愛なんて嘘

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103056546

感想・レビュー・書評

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  • 小説というのは、一種の思考実験なのではないか、と思うのです。
    リアリズムの枠の中で、設定という条件を与えたときに、
    登場人物がどういう行動をとってどういう結果に至り、どういう結論を導き出すのか? という。

    現実の中で起こることには、常識とか倫理とか法とか、
    私たち自身の人生の不可逆性とか不再現性とか、
    そういう様々な拘束があるから、私たちは小説を読むのです。

    「愛なんて嘘」というこの言葉は、
    愛について、運命について、そういう抗い難い力について考え続け、幾つもの実験を繰り返してきた白石さんが辿り着いた、一つの仮説なのではないだろうか。
    そして、その仮説を検証するための実験記録が、ここにある6編の物語なのである。

    この仮説がはたして支持されるのか、それとも棄却されるのかについては、
    けれど慎重な考察が必要だ。

  • 最初の「夜を想う人」を読んで、うわあ、と思った。うわあ、私この小説めちゃくちゃ好きだ…。
    好き嫌いがわかれると思う、というか、この主人公たちの気持ちはわかるひととまったくわからない人にばっっっさり分かれると思う。私はわかる気がした。
    こんなの書ける人がいるんだ、しかも男性なのに。と思ったけど、こんな想いを抱くのに実は男性も女性も関係がないんだって、究極の「自己愛」の小説だいうコピーを読んで思った。帯に書いてる「狂気まみれの純愛」って、自分に対するもののことだったのか。
    そう思って読むと、これは恋愛小説ではなく、自分の生き方探しの話。(恋愛をとおして自分探しをする、というのともなんか違う)
    こんな視点から恋愛を書くなんてすごいなあ。

  • 名作

  • 2016/05/23読了
    「誰といても孤独なのは、この世界が人々の裏切りで満ち満ちているから」

    まさにタイトル通り、理性的ではない6話。心の奥底にいる相手のところへ向かう潔さ。どれも箍が外れるというのとは違う。久しぶりに読んだ白石さんやっぱり好きだ。しかし残念なことに エロくなかった....
    白石一文なのに←

  • ありえない
    愛の形の6編の短編集です。

    人は
    心の中に
    どうしても忘れられない人がいて
    それが叶わない恋や
    愛してはいけない人だと
    逆にどうしようもなく
    止められない気持ちが
    ふつふつと燃えあがるのかな

    なかなか興味深い本でした
    現実ではなかなか世間が許さない
    お話ですが…
    でも実は愛って嘘が多いかもて
    ホントにそう思える

  • 紀伊國屋書店員がオススメする本!の特集から読みました。

    短編六篇でした。

    漢字がちょっと多いので、読みにくさはありましたが、ストーリーとしては区切りがあったので読みやすかったです。

    愛なんて嘘。タイトル通り、全部が嘘の結婚です。


    【夜を想う人】
    バツイチの与田。
    ある日、ジャグラーの前妻、奈津が2~3年間隔の休息に帰ってきた。

    与田と奈津は一年の結婚生活を経て離婚。
    奈津が誰かに与えられるだけの人生に耐えれなかったために、誕生日のその日に離婚届を置いて失踪した。

    与田は奈津をアメリカの小さなバーで拾ったと言ったが、実は与田のほうが鬱で、奈津が介抱してあげていた。彼が車で奈津に突っ込んだことが原因で、奈津の足には後遺症がある。

    奈津が死んで、嫌がっていたアメリカに出張に行くことになった与田。奈津と別れて自分を取り戻したように、美緒子とも離婚。

    【二人のプール】
    シュンとマリは結婚5年目に離婚。
    シュンがある日、プールができたといい、そのときが来たらまた結婚しようと言って別れた。

    その後、お互い再婚したが、マリの方はシュンと居れることが最大の幸福。
    再婚相手の高志と娘の一葉との生活は苦痛だった。

    マリが高志にことを話すと、シュンと高志で話をつけ、マリはシュンの元へ。

    【河底の人】
    リッキーとマルとは、高校を卒業して、エスカレーター式の大学に行くのは嫌だった果穂が、アルバイト先で出会った友人。

    果穂は昇さんと付き合っている。

    ある日、果穂が以前付き合っていたオサムさんが、寿司屋で働いてるとリッキーに言われ、寿司屋に。

    オサムさんとの出会いは、アルバイト先。
    草野球チームの応援にオサムさんを呼びに言って、飲んで男女の中に。

    果穂と別れた理由を、ホームレスに向かって「私ああいう汚い人だめ」と言ったことだとオサムさんは言った。
    「あのホームレスは僕だったんだ」

    昇さんにプロポーズされ、急いで身支度して出ていき、オサムさんの元へ。

    【わたしのリッチ】
    猫の名前がリッチ。
    元彼の正次と居るときに飼っていた猫。
    俺らは貧乏だけど、お前にはリッチな生活をという意を込めてリッチ。
    正次が怪我をしてからギャンブルに溺れ、別れたとき、リッチも引き取った。

    いま一緒に住んでいる邦宏は、猫に無関心。
    角膜に傷があるから見といてと言っても見ていてくれなかった。
    正次はそんなことしない。

    邦宏は、小枝子の幼稚園の園長先生の甥っ子で、園長先生の計らいで結婚。
    ある日、園長先生が一緒に引っ越してこい。との提案。

    引越し業者を呼んで見積もりをしていたら、リッチが引越し業者に懐いたと邦宏が言った。
    その引越し業者は正次だった。

    リッチは正次を思い出し、その日から正次を探して昼夜関係なく鳴く。
    邦宏は公認会計士の試験勉強中で、リッチの四六時中鳴くことに耐えかねて、押し入れに2~3時間閉じ込めた。

    邦宏は「猫はもう飼えない」と、正次に引き渡すことに。
    引越し当日、正次の「小枝子も一緒に来いよ」に乗った。

    【傷痕】
    巻田本部長の家で飲み会をし、つい飲みすぎて寝てしまった志摩。
    朝になって巻田本部長が家まで送ってくれることになったが、その途中でカフェへ行き、巻田本部長から誘いを受ける。

    巻田本部長は昔ワルだった。
    それから逃れるため、母親によく似た志摩と駆け落ちをしようと、一年志摩に考える時間を与え、一年後の今日、OKなら羽田空港に来てくれ。と言われた。

    志摩は人事課の浩市と極秘で付き合っていた。
    クリスマスイブに浩市からもプロポーズを受けていた志摩。
    巻田本部長をとるか、浩市をとるか。

    九月に結婚する予定を立てた志摩だったが、巻田本部長を兄貴と呼ぶ草薙が現れ、新千歳空港行きのチケットを渡された。

    志摩はそのまま羽田に向かった。

    【星と泥棒】
    泥棒が入ったと、研一の友人の妻、佳世子から電話が入った。
    佳世子の夫、良英は二か月前に死去していた。

    泥棒が怖く、安心できないからと、佳世子と娘の真衣は研一の家に。

    良英との出会いは予備校。
    良英と佳世子が結婚したのは、良英が三十二歳の時。
    二人の挙式前に、研一も美貴と結婚。

    美貴は研一の気持ちが自分にあるのではなく、佳世子にあるとわかっていた。
    良英との関係が壊れれば、自分に向くと思い、良英と美貴は一度きり寝たが、研一がその後も良英との交流を断たなかったことを機に離婚。

  • 愛なんて嘘、なのか…嘘こそが愛なのか…自分に正直に生きることと、世間的な愛、家庭、恋人、の狭間でたゆたうように進むストーリーは、せつなくも心地よく流れるような真実でした。

  • タイトルで「嘘」と。
    の、わりには。すべて、愛に、走っている⁉︎短編集かと。
    どの女性も…そっちを選ぶ⁉︎
    の、展開…だったかな。
    最初とラストの短編は。
    ちと、趣き違いますが…アタシ的には…。

    最初の短編『夜を想う人』
    「そんなことしたら、あの人の人生を侮辱したことになる」
    前妻の死に対して妻になげるオットの‼︎コレ‼︎
    前妻に対するこのオットの愛の深淵。脱帽、しま、した。
    間の四作は、すべて女性が。元のさやにおさまる感じ。
    逃げてきた風の元カレに…かえっていくの…
    何もかも捨てて…幸せにみえることから、きっぱり決別‼︎
    困難と、感じる方へ、と。立ち向かうラストでして。
    ラストの短編『星と泥棒』
    親友の突然死と、泥棒をきっかけにして。
    その未亡人とお嬢さんと一緒に同居する男性のお話。
    その男性の元妻に
    「あなたも彼女も人間として本当に悪質だわ」って‼︎

    「嘘」じゃなくて「誠」かな⁉︎の愛についての短編集!

  • 白石さんの短編は読みやすい。ちょっと現実離れしている作品もあるが、何か統一感を感じたを傷痕だけ、ちょっと違うなあ、と思っていたら、連載外だったみたい。

  • 2015 2/17

著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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