夜が明ける

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103070436

作品紹介・あらすじ

直木賞作家が5年間苦しみ抜いて到達した祈り。再生と救済の長篇小説。思春期から33歳になるまでの男同士の友情と成長、そして変わりゆく日々を生きる奇跡。まだ光は見えない。それでも僕たちは、夜明けを求めて歩き出す。どれだけ傷ついても、夜が深くても、必ず明日はやってくる。

感想・レビュー・書評

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  • 1998年。15歳だった俺と俺の友だち深沢暁。

    アキは身長が191センチあり吃音でした。
    父親が映画マニアだった俺の家にはビデオテープが山のようにあり、俺はフィンランドのスーパーマイナーなアキ・マケライネンというアキと容貌の似ている役者をアキに教え、『男たちの朝』というビデオを貸します。

    アキはすっかりそのビデオが気に入り、アキ・マケライネンになろうとします。
    アキは心優しい大男でしたが母しかいない家は貧しくガソリンスタンドでアルバイトをしていました。

    俺の父親も高校2年の終わりに車の事故で多額の借金を残して、自死。
    俺は奨学金を受けてなんとか大学には進学しますが、その後二人共、大変な人生が始まります。

    役者になりたいアキは一つだけアキを受け容れてくれた劇団にアルバイトのかけもちをしながら、劇団では毎日掃除。

    俺は大学卒業後、マスコミを志望して、ADになりますが、苛酷極まるADの仕事で、ストレス性胃腸炎から鬱になりかけます。

    アキは劇団が解散した後もマケライネンになろうとしながら残飯を漁り、路上で眠り生き延びようとします。

    読んでいる間中、怖いと思いました。
    アキや俺の境遇がもし自分に降りかかってきても何もおかしくないことだからです。

    ちゃんとした場所でちゃんと働けるというのはすごく幸運なことなのだなあと思いました。

    でもこの小説は異常に苦しい。苦しすぎる。なんでこんなに苦しいのだろうと思って読み続けました。
    でも答えは用意されています。
    「苦しかったら、助けを求めろ」

    そして、ラストに奇跡が起きます。
    アキの全生涯は決して幸福ではないように思えますが、アキ自身はきっと幸せだったというような気がします。
    だって、アキはマケライネンになることができたのですから。

  • 西加奈子さん、5年振りの長編小説。

    正直、しんどかった。

    でもそれが、それこそが、私達がちゃんと向き合わなければならない事だと思った。
    この本が現代の苦しみをもリアルに叫んでいた。

    転がってるんだよ!
    こんなやり切れない苦しみがゴロゴロ転がった世の中に今いるんだよ!って。

    小さく息を繋いで消え入りそうな人達と、
    目を背けて通り過ぎるだけの人達。
    声をあげることも聞き入れることもできない。
    手を伸ばすことも差し出すこともできない。
    それが現状でしょ?って。

    本当に苦しくて辛い時、一体どうしたらいいか。
    シンプルだったはずのその答えを見失ってしまった今、本当に大切で重要な、生きていく為に必要なことを改めて提示してくれた、現代の救いとなる本。

    いつもどんな時も必ず「夜が明ける」ことに闇を溶かす希望を感じる。

    今読むべき、読まれるべき作品だと思う。

  • 読んでいて辛くなる。
    けれども最後まで、あきらめないで読んでよかった。
    と感じられた一冊でした。

    たった一言で、他人の人生を大きく変えることもある。それは果たしてよい意味か、悪い意味か、それはわからないが、それほどにも、言葉は重力を伴うことがある。


    『アキ・マケライネンのことをあいつに教えたのは俺だ。だから俺には、あいつの人生に責任がある。マケライネンのことを教えたということは、すなわちあいつの人生を変えたということだからだ。』

    この本の始まりの1行はこう綴る。「アキ・マケライネン」と呼ばれた深沢暁と、そう呼ぶ主人公であり、語り手である『俺』。

    まるで、目の前に生きている人間を描くように紡がれた文章は、とてもフィクションであるとは思えなかった。

    「アキ」と『俺』の人生の断片を、交互に繰り返しながら、決してうまくいかない生き方を読んでいると、本当に辛くなった。


    何度も、ページを捲る手を止めて、明るく前向きに考えようとした。しかし、いっそ時間をかけて、読み切ってしまおうと思ったら、留まることなく読み終えた。
    そして、最後は思わず泣いてしまった。


    今回も散りばめられた伏線が見事に回収されていて、もう一度読み返してみようと思える作品でした。


    タイトルの『夜が明ける』には主語が抜けている。
    果たして、それは誰の『夜が明ける』ことなのか。
    そもそも、この言葉の意味することは、なんなのだろうと、考えながら読んでみることをおすすめします。

  • 長く続く闇のような話。この本に書かれたことは、まさに現代社会が抱える問題そのものだと思いました。

    当事者ですら自分の置かれた状況を理解していない。「自分を見失う前に、そこから脱して!!心身を壊してまでも、そこに執着する必要はないのだから。」と言いたくなりました。

    しかし、貧困から脱するためにはどうしたらいいのでしょうか?教えてほしい。

    追伸:
    読みながら、”アキ・マケライネン”をすぐにググってしまった自分は、スマホに頼った生活をしている証ですね。
    2021,12/21-25

  • まずは、カバーを外してみて欲しい。(カバーが嫌いというわけではないのですが、笑)

    美しい夜明けが広がっています。

    この作品で描かれる「夜」は、果てしなく暗澹としているのだけど。
    とても気に入ったので、持ち歩く時はカバーを外していた。

    以下、ネタバレ、やや含みます。注意。




    高校時代に出会った静かな大男に、アキ•マケライネンという、誰も知らないようなフィンランドの俳優を重ねた「俺」。
    見出す側と見出された側は、それぞれ、その思い出を抱えながら、社会に踏み出して行く。

    アキは母親から虐待と育児放棄を受け続け、逃げることを知らずに育った。
    アキ•マケライネンとして、自分をもう一つ作り上げることで、皆に慕われて、彼は生きることを知ったのかもしれない。

    「俺」は、親の借金に巻き込まれ、奨学金と仕送りに追われる日々を過ごしている。
    テレビ局で当たり前に繰り広げられるハラスメントに耐えることが、一種の能力であり。
    その理不尽に耐え切って、昇進することが勝ちを意味する世界で、少しずつ心の息を止めていく。

    「真っ当に」働く/生きるって何なんだろう?

    ふと、浮かんできた疑問だった。

    「最近自業自得だとか、自己責任だとかいう言葉をよく聞くよねって。それはもちろん、もともと適切な言葉としての機能があったのかもしれないけど、最近は、大切な現実を見ないようにするための盾になってる気がするって。だからそんな盾はいらない、みんなもっと堂々と救いを求めてって。それで、自業自得とか、自己責任とか、そんな言葉は、その人が安心して暮らせるようになって、本当に、心から安心して暮らせるようになってから、初めて考えられるんだから。初めて負える責任なんだからって。」

    印象に残った言葉。

    最近ようやく、自分の姿を自分で見て、助けて欲しいって言えるようになった気がする。
    恥ずかしいとか、迷惑をかけるとか、そんなことよりも、困っていることを素直に見つめるのは、意外に時間がかかることだった。

    だから、あ、分かるかもって思う人には、きっとこの小説は苦しいんだけど、後味もそんなに良くないんだけど、この台詞まで、物語の終わりまで、読んでみると良いのではないかと思う。

    それで、苦しすぎて読めなくなったら、カバーを外して、夜明けを見つめるだけでも良いんじゃないかなって、言いたい。

  • カバーを読んでかなりの覚悟がいるなと
    読み始めた
    予想以上

    西加奈子さんの絵が苦手なんです
    いつも
    だからカバーを外して、フィンランドかなと想像する
    森の夜が明けそうな空をながめて心を落ち着かせて
    また読みました

    厳しい現実
    これでもかと
    現実だけに もうもう苦しくて

    以前読んだ大好きな絵本
    「ぼく モグラ キツネ 馬」の中で
    「いちばんゆうかんなことばは?」
    「たすけて」
    このフレーズを思い出しました

    そうだよ
    「たすけて」

    中表紙は真っ黒ですが
    夜は明けているのでしょうか?


    ≪ ここまでも 追い詰めながら 待つ夜明け ≫

  • 貧困と虐待がテーマのこの作品。辛い状況の時、助けてと言えない、助けが必要な状態だと自分で気づかない。でもだからこそ助けを求めること、助けを求めてもいい事を知らないといけない。
    虐待がこれほどまで人の生き方に左右されることも辛い。頑張っている人が救われる社会にしていかなくてはいけない。
    私は心の専門家として自分にできることを考えさせられた。

  • 読み終わった時に、ずっしりと心の中に深く残るものだった。
    それはこの小説が幻想の世界を描いたのではなく、我々がいま生きているこの現実を描いていたからだと思う。
    だからこそ、その世界に深く入り込んで、2人の男の人生を体験しながら、夢中になりながら読んだ。

    人生には押し寄せる辛いことがある。
    それは時に自分の意見など受けず、ただ無情に。
    アキにとっては育児放棄され、虐待を受けていた家庭。
    もう1人の主人公にとっては、借金を残した父親の死。

    こんな無情に負けるもんかと自分の力でなんとか彼らは生き抜こうとする。
    周りはどれだけ彼らが傷ついているか、どれだけ力が残っていないか、気づかない。
    もしくは気づいても見て見ぬふりをしているのかもしれない。

    テレビ局に勤め、心身を崩すほどまでに働く主人公。
    それでも負けるもんかと立つが、身体は限界を迎える。
    そして家を訪れた後輩によって、助けを求める重要性を知る。

    この世界には、なんとも非情な、無情な目を覆いたくなる辛いことが多い。
    最初はそうしたことに対して、負けるもんかと踏ん張る主人公がすごいと、私もそうでありたいと思った。
    でも後半で、それは自分を苦しめるものだと知った。
    もちろん、がんばることは大切だが、ひとりで頑張りすぎるのはよくない。
    抱えきれないほど頑張るのはよくない。
    時には人に助けを求めることが大事。
    人は1人では生きていけない。

    お互いが手を取って、助け合う社会というのを意識することが大事なのではないかと考えさせる物語であった。

    負けるもんか、とひとりでこの世界と戦わないで、助けを求めること。
    そしてその手を取り合う世界を願う。

  • 作者の伝えたい思いがこれでもかと溢れてる。怒ってるんだなって。サラバ!が好きな人には絶対にハマる作品。
    アキ・マケライネン、男たちの朝ってGoogle検索したのは私だけではないはず。何度検索しても出てこず、キーワードも変えたりした。それほど実際にありそうなんだよね。知りたくなった、アキがどんな風貌なのか。
    出逢えてよかったこの作品に。頑張っても頑張っても報われないあなたに、疲れたあなたに、手にとってほしい。

  • 苦しかった。
    主人公たちが、先の見えない闇の中を走り続け、もがき続けている姿、でも悪くなっていく様子が正直辛かった。

    でも、暗い先ににも、不安定だけれども何かしらの未来があって、いろんな不条理とか現実に立ち向かっていくのが希望なのかなと思った。

    私は1番最後に西さんが
    「この小説に関わるすべての責任は著者にあります」と書いていることが猛烈に胸に刺さった。
    自分の言葉に責任をもつ強さが胸を打たれた。

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著者プロフィール

1977年テヘラン生まれ。2004年『あおい』でデビュー。15年『サラバ!』で直木賞、07年『通天閣』で織田作之助賞、13年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞を受賞。著書に『i』『おまじない』他。

「2020年 『小説版 韓国・フェミニズム・日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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