」の妹女郎「緑」の話。
    ぶっちゃけ百合です。霧里の筋を主人公に据えるのかと思っていたので最後に何で桂山さんの筋なのかと思いましたが、八津の妹女郎で茜の先輩の三津が大変重要な役割で登場しました。納得。
    個人的感想としては主人公の緑よりも三津が素敵で悲しい。

  • 吉原の遊女たちの話。
    短編5話ですが、すべてが繋がっていて読むたびに切なくなりました。

    描写の色合いがとても綺麗で、目の前に情景が浮かびそうな作品。
    人間の欲や悪がどろどろに混ざっているのに、それでも凛と
    綺麗な場面が見えて、それがまた物悲しいなと思いました。


    「お座敷の遊び方も心得ん人に暖簾をくぐられたら、うちの暖簾が汚れます」

  • どの遊女たちも今を必死に生きている。
    強がったり、泣いたり、怒ったり、あるいは自分の感情を押し殺したり。
    非常に人間らしいなと思った。

    吉原の中で中堅の店という設定がまたいい。
    珍しいものを見たときや、綺麗な着物を前にした時、異性のちょっとした言葉に感動したり、普段食べることの出来ない豪華なものを食べ、子供のように無邪気に喜ぶところが可笑しくてせつない。
    そう考えると現代人はなんて欲深いのだろう。
    遊女は商品であって、他に男を作ることなんて許されない。
    彼女たちは必死に自分の感情を抑えようとしたり、抑えきれないものは男と駆け落ちをする。
    店から逃げるものとそこに残されたもの。
    どちらが幸せかなんて分からない。
    それでも誰かを本気で好きになったり、その相手と一瞬でも互いの気持ちが通じ合うということはなんて素晴らしいのだろうと思った。

  • 装丁に惹かれて買ったら大当たりでした。
    江戸・吉原を舞台にした切ない恋愛小説です。
    5つ物語が入っていて全て繋がっているので、ひとつ物語を読むたびに、この裏で他の人はどんな気持ちに?と気になってしまって夢中で読んじゃいました。
    この本はR-18文学賞大賞を受賞しており、遊廓が舞台なのでやっぱりエロスが結構あるんですが、そんなシーンもあまり下品とかグロいとかなく、読みやすかったです。
    雰囲気もすごく良かった。
    着物や色の名前とか、昔使われていた物の名前って綺麗。こういう昔の雰囲気って好きだなぁ。
    他にも時代小説も挑戦してみたくなりました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「装丁に惹かれて買ったら大当たりでした」
      私も同じですが文庫を買いました。これも積読中。
      私って基本ジャケ買いみたい。。。
      「装丁に惹かれて買ったら大当たりでした」
      私も同じですが文庫を買いました。これも積読中。
      私って基本ジャケ買いみたい。。。
      2012/09/14
    • mameponさん
      nyancomaruさん
      私もついジャケ買いしちゃいます(>∀<)♪
      装丁が素敵な本たくさんありますよね。
      nyancomaruさん
      私もついジャケ買いしちゃいます(>∀<)♪
      装丁が素敵な本たくさんありますよね。
      2012/09/16
  • 吉原の遊女たちの切なく苦しい恋が、
    色っぽく、美しく描かれている。

    生きるために身を売り、悲しい過去を持つ彼女たちだが、
    悲壮感ばかり漂うわけではなく、
    そんな場所にいても、かすかな希望を持つものや、
    仕事にプライドを持つものもいる。
    粋で、たくましく強い遊女たちが愛しく、カッコよく思える。。。そんな本です。
    官能的なシーンも多く、それもまた楽しめます。

  • 江戸吉原の小見世(中堅どころの遊郭)「山田屋」に暮らす女郎達の物語。
    官能小説的な部分もあるけれど、そういった場面の描写よりも、朝霧、霧里、八津といったそれぞれの女郎の、女郎であるが故の哀愁が際立っていて、じんわり滲みた。
    望まなくても春を売らなければ生きていけず、年季が明けるまでは心さえ自由にすることはできない。華やかな花魁ではなく、あえて小さな見世の女郎を描くことで、彼女達の境遇のやるせなさが迫ってくる。
    幸福は得難いものであり、それでも日々を彼女たちは生きていく、その人間味が鮮やかだ。

  • 「あまいゆびさき」で宮木あや子さんを知り、今回が2冊目でした。
    すごくコンパクトに内容がまとめてあって、とても面白かったです。遊女の好きな人と添い遂げることは叶わない時代背景が伝わって悲しくなりました。また、妹の八津に勘違いされたまま物語が終わるのが哀愁漂っていてそれが良かったです。
    単なる恋愛モノで終わらせないのがすごかったです。

  • 痛いほどに苦しい、切なさ。遊女たちの深い孤独。

  • 著者にはまって既刊を追っていた頃、賞が賞だから避けていた作品のひとつ。
    さすがにもういい大人だから大丈夫かもしれないとチャレンジして、結果、Rに主軸を置いている訳では全然ないから全然物語としてありありだった。
    載せるか迷ってたけど載せちゃう!

    というか、賞が注釈みたいになっている本作よりも、罠じゃん……!ってしょっくを受けるような(まあ、ずっと若い頃の話です)えげつない描写の入る一般作品、ふつうに巷にあるでしょう。。どういうこと。
    でもこの本を、エピソードによっては結構深追いしているけれど
    それでもべつにやらしくないし下品じゃないし、筆致がむだに執拗じゃないしどことなくあっさり(?)していて、何ならこの程度なら全く、くらいの意味合いでセーフ、みたいに思うのはむしろ大人的にすれた感覚なのか?

    すごくきれいだった。
    文章に良い意味で熱がない。常に表面だけ融けた氷みたい。
    最後の章の緑が、最後に読んだから残り易いというのもあるだろうけれど印象的。
    瞳に水が張られたみたいな緑の視線、すき。(涙目という話ではない)
    あと東雲がせつなすぎた。
    実は、という諸々がすごく効いていて、リアル姉なのに拒否感だの居心地の悪さだのよりも二次元として割り切らせてぐいぐい来る。くらっとする。

    女郎は女郎をたすけられないけど、でも遊女同士の愛情(緑は置いといて、まあ恋愛ではなく)も悲恋の傍らで結構描かれていて、すきだなあと思う。
    朝霧の粋な台詞が継がれているとこすっごいすき!

    誤魔化して誤魔化して生きるのって、でも、現代でも……と共感するように重ねかけて、いやもっと身体的な意味で壮絶……と思い直す。失礼だった、。
    ……具体例ならたとえば、道中と結婚式が悲愴な意味で重なっちゃうわたしは、(現代人として)割とどうかしている。
    儀に対する女性の心境は大分違うというか、
    ぎりぎりの矜持と、半分まやかしと分かっていても縋りたいだろう遊女さんはべつとして(朝霧は素で憧れていたのかなあ)、
    現代の方は、女性主体の場合とか何様だし先を考えればなかなかに愚かだけれど(ちやほやされるだけで終わる訳がないし、無論それじゃフェアじゃない)
    ……きっと数百年とか経てば現代だって大昔とぜんぜん地続きで、たぶんあーってなると思うんだよ、クレイジー沙耶香的に、、。(とばっちりすぎる)

    女のひとの脳の仕組みって理屈じゃなくて、構造としてそういう風に作られていることがこわい。誰に都合が良いんだろう。神さま? ??
    でも客と好いひとは全然ちがうとしているのに、意外と身請けによるハッピーエンドはないんだ。なんなら断っちゃうんだ。
    悲恋集だからだとしても、そのハッピーを信じていない作風なのかもしれないと思った。委ねない、委ねられない。すき……。

    身請けを申し出る男性心理がだって、ただの独占欲ならわかるけど悪役的に描かれる訳でもなければそれだけではない正しさを掲げ兼ねなくて
    じぶん、そんなに特別なの?救いになるの?他の客とそんなに違うの?ひどい客もいるだろうけれど、自分は今もこの先もそんなにもひどくないの?なにその確信?
    だれに隷属するか、が変わってもさあ。人数の問題?(オブラートをくれ)
    相愛幻想に生きるのは、まあむしろ、女性側なんだろうけれども、。

  • 5つの短編ですが一つの作品になっています。不遇でもプライドや気品を持つ遊女たちに感動します。また、死んでも、心は生き続ける。感動しました。みんな心に闇を抱えていてクセもありますが、思いやりがあり、読んでいて心が癒やされます。

  • 恋する自由がない女性たち。
    自分の責任でもないのに吉原に売られてきて、自分の意思とは関係なく生きていくためには感情をなくすしかない。それなのに、やっぱり人を好きになって…
    恋に生きた朝霧と、朝霧たちを見てきて吉原で生きていくと決める八津。誰もが悲しすぎる。

  • 文を辿ると鮮やかな色が見えた。
    諦めると生きていけるという言葉が印象に残った。

  • アンソロジーで宮木さんを知り、とりあえず読んでみたら???
    本作は?安達祐実さんで映画化されたアレぢゃ無いか(´∀`*)?
    (*コミック化もされてるのね。。。)

    これはアレだよ?素晴らしい名作だよ?

    映像化もコミック化も同様に素晴らしいんだろうけど〜
    この原作は越えられないんだろうなぁ。。。

    素晴らしい一冊です。
    宮木あや子さん!俺ファンになりましたよッ。・゜・(ノД`)・゜・。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。2006年『花宵道中』で女による女のためのR-18文学賞の大賞と読者賞をW受賞しデビュー。『白蝶花』『雨の塔』『セレモニー黒真珠』『野良女』『校閲ガール』シリーズ等著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮木あや子の作品

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