アンソーシャル ディスタンス

  • 新潮社 (2021年5月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784103045359

作品紹介・あらすじ

コロナみたいな天下無双の人間になりたい――読めば返り血を浴びる作品集。パンデミックに閉塞する世の中で、生への希望だったバンドのライブ中止を知ったとき、二人は心中することを決めた。世界を拒絶した若い男女の旅を描く表題作を初め、臨界状態の魂が高アルコール飲料で暴発する「ストロングゼロ」など、あらゆる場所でいま追い詰められている人々の叫びが響き渡る。いずれも沸点越えの作品集。

感想・レビュー・書評

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  • コロナ直前に付き合っていた元カレのことを思い出した。
    彼は多忙から壊れてしまった。
    彼は放っといてほしかった。
    わたしは放っておけなかった。
    関係は壊れた。
    もし、あの時わたしがちゃんとソーシャルディスタンスを取れていたら、未だにうまくやれていたんだろうか。
    まさに、アンソーシャルディスタンスが招いた別れだった。

    金原さんは、歳を重ねることに、素敵な作品を描く。
    痛みと、刹那的な衝動と、性。
    それらはデビュー作から、ずーっと彼女の作品の基盤となっている。
    その上に層となっていく部分が、金原さんが歳を重ねるごとに、どんどん深みを増しているのだ。
    何かに必死に縋って依存して生きていく人々の、痛々しい生と性を赤裸々に描く筆致。
    この作品では、生きづらさを抱える5人の女性にフォーカスをあてている。
    心を患った、大好きだった彼氏との関係に直面できずにどんどんアルコールに溺れていく「ストロングゼロ」。
    歳下の彼氏といるために若くありたいと願い、軽い気持ちで整形に手を出したら泥沼にはまってしまった「デバッガー」。
    結婚していながら異性関係から抜け出せずに不倫を繰り返す「コンスキエンティア」。
    好きなバンドのライブが中止になったことを嘆くカップルがそれぞれの視点でコロナと相手のことをみつめる「アンソーシャルディスタンス」。
    激辛とセックスとオナニーで埋め尽くされた自粛生活、彼女は彼のことを愛しているのか、それとも単なる依存と執着なのか、「テクノブレイク」。

    主人公がみんな生きづらくて不器用で愛おしい。
    人間みんな何かに依存して生きてる、とわたしは思う。
    それがたまたまお酒と、整形とセックスとオナニーと激辛と、あなたってだけ。
    というかそもそも、こうやってお酒とか整形とかに依存してるのは、あなたのためなんじゃん?
    いや、あなたのためと見せかけて、結局一番救いたいのは自分なんだ。
    それなのに、依存と執着は、自分から「自分」というものを、じりじりと奪っていく。
    そんなじりじりとした焦りと絶望的な心理描写を克明に描く。
    ただのメンヘラじゃない、性欲に溺れたメンヘラ描かせたら天下一品!
    こんなに、こんなに、生きている!
    特に、コロナ禍がメインで描かれる、後半の2編。
    いずれも、結局は生きることに執着して、主人公なりに生きていこうとする姿は、痛々しくはあるけれど、とても美しかった。

    5人がそれぞれに溺れている依存対象。依存しながらも必死に生きているその姿こそがまさに生きづらさで、もうなんのためにこんなことしてるのかわからない、本来の目的なんて見失って、それでもここに行き着いてしまう。この依存と執着の表現の素晴らしさ。
    ダメだよなぁと思いつつ必死で生きている人を肯定してくれる。
    何かにしがみついてしか生きられない人を、その何かがなくなってしまったら別の何かに頼って生きていく人を。
    西加奈子さんは、金原さんを「自分を愛さないことも認めてくれる人」と評していて、それは金原さんの作品のそこここに溢れている。こんなに生きづらくてそんな自分大っ嫌いで死にたくて、それでもわずかな光に縋って生きている人たち。
    作品の中で、わずかな光を求めている彼女たちの暴走が止まらないように、ページをめくる手が止まらなかった。
    夜中に読む金原さんは最高だ。

    主人公が普通でマトモでってわかりやすいけど、主人公がどこかぶっ壊れてるとそこに正論が入らなくていい。
    たとえば、不倫よくないよとか、知ってるっつーの!
    正論で留まることができる瞬間は、いい。
    でも、留まることができなかった時、壊れ続けたまま生きていかないといけない。
    正論が蔓延る世界の中で、彼女の作品は、決して正論を押し付けないし、絶対に責めない。
    そこに救いがある。
    金原さんの作品に対してわたしがしているのは、果たして共感なのか理解なのか。

    そしてわたしは気づいてしまったのだ。
    いや、今まで気づいていて気づかないフリをしていたことを、金原さんによって突き出されたのだ。
    決してあいつが好きだったわけではなく、あいつとのセックスが好きだったのだと。ただの、依存だったのだと。

    • たけさん
      そうですねー
      本屋さんで気になる本見つけて、その場でスマホから図書館予約とか、よくやりますよ。
      タイミングよく予約入れられれば新作もあまり待...
      そうですねー
      本屋さんで気になる本見つけて、その場でスマホから図書館予約とか、よくやりますよ。
      タイミングよく予約入れられれば新作もあまり待たずに読めるのですが、所蔵するタイミングが読めなくて悔しい思い良くしてます。

      図書館員の友だちがほしいです。
      2021/07/11
    • たけさん
      図書館のヘビーユーザーには発売前から図書館に所蔵のリクエストを出して、早い順番を確保している人もいるかもしれませんね。
      僕はそこまでできない...
      図書館のヘビーユーザーには発売前から図書館に所蔵のリクエストを出して、早い順番を確保している人もいるかもしれませんね。
      僕はそこまでできないけど…
      2021/07/11
    • naonaonao16gさん
      スマホから図書館予約とかもできるんですね!現代社会すごい!

      うーん、確かにヘビーユーザーまでいくとなかなかですね…
      どちらかというと読みた...
      スマホから図書館予約とかもできるんですね!現代社会すごい!

      うーん、確かにヘビーユーザーまでいくとなかなかですね…
      どちらかというと読みたい時に読みたいものを読みたいので、図書館で働く友達をゲットするのが手っ取り早いのかもしれません(笑)
      2021/07/11
  • 少しづつどこかが壊れていく人たちの話。

    特に1話目の「ストロングゼロ」が凄絶だった。ミナが彼氏のうつ病を何とか支えようとしながら、そのプレッシャーに押し潰されて行く様子。自分がアルコール依存症になり、仕事やプライベートにも支障を来し始める。絶望感に押し潰されそうだった。

  • 金原ひとみさんの本は初読みでした。
    すごいなあー、読み始めたら読むのをやめられない。心がざわついて、揺れる。ほどよい距離って難しいのに、家族や恋人、夫婦とか距離がものすごく近くなる。
    なのに、何となく好きになり、何となく付き合う。そして、ややこしくなる。

    人って、何かに依存しないと生きられないのかもしれない。
    そして依存してしまうものも、それぞれ。
    コンスキエンティアの中で、自己実現は資本、趣味、倫理の三つの面からアプローチする。
    金持ちになりたいという欲望、好きなことをやりたいという欲望、倫理的正しさを追求したいという三つの欲望が人を突き動かす。

    その通りだと思い、胸に突き刺さった。これがほどよく満たされていることが理想だけど、なかなか難しい。
    ストロングゼロが心に残ったが、アンソーシャルディスタンスが一番良かったかな…
    もっと金原ひとみさんを読んでみようと思った

  • 断続的な絶頂感がピークアウトする。そのピークを何度も求めては、破滅的な思考に堕ちていく。性欲強めの短編集、メンヘラ、即物的。

    物語はコロナ禍に描かれたという点で特異だ。それ故に、アンソーシャルディスタンスというタイトルが行動制限の抵抗にすら見える。接触距離を保たず、極限まで密接になれば、そこにあるのは性的な距離からも更にめり込んだ依存関係。

    マグネットや粘着性のあるステッカーのように、貼っては剥がし、関係性を維持するだけではなく、釘を打ち込むように相手にめり込めば、深く繋がれても、相手の身体にも穴が開く。強い依存は跡を残し、時に相手も駄目にする。

    めり込み、のめり込み、互いに駄目になったとしても、物理的感覚を伴う対面の充足を求める。コロナが境界線を可視化しただけで、元来そのラインを踏み越える行為は、人を溺れさせる距離感だったのかも知れない。あ、そうだ。山本文緒が面白いと言っていたから、この本を読んだのだった。

  • この作品も期待を裏切らずキレキレだ。
    無駄な言葉がひとつもなく、確実に胸を貫いてきた。

    閉塞感の中、過剰に生きようとする女性たちを描く短編集。滑稽なんだけどリアルさが漂うところがおそろしい。

    ストロングゼロ 評価5

    アルコールに依存して崩れていく女子社員。

    デバッガー 評価5

    職場の若い男性と恋に落ち、自らのバグを修正すべく整形にのめり込んでいく30代女子。
    彼と向き合うために美容整形に走り、自信のない自分には直面したけど、大好きな彼とはまっすぐ見つめ合うことができない…切ない。

    コンスキエンティア 評価5

    不倫を繰り返す妻は、夫に身体を傷つけられることで、精神の均衡を保っている、ようにも見えるけど。
    この短編集の中で最も「痛い」作品。

    アンソーシャルディスタンス 評価5

    表題作。いや、もう、タイトルからしてすごい!
    「非社交的距離」って、なんやねん!
    コロナ的には安全なのか安全でないのか、どっちなんだ(笑)
    こういう言語センスが金原さんはすごいと思う。

    コロナ禍の恋人たちを描いた小説ははじめて読んだ気がする。去年の3月くらいは、若いやつらはリアルにロックダウンとか心配しちゃったんだろうな。
    心中なんておだやかじゃないけど、好きなバンドのライブが見れないからって一緒に死ぬことまで考えてしまうなんて若くて健全だ、と思った。

    ただ、
    「何があっても死ぬことなんか考えないようなガサツで図太いコロナみたいな奴になって、ワクチンで絶滅させられたい。人々に恨まれて人類の知恵と努力によって淘汰されたい」
    は、少しロマンチック過ぎるかなと思った。
    ウイルスが擬人化されると、その恐ろしさが矮小化されてしまう感じがして、しっくりこないんだよな。

    テクノブレイク 評価5

    潔癖症でセックス依存症の女子の話。
    「セックス」という単語が頻出し過ぎてゲシュタルト崩壊を起こす(笑)
    こんなの初めて読んだ。

    • naonaonao16gさん
      たけさん

      おはようございます!

      コンスキエンティア、たけさんの視点面白いですね。めちゃ頷いてしまいました。

      アンソーシャルディスタンス...
      たけさん

      おはようございます!

      コンスキエンティア、たけさんの視点面白いですね。めちゃ頷いてしまいました。

      アンソーシャルディスタンス、わたしも帯になっている「コロナ見たいやつになって淘汰されたい」はさほど共感できなかったんです。もっとすごいパワーワードあった気がして。

      セックスでゲシュタルト崩壊(笑)
      わたしは「道具」に詳しくなりました(爆)
      2021/07/16
    • たけさん
      naonaonao16gさん!
      こんにちは!

      「コンスキエンティア」で、茜音が受けていた行為は、DVなんで、けしからん話だ!とあるべきなん...
      naonaonao16gさん!
      こんにちは!

      「コンスキエンティア」で、茜音が受けていた行為は、DVなんで、けしからん話だ!とあるべきなんだけどね。非常に感想が書きづらいです。

      帯のコピーはちょっといやらしいよね。下心を感じる出し方というか…

      確かに、道具に詳しくなりますねぇ…
      芽衣が自分の中にある凄まじい破壊力により壊れていくところがすごく迫力があって、引き込まれました。

      おすすめいただいて、ありがとうございました!
      2021/07/16
  • この作品は、すべてのコロナで悩む人々の心の
    葛藤、鬱憤などを、リアルに作品に投影してい
    ます。アルコール、プチ整形、不倫、心中、性依存、コロナによって心が壊れていき、正常な感情
    では生きることが出来なくなって、魔力に飲まれ
    る主人公の葛藤が描かれています。性描写がリアルで、ちょっとグロかったけど、リアルを求める著者
    の真骨頂かなと感じました。谷崎潤一郎賞受賞作品。

  • 初、金原氏。稀有な作家さんですね。
    物語は依存症の女達の短編。
    初手のアル中の描写は凄まじかった。アル中は本や漫画で何回も目にして理解してるつもりで、してなかった。これを読んで初めて「ああこんな感覚なんだぁ」と、一体になれた。
    所々突き詰める文章は冷や汗がでるほど深く刺さる。
    他の女も正直「コイツらきしょいな」と感じるが、思い当たる節がないようでありすぎて、共感なんてしたくないのにちょっとわかってしまうし、そういう女の資質が際立ちすぎてすごーく嫌になる。
    それでも、負けんな!がんばろう。
    と思わずにはいられなんだ。


  • はぁ〜〜強烈〜
    なんかスゴかった

    「ストロングゼロ」
    心を病んだ恋人との同棲に疲れ、自らもアルコールに溺れていく

    「デバッガー」
    職場の後輩との交際にコンプレックスを抱き、プチ整形を繰り返す

    「コンスキエンティア」
    夫から逃避して不倫を続けるが、相手の男の精神状態に翻弄される

    「アンソーシャルディスタンス」
    生きる希望だったライブがパンデミックで中止、恋人と心中の旅に出る

    「テクノブレイク」
    ウィルスを恐れるあまり交際相手との接触を断つが、孤独を深め暴走する


    帯で尾崎世界観さんが、"苦しいのに読まずにいられない、胃カメラみたいな小説"と書かれていたけど、まさにそんな小説。
    もう読んでてしんどくなってくるんだけど、でもやめられない。

    何かに依存しなければ生きていけなくなった主人公達。人の弱さを見せつけられた。
    生々しくて、読んでる私の精神状態もおかしくなりそう。
    5話目の性描写は窪美澄さんのさらに上をいったな〜。

    金原さん、アンソロジーで読んだだけで、これが初めて読んだ作品だったけど、それにしてもインパクトあったなぁ〜
    続けて読むのはしんどいけど、他の作品も読んでみたい。

  • ストロングゼロ
    やばすぎる。なんで短編なのにこんなの書けるんだ。
    金原ひとみさん大好きすぎる。

    デバッガー
    「SNSではいくらでも見つかる同志が、現実社会ではゼロだ。」

    コンスキエンティア
    1日の終わりには落としてしまうメイクと、積み重なっていく不倫や仕事の落とせない疲れの対照が面白かった。

    アンソーシャルディスタンス
    「また悲しいとか嫌だなとか言い合って、無慈悲のような希望のような朝を迎え、コロナが拡大を続ける東京に戻っていくのだろう。」

    テクノブレイク
    コロナを恐れて引きこもっていくところがとてもリアルだった。だんだん通販で済ませるようになり、その回数も減らしたいから野菜も葉物ではなく根菜を食べるようになったり、化粧品や洋服も買わなくなっていく。
    「望まない妊娠や出産をする人々が「猿」とか「ガキ」とか「人間未満」などと憎悪を剥き出しにされる傾向があるが、そもそもあなたの言う人間って何?」

  • うわあ、これがストゼロ文学か…

    無力感。依存。破綻。
    オンもオフもぐだぐだで、何も考えたくなくなり、縋るようにストロングゼロに手を伸ばすミナ。
    気怠げの最底辺をひたすらに進むような生活。経験していないはずなのに、なぜか私もどこかで経験しているかのような気がして、不思議と既視感があって共感した。

    こんな生活…嫌だ。
    でもこの先絶対にこんな生活をしないとも言い切れないし保障されていない。



    30代の、女性というより「女」としてのリアルが書かれていて、後味が悪い話ばかりなのに不思議と共感できてしまうところもあった。
    全体を通してひりひりしている作品だった。

    強いて選ぶなら、デバッガーがすき。
    大山くんはいい人だけど、森川の気持ちもなぜかわかる。歳をとりたくない、老けたくないな…と思ってしまった。


    けれどあまりに性の話ばかりでもあって、途中から胃がもたれてくるくらいだった。
    後半2つの話はコロナ禍であって、こんな恋人たちは案外たくさんいるのかもしれないなと思った。

  • 刹那の快楽描き同調社会に挑む[評]横尾和博(文芸評論家)
    <書評>アンソーシャル ディスタンス:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/568668?rct=s_books

    金原ひとみ 『アンソーシャル ディスタンス』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/304535/

  • コロナみたいな天下無双の人間になりたい――読めば返り血を浴びる作品集。パンデミックに閉塞する世の中で、生への希望だったバンドのライブ中止を知ったとき、二人は心中することを決めた。世界を拒絶した若い男女の旅を描く表題作を初め、臨界状態の魂が高アルコール飲料で暴発する「ストロングゼロ」など、あらゆる場所でいま追い詰められている人々の叫びが響き渡る。いずれも沸点越えの作品集。






    うぅーーーん…
    ちょっと私には合わなかったかも…
    人って何かしらに依存して生きてるっていうのは納得だけど 苦手な分野だと思った。
    だけど、興味津々で読み進んだのはたしか…
    5人の登場人物には あまり共感出来なかったしなんだか怖かった。
    歳のせいなのか 世代なのか…
    今みたいにネット社会で若い頃を生きて無かったからなのか、みんなこんな思いで生きているのか…と思いながら読みました。
    ホント、いろんな情報が簡単に入ってきて幸せなのか 知らなくてもいいこと知って不安にかられての繰り返し、よくわからなくなる。
    自分ってすごく神経質で嫌だ…って思って生きてきたけど これ読んだら大したことないやん!って思えてしまう。

  • 読んでいてヒリヒリするくらい、女性の恋愛感や性への欲望が生々しく描かれていてびっくり。
    コロナ禍での考え方の違いで気持ちが離れてしまう恋人同士とか、なんかわかるわーと思いながら読んだ。
    「ストロングゼロ」が衝撃的でよかったかな。

  • 久しぶりにこういうの読んだかも…。
    ドロドロぐちゃぐちゃしてて、読んでてうぅぅ…て気持ちにはなるんだけど、バッドエンド(?)なりに最後に何かしらの解放はあるのかな、ていう話たち。

    「ストロングゼロ」
    …この距離感の恋人を1人で支えるのは主人公さすがにかわいそう。アル中になっちゃうのも致し方ない。最後は少し救われたのかな。

    「デバッガー」
    …美への執着は止まらない。一つを治すとまた一つが気になり出して…の無限ループは女性なら誰しもわかるところかと。別れる理由を素直に言えたらいいのにと思いつつ、言わないのも彼女の尊厳なのかな。ペンギンは難しいけど猫飼ったらいいよ。

    「コンスキエンティア」
    …夫が不気味。なんかまともな男いない。

    「アンソーシャルディスタンス」
    …一番好きな話。エモい!死に取り憑かれて病んでてでもひたむきな主人公も愛しいし、彼のちょっと軽薄だけど優しくて彼女を大切に思ってる姿も人間らしくて愛しい。死にたいな、て思いながらもゆるゆる生きていけたらいい。

    「テクノブレイク」
    …性への依存もここまでくるとちょっと怖い。でもコロナまっただなかの閉塞感とか孤独感とか、どこかに救いを求めてしまう不安定な心もわかるところはあったなあ。盗撮はだめ。

  • 短編5作から成る『アンソーシャルディスタンス』。

    既読の精神科医 松本俊彦さん著『依存症入門』の一部分:
    子ども時代に「自分が大切にされた」感覚や記憶の欠落は依存症の引き金になりうる (要旨)
    が、途中何度も思い出された。

    寄る辺ない寂しさ、心許ない自分自身の存在に藁をも掴む思いで手を伸ばす先にある現実と、細やかな心情が価値判断抜きの乾いた筆致で描かれる。

    「可哀想な女性たち」と読み手に同調を求めるような書き手の傲慢さは金原さんらしく見当たらない。
    登場人物たちに近づき過ぎず、離れもせず、光の当て方も影とのバランスも巧みだ。

    自分自身の慢性的な不全感や情緒的枯渇を覆い隠すように日常の何かにすがり、生き延びる登場人物たち。

    ある女性はストロングアルコール飲料で日常を凌ぎ、またある女性は求められるがまま男性との体の関係に耽溺し、またある女性は整形手術を重ね、なりたい女性をひたすら目指す。

    情報が氾濫する今、ありがちな病名でラベルを貼り、分かったつもりになればそこで完結するようなネットニュースに終始してしまう。

    『ストロングゼロ』ではこれぐらい、少しならばと飲んでいたアルコール飲料が仕事中もそれ以外も切り離せなくなる様子が時系列で刻々と描かれる。
    気晴らし或いは、気分転換のはずのアルコール飲料が手段ではなく目的となる悲哀や、周囲にばれぬよう帳尻を合わせるのに必死になる姿は哀しみと痛みが伝わってくる。

    日常的に辛い記憶や感覚、自らの感情を麻痺させ、刹那の快楽への耽溺する姿。
    快楽が悪いのではなく、それでなければ抜き差しならない問題の深さが浮き上がる。

    金原さんの作品の魅力は主人公のみならず、周りの人物造形の妙である。
    特に今回印象的だったのが、『コンスキエンティアConscientia』の4人の男性像。

    既婚者でありながら複数の男性と同時に関係を続けてしまう女性。ダメンズに心奪われる女性設定であれば、類似のダメ男なのだろうが、金原さんの描く4人の男性の書き分けが物語の奥行を増す。

    彼女は誰の何にも満足できず、失望を繰り返し、求められるがままにその他の男性の誘いにも引き寄せられる。

    離れられない。心惹かれるのか、それとも無意識ながら、自らの感覚や判断を一切放棄し濁流に身を任せるだけの受動のなせる業なのか。

    どの作品も登場人物たちのバックグラウンドや生い立ちはすべて割愛され、影の部分となっている。

    作品の主人公の女性たちが虚無感で刹那にすがり、日々をやり過ごしているのと同様、丁寧に読むと他の登場人物たちの思考や行動パターンにもちゃんと仕掛けがある気がする。

    どの人間も矛盾や曖昧さを抱えながら、人と関わり生きながらえる。刹那を重ねて時が過ぎる。

    既読の『アタラクシア』『Fishy』に比べると、登場人物たちのほとばしる様な怒りが控えめに感じた読後。

    『コンスキエンティアConscientia』では描かれていたが、虚無感、不全感、孤独を抱えた人物は同時に自身への自罰感情や他者、社会への憤りや攻撃性のようなものを持っていると思う。
    憤りや不全感、絶望感を前作までのように、もう少し混じり込ませても面白かったのではないかな。

    金原さんの作品、これからも追いかけます。

  • 五つの短編集からなる小説

    それぞれ依存に関係する話

    アルコール依存、整形依存、男性依存、セックス依存、希死念慮

    どの女性も一見強そうな性格なのだが、
    自信のなさ、何か物足りなさや不安を感じたりして
    なにかにハマってしまう

    読んでいると苦しい

    物語は他人事に思えるかもしれないが

    何かに依存をしてしまうという可能性は
    常に人の周りに付きまとう

    ということを思い知らされる。

  • 強烈な生と性。でも何故か性描写は淡々としているように感じられる。主人公の私情をあまり挟んでないからかな。まるで動物の生態を説明しているかのような雰囲気もある。

    それと一つの文章が割と長めだったりもするけど、全体としてリズミカルで早口で音読してみたくなる。金原さんの文章好きだな。

    「人は偶然性によってのみ存在し続け、偶然性によってのみ死ぬ。」めちゃめちゃ同意。
    ストロングゼロより

    「単純に、恋愛というステージを降りてみれば、私は彼のような人が人として好きではなかったのだ。」
    テクノブレイクより


    アル中も整形依存も普通の生活の中に紛れており、最初は自分の中の小さな割合だったのに、最後は飲み込まれそうになる。自分とは関係のない世界だと思っていたが、主人公本人たちもそう思いながら溺れて行ったんだろう。他人事ではないと思った。


  • ストロングゼロ
    デバッガー
    コンスキエンティア
    アンソーシャルディスタンス
    テクノブレイク


    恐らく好みが分かれると思いますが、
    個人的にはあまり得意ではないジャンルでした。

    偏執的な個人の欲求や嗜好に傾倒していって、
    バランスを崩し生活にまで歪みが生まれ、
    遂には破綻に辿り着く。

  • もう、しょっぱなからけちょんけちょんにされる。
    それでも読むのを止められない、全5話の短編集。

    捲る度にどんどん転がり落ちてく斜面。
    その淵は刃物のよう。

    何かを纏ってくるまって、なんとか存在していられる。渇きを潤そうとして度が過ぎて溺れる。

    ジタバタして、縋り付くようになりふり構わず掴まって。
    ドロドロの泥濘だろうがヨゴれた空気を吸いながら、清く正しく自分の足で立つべき場所ですがる藁。

    息をつないでどんどん「正しさ」から距離ができて、孤独から出る個毒に侵される。

    内出血を撫でる様に仕様がない世界を生きてく。

    流石、金原ひとみ。
    コロナという時代の取り込みは早いし、切り込みはエグいし、もうほんと最強です。

    第57回谷崎潤一郎賞受賞作。

  • 金原ひとみのブルドーザーみたいな文体にゴリゴリに轢き殺されるような短編集だった。ストゼロに溺れる女美容整形沼に嵌っていく女不倫に不倫を上塗りする女ザ金原ひとみ小説!いつもながら文章の速度は台風みたい、台風並みの速さで読者を轢き殺すブルドーザー小説。

    表題作はちょっと冗長に感じたけど『テクノブレイク』くらいかっ飛ばして破滅していく様はやっぱり金原ひとみにしか書けないものがある。
    そして『コンスキエンティア』の言い知れぬ不気味さや底知れなさは過去作『アタラクシア』に通ずるものがある。肉体だけが先行し自我なく彷徨う彼女はただ怖い。

    やはりわたしは金原ひとみの書く破滅の様が好きで彼女の小説を読むのだとしみじみ思う作品集だった。
    自分も隣人も多かれ少なかれ破滅している破滅に向かって生きている。その破滅の様にどうしてだか見出してしまう安らぎこそが彼女の小説なのだと思う。
    彼女は破滅を肯定する、その視線に私は安らぐ。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2003年に『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞を受賞。10年『TRIP TRAP』で織田作之助賞、12年『マザーズ』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、20年『アタラクシア』で渡辺淳一文学賞、21年『アンソーシャル ディスタンス』で谷崎潤一郎賞、22年『ミーツ・ザ・ワールド』で柴田錬三郎賞を受賞。他の著書に『AMEBIC』、『オートフィクション』、『fishy』、『パリの砂漠、東京の蜃気楼』、『デクリネゾン』、『腹を空かせた勇者ども』、『ナチュラルボーンチキン』『YABUNONAKA -ヤブノナカ-』など。

「2025年 『マザーアウトロウ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金原ひとみの作品

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