兄よ、蒼き海に眠れ

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 21
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103090182

作品紹介・あらすじ

瀬戸内の基地で「回天」特攻隊員として出撃を待つ兄善一郎は、たぎる想いと葛藤の日々を、日記と弟への手紙に綴った。学童疎開先から返事を書き続ける弟昭二。だが東京大空襲の戦火で父と母を亡くし妹をも失ってしまう-。戦争に引き裂かれ、生と死の極限に生きた兄弟の魂の交流が照らし出す戦争の悲劇。書下ろし長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 壮絶な兄弟の戦争体験。兄は回天の搭乗隊員、弟は学童疎開。兄は海軍でシゴキにあい、死を当たり前に考えるようになる。それでも22歳の若さで死にたくない!と本音が垣間見えるシーンが辛すぎる。弟は学童疎開でひもじく霜焼けを悪化させ、また上級生からのいじめにあう。両親妹は大空襲で亡くなってしまう。戦争の悲惨さをこれでもか、と味わえる作品。回天という狂った兵器に乗れる異常さ。回天のことを読むのは2冊目になる、もっと知りたい。

  • 浅草の質屋の息子昭二は、学童疎開で東北白石で集団生活を送り、兄善一郎は海軍の特攻兵として回天に乗船する訓練をしていた。

    ある兄弟の戦争の物語。

    戦争の小説は、毎回辛く悲しい気持ちになります。
    親元を離れ、疎開先での生活は、子供にとってそれは寂しく辛いものだったでしょう。
    親元や戦地の兄からの手紙が心の支えというのは胸に染みます。

    人間魚雷回天という凄まじい兵器については、過去に読んだ『出口のない海』で知っていましたが、今回はその悲惨さはあまり感じることなく、ただ最後に善一郎が選んだと思われる道に苦しくなりました。

    戦争は、二度と起こしてはいけない過ち。
    平和な世の中であることを望みます。

  • 戦時下の話ですが、その悲惨さにやるせない気持ちになってきますね。
    米軍の空襲を避けるために、家族離れ離れになり、それぞれが過酷な暮らしを要求される。
    一般市民を皆殺しにするような綿密な計画のもとに行われた東京大空襲。
    その焼け野原で、絶望に打ちのめされる人々。
    死ぬことを前提に、敵に一矢報いるためだけに訓練する特攻隊員。

    本で読んでいるだけで辛いのですから、実際に体験した方の苦労や思いというものは、想像を絶するものでしょうね。
    決して、読んでいて楽しい本ではありませんが、こういう本を通して戦争は絶対起こしてはいけないものであると学ぶことは重要なことなんだろうと思わされました。

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