ローマ人の物語 (1) ローマは一日にして成らず

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096108

作品紹介・あらすじ

ソ連崩壊、ヨーロッパ統合、民族紛争、アメリカの翳り、そして我が日本の混迷…。激動の20世紀末を生きる人類が遭遇する、あらゆる場面に送られる古代ローマ人一千年のメッセージ-。ローマ人は何故かくも壮大な世界帝国を築き、しかし滅びたのか。塩野七生の、情緒を排した独自の視点から展開される刺激あふれる物語。

感想・レビュー・書評

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  • 『ローマ人の物語』、シリーズ自体は1992年から始まってますので、
    存在自体は大学生のころから知っていましたが、
    初めてきちんと読んだのは文庫版が出始めた、2002年のころでした。

    確か、ちょうど仕事で金沢に入ることが多く、そちらのお供に、
    羽田空港の書店で買い求めていたのを覚えています(新幹線が通る前です)。

    その後、続きが気になってもハードカバー版には手を出さず、
    2011年に完結した文庫版(全43巻)を追いかけていたのですが、、

    ここ最近の、急速な世界の在り様が変わりつつあることに触発されたのか、
    はたまた、折よくささやかながらの長年の夢でもあった、

    ハードカバー版を置くスペースを確保できたことにも後押しされたのか、
    久々に最初から通して再読してみようかと思い立ち、手に取ってみました。

    時代的には、ローマ創世神話から、建国、王政を経ての共和制が安定し始めた時期、
    対ハンニバル戦の前で、「いわゆるローマ」になる前の物語、が1巻の舞台となります。

    ローマは決して最初から強いわけではなく、周辺諸国と比べても、、

     知力ではギリシア人に劣り
     体力ではケルト(ガリア)やゲルマン人に劣り
     技術力ではエトルリア人に劣り、
     経済力ではカルタゴ人に劣っていた

    なんて言われてしまうくらいですが、そんなローマ人が、
    どうして覇を唱えるに至ったのでしょうか。

     敗者でさえも自分たちに同化させるこのやり方くらい、
     ローマの強大化に寄与したことはない

    これはローマ人の生来の気質でもある「開放性」「寛容性」にあるとのことですが、

    興味深かったのは、当時先進国であったギリシャの政体を、
    そのまま踏襲するのではなく、自分たち用に編集(カスタマイズ)したとの点。

    王政、貴族政、民主政の、それぞれのいいとこどりをして、
    それに対するリスクヘッジは「法」との普遍的な価値観で行うように。

    そうした普遍的な軸があったがゆえに、他民族の宗教にも寛容で、また、
    ローマ市民の責務を果たすのであれば、他民族を受け入れるのに抵抗もなかったのでしょう。

    なんて思うと、以前から感じているのですが、日本人ともどこか通じるものがあるな、と。
    この辺りは松岡正剛さん言うところの「編集力」がわかりやすい概念です。

    何はともあれ、1000年続くことになる「ローマ」の始まりの物語ですが、
    その滅亡の時まで繰り返し語られることになる「ローマの寛容」の物語でもあるのかな、と。

     歴史とは学ぶだけの対象ではない。知識を得るだけならば、
     歴史をあつかった書物を読めば済みます。

     そうではなくて歴史には、現代社会で直面する
     諸問題に判断を下す指針があるのです。

    とは、別の寄稿文での塩野さんの言ですが、私もこれこそが、
    「歴史の社会的有用性」の最たるものだろうと、そう思います。

    一つだけ注意したいのは、今現在の価値観で歴史の事象を審判するのではなく、
    当時の価値観をもとに理解した上で、現在の価値観への“活かし方”を考えるとの点でしょうか。

    あとは余談ですが、結構なページを「ギリシャ人」に割いてるので、
    『ギリシャ人の物語』も読まないとかな、と思い始めていたりして、、悩ましいです。

    歴史ってやっぱり面白いな、なんて感じさせてくれる一冊です。

  • ローマの事を全く知らない人間が読んでも、グイグイ引き込まれる文章で、漫画を読むような感覚で歴史理解を深める事ができた。長丁場になるが全巻読んでみたいと思う。ローマ建国からカルタゴ(現 北アフリカ)との戦争であるポエニ戦役勃発前までが描かれる。ローマに最初に拠点を築いたのは所謂「ならず者集団」で、サビニ人の女性たちを拉致して結婚して子孫を残したというのは驚きであった。共和制移行後のパトリキ(貴族)中心の政治から平民を取り入れた政治体制の確立(リキニウス法)や同盟国出身の者に違和感なく最高権力であるコンスル(執政官)の地位を与えるなど、外部リソースの活用の上手さがローマが今後ライジングしていくことのバックボーンになっているのだと感じた。

  • 全能は他者排除 キリスト教もイスラム教もユダヤ教も全能神で他宗教の神を認めない。体力でも技術力でも文化力でも劣ったローマ人ではあるが、システム構築力はバツグン。そこに価値を見出すところが歴史的天才集団と思う。
    帝国という言葉だけを真似て実体は真逆の全能そして他者排除に突き進んだナチス。どこに分岐点があったのか?

  • 以前から読みたいと思っていたシリーズである。
    タイトルの「物語」から、ある主人公を中心としたストーリーかと想像して読み始めたが、思ったより淡々と、しかし臨場感もありながらローマ初期の歴史が書かれていた。ローマが最盛期のギリシアを視察しながらも民主政を採用しなかったことは非常に大きな分岐点になっただろう。
    ローマが征服した他民族を寛容に内包していくシステムは、移民政策など現代の政治システムを考える上でも参考になるのではないか。

  • ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。この本から、この偉大な物語は始まりました。本書出版時、私はまだ大学生。このシリーズが終了するころには、私は何をしているんだろうかと思ったことを記憶しています。

  • 単行本全15巻の第1巻。ローマ建国からイタリア半島統一までの約500年。何故ローマは栄えたか。如何に栄えたかと共に描かれる。この先長い物語が続く。

  • 面白かった。
    ローマの歴史は、断片的に知っていたが、紀元前の時代に、こんなに素晴らしい国があったとは思わなかった。
    宗教への寛容さ、執政官、元老院制度と市民集会を活用した独自の政治システム、敗者さえもローマと同化させる生き方など隆盛する要因がよくわかりました。

  • 全く興味のなかったローマですが、今では大好きになりました。また歴史に興味を持つきっかけになりました。いつかローマの遺跡や芸術を見に旅に行きたいです。

  • 名著。道路は国の動脈。自国に便利は他国に侵略にも便利。

  • めちゃくちゃ面白かった!
    高校の世界史ではただ長く存在していた国という程度の認識しかできなかったのが、急に『ローマ人』が鮮やかになった。
    作中で時間が前後しやや分かりづらいこともあるが、それは著者がローマに変革を迫った複数の事象やそれによる影響を一つ一つ細やかに解説しているためである。共通の出来事が出てくれば、「ああ、ちょっと前に触れたことと同時並行で起こってたのか」と合点がいく。
    次巻も読む。

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