自転しながら公転する

著者 :
  • 新潮社
4.06
  • (197)
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  • (99)
  • (23)
  • (5)
本棚登録 : 5002
レビュー : 233
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103080121

作品紹介・あらすじ

結婚、仕事、親の介護、全部やらなきゃダメですか? 答えのない問いを生きる私たちのための傑作長篇。東京のアパレルで働いていた都は母親の看病のため茨城の実家に戻り、アウトレットのショップで店員として働き始めるが、職場ではセクハラなど問題続出、実家では両親共に体調を崩してしまい……。恋愛、家族の世話、そのうえ仕事もがんばるなんて、そんなこと無理! ぐるぐる思い惑う都の人生の選択から目が離せない、共感度100%小説。

感想・レビュー・書評

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  • 『「私たちは自転しながら公転する地球の上に乗って、生活しているんだな」ー 知り合いが何気なく発した言葉からヒントを得て、この小説が生まれました』と語る山本文緒さん。

    私などが改めて説明するまでもなく、この地球は24時間で自転し、365.25日で太陽の周りを公転しています。さらにはヘルクレス座の方向に秒速20kmというスピードで太陽系全体が移動していってもいます。もちろん、私たちは日常生活においてそんなことをいちいち考えたりはしません。朝が来て、昼になって、ああ、もう夜になってしまったか、そんな一日の中での時間の変化を漠然と感じるだけです。私たちの日常は何かと慌ただしく過ぎていきます。『仕事、恋愛、介護、職場の人間関係』と、私たちが立ち向かわなければならないことはあまりに多すぎます。では、そんな忙しい貴方を俯瞰した位置にいる神さま視点でそんな貴方を見たとしたら何が見えるでしょうか?そこには朝起きて夜眠るまでに、生きるために必要な事ごとをテキパキとこなしている貴方の懸命な姿が見えるでしょう。一方でそんな貴方も朝起きて”おはよう!”と家族に声をかけ、電車やバスに乗り、そして会社に着いて、”さあ、今日も頑張るぞ!”と気合いを入れる瞬間があります。自分の人生を懸命に生きながら、コミュニティへと一歩踏み出した瞬間に貴方は社会の一員として、それぞれのコミュニティの中でそれぞれの役割を果たしていきます。そんな貴方を神さまが見たら、貴方自身の世界を生きながら、社会というもっと大きなコミュニティの中でもそれぞれの役割を演じているという複数の動きを見せる貴方の姿が見えてくるはずです。

    「自転しながら公転する」というなんとも大きな世界観を思わせる書名のこの作品。それは、地球が自転をしながら太陽の周りを回り続けるのと同じように、自分の人生を回しながら、コミュニティの一員として社会を回していく私たちの人生を通じて、人の幸せとは何かを考えていく物語です。

    『今日私は結婚する。書類上ではまだ煩雑な手続きが残っているが、今日これから結婚式を挙げ、今夜から彼の部屋で暮らすことになる』という『私』。『これは本当に現実なのか実感がいまひとつ湧いてこない』中で『三日前に両親と共に日本を発ち』、今、式を前に、ウェディングドレスを着付け中の『私』。そして、メイクルームでひとりになった『私』は、『自分の姿を見つめ』ながら、『ベトナムの恋人と結婚を決めてから、慌ただしく大騒ぎ』したここまでの日々を振り返ります。『日本で働いていた彼と出会って、いつの間にか付き合いだした』という『私』。『彼の帰省に合わせて初めてこの国に遊びにきたとき、私は彼のバイクの後ろに乗って田舎道を走った』というあの日。『大きなスクーターにふたりで乗って、風を切り、焼けるような熱い空気の中を走った』というあの日。『湿気と濃い酸素。生まれて育った関東平野の乾ききった空気と全然違った』というホーチミン郊外。『ものすごく美味しいんだと連れて行かれた店は、バラックと見紛うような小屋』。そして出された『盛り付けも何もないような、ただ皿に入れただけのような青菜の炒め物』。しかし『鼻孔をくすぐるハーブの匂いに暴力的な食欲が込み上げた』という『私』は、『大きな口を開け、がつがつとそれを掻っ込んだ』彼に『つられるように口に入れると、うま味が口の中で弾けた』という展開。『夢中で何皿も注文して食べた』二人。『働いているのは意外にも若い人ばかりだった』という店内。『皆、さっぱりした身なりをして、フランクな接客をしている』という従業員たち。『それを見ながら私は経験したことのなかった感覚に体中がしびれて放心し』たというその瞬間。『ここで暮らせたら、という思いが湧き上がった』その瞬間の『私』。『お洒落なんかしないで、化粧なんかしないで、こういうところで働いて、こういうものを食べて日々暮らしたい』と思った『私』。今までも漠然と『外国で暮らすことについては考えたことはあった』という『私』。しかし『そんな漠然とした思いとはまったく違う熱望と言っていい気持ちが込み上げた』その瞬間。そして『結婚の話が出るまで時間はかからなかった』という展開の先に今日を迎えた『私』。『古いホテルの中の教会は、小さいけれどおごそかだった』と始まった式場の中で『最前列に座っていた母と目があった。母は涙ぐんでいた』という光景を見て、『最近までこの結婚に反対し続けていた』過去を踏まえ『何の涙だろうか』と思う『私』。一方で『反対するだろうと思っていた』父は『おめでとう』と笑っただけだったという報告の日。そして『私は夫になったばかりの恋人の腕につかまり、リストのピアノ曲が流れる中、バージンロードを歩き出した』という礼拝堂の今。『あのドアを開ければ、そこには喧騒の街がひろがっている』というその向こうへと歩き出す二人…という物語の〈プロローグ〉。そんな〈プロローグ〉の瞬間に至るまでの主人公・与野都(よの みやこ)が、『自転しながら公転』する、その苦悩の日々を描く物語が始まりました。

    2021年の本屋大賞にノミネートされたこの作品。地方のアウトレット内のアパレルショップで契約社員としてはたらく33歳の与野都が主人公となって物語は展開していきます。そんなこの作品は元々は「小説新潮」に連載されたものを改稿の上、〈プロローグ〉と〈エピローグ〉を追加して刊行されたという経緯を辿ります。上記したベトナムで結婚式を挙げるというとても印象的な場面が綴られる〈プロローグ〉。活き活きと華やいだ雰囲気の中に描かれるベトナムの日常の中へ『私はそこに飛び込むのだ』と前向きな感情に満たされた〈プロローグ〉。しかし、それに続く本編は、『毎朝都は牛久大仏を眺める』という一文から始まり、様々な事ごとにぐるぐると思い悩む主人公・都の鬱屈とした物語です。このなんとも言えないその落差に大きな衝撃を受けるこの作品。そんな〈プロローグ〉には、『私』の他に、父親、母親が登場します。特に母親についてはこの結婚に直前まで反対であったことが明確に語られる一方で、式典の各所へのこだわりを見せる姿も描かれます。そして式中に流した涙に『何の涙だろうか』と思う『私』。そんな『私』は、母親の胸に去来するものについて『喜びだろうか、悲しみだろうか、怒りだろうか。嬉しいのか、嫉妬しているのか、母の胸の内が本当にわからなかった』と語ります。〈プロローグ〉の華やいだ場面の中ではどうしても読み飛ばし気味になるこの母親の描写。そんな描写の数々を必ず読み返したくなる読後が読者を待つこの作品。ブクログのレビューでも賛否分かれるこの〈プロローグ〉について、『単行本にする際に付け加えるべきかどうか悩みました』と語る山本さん。確かにこれらがあるのとないのとでは、読後は全く別物に感じるであろう内容がそこには描かれています。しかし、私はこれらがあってこそのこの物語なんだと思います。それはこの作品が読者に問いかける『幸せ』とは何かという命題への山本さんなりの答えを〈プロローグ〉と〈エピローグ〉を通して垣間見ることができるからです。これから読まれる方には、この〈プロローグ〉を、さらっと流すのではなく、是非じっくりと味わいながら、特に母親の描写には意を払って読んでいただきたいと思います。その先にはきっと、単行本480ページにも及ぶこの長編を”読んでよかった!”という読後が待っていると思います。

    そんな〈プロローグ〉に続く12章からなる本編では、二人の人物の視点がランダムに切り替わっていきます。その一人は主人公である都、もう一人は『更年期障害』に苦しむ母親の桃枝です。『病気で別人になってしまった』という重い症状に苦しめられる桃枝。そんな二人がお互いを見やる場面で興味深い対となる表現が登場します。『母のおなかから生まれた自分は母とこの世の中で一番他人ではない間柄だったはずなのに、いつそんなに遠く離れてしまったのだろうと愕然とした』という都の母に対する想い。一方で『かつて自分のおなかの中にいて、生まれてからは涎だって排泄物だって直に触ってきた。しかし逆はどうなのだろう。自分がもっと老いて認知症や寝たきりになったりしたら、娘は母のそれを汚いと思わないで世話してくれるのだろうか』という桃枝の都に対する想い。『おなか』から生まれた側と『おなか』から産んだ側のそれぞれが、『おなか』を通じてそれぞれを強く意識し合いながらも気持ちが次第に離れていく不安感を上手く対比させたその表現。母と娘がそれぞれの人生を、それぞれの境遇を思い悩み、一方で付かず離れずに関わっていくその展開。視点の切り替えによってお互いの気持ちがよく見えてくる中で、読者の年齢、立場によってもどちらに共感できるかが変わってくるこの二人の巧みな描写は、それぞれ公転する中で微細な重力によってお互いの軌道に影響を与え合う惑星のように、この「自転しながら公転する」という作品を読む上での一つのキーになっていると思いました。

    そんな「自転しながら公転する」というとても印象的な書名のこの作品。私たちが毎日を生きるということは、それぞれの生活を送るのにプラスして社会の中で何らかの役割を同時に果たすことでもあります。人によってそんな社会との関わりの幅に差はあれど、何かしら社会の動きの中で私たちが生きていることに違いはありません。地球の公転とは違って、私たちが日々を生きる中では、突然、新たな動きの中に組み込まれることもありえます。『家族が病気になるということがどんなことか都はまったく知らなかった』という主人公の都。母の介護という動きに突然に組み込まれ『それは去らない台風の中に突然放り込まれたような出来事』と感じる都は『母が昔の母に戻って、都が自分のことだけを考えていい日々を取り戻せるのはどのくらい先なのだろう』と思い悩みます。それは貫一に『家事をやりつつ、家族の体調も見つつ、仕事も全開で頑張るなんて、そんな器用なこと私にはできそうもない』と自信を失った姿を見せる場面に繋がっていきます。しかし、そんな状況も母親の桃枝視点に切り替わると『家族から離れてひとりになりたい、と桃枝は思った。夫や娘からの心配が、かえって重圧だった』と全く違う世界がそこには見えてきます。この作品では他に都の父親、恋人の貫一、そしてベトナム人のニャンなど男性も登場しますが彼らに視点が切り替わることはありません。しかし、彼らだってそのそれぞれに思い悩みながらも、それぞれの世界の役割の中で生きています。それぞれの視点では決して見えない神さま視点で見た時には、それぞれの悩み、苦しみなんて大したことはないのかもしれません。それは、全体から見ればちっぽけな惑星に過ぎないからです。でも大切なことは、そのちっぽけな惑星それぞれがそれぞれに「自転しながら公転している」ということです。『自転しながら公転』する、そのそれぞれがお互いを尊重すること。重力によってお互いが引かれ合いつつも絶妙な均衡の中に美しく回り続ける世界。そして、それぞれの軌道を尊重し、それぞれが幸せにその軌道を回り続けることを見る神さま視点に立った時、〈エピローグ〉の私が両親に問いかけるシーンに光が当たります。『ママはパパと結婚して幸せだった?』というその問いかけ。それに対して『別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ』という母親の答え。それは、思い通りにならない自転と公転の中に、それぞれの生き方を、それぞれの幸せを見出していくものなのだと思います。そして、都、桃枝、そして貫一らが描くそれぞれの自転と公転を決して否定することなく、肯定していく、そんな優しい神さま視点に世界を見る物語は、この〈エピローグ〉のあたたかい感情に溢れた描写あってのことだと思いました。

    『都と桃枝、ほかにも必死に自転公転している登場人物たちの誰かしらには、感情移入できる点があるのではないでしょうか』と山本さんがおっしゃる通り、この作品には国籍を超え、多種多様な立場の人物が登場しました。そんな中でもアラサーという立場の主人公・都は、会社に、恋愛に、介護にと同時に押し寄せる様々な悩みの中でもがき苦しみながらも前を向いて進んでいきました。そこに描かれるリアルさは決して小説の中だけのものではありません。山本さんがおっしゃる通り感情移入してしまうリアルさをそこに感じる方もいらっしゃると思います。それは、私たち自身も「自転しながら公転する」、そんな毎日を送っているからなのだと思います。私たちは、他の軌道を回る人を見ながら、そこに色んなことを思いながらも、そんな他の人の軌道に移ることはできません。私たちは私たちそれぞれの軌道を「自転しながら公転する」しかないからです。そんな私たちそれぞれの自転と公転の人生に幸あれ!そんな風に感じた読み応え十分の素晴らしい作品でした。

    • さてさてさん
      yyさん、コメントありがとうございました。山本文緒さんの作品は初めて読みましたが、女性の内面をとても丁寧に描かれていて、すっかり魅せられてし...
      yyさん、コメントありがとうございました。山本文緒さんの作品は初めて読みましたが、女性の内面をとても丁寧に描かれていて、すっかり魅せられてしまいました。元々わたしのレビューは長いのですが、さらに長くなってしまいましたが、それだけ深く心に響いてきた作品でした。
      2021/02/20
    • naonaonao16gさん
      さてさてさん

      こんにちは!
      またまた素敵なレビューありがとうございます!!
      この作品、わたしも気になっており、次に読もうと先日購入。しかし...
      さてさてさん

      こんにちは!
      またまた素敵なレビューありがとうございます!!
      この作品、わたしも気になっており、次に読もうと先日購入。しかし次に読むのは「薄闇シルエット」になりそうです(笑)

      本屋大賞ノミネートがきっかけで気になったのですが、かなりの分厚さでびっくりしました!
      レビュー拝見しさらにまた読みたくなりましたー!ありがとうございます!
      2021/02/20
    • さてさてさん
      naonaonao16gさん、いつもありがとうございます。
      とても心に響いた作品でした。
      naonaonao16gさん、いつもありがとうございます。
      とても心に響いた作品でした。
      2021/02/20
  • 「別に幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思いどおりにはならないものよ」

    貫一の言う「幸せ原理主義」から解放される言葉。色々な事を乗り越えてきた二人だからこその言葉だ。

    でもレールに乗っていると自分で思い込んでいるときは、中々こうは割りきれない。「少しくらいの不幸」の幅が狭い。やっぱり自分の中に幸せの理想像は厳然としてあるんだと気づかされた。

  • 恋愛、結婚、仕事、セクハラ、モラハラ、介護、更年期障害‥‥多くの女性が遭遇する悩み。全てがこの本に盛り込まれていたのではないでしょうか?
    娘の都、母の桃枝の苦悩の毎日をもっともだ!それは頭にくる!と読み進めました。私も女性なので100%共感です。
    しかし、桃枝は「夫や世間からかけられる圧力ばかり気にしていたが、自分がかけていた圧力には無自覚だった」ことに気付く。「外で働く苦労はわかっていたつもりだが、男の人はそうするのが当たり前だと思っていて、夫が疲弊し、限界に近づいているとは想像もしなかった」
    都は「自分は社会で困っている人に対して何もしていない。お金も時間も全部自分が楽しむためにだけに使っている」こと、やはり“無自覚“であったことに気付く。

    「何かに拘れば拘るほど、人は心が狭くなっていく。」
    「幸せに拘れば拘るほど、人は寛容さを失くしていく。」

    都がたどり着いた「幸せになろうとしなくていい。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ。」の言葉。ステキな着地点だな、と思いました。
    女性の皆さん!ぜひ読んでください!

    • こっとんさん
      さてさてさん、こんにちは。
      私もプロローグとエピローグとても良かったと思います。あれがあるとないとではだいぶ物語の印象が変わってくると思いま...
      さてさてさん、こんにちは。
      私もプロローグとエピローグとても良かったと思います。あれがあるとないとではだいぶ物語の印象が変わってくると思います。
      でも、作者ご本人も付けるか付けないかに悩んでいた、そして読者からは賛否両論分かれる‥‥やっぱり読書って楽しいなぁと思いました。正解は一つではない!って思えます。
      2021/02/20
    • さてさてさん
      こっとんさん、ありがとうございました。
      おっしゃる通りだと思います。色んな読み方ができるのは読書の楽しみ、そして色んな意見があって、それを知...
      こっとんさん、ありがとうございました。
      おっしゃる通りだと思います。色んな読み方ができるのは読書の楽しみ、そして色んな意見があって、それを知ることができるブクログの場はとてもありがたいと改めて思いました。
      今後ともよろしくお願いします。
      2021/02/20
    • こっとんさん
      さてさてさん、ありがとうございます。
      このブクログの場、本当にありがたいですよね!
      自分と違った読み方を知ったり、自分では絶対選ばない作家さ...
      さてさてさん、ありがとうございます。
      このブクログの場、本当にありがたいですよね!
      自分と違った読み方を知ったり、自分では絶対選ばない作家さんの良さを教えてもらったり。
      これからもよろしくお願いします。
      2021/02/20
  • 地球は地軸を中心にして自らぐるぐる回った状態(自転)で、更に太陽の周りもぐるりと回っている(公転)。
    なんとなく記憶の片隅にあった地球の原理。
    地球上の人間も地球のように複雑な回り方を強いられている模様。
    ちょっとしたトラブルで頭の中がパニクってぐるぐると負の思考が駆け巡りまた慌てる。
    こうなると負のスパイラルだ。

    不思議なタイトルだと思って読み進めている内に意味が分かって思わず頷く。
    これ私もだ、と。
    32歳の主人公・都の前に立ちはだかる数々の試練は、女性ならどれか一つは当てはまるのではないだろうか。
    特に結婚前の女性は何かと気持ちがぐるぐると揺さぶられる。
    まさに自転公転状態。
    周囲の家族や恋人、上司同僚等の他愛もない言葉に揺さぶられ、仕事・恋愛・家族との距離感・親の介護・セクハラ等様々な葛藤に苛まれ、ぐるぐると余計な負の思考だけが頭の中を巡る。
    止まるに止まれない状況に慌てふためいて自己嫌悪に陥って。
    肩にずっしりのしかかった重石を取り払ってもっと軽やかに自由でいたいのに、そんなのはお前の我儘だと詰られて、思うままには生きていられない。
    こういった女性の悩みはいつの時代になっても取り除かれることはないのだろうか。
    読んでいる私までぐるぐると目眩を起こしそうになる。

    都が恋人とぶつかり合って辿り着いた、「結婚」ではなく「連帯」。
    その考え方にとても共感した。
    「別にそんなに幸せになろうとしなくてもいいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ」
    悩み抜いた都がようやく辿り着いた結論。
    私も肩の力をいい具合に抜いて、これからの人生を歩んでいきたい。
    悩み多き女性に対する応援メッセージが込められた物語だった。

    • ゆうママさん
      早速のお返事、感謝です。復旧を待つしかありません。フォロワーさんの本棚から失礼すると、あるのです!
      まったくです・・・・
      早速のお返事、感謝です。復旧を待つしかありません。フォロワーさんの本棚から失礼すると、あるのです!
      まったくです・・・・
      2021/04/10
    • ゆうママさん
      先ほどはお騒がせしました。直りました!
      ほっと一安心です!読んだばっかりの本だったので、すごく落ち込んでいました。良かったら私の本棚、御覧頂...
      先ほどはお騒がせしました。直りました!
      ほっと一安心です!読んだばっかりの本だったので、すごく落ち込んでいました。良かったら私の本棚、御覧頂けると光栄です。
      (^_^)/
      2021/04/10
    • mofuさん
      ゆうママさん、良かったですねー!
      本棚拝見しました。
      あれだけの量の本を登録していて、それが消えるとショックでしょうね(^_^;)
      考えるだ...
      ゆうママさん、良かったですねー!
      本棚拝見しました。
      あれだけの量の本を登録していて、それが消えるとショックでしょうね(^_^;)
      考えるだけで怖い。。

      本棚の中で共読している本がたくさんあって、嬉しいです。
      また本選びの参考にさせてくださいね(^^)
      2021/04/10
  • 本屋さんでもブクログでもずっと気になっていて、ようやく読むタイミングができで、そして読み終わりました。
    まず、タイトルとかばーでじゃけかいしたくなっちゃいますよね!そういう人も結構いるんじゃないでしょうか、自分もほぼそんな感じです。

    478pとかなりの長編ですが、2人の関係にもドキドキハラハラさせられるし、まわりの人間関係、世間体、親の病気、介護、将来設計、仕事、結婚など様々なテーマがあっていろいろ考えさせられるし、
    主人公の女の子(自分は男ですが)に感情移入できて
    一気に読んでしまいました。

    そして、プロローグとどう繋がっていくのか
    それはやはりエピローグでわかっていくのですが、
    なるほど!そーゆー事だったのねプロローグは!
    っていう感じもあって最後まで本当に楽しく読むことができると思います。

    「初めて貫一と飲みに行った時のことを急に思い出した。
    地球が回る速度の話をしている時だったか。
    地球はただ太陽の周りを円を描いて回っているのではなくて、スパイラル状に宇宙を駆け抜けていて、一瞬たりとも同じ軌道に戻れないのだと。」
    この部分がタイトルの「自転しながら公転する」
    それぞれの人のそれぞれの違う人生を表している一文だと思ったので抜粋しました。

    都が貫一と別れた後、貫一に対する思いを明確に表しているシーン
    「貫一は都の心の均衡を崩した。後の善行も悪行も、都を掻き乱す。自分はしないことを彼は易々とやる。彼は都にとって理解不能で、認めたくない存在で、そして憧れだった。」
    人は自分の無いものを持ってる人に惹かれるし、
    理解不能な人を知りたがる、とってもめんどくさいけど恋愛ってそういう事かもしれないです…

    都が広島のボランティアからボロボロで帰ってきて、貫一が働いている寿司屋を訪れるシーン
    「都は彼に触れようと手を伸ばした。
    明日死んでも百年生きても、触れたいのは彼だけだった。」
    ここは、電車の中で読んでいて全然気を抜いてて
    急にきたので、おもわず目頭が熱くなって危ないところでした…

    以前読んだ「薄闇シルエット」もかなり似たようなテーマでしたが、20代後半から30代にかけての女性の苦悩というのは、男性の自分では想像もできないようなものがあるんだなぁと改めて感じました。

    今、仕事、恋愛、結婚、将来などいろいろモヤモヤしている女性の方には是非この作品を読んで少しでも前向きな気持ちになってほしいと思います。
    もちろん男性でも全然共感できて楽しめる作品だと思います。

    • naonaonao16gさん
      sinsekaiさん

      お返事ありがとうございます!

      なるほど、「薄闇シルエット」よりライトな感じなのですね!それは嬉しい情報です...
      sinsekaiさん

      お返事ありがとうございます!

      なるほど、「薄闇シルエット」よりライトな感じなのですね!それは嬉しい情報です!ありがとうございます^^

      メンタル最弱…そんな中たくさん開示をしてくださったのにスルーしたみたいになって本当にごめんなさい。
      いただいたコメント(特に丁寧に書いてくださっているもの)は必ず返すようにしています。
      以前、スマホでコメントを返すとフリーズする現象が続き、運営に問い合わせても直らず、それ以降、丁寧にお返事するコメントはPCを使うことにしたんですね。そうするとなかなか平日にお返事をすることができずに、まとめてお休みの日にお返事をさせていただくことが増えてしまいまして。
      こちらこそ嫌な時間を過ごさせてしまって申し訳ございませんでした。
      sinekaiさんから頂いたコメントにこちらが気に障るような内容は全っっっっっくございませんでしたので、そこは本当にお気になさらないでください。

      いろいろな方から勇気をもらって背中をおされ、コメントをいただいた作品をnoteでも紹介させていただくことにしました!
      ※現在執筆中!
      よかったら遊びにきてください^^
      いつでもどこでも懲りずにコメントしてください(笑)お待たせするかもしれませんが、コメントにはお返事するのでご安心ください。
      2021/03/28
    • sinsekaiさん
      わかりました!
      noteの方もチェックしてみます
      わかりました!
      noteの方もチェックしてみます
      2021/03/28
    • naonaonao16gさん
      ありがとうございます!
      同じ内容にはなりますが、是非遊びに来てください\(^o^)/
      ありがとうございます!
      同じ内容にはなりますが、是非遊びに来てください\(^o^)/
      2021/03/28
  • 主人公の都は32歳。青山のアパレルショップで店長をしていたが、地元・茨城に住む母親が更年期障害に苦しむのを介護するため、退職して実家に戻ってきた。
    新たに契約社員として勤めるアウトレットの洋服屋ではアルバイトと社員の板挟み。無職になってしまった彼氏は職が決まらないのに10万のネックレスを買ってくるし、実家の両親からは結婚して子供を産むことを急かされる。
    家族、介護、仕事、恋愛、結婚。32歳の女性をとりまく環境はとてもシンプルとは言えず、複雑に混じり合い、絡み、もつれて都の人生を苦しめる。
    読んでいて、「ただ生活することがどうしてここまで難しいんだろう」「普通に暮らすだけでどうして荷物が増えるのだろう」と、思わず何度も嘆息してしまう。

    都の彼氏である貫一は、マイルドヤンキー感の抜けない中卒の寿司職人。
    (大柄でぶっきらぼうで硬派だけど時折垣間みせる表情はやんちゃで、と思えば読書好きで彼女にはべらぼうに優しい。私は山本文緒さんの書くこういう男性が大好き。笑)
    勤めていたアウトレットの回転寿司屋が閉店してしまってからは無職で、結婚や将来のことを真剣に考えてくれているのかいないのか、都はずっとやきもきしている。
    二人がまだ付き合う前のデートで、貫一がきかせてくれた話が好きだ。

    「地球はな、ものすごい勢いで回転しながら太陽のまわりを回ってるわけだけど、ただ円を描いて回ってるんじゃなくて、こうスパイラル状に宇宙を駆け抜けてるんだ」

    「太陽だってじっとしてるわけじゃなくて天の川銀河に所属する2千億個の恒星のひとつで、渦巻き状に回ってる。だからおれたちはぴったり同じ軌道には一瞬も戻れない」

    本当は自分の好きなことだけして自由でいたくてそれだって悩みも尽きなくて、それぞれもがきながら留められない時間のなかにいる。
    でもあずかりしらないところで求められる役割や立場や振る舞いがあって、ぐるぐるぐるぐる折り合いをつけながら生活している。
    なるほど、私たちはたしかに、自転しながら公転している、と思う。
    人生って、不愉快なことや、理不尽なことや、ままならないこと、たくさんたくさんあるけれども。
    ひろい宇宙の真ん中で地球みたいに自転しながら公転している自分を想像するとなんだか遥かな気持ちになって、しょうがないけどやるしかないか、と思えるようなそんな気がした。

    プロローグとエピローグがにくいですね。
    本編読みながら都と貫一、綱渡りのような微妙なバランスを保つ二人の行く末にハラハラが止まらなくて中盤からは息継ぎなくほとんど一気読み。

    「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ」

    山本文緒さんの小説は、ぜったいに嘘をつかない。悲しいことやつらいこと、苦しいことがあってもそこから決して目をそらさずに、綺麗事もご都合主義も抜きで最後まで真摯に向きあって書いてくれる。改めて好きだなぁと思った。疲れ切った年の瀬に、また明日からの元気をチャージできる素敵な小説でした。

  • 昔も、今も、山本文緒さんの作品は私の胸をかき乱す。自分の心の奥底に沈む本音が否応なく明るみに晒される。それでも読むことをやめられない。今回もそうだった。
    東京から地方に戻ったアラサーの都。更年期障害の母の看病をしつつ、アウトレットで働く日々。家族関係も恋愛も仕事ももつれ、どん詰まり。
    都の母ほどではないが更年期の症状に悩まされ、仕事に行き詰まっているアラフィフの自分は、都にも彼女の母にも大いに共感しながらページを捲った。時にはイラッとすることもあったが、それもまた己の甘さを見せつけられたようで複雑な思いになりながら。「こんなはずじゃなかった」感はいくつになっても拭えるものではないのだと痛いほどに感じる。
    都と恋仲になる貫一、彼がまたよくも悪くもつかみどころのないキャラクター。中卒元ヤンだが蘊蓄好きの読書家。何だかアンバランスだが不思議な魅力のある彼を個人的に嫌いになりきれず、都の友人による彼の賛否のジャッジも、それぞれにわかる部分もあり…。
    世代的には都の両親に近いため、彼らが生き方を模索する過程もとても興味深かった。「我々は年をとる。軟着陸できるように、少しずつ高度を下げていくほうがいいのかもしれない」という言葉がとても印象的だった。
    職場でも、家庭でも、恋愛でも、それぞれに衝突し、揺さぶられまくる都。嵐のような展開に辛くなるところもあるけれど、ただただ、彼女がこの試練をどう乗り越えていくのかが知りたいという一心で読み進めていった。結構な長編だけど、本当にあっという間で、何ならもっと読み続けたいと思ったほど。
    つまらない固定観念で自分をがんじがらめにし、幸せの形を勝手に決めてしまいがちな生き方から自由になりたい。そうは思っていてもなかなかうまくいかないものだけど。それでも、この作品と出会って呼吸が少し楽になった。文緒さんの作品は、いつでも自分の道標だ。

  • プロローグとエピローグこういう扱い方があるんだ!
    プロローグ 結婚式当日、わたしは去来する思いに浸りながら未來を見つめている。

    本編 主人公の都と寛一の恋愛がどんな理由で終わりを迎えるのか(だってプロローグの結婚相手は寛一じゃない)、ドキドキしながら読み進める流れになった。
    都は、寛一の誠実さを信じたいが、寛一の生立ち学歴、過去の噂も気になり気持ちが揺れている。仕事や親の介護で、いっぱいいっぱいだ。恋愛だって結婚を視野に入れなくてはならない年齢で迷いや不安に押し潰されそう。
    都の抱える悩みを一緒に考えながら読んでいたから、都が何を優先し、人生をどう歩むのかが気になり読み急ぐ。
    そしてエピローグ。えー! おもしろい。

    都の母親、それから別の誰か(読んでお楽しみ)の視点から、都を見られるのも良かった。

    自転しながら公転する地球は、自転軸の傾きが変化をもらたし、公転の軌道は全く同じではないという。その地球の上に生きる私たち。ずっと同じじゃない。日々、状況は変化しているんだ。
    ぐるぐる悩みに捕らわれ時、この事を思い描いてみたい。

  • 大きな展開があるわけじゃないけど、ひとつひとつの描写がほんとリアルだった。

    自分に自信がなくて、周りの幸せを目の前に嫉妬して、自分の意見を言えずに飲み込んでしまう、都の一面が、とても自分と被った。

    ベトナムの描写から始まる本作は一種のネタバレを含むようなスタートだったけどエピローグで納得。

    人生の終わりを着地と言い換え、高度で生き方を提示するのはとても面白かった、まずは高度を上げて飛ばなきゃなぁ自分は。


    "何かに拘れば拘るほど、人は心が狭くなっていく"
    "幸せに拘れば拘るほど、人は寛容さを失くしていく"
    "少しくらい不幸でいい、思い通りにはならないものよ"

  • 「こうありたい」と願う自分と、「こうである」という現実の落差。儘ならない日常。

    刷り込まれた既存の価値観に絡めとられ、「ねばならない」に雁字搦めになって苦悩する機微を細やかに描く山本文緒さんの久々の新作。

    32歳独身のアパレル店員 都が、茨城にある実家の両親の介護や仕事、恋愛、結婚、つまり「自分以外」の他者との関係性を通じて、「自分の在り方」に苦悩する様子が巧みな筆致で綴られる。

    自分の選択が正しいのか。
    何をどう選べば「幸せ」になれるのかという漠然とした主人公都の問いは、作品を通じ終始一貫、読み手の私たちの心をも共振させる。

    彼女が距離を近づけていく中卒のすし職人見習い貫一は生い立ちや学歴、職業という外的価値判断基準に思い悩み、自分の在り方に戸惑う。

    都の両親もそれぞれ懸命に年齢を重ねてきたものの、自分たちの老いや病、経済性に不安では収まり切れない恐怖を感じ、各々が自分の殻に閉じこもってしまう。

    登場人物たちが憧れや偶然選んだ職業に関しても、周囲との比較や不如意の人間関係に翻弄され、不全感で足踏みが続く。

    場面を重ねるにつれて、彼ら登場人物が心に抱える劣等感、寂しさ、心細さ等が山本文緒さんの筆で露わになり、多様な面を持つ人物像が浮き出てくる。
    巧い。誰かの心の中を覗き込んでいるような錯覚で頁を捲る。

    形のない漠然とした「幸せ」にいくら懸命に手を伸ばしても、実は「幸せ」は得られないのではないだろうかと頁を閉じる。

    多くの登場人物の頭や心を常時駆け巡る思考について、とても丁寧に、細やかに描く山本さんの筆はあざとくなく、登場人物が自然に動く。

    この作品に多くの人がどこかで自分を重ね、絶賛される所以だと思う。
    言語化しなくても、分かり合える。
    互いに空気を読み合い、役割を期待して関係性を築く「ハイコンテクスト」のコミュニケーションが登場人物たちの根っこにあるように感じる。

    自分が何を求めているのかを言語で自問自答し、相手には何をどうしてほしいのかを言語で伝える。
    すなわち「ローコンテクスト」の関係性。
    自分と他者の境界線を明確にすることにより、幻に思える「幸せ」が近づいてくると信じている。

    でも生身の人間なので、挫折、失望、落込み、怒り、哀しみに翻弄されるのが日常。それを山本さんの筆で昇華するために読むのかな。

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著者プロフィール

1962年神奈川県生れ。OL生活を経て作家デビュー。99年『恋愛中毒』で吉川英治文学新人賞、2001年『プラナリア』で直木賞を受賞。著書に『ブルーもしくはブルー』『あなたには帰る家がある』『眠れるラプンツェル』『絶対泣かない』『群青の夜の羽毛布』『落花流水』『そして私は一人になった』『ファースト・プライオリティー』『再婚生活』『アカペラ』『なぎさ』『自転しながら公転する』など多数。

「2021年 『ブルーもしくはブルー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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