MUSIC

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103060727

作品紹介・あらすじ

響き、響き。き、キキキ。聞こえてくるよ、猫笛、祝祭、大地の歌声-。青山墓地で生まれた無敵の天才野良猫スタバ。猫笛を操る少年佑多。学校を離れ独り走る俊足の少女美余。恋人を亡くした性同一性障害の北川和身。猫アートの世界的権威JI。孤独な人間たちは一匹の猫によって、東の都東京から西の都京都へと引き寄せられ、ついに出会う。そして究極の戦争が始まった…。溢れる音楽と圧倒的なビートで刻まれる、孤独と奇跡の物語。

感想・レビュー・書評

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  • LOVEの続編。
    ずっと読みたかった続編。
    相変わらず疾走感に溢れていて、古川日出男の本は読む、よりも、感じるものだと思う。
    カナシーもLOVEに出てたんだっけ…?
    カナシー。

    猫と、疾走と、芸術と、都の、ビート。
    響き、キキキ。

  • 物語の世界にずっと留まっていたくなる感じ。闘う猫スタバが、カッコイイ。

  • 読書は、ある種の格闘技かもしれない、と気づかされる本。
    書き手と読み手の感性のぶつかり合い。知識の応戦。

     何、いつも楽しく読書しようとしてるんだよ、もともと
    読書はそんな単純で簡単なもんじゃあないんだよ!
    楽に読める本ばかり読んでるんじゃないよ!と言われてる
    ようだった。

     半分弱のところまで読んで、挫折しかかった私。
    どうもリズムに乗れず、何週間もかかってやっと半分というペースに嫌気がさしていたけれどー。
    意外にも、その後は急変。

     JIというやたらと手の長い、天才アーティスト(美術のほうの)が出てくるあたりから、物語は一気にテンポよく進んでいくのだ。
    いろいろ中断を余儀なくされはしたけれど、ほとんど一気読みに近い勢いで読みきった。これは、なんていう本なんだ!
     そして、後には「なるほど」の洪水(笑)

     「なるほど」その1。
    『MUSIC』というタイトル。
    佑多が方言の猫語を操ったり、いくら大地の音楽がとか書かれても、前半ではまったくピンとこなかった。
    私の中で音楽が流れている感覚は、なかった。
    メロディはもちろん、テンポだって・・・。
    でも、読破してみて思い返してみると、テンポはあったのだ。
    すごく緩やかで気づかないくらい遅い速度。
    私が躓いたのは、ちょうど交響曲で言えば、第2楽章、この間「題名のない音楽会」で教わった、緩徐楽章だったのかもしれない、と。
    眠くなったりちょっぴり退屈しがちな、あの楽章だ!(笑)
     そう思ったら、妙に納得できる。

     終盤近くになると、文中にも楽章という言葉での場面の区切りや、アレグロ、ヴィヴァーチェ、プレストなどの速度表現が出てくる。
    音楽のフィナーレを意識して書かれているのがわかるし、物語も怒涛の疾駆、疾走を見せる。
    作中の人物や猫も走ってる(笑)

     途中までのらりくらりな割に、終盤での息切れしそうなくらいの疾走感を煽ってるあたり、なんかバランスが悪いなと思ったりもしたけど、そういう構成であえて描かれたんだろうなぁ。練られた、音楽のような物語。
     なるほどなぁ、なのだ。

     この本は、圧倒的な技と知能で捕食する天才猫スタバ(♂)を中心に、猫にまつわるエピソードを持った人たちが一所に集うことになる話だ。

     猫を数える探猫者の過去を持ち、自由自在に猫語で猫を操る佑多少年。
    スタバのコロッと丸い後頭部に心を奪われ、走りながらスタバを追う少女美余。
    自身の中に3人の人格を持ち、恋人を事故で失って京都でアルコール千日行をする、北川和身(和美)。
    異様に手が長く、猫アートにおいて自他共に認める天才芸術家のJI。
     その他、スタバの母兄、その土地の猫(京都の葵の上や大黒天、ウスターソース等)鴉、クマゼミ、スタバの最強の格闘相手クマタカなどが登場するけれど、生命の多様性の中に、捕食の連鎖を通して強く描かれているのはそれらの生命力と躍動感、かな。
    特に、スタバには惚れずにいられない(笑)
    猫好きじゃなくても、きっと魅力的に映るはず。
    そんな主人公・・・いや猫だけど、が登場する時点で、この物語は面白いことがほぼ確定している。

     だからこそ、この物語に、Wのカナシーだの和身で和美のくだりは、なくてもいい気がする。
    余計といってもいいような・・・。
    『LOVE』と関係しているのか、それとも今後このシリーズは続いてそこに繋がるから必要なのか?と考えたりするけど、謎。

     それに、この独特の文体。これはやっぱり強敵だ。
    「なるほど」話その2になっていくけど、短いからといって簡潔でさらっとしてるわけじゃない。ひとつのことを何度も視点を変えて言い換えたり、説明してるので、非常にくどい!(笑)
    クマゼミ、クマタカ、京都の世界遺産、伏見稲荷、果ては船岡山が朱雀大路の北端だとか、マメ知識と薀蓄が網羅されているのだ。
    知ってることだったり、知らないことだったりするけど、どちらにしてもそういう説明は、けっこう疲れるものだったりする。
     疲労感の原因は、奇妙な文体とややこしい言い回しだけじゃなく、そこにもあるんじゃなかろうか、と思った私。
    どうでしょうかね?

     京都風にいうと平等は平等院に?平等院鳳凰堂に?とか書いてるけどそんなん、言わんし。
    「~です、です、です!」とか、
    時々、すごく言い回しがウザい!

     しかしまぁ、青山霊園や品川、港区が舞台だったお話が、最終的には京都になっちゃうあたりに、びっくりした。
    予想外に、舞台が京都。
    またもや、京都。よく見るなぁ!な、京都(笑)
     京都が舞台っていう話、多すぎないか?!流行ってる?

     十二単柄の猫(葵の上)とか肉球で帯を染めちゃう猫(ウスターソース)、美余のコーチの異名が「韋駄天の政子」だとかっていうあたりは、森見作品にも登場しそうなキャラで、森見作品にどっぷりはまっていた私にとっては、新鮮味は感じないけど親しみは感じた(笑)。
    でも、森見作品ほどその奇妙奇天烈なキャラが広がらないというか、楽しませてもらえなくて、消化不良気味。
    もっと、葵の上やウスターソースの活躍とか、読みたかった・・・。

     これだけ1冊の本について物申したくなる(申した)のだから、読破した今言えるのは、『MUSIC』はやっぱり面白かったんじゃないか、ということだ。
    楽しめた、とは言えずとも。

  • 2010-05-00

  • あいも変わらぬ疾走感。ストーリーと人物がすれ違ったり絡みあったりしながら紡がれるmusic。

  • 古川日出男氏の『Music』を読了。数年前に読んだ彼の作品『アラビアの夜の種族』もなかなかの作品でユニークな題材にうならされたのを思い出したが、本作品は怪作と言っていい作者が作品のあちらこちらで縦横無尽にチャレンジしているのが発見できる素敵な作品だ。野良なのだがその野生を磨き上げ猛禽類ともやり合える様になった猫スタバ、最初は猫のカウットを競う猫ハンターであったのだがある事件をきっかけに猫とのコミュニケーションを口笛で行いスタバと通じ合うようになった少年祐多、街を走る事に際立つ能力を発揮しその能力を皇居で行われた裏レースで見いだされ裏陸上競技の選手にスカウトされその走りの中でスタバと出会った美余、アーティストでありミュージシャンでもあり猫を従え口笛と猫の鳴き声でうねるサウンドを作り出す裕太にチャレンジしそこで天才猫スタバに出会ったJ1、性同一性障害を持ち恋人の死により人生に迷い京都に流れたときに裏社会と戦う謎の女性風団Wにスカウトスカウトされた北川和身、これら一匹と四人が織りなすハチャメチャだが面白い猫冒険物語だ。好き嫌いが分かれる一作だがおすすめです。

  • 『LOVE』は東京の地理がわからずノりきれなかったけど、この作品は後半から舞台がよく知った京都に移り、まさに音楽にノるように読めた。『LOVE』の登場人物も再登場し、読んでいて楽しい。

  • 荒木飛呂彦さんの1996年の短編で「ドルチ」というネコが主役の短編があるのですが、あれをまず思い出しました.『MUSIC』という作品、登場人物がスタンド使いと考えると、実にすっきりする. 手長のスタンドの出る芸術家”JI・ザ・キャットキャッチ”. ハーメルンの笛吹きのような猫使い”U-TA・ホイッスル”、男女の人格の入れ替わる”カズミ・ジェンダー”、走る超特急"シュガー・アクセル"、灰色の武闘派猫"ブルー・ハンター" まさにスタンドとしか言いようがない.

    さて、「MUSIC」疾走感がもの凄い小説です.
    中でも、セミ、カラス、スタバの食物連鎖の数ページが一番良かった.
    食うもの食われるもの、淡々としつつ美しい、ミクロの表現からマクロまで.

    スタバの必殺「幻の左」、そして「三角飛び」.
    あれ、野生のネコはほんとにやりかねません.

    実家近くのセリ市場には多数の野良猫が生息しています.
    中学生の頃、目撃したのは、野良猫がトンビと本気でデカイ魚を奪い合っているシーン. 仮にもタカ目タカ科に属する鳥類の一種であるトンビにネコが戦ってパンチを繰り出すってのは物語の世界だけでないことを知りました.

  • 相対性理論のことなんて何も知らない。物理学もわからないし、実際の港区にだって数えるほどしか行ったことがない(東京の方)。
    だけど、私なりの勝手な読み方で勝手に血肉とした。
    合い言葉は「非・フィクション」。
    フィクションではないもの。でもノンフィクションとは限らないもの。
    誰かの目線を経由しただけで現実や事実、ジジツは非フィクションになるというのであれば、
    私たちはみんな自分という媒介を通して非フィクションを生きていることになる。
    だから、一人一人にとって世界が違って当たり前である。

    無謀の季節、牛蒡抜きの季節、予感の季節・・・なんだかドキドキする言葉である。
    すごく、元気になる。
    私は今どんな季節だろう? と自分なりの非フィクションで考えてみる。
    無謀の季節!と思えば無謀にだってなれる気がする。だからどきどきする。

    そうやって、物語の主人公たちは音楽を手に入れて行った。
    現実の世界でも応用可能なフィクション。および非フィクション。
    私も音楽、手に入れたい!
    現実の、今ここからいくらでも世界が極彩色になる術を教えてくれる本。

  •  『LOVE』に引き続き購入。
     『ベルカ』にも見られた動物たちの戦闘シーンは秀逸。

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著者プロフィール

1966年生まれ。著作に『13』『沈黙』『アビシニアン』『アラビアの夜の種族』『中国行きのスロウ・ボートRMX』『サウンドトラック』『ボディ・アンド・ソウル』『gift』『ベルカ、吠えないのか?』『LOVE』『ロックンロール七部作』『ルート350』『僕たちは歩かない』『サマーバケーションEP』『ハル、ハル、ハル』『ゴッドスター』『聖家族』『MUSIC』『4444』『ノン+フィクション』『TYOゴシック』。対談集に『フルカワヒデオスピークス!』。CD作品にフルカワヒデオプラス『MUSIC:無謀の季節』the coffee group『ワンコインからワンドリップ』がある。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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