蛍の森

著者 :
  • 新潮社
4.12
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本棚登録 : 296
感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103054542

作品紹介・あらすじ

その森は国に棄てられた者が集う場所――ノンフィクションの旗手が挑む慟哭の社会派ミステリー! 四国の山村で発生した謎の老人連続失踪事件。容疑者となった父親の真実を探るべく、私は現場へと向った。だが、そこに待っていたのは、余りにも凄絶な「人権蹂躙」の闇だった……いま蘇る、理不尽な差別が横行した六十年前の狂気。人はどこまで残酷になれるのか。救いなど存在するのか。長年の構想を結実させた情念の巨編!

感想・レビュー・書評

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  • 人生折り返しを過ぎた(はず)だと言うのに知らないことばかりだ。
    自分の無知にまたしてもあきれ果てる。
    ハンセン病の名前くらいは聞いたことがあった。
    ハンセン病訴訟のニュースもうろ覚えだけれどなんとなく知っている。
    そう言えば小泉さんがハンセン病患者と握手とかしてたっけな。
    私のハンセン病の知識はこの程度。
    なぜハンセン病訴訟がこれほどまでに長引いたのかその裏には何が隠れているのか
    考えたこともなかったし考えようともしなかった。
    この本を読むまでは。

    この本はハンセン病患者の歩んだ苦悩の道を描いた作品である。
    ノンフィクション作家出身の著者だけあって、圧倒的なリアルで迫ってくる。
    ハンセン病と分かった時点で故郷を追われ、療養所に入るか放浪の生活を強いられるしかなかった患者たち。
    人々の差別はあまりにもひどくむごたらしい。
    そもそもが国による政策と無理解によるためなのだから遣り切れない。

    内容そのものは非常に重苦しく、読み進めるのが辛かった。
    しかしミステリー仕立てになっているためか小説とも十分楽しめる。
    過去の事だとは言え、ハンセン病患者のたどった道を知ることは有益だ。
    これは氷山の一角。
    ハンセン病に限らず国の政策が誤っていることも当然あるだろうし、人々の無知による悲劇はまた繰り返されるのだろう。
    それを防ぐためにも何が真実なのか見極める力を養いたいと痛感した。

    良い作品です、色々な意味で。
    お仲間さんのレビューのおかげでまた一つ勉強になりました。
    ありがとう。

    • vilureefさん
      まっき~♪さん、こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      お返事遅くなりごめんなさい(^^;)

      思わず知らなかったものとし...
      まっき~♪さん、こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      お返事遅くなりごめんなさい(^^;)

      思わず知らなかったものとして蓋をしてしまいたくなりました。
      それほどまでに衝撃的だったというか。

      でもいい作品でしたよね。
      小説としても。
      たくさんの人に読んでほしいと思いました。

      それにしてもまっき~♪さんの選ぶ本、いつも参考になります。
      幅広いですよね~。
      2014/08/12
    • vilureefさん
      まっき~♪さん、こんばんは!

      おっと、またスランプ突入ですか・・・。
      本を読むにも体力気力がいりますからね。
      バイオリズムって結構...
      まっき~♪さん、こんばんは!

      おっと、またスランプ突入ですか・・・。
      本を読むにも体力気力がいりますからね。
      バイオリズムって結構重要と思います。
      それにまっき~♪さんの傾向って、気になる分野を攻めて行って枝葉がどんどん増えてしまうって感じがします。
      合ってます?
      いつも、おお!すごい、攻めてる攻めてる!とひそかに思っておりました(^^;)
      新しいジャンルをチャレンジするのって楽しいですが、広げすぎると収拾つかなくなりますよね・・・。

      でもそんなまっき~♪さんの本棚好きですよ( *´艸`)
      つい先日も「恋のトビラ」のレビューがすごく良くて、図書館に予約しちゃいました♪
      キュンキュンしそうでいいですね!

      「海うそ」とても良かったです。
      梨木さんてファンタジーの傾向が強いのかと敬遠していたのですが、これは全然でした。
      想像と大違い。
      他の作品はどうなのか、ちょっとドキドキです。
      まっき~♪さんは苦手な作家さんなのですね・・・。
      まさに人それぞれ。
      こういうの面白いですよね♪
      2014/08/15
  • フィクションのようで、
    しっかりしたどんでん返しがあるのがすごい。
    夢中で読み続けた。
    過去の非道な人たちの罪と
    今の日本の在り方と。
    色々と考えさせられる。
    四国に行ってみたい。
    久しぶりにぞっとくる良い1冊。

  • 癩病で差別され、社会から隔離されて生きる苦しみが伝わってきた。そして人は被差別者に対して、こんなに残酷になれるのかと。展開が予想できないストーリーで引き込まれ、最後までのめり込んで、心を持っていかれそうな感じで読みました。
    警察の行動が非現実的なのがちょっと気になったので星四つ。

  • 重くて哀しい かつて国が隠し隔離し続けた癲病患者への政策が如何に患者や家族に計り知れない加害を与え続けたかを抉ってくれる作品。ハンセン氏病については極く薄い知識しか無いけど、ここでは間違った知識しか無い時代の1952,3年の話と現代に起きた殺人事件の話を交互に繰り出して相互の関連性を炙り出す。陰惨な事象に心が鬱ぐけど最後の優しいエンディングに救われました♪

  • この本を読む前の私は、ハンセン病について「過去に差別された病気」とぐらいしか認識していなかった。
    具体的にどんな病気だったのか?
    どんな差別をされていたのか?
    そして、驚くべきことに今現在もハンセン病の人のための施設が全国にあるとかいうことも知らなかった。
    この本はあくまでフィクションとのことだが、ハンセン病についての赤裸々な事実を知ることができたと思う。
    思わず目を背けたくなるような描写もあるが、それが現実なんだ、と。
    知ることができてよかった。

  • ノンフィクション作家による初のフィクション。
    緻密な取材をもとにして描かれるのはあくまでフィクション。しかし、ハンセン病に対する当時の差別は史実に残る以上のものなのかもしれない。そう思わざるを得ないほどの生々しさと現実感があった。インタビュー等で多く残されているのはあくまで隔離施設に収容されていた人々の声。しかし、著書のように施設にも入らず、ひっそりと身を寄せ合うようにして生き抜いてきた人々は確かにいたのだろう。そしてハンセン病に対する差別意識はおそらく著書にあるのと同様なもしくはそれ以上かもしれない事実があったことを想像させる。それは国の集団の偏見と先入観による誤りであったということを忘れてはいけない。そして、集団の力というものの危うさを胸に刻まなければいけない。
    それは決して過去のことではない。
    ハンセン病の謝った歴史を知る事ができるとともに、ミステリーとしても読み応えのある1冊。
    フィクションという形式で描かれているからこそ夢を託す事ができるのかもしれない。

  • 重い内容ですが、読むのが止まらず、です。

    ハンセン病。よく知らないけど、こんな偏見による差別って、昔はこんなひどいものだったのかと、ただただ驚き。

    プロローグが、どこかで繋がってるのかと思いながら読んでいたけど、最後に、あぁぁここで!と涙がぽろぽろでした。

    子供の頃の乙彦と、大人になってからの乙彦が、あまりに繋がらなさすぎたけど、最後あたりで、やっと、同じ人なんだと、ぐぐっときた。

    この人の本、もっと読んでみたい。

  • ミステリーとしては犯行にいたる経緯や心の動きに無理があるような気がして違和感を感じる。ただ作者が本当に書きたかったのは過去の章の方だと思う。
    ハンセン病に対する偏見や差別は知識としては知っていたけど、これほどのものとは思わなかった。犯行を犯した小春の娘は50代、ということは私の母より年下。そんな年齢の人でも学校にも行けず差別や貧困に苦しみながら人生を送っている人がいるとは。おそらく今現在も…。ハンセン病差別は決して過去の出来事ではないとつくづく感じた。
    後半は一気読み。ラストに救われる。

  • これは、ノンフィクションではない。
    しかし、この物語の根底に流れているのは、丹念な調査、取材に基づく真実。
    著者は、その真実のあまりの過酷さに、作品をフィクションとして書くことを選んだのだと思う。
    単純に、本書を推理小説として読むことはできない。

  • ボクは完全に舐めていました。
    ハンセン病をテーマとする本書は、訴訟の終結により、その歴史や差別を追うだけのものだと思って読み始めましたが、衝撃を受ける内容でした。

    フィクションとはいっても、生々しい描写で、読み進めるのは苦痛でしたが、本書を読み終えたことで、ボクはどん底とも言える人の人生があることを知りました。
    また、そういう中でも生き続ける人のたくましさを知ることができました。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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