逆事

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 79
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103078104

作品紹介・あらすじ

NY暮らしのなか、ふいに甦る亡き異母妹の言葉と、濃やかに気遣ってくれた継母のこと-。(「いのち贈られ」)。マンションという日常空間に潜む闇。(「その部屋」)。語られぬまま過ぎてゆく夫婦の時間。(「異国にて」「緋」)。先に逝った人々の面影を辿り、生と死の綾なす人間模様を浮き彫りにする表題作。(「逆事」)。人の世のミステリー。魅惑の河野ワールド。

感想・レビュー・書評

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  • リアリスティックでミステリアスな短編集。ごく普通の日常の風景の中に存在する微妙な空気や突然襲ってくる恐怖が、読者の前に繰り出される。いやいや、繰り出されるというより、放り出される、といった方が正しいかもしれない。そして、目の前に放り出されておろおろする読者の様子を、著者はどこかで微笑んで見ているような気がする。

  • 人は満ち潮どきに生まれ、干き潮どきに亡くなるという
    表題「逆事」を含む短編集。

    不思議と言うか何とも捉えどころのない話。女性が語り手であり、とても丁寧で型式ばった話し言葉で綴られる。特になんということもなく淡々と綴られる状況と感情に、もしやこれはエッセーであったのでは?と感じてしまうほど。

  • 短編集。淡々と綴られた文章、起こった事柄が、まとまりなく書かれている印象で著者が何を伝えたいのかわかりにくい本。でも何故か最後まで読んでしまう。そんな本。「その部屋」に出てきた事故死?のあった部屋に引っ越してきた家族は、やはり怖い体験をしたのだろうか?気になる。

  • 小説というよりもエッセーみたいな感じ。
    読んでいて、作者が何を伝えたいのか自分にはさっぱり分からなかった。
    もっと時間が経って、もっと人生経験を積めば見えてくるものがあるのかもしれないが・・・。
    現時点では、理解不能だった。

  • 老境に至ってもなお作品を淡々と生み出している作家河野多恵子さんの作品『逆事』を読んでみた。正直な感想はさすがに文章は研ぎすまされていて美しく、枯れているなあといったところです。短編集で、著者の自伝ともとれるような部分もありつつも小説として微妙に成り立っている。こういう人の事を手練といってもよいのかも。

  • まあ~、何て独特な世界!
    文章も独特だし、お話の世界観も。
    たった5編の短編小説で1つ1つのお話も短い、薄い本なのに読みにくいったら・・・。
    この作者のファンにはこの独特な世界がたまらないんだと思うけど・・・。
    私は入りこめなかった。
    この河野ワールドに。
    作者らしき主人公の女性が継母と妹の事を追憶する「いのち贈られ」
    マンションという無機質な建物で次々と起こる事件「その部屋」
    異国で経験した恐怖「異国にて」と夫の出張中に経験した恐怖「緋」
    身内の死、文豪の死を満ち潮、引き潮から回想する「逆事」
    日常に起こった恐怖や心の闇を描いたミステリーで、そう書くと面白そうなんですが、何が何やら分からないうちに話が進み、そしていつの間にか終わってしまう。
    あれ?
    このお話これで終わり?と何度も読み返してしまいました。

  • 山田詠美さん選の小説の中に河野多恵子さんの作品
    があり、その文章をざっとみたとき、すきな感じと
    思ったので、図書館の本棚にたまたまあったこの本
    を借りて読んでみた。やっぱりすきな文体だ。静謐で。
    この短編集の中では「異国にて」がすき。
    次に「いのち贈られ」

  • 資料ID:21102734
    請求記号:

  • 河野多惠子といえば「幼児狩り」を書いたおばあさんでしょう、くらいのことしか知らないでこの本を手に取った。読み終える頃には、淡々とした、ときにはとりとめないようにさえ感じられる筆致を支えるこの人の意識の分厚さにひれ伏したいような気持ちに。巨人系おばあさん。

    亡くなった家族を振り返ったり、警報機が誤動作した場所に居合わせたり、描かれている出来事に特別さはあまりない。それなのにこの胸苦しいような不安感!一寸先は闇という言葉があるけれど、この慣用句の「闇」はだれにでも訪れるごく日常的な闇なんだなと思った。

  • いずれも著者の経験と小説の中間にあるような日常小説。ごく普通の日常が実は非凡さに満ちていることに、我々読者は衝撃を受ける。そのことを一人密かに感じ取る主人公の感性に驚かされる。高齢の著者の最近の作品であるのだから、半分の年齢の我々は、心して感性と向き合わねば、と思う。

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