青年のための読書クラブ

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103049517

感想・レビュー・書評

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  • 『青年のための読書クラブ』とは、第五章までで構成された、桜庭一樹の連作の短編集である。

    第一章 烏丸紅子恋愛事件
    第二章 聖女マリアナ消失事件
    第三章 奇妙な旅人
    第四章 一番星
    第五章 ハビトゥス&プラティーク

    以上5節により構成された物語は、「聖マリアナ学園」が舞台だ。

    清く正しき女学校。薄絹のヴェールに包まれた学園に、良家の子女であると認識されているだけの、おっとりうっとりとした少女たち。

    家柄、外見、立場。下は三歳から上は十八歳まで通う聖マリアナ学園の生徒を分類し、構成されたヒエラルキーはいかにも残酷なものだ。
    そのヒエラルキーの最下層、いわく「南のへんなやつ等」。
    雑木林のそのまた向こう、赤煉瓦ビルの奥にかしいだ看板を掲げている。
    それこそがこの『青年のための読書クラブ』の主人公・異形の少女たちの憩いの場、「読書クラブ」である。

    西の官邸たる生徒会にも、東の宮殿たる演劇部にも、北のインテリヤクザたる新聞部にも、どこにも、どこにも馴染めなかった異端の集まり。

    第一章 烏丸紅子恋愛事件では、少女たちの持て余した性欲により、狂乱めいた女の楽園の捌け口となる"偽王子"の誕生と少女性の残酷さを。
    第二章 聖女マリアナ失踪事件では、1960年に失踪した創始者たる聖女マリアナの大きな秘密と、その南瓜ぶった人生を。
    第三章 奇妙な旅人では、時代の熱に浮かされ踊り狂った黄金の風・生徒会六本木化計画と、その退廃を。
    第四章 一番星では、燃える赤毛の"むずかしい"御前様のひとときのきらめき、外界と交わるプロローグを。
    第五章 ハビトゥス&プラティークでは、薔薇色監獄、桃色の100年に永遠の結末を。

    生徒会に揉み消され、聖マリアナ学園の正史に残らぬ珍事件を読書部員がまとめ書き残した暗黒の「読書クラブ誌」。

    クラブ誌を通し、異形の少女である"ぼく"たちが、歴史が、外界が交わり合う。

    桜庭一樹の名付けは天才だと改めてぼくは思った。
    紅子、アザミ、蕾、凛子も良いが、時雨(時雨はなんと長谷部時雨というのだ)、十五夜、永遠(フルネーム五月雨永遠である。痺れる)とは。

    特にぼくは十五夜が好きだ。何をもって赤毛の伯爵家の娘が十五夜と名づけられるのか。
    燃えるような赤毛と内気の内側に眠る衝動は、そしてそれを押さえつける理性は、まるでマリアナのようではないか。
    愛も堕落も罪の匂い。
    マリアナが罪の気配に怯え凝視した苺の香水を嗅いで、山口十五夜の裏側たるルビー・ザ・スターがずるりと表へ顔を見せるのだ!
    十五夜なのにスターだ。額に光るスターが、ルビーをスターたらしめる。ムーンではダメなのだ。スターなのだ!

    第二章までは全て繋がるのかと不安になるが、やがて全て繋がる。
    聖マリアナ学園の100年は、読書クラブと共に紡ぎ、繋がれ、続いたのだから。

    クリーム色の制服に包まれた、少女の形をした暗黒の歴史の物語に興味を持ったなら、ぜひ読むべきだ。
    今もぼくは十分若いが、中高生の頃に読んだらまた面白かっただろう。

    ご静聴ありがとう。画面の向こうのきみたち。
    では、よき人生を。

    二◯二三年度 読書クラブ誌
    文責〈読者A〉 なんちゃって。

  • 聖マリアナ学園という女学院を舞台にした小説。この学校にひっそりと存在する「読書倶楽部」が巻き起こしたり、巻き込まれたりした珍事件を秘密のクラブ誌を通して見ていく。少女の感情がむき出しで、非常にエネルギッシュ。怒濤の如く物語は進む。粛々とした女学院ものかと思えば、とんでもない。硝子の器でできた少女の像を内側から勢いよく突き破るといった感じ。とにかく若くて迸るエネルギー! でも聖女マリアナの生涯や最後の読書倶楽部の展開は胸が締め付けられた。

  • 名門お嬢様学校、聖マリアナ学園には
    アウトローが集う「読書クラブ」があった。そこで語り継がれる珍事件の数々とは…。

    『史上最強にアバンギャルドな桜の園の100年間』様々な波乱の時代を駆け抜けた
    彼女たちが行きつく世界は何処なのか…。昨年「桜庭一樹奇譚集」を読んだのですが
    そこに収録されていた一篇を彷彿とさせるタイトル。どうやらその短篇作品は本作の
    冒頭を飾るはずだった、らしい。毎度のことながら、桜庭さんの描く女の子たちは
    本当に魅力的で、たまらなく愛おしい。親父顔のアザミ先輩なんて最高でした!

  • 伝統ある良家の少女ばかりが通う女学園の年代が違う子女(庶民の出もいる)の話です。
    舞台が同じなだけの短編集かと思いましたがつながっていてびっくり!
    それにマリア様がみてるを思い出しました。
    マリみてよりエグイというかリアルよりというか。

    アウトローというだけあって少女らしからぬ異形者ばかりでした。
    十代の少女特有のイタサがあって私も心がチクッとしました(笑)
    多分、人間の中でも「十代の少女」というどの世界とも交わらない異世界があるんでしょうね。

    ただ私はずーっと共学だったから女子高ってこういう感じなの?って思っちゃいました。
    女子高未経験だから女子でも未知の世界としか思えません(笑)

  • 再読

    お嬢様学校のはみ出し者が集まる読書倶楽部の面々が、学園の自分達以外のみんなを相手に活躍する話、日の当たらないことも多いけど、それでも確実に彼女たちが存在していた記録。

    桜庭さんの小説は、自分が中学生や高校生だったとき、なんとなく自分はみんなと違うんじゃないかと感じる不安や、顔面から内面までのコンプレックスを物語化してくれるのが好き。

    この本は桜庭さんの他の砂糖菓子〜や少女には〜よりは、少女たちの心理描写がそこまで深くないようにも思えるのですが、そこがこの物語に神秘性だとか特別感を付与しているのかも。

  • 4〜5

  • 素敵な百合でした。虚構であるとわかっているからこそ素敵でした。

  • (231P)

  • 少しよくわからないところもあったけどすごく面白かった!
    特に第二章が好きで、すぐに物語の世界に引き込まれた。
    私も読書クラブに入って、赤煉瓦ビルの一室に行ってみたい。
    装丁が本の雰囲気に合っていて可愛い。

  • 桜庭さんは女の人だったのか!

    紅はこべとマクベス 読んでみたくなったな。
    独特な名前が、いいな。
    七竃もそうだったけれど。

  • 少女革命ウテナの「かしらかしらごぞんじかしら~?」を彷彿とさせる表紙に惹かれて読みました。

    分類するならば、同じかもしれないけれど、受ける印象は違います。


    女子高の話です。
    それも、「ごきげんよう」の世界です。
    知的な生徒会と華美な演劇部が全ての中心である聖マリアナ学園。
    美しく上品なお嬢様の園からはみ出した者(醜かったり、庶民だったり、「スベ公」だったり)が集まる「読書倶楽部」が記す、正史には残されない珍事件達がそのままこの物語を構成しています。
    コード・ネーム(ペンネーム)がそれぞれ面白い。

    この独特の「桜の園」を書いたのが男性かと驚いたのですが、桜庭一樹はペンネームだそうで。まあ納得。
    これをただ「女子高=耽美=神秘」みたいな括りでは読まないでほしいなあと僭越ながら思います。
    かなりコミカルでシニカルでにやにやしたり、ちょっと同属嫌悪で不思議な気持ちになったりします。
    私が聖マリアナ学園にいたらきっと読書倶楽部に入ってしまったに違いない。ものすごく厭世的かつプライド高くなってそうだな・・・

    表紙から「影絵」とか「御伽話」という印象を受けたのだけれど、読んだ後は「意思を持った操り人形」(ちょっと矛盾?)に見えるようになりました。
    「マリアナ」の運命に操られた人形達は、現実社会に巣立っていくのかと思いきや、やっぱり本質的にその要素があったと。

    2章を除いては「王子」(女子高における憧れの存在。偶像。宝塚の男役のように少女が憧れる男の美しい部分わかりやすく言えば「ウテナ」)という役割が重要になっています。それについては曾我棗の言葉がとても的を射ている。この独特の世界が良くわからない人は注目して読んでみてください。
    それにしても、シラノ・ド・ベルジュラックかー。

    「恋は、人の容姿にするものか?それとも、詩情にするものなのか?」

    さて、どちらでしょうかねー。


    しかし、5章『ハビトゥス&プラティーク』に出てきた紅子にはショックを受けたなぁ・・・ということはまだ私の中には現実を見ていない少女の部分が残っているのかしらw
    何だかんだ言って慣れ親しんだ女子高の空気は居心地がいい・・・というか故郷というか。根に息づいているんだなぁ。



    1つ不満を挙げるとすれば、読書倶楽部の部員の一人称が揃いも揃って「ぼく」だったこと。
    まぁ、統一感がある、同じ雰囲気が感じられる・・・と言えなくもないが、イラっとしました。ちょっと拗ねた、ひねた、強がったように感じられて・・・。

  • マリみてとは180°趣を異にした暗黒女子校物語が実に圧巻。

    『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』がいまいち趣味じゃなかったんで何となく敬遠してたんだけど、食わず嫌いは良くないなと思わせてくれた作品でした。

  • 聖マリアナ女学園を舞台に繰り広げられる女子生徒たちのお話
    とにかく桜庭さんの書く少女の描写がすき。
    そして設定が細かい!
    この読書クラブの閉鎖的な感じハマった
    「紅はこべ」読んだことないから次借りてこよう

  •  図書館から借りました


     学園物。文学。女子校。

     聖マリアナ学園、という東京のお嬢様学校の「読書クラブ」のメンバーが主役。
     彼女らは学園の正史から抹消された事件を、暗黒のクラブ誌に書きつづり、部の後輩達に伝えていく。
     一章ごとに時間軸が大きく違う。
     一章が安田講堂の騒ぎが合った頃の話(1969年)。二章が、20世紀初めの学校ができる(1919年)前後の話。三章はあの狂乱のバブルの時期(1989年)で、四章は2009年(特にこうという世相は思い出せないが……ロックのお話。)。五章は2019年で、ごく最近、読書クラブの滅亡(部員が一人しかいない上、根城の建築物が崩壊)。



     女の子達は綺麗で優しく柔らかい、わけではなく。
     排他的で残忍で、雰囲気に酔いやすく。
     比較的酔っぱらわないタイプが揃っているのが、読書クラブ。そこは異形の女の子たちが学校の中心から追いやられて溜まってしまうところのようだ。
     この学校は姿が醜いと受け入れてもらえないところがあり、容赦がない。
     投票による「王子」の制度があり、これが深く絡む。
     一章の、紅子のこのラストの退学は起こるべくしておこったもので。
     二章の兄妹愛の深さはすさまじい。
     三章の、バブリーな王子の名言は、なんだかすがすがしい。「バブルは終わらない。我らは富める者であり続ける。未来は黄金色である」と。失墜してもなおそう言い残すのがすさまじい。
     四章は百合っぽい。
     五章は読書クラブがなくなってしまうのがかなしいが、終わりに救済があってほっとする。


      ちょうどきっかり、百年。
     マンガで読んでおもしろかったので、図書館で原作を借りた。
     読みやすい。

  • 装丁が好き。表紙を外すと学園の年表が出てくる。(http://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/304951/pamphlet.html と同じ)こうして見ると、途中に実在する学校名出てくるのもあって『聖マリアナ学園』という学校が本当にあるように思えてくる。それぐらい、魅力的な舞台だった。
    未来の描写が少し違和感があったけれど、全体的に登場人物それぞれの魅力を感じる作品。
    学園の生徒はもちろん、マリアナという人物にも迫っているのが面白い。

  • 装丁が好き。表紙を外すと学園の年表が出てくる。(http://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/304951/pamphlet.html と同じ)こうして見ると、途中に実在する学校名出てくるのもあって『聖マリアナ学園』という学校が本当にあるように思えてくる。それぐらい、魅力的な舞台だった。
    未来の描写が少し違和感があったけれど、全体的に登場人物それぞれの魅力を感じる作品。
    学園の生徒はもちろん、マリアナという人物にも迫っているのが面白い。

  • 東京・山の手の伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。校内の異端者だけが集う「読書クラブ」には、長きにわたって語り継がれる秘密の〈クラブ誌〉があった。そこには学園史上抹消された数々の珍事件が、名もない女生徒たちによって脈々と記録され続けていた――。今もっとも注目の奇才が放つ、史上最強にアヴァンギャルドな“桜の園”の100年間。
    ------------------------
    読み終わった後、「ああ、面白かった!」と感嘆を漏らしてしまった。
    流れる時代の中で、変わることなく本を愛する少女たち。それはひっそりとした集まりだったのに、様々な古典小説に感化されるようにして不思議なそれぞれ物語を紡いでいく。
    まるで、私自身もその中のひっそりと本を愛する少女のように本を読み終えてしまった。

  • 聖マリアナ学園という女子校に存在した、「読書倶楽部」と呼ばれる場末のサークルが引き起こす問題の数々の面白さときたら!!

    読書好き×女子×内気なわたしにはどんぴしゃ~な内容でした。

    何より桜庭一樹さんの本が大好きなのです。

  • 成立から数々の正史には残らぬ珍事件を記録し続けた読書倶楽部の物語

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「正史には残らぬ珍事件」
      天羽間ソラノの切り絵に惹かれて購入。ストーリーも極上のエンターテイメントでした。。。
      「正史には残らぬ珍事件」
      天羽間ソラノの切り絵に惹かれて購入。ストーリーも極上のエンターテイメントでした。。。
      2013/02/18
  • とある女子校の裏100年史。女子校あるあると百年の孤独ネタでにやにや。関係ないけど今ガルシア・マルケスさんが認知症になったことを知ってちょっと寂しい。

著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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