カストロの尻

著者 : 金井美恵子
  • 新潮社 (2017年5月31日発売)
3.35
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  • 本棚登録 :83
  • レビュー :8
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103050056

作品紹介・あらすじ

甘美で魅惑的な11の物語。作家デビュー50年記念作品となる著者最高傑作。「小説家の「幸福」」をめぐる考察、デイジーの刺繡をしたブラウス、岡上淑子によるフォト・コラージュ作品、謎めいた宿命の女、胡同に咲き乱れるジャスミンの香り、金粉ショーのダンサーとの狂乱の恋、そして「塊」と「魂」。無数の映像や小説、夢や記憶の断片が繊細に絡み合い紡がれ、ここに前代未聞の物語が誕生した!

カストロの尻の感想・レビュー・書評

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  • 金井美恵子さんの、長い長い文のリズムが好きで、それが気持ちよくて、読んでいる気がする。
    特に小説は、中身より文体が好きで、それから内容という順序。そんな作家は私には他にいない。
    毒舌ぶり、人間観察の鋭さも好き。
    それらはエッセイの方がより直接的なのでエッセイも好き。
    その2つが組み合わさったこの作品。
    もっと楽しめれば良かったのだが、ちょっと私の集中力が弱まっているのか、あるいはちょっとよくわからないところもどんどん飛ばして読んで行くいつもの元気さがなかったのか、何度読んでもわからないところがあり、いつもの心地よさより、難儀さ、自分のバカさを感じた。

  • いつもの通り、私としては例外的にゆっくりゆっくり読む。金井美恵子の文章をちゃっちゃと読めるはずもないわけで。うねるような言葉の流れに、酔っ払ったような気分になるのもいつものこと。こういう読書はほかにない。

    最初と最後がエッセイで、その間に短編小説が十篇という変わった構成は、どういう意図(あるいは事情)によるものなのか、また、冒頭のエッセイと次の小説が一つの章としてまとめられているのはなぜなのか(いつの間にか小説になってて、あれ?と思った)、よくわからないけれど、まあ、それはどうでもいいわ。この系統の小説(皮肉な笑いを誘うタイプではないもの)は久しぶりなので、心から堪能しました。

    「ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ」を思わせるような短篇もあるが、「ピース・オブ・ケーキ」の繊細さに対して、こちらはもっと下世話な感じのものが多い。金粉ショーのダンサーとか出てくる。性的な描写も結構直截的。考えてみれば、タイトルからして「カストロの尻」だものねえ。この表題作はおかしかった。

    どんどん横滑りしていっては元に戻り、そのたびに読む側の意識も引き戻されて、語られていることがどう流れているのか、常に考えながら読まねばならないという、金井美恵子独特の文体は変わらないのだが、今回は「横滑り」部分が( )でくくられているのが結構あって、ちょっと読みやすいように思った。あくまで「当社比」だけど。

  • 新聞の書評がこの作品と村上春樹の『騎士団殺し』をよく取り上げていると聞いて。
    前哨本として『小春日和』も読んでみたけど。
    この本は自分の読む呼吸と合わなかったと思う。
    そんなわけで、他の方に沢山素敵なレビューがあるので、こちらは流していただきたい。

    長い長い一文の中で、具体的なモノが色を伴って描写されていく。
    想像なのに、密に密にさせていって、途中で息をつくと、何処にいるか分からなくなる(笑)
    迷子本でした。

    金粉ダンサーズの話が地味にお気に入り。
    官能的なんだけど、ホテルで金粉洗い流す手間の話とか、そこ一欠片が残って浮気の証拠になったんじゃないかとか。
    なんか、夢があるわー。金粉ダンサー。

    あと、序盤の炭鉱のカナリアと芸術家の類似性。
    感じやすいが故に、他者より先に犠牲として殺されてしまう儚い弱いもの。
    ハッとさせられる。

  • 小説と思って読み始めたら、金井さんらしい批評的なエッセイで、それもまたよしと思いつつ読み進めるといつの間にか小説になっており、形としてはエッセイに挟まれた短編集というところなのだが、エッセイとつながっている短編もひとつひとつが完全には終わらす、次へと続くという、まことに不思議な作品。金井美恵子は金井美恵子にしか書けない作品を完成させつつあるのかも。
    金井さんの小説を読むと、女たちの間で片手間に続いてきた手芸がたまらなく魅力的で、10才の少女と、妻子ある男と恋愛して別れさせられたということは多分二十歳は越えている女が、刺繍をしながら映画や男の話をするのが、とてもいい。
    また、銀幕の名にふさわしい、映画の数々、とりわけべティ・デイヴィスの話は、私はこの映画はみていないが、べティ・デイヴィスのあの大きな白目勝ちの目や、小さく薄いへの字形の、くっきりと口紅の引かれた唇が作り出す表情が、目に浮かんで、殆ど映画を見たような気持ちになる。
    映画館の入り口に貼られたスチール写真、海辺の近くの家で過ごす単調な毎日、チャイナドレスの妖艶、サーカスのうらぶれた様子。
    幼い頃から無意識に、ときには意識的に取り込んだものが、血と肉となり、何十年もかけて、こういう文章ができるので、そこいらのペラペラの情報を適当に継ぎ接ぎしてできたものとは比較にならない。
    まさに、読むことでしか得られない喜びがある。
    金井美恵子の文章を読みにくいという人もいるが、私は30年くらい読んで、一度も読みにくいと思ったことはない。
    まあ、()の中の文章が長い上に魅力的で、つい()の前の文章を忘れてしまい、読み直すということはあるのだが。
    幸せな時間が過ごせた。
    久美子さんによる装丁もとても美しい。巻末に使った紙の種類と量が記されていて、これ、増刷するのも大変だろうなと思った。
    赤は褪せやすいからカバーは外さず、暗いところで保管したい。

  • 金井美恵子の最新作。
    シンプルな赤い紙に箔押しという装丁が美しい(しかしカバーの汚損率が高そうだ……)。
    各短編は緩やかに繋がっている。どれも、何処かもの悲しい雰囲気が漂っている。『胡同の素馨』が一番好きだ。

  • 金井美恵子の小説は、まるで世界を刺繍するかのように、言葉でチクリチクリと刺してゆく。

  • スタンダールが化けて出て来そうなタイトルですが。

    相変わらずの、無駄に詳細でダラダラと続く、確信犯の紋切り型表現の羅列。やったらカッコ書きと脱線の多い、活字なのに何故かのたくる筆跡が見えてしまう、我らが金井美恵子の文体は健在であ〜る。
    コレが目で追えるだけで楽しく、正直内容は何でもいいんだけど、うだるような真夏の昼下がりに応えられません〜堪らんわーと、ええ、だいぶM入ってますw。

    と言いつつも、谷崎「鍵」の老人が「数え年56歳」って、衝撃!後期高齢者ど真ん中、って印象しかない〜汗。

    大岡昇平の「石原慎太郎の瞬き(パチパチ)」も笑える〜

    まあでも、シリアスな会話中に、「うずちゅう(渦中)」とか「こくい(酷い)」とか言われたら、吹き出さない自信はないわ、私。人でなしと呼んで〜。

    最後の「小さな女の子のいっぱいになった膀胱について」。やったら前置きが長いが、そうか、森茉莉か。。。この文章を読んだ笙野頼子の反応が見たい。

    韜晦抜きの「あとがきにかえて1・2」が一層魅力的。
    日本堤の喫茶店って、「バッハ」だろうか。しかし、サラッと出てくる「パナマ・ドンパチ・ゲイシャ」って、名前もインパクトあるけど、100g5000円なりの高級豆じゃないか〜

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