「鬼畜」の家:わが子を殺す親たち

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 518
レビュー : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103054566

作品紹介・あらすじ

死んだ犬を捨てた荒川に、次男も捨てた……虐待家庭の「核」に迫る戦慄のルポ! 次男をウサギ用ケージに監禁、窒息死させ、次女は首輪で拘束した夫婦。電気も水も止まった一室で餓死させた父親。奔放な性生活の末に嬰児2人を殺し、遺体は屋根裏へ隠す母親。「愛していたのに殺した」という親たち、その3代前まで生育歴をさかのぼることで見えて来た真実とは? 家庭という密室で殺される子供たちを追う。

感想・レビュー・書評

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  • 「船戸結愛ちゃん虐待死事件」の怒りがおさまらない。この事件の詳細は今後明らかになっていくだろう。
    しかし、虐待死事件は過去にもあった。
    結愛ちゃんへの鎮魂歌にはならないだろうが、彼女の死を無駄にしないためにも、過去の事件について知りたいと思った。
    本書は以下の3つの事件について書かれている。
    ①厚木市幼児餓死白骨化事件
    ②下田市嬰児連続殺害事件
    ③足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件
    本書で語られていることが、事件の全てではないだろう。著者の主観も語られている。
    しかし、3つの事件に共通しているのは、親が抱える業があまりにも深いことである。それは、一家の業、一族の業といっても良い。親が抱えた宿業が、我が子を死に至らしめた。我が子を殺したのは親であり、親が加害者であることは間違いない。人を殺めた罪が消えるわけではない。
    しかし、その親さえも被害者なのかもしれない。
    なぜなら、親たちが育った家庭環境があまりにも悪いからだ。
    川崎市の上村遼太くん殺害事件の加害者たちも家庭環境が悪かった。
    人間とは「人の間」と書く。父親と母親という二人の間にしか子は育たないということの意だろうか。劣悪な家庭環境で育った経験は、こうも人間性の欠落を生むものだろうか。幸せな家庭環境が、子どもにとっていかに大切か。
    本書を読んで、痛感した。
    しかし、それを望んでいながら、できない人がいる。
    宿業に喘ぎながら、その鉄鎖から逃れられないのだ。
    強い強い意志でその鉄鎖を断ち切っていく以外ないのだ。

  • 重い重いノンフィクションだった。
    いつもながら、著者の取材力に感心する。
    テレビ、新聞などで事件を知る時、信じられない親だな、鬼畜だなと思う。しかし、深く考えることなく過ごしていると、また同じような事件が起こる。
    「鬼畜」であることは確かにしても、その親たちの生育環境はひどすぎる。6人の父母たちすべてが想像を絶する育ち方をしている。罪は罪だが、これを読んで、誰がまともに彼らを責めることができるか。

    このような事件をなくすためには、その人たちを罰すると言うより、この世に生まれて来た子供すべてが、親か親の代わりの誰かに愛を注がれ、手間をかけられ育てるような社会にするしかない。

    やりきれない、暗い気持ちで読み終えるのかと思っていたら、最後に、事情がある女性の出産を助け、養子に出すNPO法人のことが紹介されていた。
    このような活動をする方がいてくれるというのは希望だ。しかし、誰でもができるわけではなく、では自分に何ができるかと考えてみる。

  • 虐待をする親も虐待や愛情の乏しい家庭で育ったと言う事は分かる。
    彼らも辛く寂しい子供時代だったのだと。
    けれど決して共感できない。
    幼く、抵抗もできず、帰る場所も自分で選べない弱い立場の子供達に、惨たらしい所業をし続け、命まで奪う。
    自分が愛情を受けなければ、当たり前の善悪まで分からないの?
    絶望や苦痛の中で最期まで「いつかは愛される」「自分は愛されてる」と信じて短い生を旅立っていった子供達を思うと、どんな境涯も後付の言い訳にしかきこえない。
    この世に生まれて、お父さんお母さんに抱き締められて生きたかったろうな。
    痛かったね、寂しかったね、よくがんばったね。

  • どれもニュースで見た事件です。特に一番覚えているは3番目のウサギのケージに閉じ込めていた事件です。当時も衝撃的な事件で親に対して殺意を憶えました。世の中の人もそう感じた人多かったはずです。
    壮絶な虐待や、死体遺棄、出産自体の隠蔽など見るに堪えない事件を、名手石井光太が書くのだからそれはそれは重厚な本になる事間違いなし。そして読んだ感想もその予想通り素晴らしい本でした。事件を起こした親たちの生い立ちを掘り起こすことによって、負の連鎖によって子供たちが虐待され殺されていくのがまざまざと見えました。
    実際にその犯人たちが罰せられるのも当然。出来れば重い罰を与えて欲しい。しかし、そこで止まるのではなくて、セフティーネットの拡充が何よりも大事だと痛感しました。今まさに虐待による事件が世間を騒がせ、親子関係に行政が介入する事の難しさに毎回毎回歯噛みする思いです。
    石井氏が冒頭で「彼らなりに子供愛していたのだろう」と言っていますが、読みはじめは何言ってやがると思いましたが、読み終わると彼らなりの歪で狂った理屈が有り、そこに全く子供への感情(愛情とは言いたくない)が無いとは言えなくなりました。
    生育環境で「他の人への接し方」、「基本的な生活の方法」を教わらない子供が大人になった時、またこういった悲劇が繰り返されるのでしょう。
    色々な人に広く読んで頂きたい本です。

  • 遺伝性の疾患だとしたら治療法がいつか出るのだろうか。

  • 2018.09.03

    3つの子供を殺した残虐な親の殺人事件が詳細に紹介されています。
    家庭環境、生活環境、お金、知能、倫理観…どれを取っても最悪な家族の話でした。
    まさにこれぞ親から子の負の連鎖というような殺人事件。
    でも、子供は親を選べないんですよね。
    どんなに最低最悪な親でも、子は親に頼るしかない。その親を愛してる。
    どの犯人も、「犯人なり」に、子を愛してはいたのでしょうが…
    本当に家庭環境や教育って恐ろしい。

    特に2つめの下田市嬰児殺しのはあまりに悲惨な家庭すぎて読んでいて気持ちが悪くなり、休憩しながら読み終え、その夜はなかなか寝付けないほどでした。

  • この手の事件は毎日のように報道されるので
    あまり興味がわかなかったが
    読んでみたら、興味深かった

    各家庭には各家庭の価値観があり
    各家庭では一般的なものとはズレが生じていても
    確かな愛情がある
    親側も子に子側も親に愛情がある
    子供は被害者というよりは
    ふたつのケースは事故死のような括りでいい気がした

    また、加害者の親が毒親である
    貧困が何やかんやと言われるが
    親の子供への愛情の掛け方の方が大きく影響するように思う
    全部がこのケースに当てはまる訳ではないが
    石井氏のように綿密な調査だと面白い
    もし、裁判のときに、こういう部分も弁護士側が調べてきていたら
    調べてきてたのかもしれないが
    もう少しドラマチックな感じで伝えていたら刑期も短くなったのでは?

  • 「厚木幼児餓死白骨化事件」
    「下田市嬰児連続殺害事件」
    「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」
    といった、3件の幼児虐待事件を扱ったノンフィクション本。

    読む前に、この本がどういうものか大体タイトルで想像がつくし、確実に子供を虐待死させた親たちへの憤りが募るだろうと思ったらそうはならなかった。
    もちろん、読んでいて腹は立つ。
    だけど、彼らには彼らなりの事情があったという事は理解できた、という内容の本になっている。
    もちろん、大前提として、彼らのした事を絶対に肯定する事ないし、許しがたい悪い事をしてるという認識の上で。

    3件の幼児虐待事件を見ていると、彼らにいくつかの共通点があるのが見えてくる。
    まず、その3件の両親共に信じられない程、まだ子供であるという事。
    そして、3件の両親共に、その両親が異常な性格で彼らと異様な関係性であったという事。
    まず、最初に取り上げられている「厚木市幼児餓死白骨化事件」は、父親の母親は統合神経失調症で近所でも奇行が有名だったし、下田市の事件の母親の母親、足立区の事件の母親の母親はこの本の作者がインタビューの際、記者が引くような言動をとっている。
    まともじゃない親に育てられ、まともな常識をわきまえるという事を教わってない。
    特に、2件目の下田市の母親は子供が家の中で出産、中絶を繰り返しても全く気付かず、子供から金を搾取する事にばかりに関心がいっている。
    しかも、搾取した金で自分は贅沢放題。
    そんな母親を子供たちの母親は嫌うどころか慕っている。

    この本は子供たちがどのように虐待され、死に至ったかというよりは、子供たちの親の生い立ち、そしてその親がどういう人間だったのか、という事を書いている。
    これを読むと、何となく虐待した親に同情的で、その親の方がむしろ悪者とはなっているけど、多分、その悪者の親たちにもそれなりの親がいたんだろうと思う。
    どの親も自分たちが生きていくのに精いっぱいで、子育てする精神的、経済的余裕がなく、それが負の連鎖を生んでいる。
    これを読んでいて、私もこんな親にこんな環境で育てられたら同じようになっていただろうと思った。

    それと、最初の話、子供を遺棄して白骨化させた親の話は読んでいて、最近読んだ小説を思いだした。
    あの小説はこの事件をもとに書かれている。
    それは虐待死した子供のある行動ではっきりした。

    読む前に覚悟していたほど、読み終わってぐったりとつらくなるという本ではなかったけど、もちろん、実際にあった事を書いてあるので、文章の訴えかける力が強いし、読んでいてやるせなくなったり、しんどくなるには違いない。
    だけど、そういうものこそ、目をそらさずに時には見る事も必要なんだと思う。
    子供を虐待した親たちを擁護する気なんて一切ないけど、一応、彼らには彼らなりの事情があったし、この本を読まないと、ただ憎しみや蔑みの対象だった、という彼らがただそれだけの存在ではないというのが見えてきた。

  • 様々な悲惨で凄惨な事件を題材にした本を
    本当に古今東西たくさん読んできたけれど
    読みながら『怖い』と口ずさみ
    何度も本を閉じたのは、初めてだ。

    石井光太氏が書かれるノンフィクションはライブ感があり
    まさに目の前で、自分のすぐ隣で起こったことのような
    リアルさをもって、心の奥深いところを抉られる。

    『浮浪児』を読んだ後だけに
    人の尊厳・強さ・弱さ、あらゆる感情は
    なぜ、こんなにも違い変わっていくのか。

    見えない境界線を超えるか超えないか
    そのきっかけは、やはり、陳腐な言葉と
    なってしまうかもしれないけど『愛』なんだと思う。

  •  3件の子殺しの事件。いずれも、殺した親だけではなくその親、あるいはまたその親まで遡る「連鎖」。ひどすぎる事件の裏側にあるには、数十年も続く貧困と教育の失敗。つまり行政。
     日本小児学会は2013年頃の年間に虐待で死亡した子どもの実数を約350人と推計しているという。この3件はまさに氷山の一角で、この実態は完全に行政の敗北。そして、ずっと手をこまねいているのは、マジョリティにとって「関係ない」から。これは、ホームレスなどの問題とも根は同じ。
     
     本社会に潜む闇を照らすノンフィクション。この社会、このままていいはずがない。
     

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著者プロフィール

作家。
1977年東京都生まれ。大学卒業後にアジアの貧しい国々をめぐり、ドキュメンタリー『物乞う仏陀』(文春文庫)でデビュー。その後、海外の貧困から国内の災害や事件まで幅広い執筆活動を続けている。NHK「クローズアップ現代+」などにも出演。
著書に、児童書に『ぼくたちはなぜ、学校に行くのか。』『きみが世界を変えるなら』(共にポプラ社)、『みんなのチャンス』『幸せとまずしさの教室』(共に少年写真新聞社)、『おかえり、またあえたね』(東京書籍)がある。一般書として、「新潮文庫の100冊 2015」に選ばれた『絶対貧困』『遺体』(共に新潮文庫)、『原爆』(集英社)、『43回の殺意』(双葉社)など多数。

「2020年 『地球村の子どもたち 途上国から見たSDGs ③平和』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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