城の中の城

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  • 新潮社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103069034

感想・レビュー・書評

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  • 十代の頃、倉橋作品に夢中になったが、この作品を最後に熱が冷め、とうとう読み終わらずに投げ出してしまった。今思えば、この選民思想的な主人公達を嫌味に感じたのと、漢詩や故事などをひいた衒学趣味に歯が立たなかったのが因かもしれない(今でも歯が欠けそう)
    それにこの作品の前作『夢の浮橋』の存在を知らなかったのも大きい。あちらで初々しい桂子さんを見知っていたらまた、違った印象を持っただろう。
    さて、こちらは更にギリシャの神々の度を増して、とても凡人には太刀打ちできない。オリュンポスに住まう彼等だものキリスト教を蔑視するのも仕方がないか。

    これを読んで神経を逆なでされたなら、それは作家の想定内。しかしながら、篤い信仰心の持ち主からしたら、ただ憐憫の対象にされてしまうだけだろう。
    それにこの世にキリスト教が存在しなかったとしたら、それはそれで味気ないだろうなぁ。

    作家の宗教、特定のイデオロギーへの嫌悪は、学生運動トラウマが根深いことの表れだろうか。あの時代を経験していない者にとっては、過剰反応にも思えるのだが。

    ふと気がつくと『夢の浮橋』からこちらの作品まで10年ものブランクが。その間に登場人物全てが《さん付け》に変わっている。
    どうやら、吉田健一氏の影響らしいが、私は氏の小説を読んだことがない。とりあえず《さん付け》の本家『瓦礫の中』は読んでみたいと思う。

  • 「城の中の城」桂子さんシリーズその2。タイトルと装丁は美しく、内容も桂子さんらしいのであるが、これは好みに合わず。桂子さんは魂に確固たる城を持つ女性で優雅に暮らし、他城との外交も大いに楽しんでいるが、この城、難攻不落過ぎる。夫に自分の考え一つ一つをカードにしたため集めたバインダーを2冊!!も渡す場面なんざ、私としては怖すぎる。無神論の桂子さんが夫の突然の受洗に憤り、棄教を求める話なのだが、無神論というのも一つの宗教形態であると私は思ってしまうのだ。

    言い訳めいた序文と後書きと帯の文面も好きになれない。

  • 桂子さんシリーズの2です。

    「城の中の城」はまた1とは別のべクトルでヤバい。
    前書き「a 人間の中の病気」が秀逸。
    宗教と政治の両方を向こうにまわして地雷踏みまくり。
    読んでるこっちがハラハラしちゃいます。
    ・・・人間としてできの悪いのがキリストウィルスに感染しやすいとか、・・・困ったのを閉じ込めておくために病院や教会が存在するとか。

    発表当時(1980年)の社会風潮はよくわかりませんが、よくこの人、畳の上で死ねたなあ、もう。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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