きもの

  • 新潮社 (2004年8月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784103077039

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  • るつ子は、姉ふたり兄ひとりの4人兄妹の末っ子。
    美貌自慢で自己中な長女、要領のよい次女のおさがりばかり着せられ、いつも貧乏くじを引かされる。

    読んでいると、家のお手伝いもるつ子が一番よくしている。
    しかしるつ子に対する家族の評価は、わがままで頑固というもの。
    それというのもるつ子は着物の手触り肌触り匂いにとても敏感で、気持ち悪く感じるものは絶対に来たくないと頑張るからである。

    そんなるつ子の女学生時代から結婚するまでの物語。
    それなりにドラマはある。
    母の死、姉たちの結婚、関東大震災。
    でも、この小説の面白さは、るつ子が感じ、考えることに尽きる。

    女性としてのたしなみ、家事や裁縫の手順、人付き合いの心得など、るつ子が疑問に感じることを答えてくれるのが、祖母だ。
    昔からの習わしには意味がある。人の心には妙がある。
    そういうことを理論立てて話してくれる祖母は、るつ子にとって大きな支えとなる。

    もちろんるつ子は母が大好きで甘えたい気持ちもあるのだが、母は長女がお気に入りなので、気が引けてしまうのである。
    その長女も、要領がいいだけでたいした戦力にならない次女も、家計のことなど気にもしないで華やかな着物ばかりを欲しがり、腹立たしいことこのうえない。

    読んでいると、これは『リア王』か?と思えてくる。
    口ばっかりの姉ふたりと、親思いの末娘。
    しかしリア王は、姉たちを選ぶのだ。ばかちんが。

    母に好かれていないと心を痛めるるつ子が不憫でしょうがない。
    母の葬式の時、近所の人たちに交じって弔問客のためにこまごまと下働きするるつ子と違い、ふたりの姉は客人然として座ったきりだ。
    ムキーッ!

    最後は家族の反対を押し切ってるつ子は結婚するのだが、その結婚生活はあまり幸せになりそうにない不穏な感じで物語は終わる。
    私としては、出戻って、また生き生きと立ち働くるつ子を見たいし、とりあえず長女には天誅を下してほしいと思った。

  • 結末は個人的にはなんとも言えなかった。著者の没後に出版された本だからなのかもしれないけれど。

    途中に出てくる主人公のおばあさんの暮らしの知恵とか人付き合いの機敏みたいなものがとてもよかった。様々な生地や着物と合わせて、この本を読んでよかったと思えるところだった。

  • きものを軸として少女が大人の女性に成長する様が描かれている。
    非常に読みやすい文章なのに、自分の生き方を振り返らされる小説。

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著者プロフィール

1904年東京向島生まれ。文豪幸田露伴の次女。女子学院卒。’28年結婚。10年間の結婚生活の後、娘玉を連れて離婚、幸田家に戻る。’47年父との思い出の記「雑記」「終焉」「葬送の記」を執筆。’56年『黒い裾』で読売文学賞、’57年『流れる』で日本藝術院賞、新潮社文学賞を受賞。他の作品に『おとうと』『闘』(女流文学賞)、没後刊行された『崩れ』『木』『台所のおと』(本書)『きもの』『季節のかたみ』等多数。1990年、86歳で逝去。


「2021年 『台所のおと 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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