村上海賊の娘 下巻

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 654
  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103068839

作品紹介・あらすじ

『のぼうの城』から六年。四年間をこの一作だけに注ぎ込んだ、ケタ違いの著者最高傑作! 和睦が崩れ、信長に攻められる大坂本願寺。毛利は海路からの支援を乞われるが、成否は「海賊王」と呼ばれた村上武吉の帰趨にかかっていた。折しも、娘の景は上乗りで難波へむかう。家の存続を占って寝返りも辞さない緊張の続くなか、度肝を抜く戦いの幕が切って落とされる! 第一次木津川合戦の史実に基づく一大巨篇。

感想・レビュー・書評

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  • 木津砦の攻防は続く。
    その中で、村上海賊の娘・景は戦いにまみえようとしたものの、戦での活躍に甘やかな感傷を抱いていることを眞鍋海賊の猛者・七五三兵衛に見抜かれ、瀬戸内に戻る。
    しかしながら、自分以外の何ものかのために戦う、門徒留吉たちのために戦場へと戻っていくのであった。

    泉州の海賊の価値観は「面白(おもしゃ)い奴ら」であることが最上位のようだ。真面目すぎたり、策を練ることや武器に頼る戦いを優先する者たちを、蔑んでいるところがある。
    戦いは、自分のために、持てる力をすべて出し切るような個と個の対決を尊ぶ。

    また、瀬戸内の海賊や毛利家の者たちは自家の存続のために戦う。
    いずれにせよ、センチメンタルの入り込む余地はない。

    しかし、景は、自分を認めさせるような功を得たいと願っており、泥臭さのかけらもない。
    その景が門徒たちの姿に心打たれて参戦するさまは、ドラマなら見どころとなるだろう。

    ここまで読んできて、ようやく思い至る。
    この時代、戦とは自分のまたは自分を含む家のために行うものであって、思想のため、国のためという戦争とは異なっている。
    だからこそ、あっけらかんとしていて、感傷を嫌うのであったのか・・・?
    戦場には血が溢れ、身体を切断する描写が多い。泥臭くてうんざりする。
    しかし、これこそが戦国時代なのだろう。

    かえって、留吉や源爺のような自分のためでなく、ひとのために戦うという考え方の方が、何ものかが人を戦いに駆り出してしまうということが危険に思えてならない。

    そして、ようやく、最後のページまでたどり着いた。
    私にとっては、なかなか大変な作品だった。
    でも、次の言葉に出会えて、読むのをやめなくてよかったと思った。

    いずれの人物たちも、遁れたい自らの性根を受け容れ、誰はばかることなく生きたように思えてならない。そして結果は様々あれど、思うさまに生きて、死んだのだ。(P499)

    『思うさまに生きる』
    いかに難しく、いかに自由なことか。
    苦しんで登った山頂で見ることのできた景色のようだ。
    心に留めておきたい。

    • nico314さん
      vilureefさん、こんばんは。

      うわー、ごめんなさい。
      本の良さをお伝えできなかった上に、手に取った本を戻させるようなレビューに...
      vilureefさん、こんばんは。

      うわー、ごめんなさい。
      本の良さをお伝えできなかった上に、手に取った本を戻させるようなレビューになってしまったこと、深くお詫びします。

      私も「のぼうの城」がよくて興味を持ったのですが、こちらの方が戦いの描写が多くて感情移入しづらかった面はあります。
      特に、上巻は厳しい戦いだった!(笑)
      実は、同僚さんもあきらめさせちゃったので、反省中です。

      こんな私が言うのも何ですが、最後の50ページは特に読みごたえがあります。
      慣れてない私でもはまりましたから、読むのを止められないと思います。

      お時間のある時に、是非!
      2014/08/22
    • vilureefさん
      いやいやいや、こちらこそお気遣いありがとうございます。
      本当に時代小説が苦手で、何冊も途中で放り投げてるんですよ・・・(^_^;)
      だか...
      いやいやいや、こちらこそお気遣いありがとうございます。
      本当に時代小説が苦手で、何冊も途中で放り投げてるんですよ・・・(^_^;)
      だから無理は禁物なのです。
      2014/08/25
    • nico314さん
      この本を貸してくれた同僚さんと話していたんですけど、
      「男子はチャンバラみたいなこと好きですからね~。血が沸き立つって感じです!」
      と言...
      この本を貸してくれた同僚さんと話していたんですけど、
      「男子はチャンバラみたいなこと好きですからね~。血が沸き立つって感じです!」
      と言っていました。
      そこら辺が、女子たちとの違いなんでしょうかねぇ~。

      私は時代小説の戦わねばならなかった苦悩や抗えない苦しみと折り合いをつけるみたいなところに惹かれます。
      2014/08/25
  • ああ、和田竜さんはこれが書きたかったんだ!
    …ということがものすごく伝わってくる、手に汗握る木津川合戦でした。
    難波の海を舞台に繰り広げられる村上海賊vs眞鍋海賊の戦いは、約500ページある下巻の半分以上を占めています。
    途中で読み止められず、最後まで一気読みでした。

    人が挫折を経て一回り大きくなる姿や、「自分はこう生きたい」という想いが憧れから現実になる瞬間が、死と隣り合わせの戦場でひときわきらきらと輝いて見えました。

    和田さんの時代小説は、たくさんの文献を下敷きに練られたストーリーが個性の強い登場人物たちを支えており、時代小説初心者にもとっつきやすいのが魅力だと思います。
    ハラハラしっぱなしの戦の場面の途中で、文献からの引用を冷静に差しはさむタイミングなど、緩急のつけ方が個人的には好みです。

  • 人気作・後編。
    本願寺をめぐる戦いと、渦中に飛び込んでいく海賊の娘を描きます。

    海賊の娘・景(きょう)は、自ら海賊働きにも出るおてんば娘。
    合戦に憧れ、華やかなものと思い描いていました。
    大坂本願寺に向かう一向宗の門徒をたまたま船で送り届け、凄惨な戦の現場を見ることに。
    ただ自分の家を生き延びさせるためだけに、どんなことをしてでも命をかける男達。
    考えの甘さを泉州海賊の眞鍋七五三兵衛に軽蔑され、門徒の幼い男の子・留吉にまできつい言葉を投げつけられます。

    しおしおと国許へ帰った景は、縁談を進めるように父に頼み、格好も改めます。
    おしゃれな小袖を作りまくる日々。
    ところが‥

    戦国大名が乱立した時代から、織田信長の天下統一が成りかける頃。
    村上海賊がまだ瀬戸内海の航行を支配していました。
    大坂本願寺への支援を依頼された海賊たちだったのですが‥
    大坂へ向かった海賊たちが小早川隆景と意思を同じくして、本願寺を見捨てると知り‥
    景は立ち上がります。
    村人達は極楽往生できると信じて本願寺の門徒になった。戦わねば地獄におちると騙されてもなお、命を捧げようとしているのに、と思う景。
    すべての力を出し切る果敢な乙女は、もはや男たちとも対等に渡り合う。
    そして‥?

    海賊たちが秘密にしていた「鬼手」とは。
    景を助けようとする男達もカッコイイ☆
    船での戦いというのが特殊で、違う迫力の面白さがあります。
    後半の合戦は盛り上がりますよー!

    景に小突き回されてきた情けない弟がここで頑張り、後には有名な武将になったとか。
    そんな後日談も。

  • 何とか今月中に読み終えることができた。
    予想以上に手ごわかったなー。

    戦国時代、城攻め、忍び…ときて今回は海賊。
    歴史的には村上水軍として名を知られる瀬戸内海の広島・岡山あたりを拠点としていた海賊です。
    戦国時代に当主だった村上武吉の娘・景(きょう)が、主人公。
    織田VS本願寺の戦いで、上巻は砦攻めの陸上戦、下巻は難波海(大阪湾)で繰り広げられる海戦がメインになっています。

    いろいろ個性豊かな海賊や門徒や武士が出てきて、それぞれの関係性や腹の中の考えが面白い。
    天王寺砦や本願寺を攻める戦いも「のぼうの城」を彷彿させるようで、なかなか面白く読めました。
    戦場に出る覚悟を思い知った景が一旦帰り、また海に出て鬼手となり皆を率いていく姿もかっこいい。
    でも海戦の場面が長くて複雑で疲れたー。
    史実に基づいているからか、ちょっとラストはあっさり目でした。

    稀代の荒物な上に大層な醜女であるという景が、美的感覚の違う泉州侍にちやほやされているうちに、どんどん美しくなってきて、海戦を仕掛けるあたりはもうジャンヌ・ダルクのようです。
    余りにカッコ良さに惚れるわー。
    真鍋七五三兵衛との死闘も切ない。
    なんか、映像化するなら誰かなーみたいなことイメージしながら読んでしまいました。

  •  戦、戦、戦です。第一次木津川合戦のその図。

     悲しいけれど、これって、戦なのよね・・・ガンダムのジュード・ロウのセリフ・・・
     この作品もまさに、そのとおり。先日まで同じ座につき、笑いあっていた者が、今日は敵になる。「おう、姫さんやんけ」といつもの口調で景に語りかける者のその手には刃が握られている。そして、景は、その者をことごとく殺していく。
     悲しいけれど、これって、戦争なのよね。。。

     景と、七五三兵衛の対決は、読んでいて、本当にハラハラした。怪物のようにでかい七五三兵衛と、女の景の戦い。見るからに景が不利でしょう。もちろん、絶体絶命のピンチに陥る景でしたが、そこからの逆転劇を丁寧に書いているなあと思った。最後、景も死んだかと思ったけれど、そうならなくてよかった。

     あきらめたらそこで試合終了ですよ。スラムダンクの安西監督のセリフ。

     景は強い。誇りに思う。これこそが史実ならよかったと思うほどに。

     そして、上巻からちらほらでてきた、「鬼手」というキーワード。それを知った元吉は・・・
    「ずいぶん心幼き一手ですな」とあざ笑う。景の兄、元吉に叔父の元継がひとこと。
    「心幼きゆえ、男は奮い立つんじゃないか」
    このシーンが好き。

     自家の存続のために、戦をおこなう男たち。けれど、結果として、村上も、毛利も、雑賀も、本願寺も、自家を存続させることはできなかった。終わってみれば、こんなにも悲しい。誰も、思いを遂げることはできなかった。けれど、和田さんも作中で書いているとおり、一人一人の人生の、なんと多様なことだろう。人ひとりの性根をみくびってはいけないのだ。
     
     

    • ayaさん
      全国の書店員が“今いちばん売りたい本”を決める『2014年本屋大賞』取ったわよ。虹さんのレビューもっと読ませてほしいです。
      全国の書店員が“今いちばん売りたい本”を決める『2014年本屋大賞』取ったわよ。虹さんのレビューもっと読ませてほしいです。
      2014/04/08
  • 戦の形勢の描写が、逆転に次ぐ逆転で最後はどうなるのか?途中でやめられなくなりました。史実を知っていればある程度予想できることでしょうが。
    豪快に命を散らす名もなき兵、将の器の大きさや読みの深さ、敵同士ながらたたえあったり駆け引きしたり、ガキを救う心根であったり、面白く読み進みましたが、名前を記された者が死ぬのはつらいし、事情を知れば双方に肩入れしたくなる。絶対的な正義はそこにはなくて、自家の存続とどう生きたいか?どう死にたいかの美学の世界。自分にはまねできそうにない。

  • 主人公の景をはじめとした海賊たちの破天荒っぷりがおもしろい作品なのでしょうが、壮大さには欠ける作品だった気がします。

    今更ですが、最近の小説はおしなべてライトノベル化しているなぁという感じがします。すなわち、登場人物のおもしろさで話を書き、盛り上がりがつくられている気がします。人が書いて人が読む以上、小説のテーマのほとんどが「人」に関わるのは当たり前なのですが、個人の性格・個性を戯画的にすることでおもしろくすることに終始してしまうと、広がりや深さがなくなってしまうのではないでしょうか。
    そうした手法がダメだとは思いませんが、そんなことをしなくても、人間、社会、歴史、世界はおもしろい、そう感じさせてくれる作品が読みたい今日この頃。

  • 信長の時代、瀬戸内と泉州の海賊たち
    主人公景(きょう)ヒロインというよりヒーローかな
    彼女をとりまく登場人物すべてのキャラが濃すぎ
    面白かった
    泉州の言葉、馴染みのない人は読みにくかったのでは?
    海戦の様子を描いた挿絵があったらよかったのになあ

    ≪ 戦国の あだ花咲いて また海へ ≫

  • 時代小説を4本執筆してうち2本が映画化と!これは素晴らしいことですよね。和田竜さんと言えばやはり野村萬斎さんの「のぼうの城」が頭に浮かぶが、2017年には「忍びの国」も嵐の大野君の主演で映画化されている。さすがにキャストを比べてしまうと格がまるで違うので購入は見送っているが本の無門と大野君がどうしてもかぶらないんですよね。

    「村上海賊の娘(上)(下)」

    さすがに水軍をテーマにした作品を映画化しても実際迫力を感じないように思える。上下巻でそれなりに長いのですが、本作は瞬殺!帰宅してから読み始め日が昇るころには2冊読破していました。村上水軍の村上武吉の娘の景が主人公なのだが、この圧倒的な武に愛された娘を演じる役者が今の日本にはいないと思う。

    話の舞台は第一次木津川口の戦い!信長が毛利水軍に手も足も出なかった闘いが舞台です。本当に引き込まれるいい作品です。

  • 分厚い上下巻の下巻。もう夢中です。
    敵味方にさまざまな人物が登場し、海戦ともなると入り乱れて大混戦を究めます。

    ヒロイン景は鶴姫に憧れていたという設定ですが、鶴姫は実際には存在しなかったと文中で書かれています。
    どこぞの姫が戦場に紛れ込んでいただけだそう。それは残念な話ですね。

    雑賀集を率いる孫市も登場します。空気を鋭く切るような迫力です。
    戦は孫市の活躍に終始するといってもいいくらい。

    木津川合戦の結果、負けた側にはそれぞれに制裁が下ります。毛利家は弱体化し、泉州侍は所領を離れ、能島村上家も真鍋家も海賊衆の身分ではなくなり、雑賀党は解体、大阪本願寺は焼け落ちました。毛利家も泉州侍も所領を離れています。

    歴史はシビアですが、この物語で描きたかったのは、戦の結果ではなくその戦い方。
    人々がいかに鮮やかに火花を散らしあったかを満喫できるかに、この物語の楽しみ方がかかっています。

    時代小説なのに登場人物が現代人のような喋り方をする箇所があり、違和感を感じましたが、映画化されたのぼうの城よりアクション色が強く、魅力的な様々な立場の人が登場します。
    クライマックスへの盛り上がりがすごく、読者はいやおうなく高揚しながら読んでいきます。

    史実の「村上海賊の娘」は、存在したということ以外には一切の記録が残っていないそう。それをこれほどの一大スペクタル長編に仕上げた歴史小説家としての著者の筆力を感じます。

    読みにくいところも随所にありましたが、全編を通してパワーに満ちており最後まで楽しめた一冊。納得の本屋大賞受賞作です。

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