ハイドラ

著者 : 金原ひとみ
  • 新潮社 (2007年4月発売)
3.29
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  • 本棚登録 :663
  • レビュー :140
  • Amazon.co.jp ・本 (137ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103045311

作品紹介

迫ってくる体温を感じながら感じた、世界が変わっていくのを-。堕ちてゆく痛み、翳りない愛への恐れ。自身に注がれる冷徹なまなざし。クールさと瑞々しさをともに湛えた最新恋愛長篇。

ハイドラの感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの金原さん。
    静かで落ち着いている作品なので読みやすかったです。肉食的な感じがして珍しいと思ったり。ちょっとムフフがあって意外でした。

    だけど読んでいる間、ずっと息苦しいというか罪悪を感じた。やっぱりテーマが過食拒食だからだろう。


    自分の感情を吐き出すことを許されず飲み込むうちに、早希は感覚や感情、自分自身の存在も麻痺していって噛み吐きに走る。


    押し殺し飲み込む感情でお腹がいっぱいになってしまう。幼いころから抑圧、抑制で育ってきたんだろうなぁ。幼児期の刷り込みとか、洗脳とかマインドコントロールとかもぼわーと浮かび上がってくる。


    自由や笑顔を取りもどせる籠の外に出ても、結局…その自由さえどうしたらいいのか分からずに、機械仕立てのカナリアみたいに調律してくれる人の元に飛んで戻ってしまう。哀しいような、定めのような…。やっぱり悲しい。


    ハイドラってタイトルの由来が鳥肌もので、同属のリツとの会話は突き抜けて素晴らしかった。(126ページ)リツもまたいい味出しているので、そっち方面で縛られているのかーとビビった。結構異色な作品でした。

    私はたとえ無理かもしれないけど、松木と一緒にいてほしかったな。戻るんだろうな~…と分かっていたけど、分かりたくなかった。

    変だけど脳内ではエリ●様と高●氏に変換された、自分で変換したのに笑えた。この二人で映画にすると面白いよ、きっと。

  • 愛されていない女と思われるくらいだったら、どんな嘘だってつく。愛しい恋人に、死ぬほど愛されている。本当は、そういう目で見られていたい。





    …もっと平たく言えばこの人と二人きりになって見つめ合ったら私絶対この人のこと好きになる。その確信が怖かった。でも怖いっていうのも本当は愛しい感情で、何というか、結果として本当に私は彼が好きになった。でもそれが、晴天の霹靂のように降ってきたライブの感動と、わーっと出会ってしまったシチュエーションと、アルコールのせいで盛り上がっているのも要因のひとつだと、冷静にも考えていて、でも私は彼が好きになった。






    …突如頭の中に膨大な情報が湧き上がってきて、しかし感情は何一つ沸き上がらない。松木さんの手の温度は私の手の温度よりも高かった新崎さんとのセックスは約二週間ぶり松木さんの鎖骨は頭を乗せるのに最適な形状新崎さんのピストンは兎のそれと似ている松木さんの髪の毛は非常に柔らかい新崎さんのぺにすは目測十七センチ。新崎さんが後ろから手を伸ばし、胸を揉む。執拗に胸を揉みしだくその行為は決して愛撫ではなく、射精という排泄をするために必要なだけの性的興奮を促すためである。もう面倒くさいここで私がバターとかになってこの体温が上がっていくのと共に溶けてしまえばいいのに。






    「松木さんと一緒にいて、どうですか?」

    「楽しいよ」

    「無理してないですか?」

    「してないよ。松木さんといると、十代の頃みたいに、無邪気にはしゃいだり笑ったり、してられる」

    「そんなに簡単に、簡単な人間に戻れると思いますか?」

    「簡単な人間って言い方はどうかと思う」

    「楽しいことを楽しいことと感じたり、悲しいことを悲しいことと感じたり、腹立たしいことを腹立たしいことと感じたり、そういう一足す一は二、っていうような人間のことです」

    「なにそれ」

    「一足す一はゼロみたいな、歪んだ図式で世界を捉えていた人が、常識的な世界に戻るのは、難しいと思います」

    「歪んだ図式で生きていても、一足す一は二っていう常識は捉えてるよ」

    「そこに違和感は感じませんか?」






    新崎さんはきっと、私が噛み吐きをしていると知っても、私が太るのを恐れてまともに食事すらとれないと知っても、私があんな気持ち悪い怪物になっていると知っても、傷つかない、何とも思わない、唯一の人間だ。…新崎さんはそういう私を受け入れるでもなく愛するでもなく、ただ私を私でいさせてくれる唯一の人間だ。分かっているもう二度と、私は松木さんの元に戻れない。







    ---

    「洗脳された意識」の私は、

    早希の姿と重なる。

    たぶん、私の求める愛は歪んでて、

    食べれない私や

    自傷する私を

    受け入れてくれる「フリ」をする人を過敏に感じる。

    結局みんな、自分がヒーローになりたいだけ。

    だからこそ、新崎さんが魅力的に写る。





    …私自身、悲劇のヒロインになりたいだけなんだけどね(笑)

  • 不安定で言い表しにくい心の中身を、まるで見えるものみたいに細かく描写する文章。人間の考えてることって、こんなふうに文字にできるんだ。ただただ圧巻。

  • またシンクロしてしまったー。つらい。せつない。
    主人公に共感しまくってしまうせいで、この人の本には正しい感想書ける気がしないです。私と金原ひとみさんの思考回路って、根本的に似てるんだろうなあ。

    とにかく新崎さんから離れられない気持ちがしぬほどわかる。
    松木さんのような王子様がある日突然現れないかなあと思っているけど、現れてもやっぱりだめなんだなあ。
    ラストが絶望的でぞくぞくします。星5個つけたいけど、自重して4個で。

  • 噛み吐きチューイング。毎度思うけど金原ひとみの作中に出てくる食べ物に対する嫌悪感がすごい。

  • ちょっと切なくてよかった!
    今までとは違うタッチだから蛇〜とかアッシュベイビーで苦手に思った人にもおすすめしたいです

  • 本屋4軒駆けずり回りましたがなかったなんてナメテル!本屋の店員に金原ファンがいないにちがいない!もしくは買い占め!

  • 蛇にピアスのアマとハイドラの松木さんのイメージが、何となく重なる。現実も何も考えず、気持ちのまま、松木さんに恋をしている早希。でも、自分が自分でいるためには、新崎さんとも別れられないでいる。ストーリーは、複雑に練られた内容ではないが、確実に、胸に迫るものがあり、それを楽しめる作品であると思う。

  • 「痛み」というものの存在感が、全文を通して張り付いている。
    その痛みによって生かされているかのような、M的な、自虐的な、そんな小説だった。
    確かに、松本の強さや明るさや単純さは、眩しいほどだ。
    ずっと日陰で暮らしてきた早希にとっては、まさしく目も眩むような思いがしたことだろう。
    しかし、やはり早希は自分の生き方を変えることができない。
    自分の醜さを受け流してくれるであろう男を、半ば習性的に選ぶ。

    やや強引な展開だと感じたところもあったけれど、勢いがあって、読みやすかった。

  • 金原ひとみの本は、どこか他人に対して感の良い主人公が多い。また、たいてい主人公自身のことはおざなり

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