村上海賊の娘 下巻

著者 :
  • 新潮社
3.86
  • (417)
  • (765)
  • (457)
  • (60)
  • (26)
本棚登録 : 4247
レビュー : 654
  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103068839

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 木津砦の攻防は続く。
    その中で、村上海賊の娘・景は戦いにまみえようとしたものの、戦での活躍に甘やかな感傷を抱いていることを眞鍋海賊の猛者・七五三兵衛に見抜かれ、瀬戸内に戻る。
    しかしながら、自分以外の何ものかのために戦う、門徒留吉たちのために戦場へと戻っていくのであった。

    泉州の海賊の価値観は「面白(おもしゃ)い奴ら」であることが最上位のようだ。真面目すぎたり、策を練ることや武器に頼る戦いを優先する者たちを、蔑んでいるところがある。
    戦いは、自分のために、持てる力をすべて出し切るような個と個の対決を尊ぶ。

    また、瀬戸内の海賊や毛利家の者たちは自家の存続のために戦う。
    いずれにせよ、センチメンタルの入り込む余地はない。

    しかし、景は、自分を認めさせるような功を得たいと願っており、泥臭さのかけらもない。
    その景が門徒たちの姿に心打たれて参戦するさまは、ドラマなら見どころとなるだろう。

    ここまで読んできて、ようやく思い至る。
    この時代、戦とは自分のまたは自分を含む家のために行うものであって、思想のため、国のためという戦争とは異なっている。
    だからこそ、あっけらかんとしていて、感傷を嫌うのであったのか・・・?
    戦場には血が溢れ、身体を切断する描写が多い。泥臭くてうんざりする。
    しかし、これこそが戦国時代なのだろう。

    かえって、留吉や源爺のような自分のためでなく、ひとのために戦うという考え方の方が、何ものかが人を戦いに駆り出してしまうということが危険に思えてならない。

    そして、ようやく、最後のページまでたどり着いた。
    私にとっては、なかなか大変な作品だった。
    でも、次の言葉に出会えて、読むのをやめなくてよかったと思った。

    いずれの人物たちも、遁れたい自らの性根を受け容れ、誰はばかることなく生きたように思えてならない。そして結果は様々あれど、思うさまに生きて、死んだのだ。(P499)

    『思うさまに生きる』
    いかに難しく、いかに自由なことか。
    苦しんで登った山頂で見ることのできた景色のようだ。
    心に留めておきたい。

    • nico314さん
      vilureefさん、こんばんは。

      うわー、ごめんなさい。
      本の良さをお伝えできなかった上に、手に取った本を戻させるようなレビューに...
      vilureefさん、こんばんは。

      うわー、ごめんなさい。
      本の良さをお伝えできなかった上に、手に取った本を戻させるようなレビューになってしまったこと、深くお詫びします。

      私も「のぼうの城」がよくて興味を持ったのですが、こちらの方が戦いの描写が多くて感情移入しづらかった面はあります。
      特に、上巻は厳しい戦いだった!(笑)
      実は、同僚さんもあきらめさせちゃったので、反省中です。

      こんな私が言うのも何ですが、最後の50ページは特に読みごたえがあります。
      慣れてない私でもはまりましたから、読むのを止められないと思います。

      お時間のある時に、是非!
      2014/08/22
    • vilureefさん
      いやいやいや、こちらこそお気遣いありがとうございます。
      本当に時代小説が苦手で、何冊も途中で放り投げてるんですよ・・・(^_^;)
      だか...
      いやいやいや、こちらこそお気遣いありがとうございます。
      本当に時代小説が苦手で、何冊も途中で放り投げてるんですよ・・・(^_^;)
      だから無理は禁物なのです。
      2014/08/25
    • nico314さん
      この本を貸してくれた同僚さんと話していたんですけど、
      「男子はチャンバラみたいなこと好きですからね~。血が沸き立つって感じです!」
      と言...
      この本を貸してくれた同僚さんと話していたんですけど、
      「男子はチャンバラみたいなこと好きですからね~。血が沸き立つって感じです!」
      と言っていました。
      そこら辺が、女子たちとの違いなんでしょうかねぇ~。

      私は時代小説の戦わねばならなかった苦悩や抗えない苦しみと折り合いをつけるみたいなところに惹かれます。
      2014/08/25
  • 何とか今月中に読み終えることができた。
    予想以上に手ごわかったなー。

    戦国時代、城攻め、忍び…ときて今回は海賊。
    歴史的には村上水軍として名を知られる瀬戸内海の広島・岡山あたりを拠点としていた海賊です。
    戦国時代に当主だった村上武吉の娘・景(きょう)が、主人公。
    織田VS本願寺の戦いで、上巻は砦攻めの陸上戦、下巻は難波海(大阪湾)で繰り広げられる海戦がメインになっています。

    いろいろ個性豊かな海賊や門徒や武士が出てきて、それぞれの関係性や腹の中の考えが面白い。
    天王寺砦や本願寺を攻める戦いも「のぼうの城」を彷彿させるようで、なかなか面白く読めました。
    戦場に出る覚悟を思い知った景が一旦帰り、また海に出て鬼手となり皆を率いていく姿もかっこいい。
    でも海戦の場面が長くて複雑で疲れたー。
    史実に基づいているからか、ちょっとラストはあっさり目でした。

    稀代の荒物な上に大層な醜女であるという景が、美的感覚の違う泉州侍にちやほやされているうちに、どんどん美しくなってきて、海戦を仕掛けるあたりはもうジャンヌ・ダルクのようです。
    余りにカッコ良さに惚れるわー。
    真鍋七五三兵衛との死闘も切ない。
    なんか、映像化するなら誰かなーみたいなことイメージしながら読んでしまいました。

  •  戦、戦、戦です。第一次木津川合戦のその図。

     悲しいけれど、これって、戦なのよね・・・ガンダムのジュード・ロウのセリフ・・・
     この作品もまさに、そのとおり。先日まで同じ座につき、笑いあっていた者が、今日は敵になる。「おう、姫さんやんけ」といつもの口調で景に語りかける者のその手には刃が握られている。そして、景は、その者をことごとく殺していく。
     悲しいけれど、これって、戦争なのよね。。。

     景と、七五三兵衛の対決は、読んでいて、本当にハラハラした。怪物のようにでかい七五三兵衛と、女の景の戦い。見るからに景が不利でしょう。もちろん、絶体絶命のピンチに陥る景でしたが、そこからの逆転劇を丁寧に書いているなあと思った。最後、景も死んだかと思ったけれど、そうならなくてよかった。

     あきらめたらそこで試合終了ですよ。スラムダンクの安西監督のセリフ。

     景は強い。誇りに思う。これこそが史実ならよかったと思うほどに。

     そして、上巻からちらほらでてきた、「鬼手」というキーワード。それを知った元吉は・・・
    「ずいぶん心幼き一手ですな」とあざ笑う。景の兄、元吉に叔父の元継がひとこと。
    「心幼きゆえ、男は奮い立つんじゃないか」
    このシーンが好き。

     自家の存続のために、戦をおこなう男たち。けれど、結果として、村上も、毛利も、雑賀も、本願寺も、自家を存続させることはできなかった。終わってみれば、こんなにも悲しい。誰も、思いを遂げることはできなかった。けれど、和田さんも作中で書いているとおり、一人一人の人生の、なんと多様なことだろう。人ひとりの性根をみくびってはいけないのだ。
     
     

    • ayaさん
      全国の書店員が“今いちばん売りたい本”を決める『2014年本屋大賞』取ったわよ。虹さんのレビューもっと読ませてほしいです。
      全国の書店員が“今いちばん売りたい本”を決める『2014年本屋大賞』取ったわよ。虹さんのレビューもっと読ませてほしいです。
      2014/04/08
  • 主人公の景をはじめとした海賊たちの破天荒っぷりがおもしろい作品なのでしょうが、壮大さには欠ける作品だった気がします。

    今更ですが、最近の小説はおしなべてライトノベル化しているなぁという感じがします。すなわち、登場人物のおもしろさで話を書き、盛り上がりがつくられている気がします。人が書いて人が読む以上、小説のテーマのほとんどが「人」に関わるのは当たり前なのですが、個人の性格・個性を戯画的にすることでおもしろくすることに終始してしまうと、広がりや深さがなくなってしまうのではないでしょうか。
    そうした手法がダメだとは思いませんが、そんなことをしなくても、人間、社会、歴史、世界はおもしろい、そう感じさせてくれる作品が読みたい今日この頃。

  • 信長の時代、瀬戸内と泉州の海賊たち
    主人公景(きょう)ヒロインというよりヒーローかな
    彼女をとりまく登場人物すべてのキャラが濃すぎ
    面白かった
    泉州の言葉、馴染みのない人は読みにくかったのでは?
    海戦の様子を描いた挿絵があったらよかったのになあ

    ≪ 戦国の あだ花咲いて また海へ ≫

  • 多彩な登場人物だが下巻になるとそれぞれに愛着が湧いてくる。読み終わるのがもったなくもあり早く終わりを見たい思いもあり。本屋大賞も納得(今更!)の作品でした。

  • お正月に村上水軍ゆかりの大島を旅して、読みたいと思いつつ、読めずにいた今作を読んでみることに。
    読み始めたきっかけは、何故村上水軍が海賊として成功したのか?能島の立地は戦術にどう活きたのか?を知りたかったからだったので、今作の舞台が大阪本願寺攻めを中心に扱ったいたこともあり、上巻を読み終えた時は正直がっかりしてしまった。
    結局、本来の目的は最後まで読んでも分からなかったけれど、木津川合戦の村上軍のそれぞれの闘いのシーンがとても面白く、途中からただ物語そのものの面白さに惹かれていってしまった。
    気になる作品はたくさんあるものの、意外にも著者初読み。他の作品も読んでみようと思う。

  • 日本版マリアンヌというか民衆を率い自由のために戦ったフランスのヒロインの戦国時代版というようなお話和田竜氏の『村上海賊の娘』を読了。

    ドラクロアが描いた民衆を率いる自由の女神い描かれたマリアンヌのように主人公景(村上水軍の当主村上武吉の娘)は屍を乗り越え戦う様が克明に描かれた作品だ。

    もちろん戦闘シーンばかりではないのだが、下巻のほとんどを費やして描かれる村上水軍と泉州水軍の戦いは原題の戦闘シーンにはないまさしく肉弾戦そのもので、血や腕、首が数えきれないくらいに飛び交う小説だ。著者はもちろんエンターテインメント作家だからなにか高邁なことをテーマにしてはいないと思うし、ただ単にバトル(戦闘シーン)が好きなのでは。そう書いていたら2ヶ月ほど前にみたキアヌリーブス主演の『ジョン・ウイック2』を思い出した。笑っちゃうくらい銃をぶっ放し何百人と言う的をキアヌ演じるジョン・ウイックは倒して行くのだが、見る人によってはあのようなバトルシーンが壮快なのだろう。ああいうのがお好きな方はこの小説を楽しめるのでは。

    でも本屋大賞にも選ばれた作品なわけで、もちろん戦闘のお話ではなくて主人公景が女性でありながらも比較的自由奔放に生きる事を許され、彼女が自分がこうありたいと思った時に迷わずその思いに忠実に自分の生きる方向性を決め一所懸命生きる様を描く事により、ひとが自由に生きる事の難しさ、難しいが故の尊さのようなものをわずからながらも感じるひとがいるから授賞をしたのだろう。

    まあ僕は戦闘シーンは好きではないので、この小説をあまり多くのひとに勧めたいとは思わなかったが。

    この週末、よく描かれる関ヶ原のような地上の合戦ではなく、海を知り尽くした人たちだからこそ出来た海上での壮絶な戦いを描いた作品を読むBGMに選んだのは大西順子トリオの"Cruisin'"。最近の復活が嬉しい。
    https://www.youtube.com/watch?v=HrF8dODjoTI

  • 下巻後半は、ワンピースを読んでいるような印象が…

  • 織田信長と敵対する大坂本願寺をサポートするために、兵糧入れを行うと決めた毛利。村上海賊は景の輿入れを条件に毛利に付くと申し入れるが、果たして。。。。
    戦況をみながら様子見を決め込む勢力の動向や、海賊衆の振る舞い、心根の変化など、常にどちらに転ぶかわからないスリリングな展開にページが進む。戦闘の描写が激しく、はちゃめちゃ感があるが、村上・眞鍋の海賊衆の豪気・豪傑ぶりがよく伝わる。

和田竜の作品

ツイートする