レンタルチャイルド―神に弄ばれる貧しき子供たち

著者 :
  • 新潮社
3.86
  • (35)
  • (64)
  • (23)
  • (11)
  • (3)
本棚登録 : 445
レビュー : 77
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103054528

作品紹介・あらすじ

物乞いが憐れみを誘うべく抱いた赤ん坊は、月日を経て「路上の悪魔」へと変貌を遂げていく。執筆に10年をかけた渾身のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • かなり危険で強引な取材であったと思う。物乞いにて少しでも多く稼ぐために目をつぶしたり手足を切り落として生き延びる、戦場のような現実。作中は取材年ごとに3章に分かれており、少しずつ環境の改善はみられるが、それゆえの新たな苦難も発生している。
     あまりに絶望的な現実に、自分はこの本を読んで一体どうしたいのかといった虚無感すら覚えた。

  • インドと言えばカレー、ヒンズー教、ガンジス川、経済発展、映画、そしてカースト制

    カースト制に代表されるインドの差別の歴史は、学校の勉強で習っただけでも僕の心に暗い影を落としています。生まれた瞬間から既に差別が始まっていて、そこから抜け出すという事自体が容易ではなく、日々食べるだけで精一杯なひと達が沢山居ます。これは国家が貧しい訳ではなく、インドという発展著しい国であっても、そもそも人権という考え方が希薄である所から始まる貧困だと思います。
    この本では「レンタルチャイルド」という衝撃的なテーマを中心に据え、ドリーミーにインドを賛美する人々ののど元に鋭い刃を突きつける重さ100万トンのルポタージュです。
    マフィアたちは、物乞いの成功率を上げる為に、子供の目をつぶし、手足を切り落とし、熱した油をかける。幼児を女乞食に貸出し、その上前を撥ねる。
    そして、大きくなって稼げなくなった子供を放逐し、そんな子供たちが徒党を組み、さらに弱い女性やヒジュラ(いわゆる心が女性の男)を襲い暴力の雨を降らせる。
    負の連鎖は断ち切られる事は無く、弱い所へとその矛先を向けていくのでありました。
    既に15年ほど前の事を書いていますので、今はどうなっているのでしょうか。
    発展しているとはいえ被差別階級、不可触民がいなくなるとは思いません。しかもこれは誰かがボランティアでどうのこうの、寄付でどうのこうのではなく、経済発展著しい大国の内部の事なんで、国ぐるみで変えない限り変わらない事柄なんだと思います。
    この重苦しく辛い本を読むと貧困というものの本質というか、人間というものがいかに環境や境遇で決まってしまうかが詳らかにされているようで身に染みます

  • 物乞いをするとき、より悲惨に見えるほうが恵んでもらえる額が多くなる。
    五体満足な者よりも障害や怪我がある方が稼ぎがよかったりする。
    また、女が一人で物乞いするよりも乳飲み子を抱えて「この子のミルク代を」と手を伸ばす方が喜捨は増える。
    そのため、子供がいない女は仲間から子供を借りて道に立つ。
    そこに目をつけたのがマフィアで、親を騙して預かってきた子や誘拐してきた子を物乞いたちに「レンタル」する。

    旅の中でこの「レンタルチャイルド」の存在を知った石井さんは、マフィアとも接触しながら数年の月日をかけて三度のムンバイ取材を行い、レンタルチャイルドについて調べる。
    この数年の月日の中でレンタルチャイルドたちは成長し、犠牲者だったはずの彼らは凶暴な悪魔となっていく。

    大人たちの金儲けのために誘拐され、手足を切られ、使い物にならなくなったら捨てられる子供たちが、その後どのように成長していくのか。

  • インドのスラムに住む子供たちを追ったルポルタージュ。
    一度のインド行きではなく、何回もインドへ行き、ずっと同じ子供ではありませんが、子供たちの境遇と生き方について語っています。
    なんとなく知っていましたが、物乞いをするために自分たちの身体を傷つけたり、親やその他の大人に身体を傷つけられたりして生きている子供たちの多いこと…。発展していくインドの影で彼らがどう生きていくのかが気になります。

  • ノンフィクションです。
    梁 石日さんの『闇の子供たち』を読んだ時もとてもショックを受けましたが、これも衝撃的でした。
    貧しさとは何なのか考えさせられます。

    【福岡教育大学】ペンネーム:猫

  • 前橋子供図書館で読んだ。発展途上のインドで起きていることを危険を顧みず潜入し見たこと聞いたことを書いている。途中

  • こういう世界こそフィクションだったらいいのにと、ずっと思いながら読んでいました。
    インドの路上で物乞いをして生きている子供達。体を傷つけ、時には死をも売り物にして命をつないでいるようです。ようです、と、伝聞形にしかできない。目の当たりにはしていない。できそうもない。

    においや空気感は、体験するのと文字で読むのとは大きく違いますよね。百聞は一見にしかず。
    私は現地に行って取材をしてという気概は到底持てず、映像ですらない、この文字の感覚だけで気持ちが塞いでしまいます。
    頭では目の前のひとりを助けたからといって何かが変わることはないと思ったり、だから、取材時の行動に「そうしたからってどうなる」と灼けるような気持ちを持ったり、でも実際目の前にしたら理屈じゃないんだろうと思ったり
    石井さんも、他の記事や書籍は見ていないからわからないけれど、葛藤したり悩んだり、矛盾した気持ちを持て余したりしたんじゃないかな…と想像したり。

    一方、物理的には豊かとされるこの日本で、毎年たくさんの自殺者も出ていて。
    そこにはそこの苦しみがあるのだろうと思います。どちらがマシかとかそういうことではなくて、「苦しみ」は「苦しみ」なのですね。隣にいるあの人も、想像もつかないところで苦しんでいるかもしれない。それを、●●よりは良いなんて括ることはできない。したくなるけれど、してはいけない。それは励ましではなくて、追い詰めることにもなりかねない。

    遊んだり、恋をしたり、平和に、笑って生きられる時間が多くいられたらと願わずにはいられません。

    ラジャは、ソニーは、ムニは、他の子たちは、あのとき出会ったヒジュラは、その後、どうしているんだろう。

  •  インドはムンバイのスラム街を舞台に、最貧困層の子どもたちを描いたノンフィクションである。

     「レンタルチャイルド」とは、物乞いをする女たちが人から「借りる」赤ん坊のこと。
     女の物乞いは、赤ん坊を抱いているともらう金が格段に増える。そのため、老婆でさえ赤ん坊を抱き、それが我が子だと偽るのである。マフィアに金を払って借りるケースも多いという(マフィアは、赤ん坊を拉致ってきたり、売春婦の生んだ父なし子を買ったりして調達する)。

     誤解を招きやすい書名だが、これはレンタルチャイルドの問題だけに焦点を絞った本ではない。レンタルチャイルドをさせられていた赤ん坊たちが、その後にたどる過酷な運命までが描かれたものなのだ。つまり、タイトルのつけ方としては『コインロッカー・ベイビーズ』(村上龍)と同型。

     最初の第一部では2002年の出来事、最後の第三部では2008年の出来事が描かれる。取材・執筆に10年を要したという渾身作だ。

     マフィアに拉致されてきたレンタルチャイルドたちは、成長すると片眼をつぶされたり、片脚を切断されたりして物乞いをさせられる。不具にしたほうが、物乞いで同情を集めて稼げるからだ。映画『スラムドッグ$ミリオネア』にも描かれたそんなエピソードが、本書の中ではいっそう生々しく描き出されている。

     不具にされた子どもたちは、大きくなって物乞いでは稼げなくなると、路上に放り出される。そして、路上生活をするなかで、彼らの一部もまたマフィア化し、より弱い立場の者(女乞食など)から金を奪い取って暮らすようになる。
     哀しき暴力の連鎖。世界中どこにあっても、貧困と暴力はつねに地つづきである。

     日本でも生活保護費ピンハネなどの「貧困ビジネス」が社会問題化しているが、本書に描き出された絶対貧困層の「貧困ビジネス」は、日本のそれが牧歌的に見えるほどすさまじい。
     とくに、最後の第三部で描かれる、買ってきた死体をリヤカーに積んでの物乞い(死体が自分の肉親だと偽り、火葬のための薪代をせびる)というエピソードには言葉を失う。芥川龍之介の『羅生門』のような世界が展開されているのである。

     映画『スラムドッグ$ミリオネア』を観てから読むと、いっそう衝撃的な本だ。本書はいわば、『スラムドッグ$ミリオネア』の超リアル&超ダーク・ヴァージョンだから。
     あの映画は、インドのスラム街の過酷な現実の中に心あたたまるファンタジーを持ち込んだものだった。いっぽう、本書には過酷な現実しかない。

     ここに描かれたのは、まさに「この世の地獄」のような世界。映画顔負けのドラマティックなエピソードがたくさん登場するが、映画化は不可能だろう。映画にするにはどぎつすぎるエピソードが多いから。

     それでも、地獄のような暮らしの中で登場人物がときに見せる人間性の輝きが、胸を打つ。
     また、著者がありきたりな正義感やモラルをあまり振りかざさない点も、好ましい。平和で豊かな日本に暮らす我々のモノサシで、スラムの人々のぎりぎりの生の営みを裁断できるはずもないのだ。

     『絶対貧困』には随所にあったユーモアも、本書では影をひそめている。ユーモアの入り込む余地がないほどミゼラブルな世界が描かれているのだ。

  • 2010-7-4

  • 想像を絶する世界。
    赤ん坊が床ずれになるくらい放置されるなんて、10歳に満たない子が、ただ生きていくのに必死になるなんて。
    唯一、マノージが職を得て家庭を持つことが出来たことが救われる。

全77件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家。
1977年東京都生まれ。大学卒業後にアジアの貧しい国々をめぐり、ドキュメンタリー『物乞う仏陀』(文春文庫)でデビュー。その後、海外の貧困から国内の災害や事件まで幅広い執筆活動を続けている。NHK「クローズアップ現代+」などにも出演。
著書に、児童書に『ぼくたちはなぜ、学校に行くのか。』『きみが世界を変えるなら』(共にポプラ社)、『みんなのチャンス』『幸せとまずしさの教室』(共に少年写真新聞社)、『おかえり、またあえたね』(東京書籍)がある。一般書として、「新潮文庫の100冊 2015」に選ばれた『絶対貧困』『遺体』(共に新潮文庫)、『原爆』(集英社)、『43回の殺意』(双葉社)など多数。

「2020年 『地球村の子どもたち 途上国から見たSDGs ③平和』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石井光太の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
道尾 秀介
百田 尚樹
三浦 しをん
貴志 祐介
京極 夏彦
湊 かなえ
村上 春樹
村上 春樹
アゴタ クリスト...
有効な右矢印 無効な右矢印

レンタルチャイルド―神に弄ばれる貧しき子供たちを本棚に登録しているひと

ツイートする
×