ローマ人の物語 (6) パクス・ロマーナ

  • 新潮社 (1997年7月1日発売)
3.99
  • (75)
  • (63)
  • (73)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 663
感想 : 55
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (345ページ) / ISBN・EAN: 9784103096153

みんなの感想まとめ

初代皇帝の生涯を描いたこの作品は、慎重で実行力のあるアウグストゥスの姿を浮き彫りにします。カエサルの後継者としての重圧を背負いながら、彼は血の継承にこだわりつつも、平和な時代を築くために尽力しました。...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アウグストゥス(オクタヴィアヌス)初代皇帝、
    帝政への移行をめっちゃくちゃ慎重にした様子が分かる。
    血の継承にこだわったのはなんでなんだろう。。。

  • アウグストゥスの治世について

  • 初代皇帝アウグストゥスの生涯が書かれています。
    カエサルの後継者でありながら、慎重で、戦いに弱く、才能よりも血にこだわるなど、カエサルとは異なるところが多かったようですが、カエサル以後のローマを平和に導いた功績は大きいと思われます。
    カエサル以後の割と平和な時代には、アウグストゥスのような人物がローマを率いたことはローマにとって良かったのではないでしょうか。
    アウグストゥスはカエサル程、才能には恵まれてはいませんでしたが、統治能力、慎重さ、平和裏に帝政へ移行する忍耐力等は優れており、自分に才能がないところは、アグリッパ、マエケナス2人の友に支えられながら、ローマを平和にしていきました。
    カエサルとはまた違った魅力を感じる人で、苦労した人生を見ると親近感が湧く人物でもあります。

  • カエサルとは対照的、地味で堅実なアウグストゥスの功績。カエサルの後継者選びの炯眼には驚かされる。

  • アクティウムの海戦にてアントニウス・クレオパトラの連合軍を打倒したアウグストゥスに権力が集中する一方、アウグストゥスは危機管理を忘れなかった。内乱期に獲得した特権を放棄し、共和政に帰す事を突如元老院議員の前で宣言したのである。特筆すべき特権は課税権を伴った「イタリア宣誓」であり、これは対アントニウス戦のために国家ローマのためにアウグストゥスを総司令官と定めた特別法であったからだった。
    チグリス・ユーフラテス川の両川を拠点とするパルティアの問題はオリエントの防衛にとって長らく無視できない重要な課題であった。初めて正面からぶつかったクラッススは無残な敗北を喫し、オクタヴィアヌスとの権力争いの中で自身のプレゼンス向上を図りたかったアントニウスも失敗ではないものの軍勢を削られる芳しくない結果に終わっている(どちらにも共通するのは自身の政治的な劣勢を覆す起死回生の一手としてパルティア遠征を活用している点が面白い)。パルティア問題は放置すればするだけ、東方の安定に影を落とすためカエサルであればアントニウスを打倒した直後にパルティア問題に着手していたであろうが、アウグストゥスはそうしなかった。3度目の失敗は取り返しのつかない事態に繋がることから、自身に軍才がないこと、右腕アグリッパも天才的司令官ではないことから軍事力での解決は絶対的な一手に欠けるというのが理由だと考えられる。着手は絶対権力者となってから10年後にパルティアの内紛(王の老齢化に伴い、王弟が政権簒奪を狙うが失敗する)に乗じてであった。この時、アルメニアは親パルティアの国であったが、アウグストゥスは義子ティベリウスに進軍させ、アルメニアの親ローマ化に成功する。パルティアは友国アルメニアの親ローマ化を受け自国の政情不安も重なってローマとの講和を結ぶこととなった。こうしてアウグストゥスは長年の問題であったパルティア問題を兵の損失なく解決したのであった。
    特有の事情からアウグストゥスの私有地としていたエジプトであるが、アウグストゥスは灌漑工事に着手すると共に土地の私有化を推し進める。自作農でないと生産性の向上にインセンティブが働かないからである。灌漑工事は成功するものの、古来より小作農が一般的であったエジプトで私有化は上手く進まず一部のみに留まったが、生産性は飛躍的に向上した。
    西方・東方の安定化にひと段落をつけたアウグストゥスはいよいよ、本国ローマの統治体制の改革に着手する。とはいえ、スッラ/カエサルの二の舞にならないようにであった。スッラは純血主義ともいえる形で元老院強化を推し進め、カエサルは統治体制の開国を図り反対派に暗殺された。アウグストゥスが着手したのは、ローマ市民権所有者全体の強化でった。統治改革の前提には、ローマ市民権所有者の質と量があると考えたからであった。内乱終結後のローマでは少子化が進んでおり、アウグストゥスは少子化対策として2つの法案(ユリウス二法:ザックリ独身だと税制面で不利になったり、不倫を公の罪にしたり、といった法案)を提出した。子供が産まれる産まれないは個人の特性にも依るため、子に恵まれなかったとしても税制面の不利が緩和された法案に修正され成立している。軍制改革にも着手した。パルティア問題が解決したことにより、ローマ軍の方針は「防衛」に限定された。パルティア以外の国境を接する国はどれも蛮族であり戦利品など期待できないからである。スッラ、ポンペイウス、カエサルのようにカリスマ性による軍の統制ではなく、システムにより統制されることが重要と考えた。常備軍の設立や、報酬の増額、退職金制度の設立、常備軍への兵役の年限など、数々の改革を行った。改革の中に、属州国民で構成される「補助兵」の正規兵化があり、除隊後はローマ市民権を付与するものであった。これは、防衛費の削減や自国は自分で守るという意識づけにも役立った(属州税だけ払えば防衛はローマがやってくれる、という意識は人間を堕落させるというのが古代の考えでもあった)。加えて、属州内での下層階級への失業対策や、「軍団兵(ローマ市民で構成)」と肩を並べて働くことによる文明化にも繋がった。

  • カエサルのカリスマ性を持った天才ではなかったが、偽善という性質は持っていたアウグストゥスが帝政を築き上げていく物語。自分が見たい現実しか見ない人間が多くいる中、アウグストゥスは見たくない現実も直視した。それ故、見たい現実しか見ない阿呆の相手をするには苦痛を伴ったが自己制御能力が抜群であったため、長時間かけて段階的に帝政を完成させていく。合法に見えるやり方でも、つなぎ合わせれば非合法の帝政を達成させた。しかしこれらの成功の影には常にカエサルが現れた。

    1.統治前期
    自らが持っていた特権を廃止し、共和政復活を宣言するも、内実は手放した方が利益になる特権を廃止したにすぎず、浅はかな元老院は上っ面しか受け取れなかったため帝政を進めることになる。彼は、周りからの熱があってようやく取り組む姿勢であって、カエサルのように一挙に進めることはしなかった。それ故、周りを欺き、訂正を進めることができた。14年の内乱がありながらも他国や属州から反乱がなかったのはカエサルがそのような統治体制を整えたおかげである。死してなおその姿を残し、大きな貢献をもたらすカエサルの偉大さたるや。
    西方に次ぎ東方の再編成を終え、権威と権力を着実なものにする。有力貴族ではないため、先に名声を高め、その後明らかな帝政制度を進める基盤作りをしたのは自然な流れに感じる。カエサルと違い30代から動けたアウグストゥスにはのんびりと着実に進めることができたが、これもまたカエサルのおかげである。かといって全てを段階的に進めるではなく、時には考える隙を与えず次々と法を整えていたから、巧妙さが伺える。
    2.統治中期
    帝政の核とすべきローマ市民の質と量の確保に努める。属州民の更なる同化。信頼たる部下、アグリッパらを失う。
    3.統治後期
    固執した血の繋がりを重視した計画をことごとく失敗したため、次期皇帝ティベリウスに近づいていく。遺言でも細かな現状情報と指示を与えており、高効率な国家の運営と平和の確立を目指したアウグストゥスの働きぶりが現れている。一度も元老院達の大きな反発なく死を迎えられた点は、アウグストゥスの偽善が効いた証である。属州で反乱が起こったのは、アウグストゥスが現地で考えることを怠ったため、正確に把握できずに判断を鈍った故だと思う。今まで反乱が起こらなかったのはカエサルの統治能力に依るものである。

    if.アウグストゥスが帝政を全面に出した政策を打ち出していたら?

  • 20210509
    アントニウスを倒し唯一の実力者となったオクタヴィアヌスは、共和制復活というフィクションを元老院階級に信じ込ませながら世襲の元首政を確立した
    ・彼の特質である慎重さをいかし、若いがゆえにあった時間を使った反撥を起こさせない茹でガエル的な変革
    ・無理をしない人、持続する意志の持ち主。体は丈夫でなかったが休みたいときに休み、強引に自身の意向を押し通さない
    ・カエサルが任命した軍事面でのアグリッパと、自分で発掘した外交・広報担当のマエケナスに支えられたチーム。自らは業績録によって帝政への歴史の支持を集めるとともに、マエケナスが後援した詩人たちによるパクス・ロマーナが政体の正当性を宣伝した
    ・共和政復帰宣言、キケロへの師事という偽善的なイメージ戦略
    ・パクス・ロマーナという大義名分、その実現
    ・カエサルが示した、ライン、ドナウ、ユーフラテスにわ防衛線とする方針に背き、ゲルマンを征服してエルベまで領域を拡大しようとしたのは唯一の大きな判断ミス
    ・常備兵による軍制を確立。組織では防衛のための25個軍団制とし、報酬では満期除隊の年数と退職金を定めた
    ・属州を、軍事力をおかない元老院属州、軍事力をおく皇帝属州、皇帝自ら統治する特殊なエジプトの3分類にわけ、元老院属州においても徴税権は新設の国税庁が担うことで皇帝への集権化を進めた。元老院属州と皇帝属州の予算のやりくりをすることで、帝国を守る軍事力を確保した
    ・血の存続に執着し、また良き家族を守らせるための法律である姦淫法を定めた。☆彼の文化面での保守性を示すのではないか。血の存続については内乱を避けるために必要であったのかもしれないが、実力制、任期制ではだめだったのかが疑問。

  • 図書館長 井上 敏先生 推薦コメント
    『ヨーロッパの歴史を理解するにはまずローマの歴史。独特な書き方だが、ローマの建国から西ローマ帝国滅亡までの通史を知るにはちょうどいい。研究者からの批判もあるが、理解しやすい。』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/248993

  • ジョン・ウィリアムズ『アウグストゥス』から、史実はどうなのか興味が湧いてこちらを読む。天才の後を継いだ、天才じゃないアウグストゥスが、いかにしてローマの平和を築き、持続させたのか。いやー、面白かった。苦悩も含めて。ますます興味が沸く。

    (こうしてみるとウィリアムズはほぼ史実に忠実で、そこから人物と物語を深めたこと、特にユリアを膨らませたことで物語の厚みと影が出来たことがよくわかる。これを読んだ後で、ウィリアムズを再読するとまた更に面白そう。)
    しかしこれを書いた時点では、塩野さんはウィリアムズ未チェックだった模様。

    いやー、ローマ面白いわー。

  • 歴史ドキュメンタリー。

  • 今回の主役はオクタヴィアヌスつまりアウグストゥス帝。 8月の人ですな。ユリウス・カエサルが織田信長とするなら、アウグストゥスは (19才でカエサルに後継者に指名されて77才まで生きたおかげで)豊臣秀吉と徳川家康の役を両方やったような人。カエサルみたいに派手ではないけど、伊達にカエサルと共に月に名前を残してる人ではないね。

    で、一般にはここで共和政が終わって帝政が始まる、ということになるのだけど、帝政と言っても(少なくとも私の) イメージとはだいぶ違うのね。この辺は読んでもらえれば。

  • 古代ローマの指導者たちの死後の執着が薄かった。霊廟が質素
    常設の軍事力
    ⇒防衛に必要となる。攻め込まれるたびに徴兵していたら後手に回るため
    攻撃ならその都度 目的に応じて召集すればよい
    ただし可能な限り効率的に、少ない経費で最大の効果をあげる組織を作らなければ
    国の経済力がそれに耐えきれなくなる。防御側の不利。
    ⇒税の値上げ⇒住民の不満⇒国内の不安

    未開部族相手では勝利しても戦利品が期待できない。
    戦争において勝てば戦利品が期待できるのは兵士の士気に大きく関わる
    ⇒未開部族相手の防衛は地味で苦労ばかりおおい汚れ仕事
    古代ローマの安全に対する考え
    他人に金を払ってもらって安全を保証してもらうのは人間を堕落させる
    征服された人々が反乱するのは、民衆が自主的に蜂起するためでなく、
    民衆の指導者層が民衆を扇動するから。支配者層が不満をもつのは
    他国民に支配された結果、自分たちのうまみ(権威、権力)がなくなるから
    ⇒支配した部族の指導者層、拠点の温存が長期支配につながる
    民衆の不満は指導者を得ない限りは爆発しない。

    若い指導者は老害になめられる
    古代ローマの少子化対策
    軍隊の種類
    ①他国からかき集めた傭兵
    士気ひくい。
    ②自国民
    士気たかい。自国防衛という理念


    キケロ
    「人間にはことの重大さを理解する頭脳はある
    だがそれが、対処する活力に結びつくかは、どれほど読みきく人に
    とって心地よい形で提示されたかによってきまる」
    文明の度が高いほど、征服は容易になる。
    ①文明化の利点を理解できるから。
    ②文明化していれば都市を作って住んでいるから、
    蛮族相手だとゲリラ戦になる
    ローマ人は死を忌み嫌ったりしなかった
    女は愛してくれるふりをしてくれるだけでも耐えられることもある
    ローマの共和政:貴族政、寡頭制
    軍勢が5万を超えると指令が行き届かなくなる
    古代の考えでは、運命を自分の思い通りにしようという考え方は謙虚さを忘れさせ
    神々から復習される。
    ローマ軍の強さはロジスティック(兵站
    昼でも暗く深い森
    正攻法になれた兵士ではきつい
    法とは、上に立つ人間が守ってこそ、下の者にも強いることができる

  • ローマの初代皇帝アウグストゥス、オクタヴィアヌスの生涯を描く。
    カエサルの養子で若くして後継者に指名されていたオクタヴィアヌス。美男子であったが、虚弱で、身長もカエサルが180センチくらいであったのに比べ、170センチほどで、カエサルほど洒落者ではなかったという。
    戦闘は、右腕のアグリッパに任せ、領土拡大に走っていたカエサルから全てを受け継いで、アウグストゥスは、領土維持、パクスロマーナの時代へと移行する。

  • アメリカによるイラク攻撃の話題と時期的に重なったためにパクス・アメリカーナの意図が見え隠れする。ひとつの超大国とその他の国の集合体だけが平和をもたらすという考え方(塩野七生の解釈か?)は2000年後でも通用するのか。国連(≒元老院)の無力ぶりからもうなずくしかないか。

  • ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。この巻では、カエサル後のローマの繁栄。

  • アウグストゥスの統治時代。
    カエサルによって指名された、着実に政治を執り行うことができる人。
    とは言えカエサルの華々しい変革と比べると、読むぶんにはちょっと退屈でもあった。
    そして自分がカエサルの血を濃く継がないのに抜擢されたのに、されたからなのか、自分の濃い血縁を次期皇帝に据えようとした執念はそら恐ろしくもあるし、この点があるからこそ人間らしく悩み煩悶した人物 と捉えることもできる。

  • (2016.06.15読了)(2009.07.05購入)
    「ローマ人の物語」の第1巻を読み終わったのは、2005年9月でした。読み始める時は、月一冊ぐらいのペースで、どんどん読むつもりでいるのですが、第5巻まで読んだのが、2008年1月です。8年、間をおいて、やっと第6巻を読みました。今度こそ、第15巻まで読み切りたいと思っているのですが、・・・。
    「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」2005.09.30読了
    「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」2006.01.20読了
    「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」2007.01.01読了
    「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」2007.08.15読了
    「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」2008.01.04読了

    第6巻は、オクタヴィアヌスことアウグストゥスの治世の物語です。アントニウスとクレオパトラがオクタヴィアヌスとの戦に敗れ、オクタヴィアヌスが完全にローマ帝国の権限を握ったところから始まります。
    ユリウス・カエサルが暗殺されてから、16年が経過し、当時18歳だったオクタヴィアヌスも34歳になっています。77歳で亡くなっていますので、統治期間は43年とずいぶん長きにわたっています。
    ユリウス・カエサルが、領土を広げられるだけ広げていますので、アウグストゥスの役割は、じっくりと統治のためのシステムを構築してゆくことでした。
    一度、ゲルマニア征服を試みますが、うまくゆきませんでした。
    ユリウス・カエサルのような軍事面の才能はなかったので、軍事面は、アグリッパが支えました。外交面は、マエケナスが担当しました。
    アグリッパが亡くなった後の軍事面は、ティベリウスとドゥルーススの兄弟が務めました。アウグストゥスの後を継いだのは、ティベリウスです。
    人は権力を持つと世襲にしたくなるのでしょうか? 身内しか信用しなくなるのでしょうか? アウグストゥスの子供は、ユリアという女の子だけです。
    アウグストゥスは、自分と同い年のアグリッパにユリアを嫁がせます。アグリッパには妻がいたのですが、離縁しています。ユリアの最初の結婚相手のマルケルスは病死しています。いわば再婚同士ということにはなりますが。
    アグリッパとユリアのあいだには、5人の子供が生まれています。アグリッパが亡くなると、アウグストゥスは、ユリアをティベリウスと結婚させています。こちらの結婚はうまくいかなかったようです。

    【目次】
    読者に
    第一部 統治前期(紀元前二九年~前一九年)
      アウグストゥス、三十四歳~四十四歳
     若き最高権力者
     軍備削減
     国勢調査
     霊廟建設
     ほか
    第二部 統治中期(紀元前一八年~前六年)
      アウグストゥス、四十五歳~五十七歳
     “少子対策”
     宗教心
     アルプス
     ドナウ河
     ほか
    第三部 統治後期(紀元前五年~紀元後一四年)
      アウグストゥス、五十八歳~七十七歳
     祖父アウグストゥス
     娘の醜聞
     「国家の父」
     ティベリウス復帰
     ほか
    年表
    参考文献

    ●アウグストゥスは尊称(35頁)
    古代のローマでは、アウグストゥスとは単に、神聖で崇敬されてしかるべきものや場所を意味する言葉でしかなく、武力や権力を想像させる意味はまったくなかった。
    ●専守防衛(52頁)
    最大の目標が防衛に変われば、従来のやり方では不都合になる。敵はいつ襲撃してくるかわからない。ゆえにそれへの対応手段は常に準備しておかなければならない。アウグストゥスは、専守防衛を目標とするからこそ常設軍事力が不可欠であることを理解し、それを実践したのである。
    ●支配層の不満(55頁)
    カエサルは、征服された民族が反旗をひるがえすのは、民衆が自主的に蜂起するからではなく、民族の支配層が民衆を扇動するからであることを知っていた。そして、支配層が不満を持つのは、他国民に征服された結果、自分たちの権威と権力が失われるからであるのも知っていた。
    ●幸運のアラビア(69頁)
    「幸運のアラビア」とは、そこに住むアラビア人が自称したからではなく、地中海世界の住人であるギリシア人やローマ人がつけた名であるらしい。香料や没薬、真珠や宝石、そしてインド経由で運ばれてくる支那の絹などの高級品商売でもうけるという幸運に恵まれたアラビア、という意味である。
    ●政治家(78頁)
    経済人ならば政治を理解しないでも成功できるが、政治家は絶対に経済がわかっていなければならない
    ●徴税権(89頁)
    アウグストゥスは、それまでは属州総督の管轄下にあった徴税権を「皇帝財務官」という官僚を専任にして送りこむことで、取りあげてしまっていた。これでは、共和政時代の属州総督のように、属州勤務中に一財産築くことなどは不可能になる。〝利権〟を失ったことが、ローマの公職選挙がクリーンに変わった主因であった。
    ●ノーメンクラトゥーラ(91頁)
    ローマには昔から、有力者は家を外にする際に、「ノーメンクラトール」と呼ぶ役の奴隷を同伴するのが習いだった。有力者なのだから、フォロ・ロマーノを歩いているだけでも、近づいてきて挨拶する人が絶えない。その人たち全員の名を覚えているなど不可能だ。それで、向こうから人が近づいてくるのを見るや、「ノーメン」(名前)を「クラトール」(世話する役)の奴隷は主人にささやく。
    ●流通システム(107頁)
    食糧危機とは、産出高が減少したからというより、産地にはあるのにその運搬がうまく行かなかったがゆえに起こる場合が多い。
    ●不倫(147頁)
    健全な「国家(レス・プブリカ)」は健全な「家族(ファミリア)」の保護と育成なしには成り立たないと考えるアウグストゥスは、不倫に対しては厳罰でのぞんでいる。「ユリウス姦通罪・婚外交渉罪法」では、不倫関係を結んだのが有夫の女であれば、資産の三分の一を没収されたうえ孤島に終身追放と決まった。
    ●パクス・ロマーナ(213頁)
    「ローマによる平和(パクス・ロマーナ)」は、国境の外に住む蛮族の襲撃の心配から解放しただけでなく、国内の山賊や海賊への恐れからも解放した。経済活動には、安全は重要このうえない条件なのである。
    ●指導者(229頁)
    指導者に求められる資質は、次の五つである。知性、説得力、肉体上の耐久力、自己統制の能力、持続する意志。カエサルだけが、このすべてを持っていた。
    ●文章力(231頁)
    伝えたい、わかってもらいたいという強い想いが、文章力を向上させるのである。
    ●幸運の女神(257頁)
    幸運の女神は、すべての人にすべてを約束する。と言って、約束が守られたためしはない。
    ●不断のメンテナンス(274頁)
    統治も街道に似ている。不断のメンテナンスが不可欠と考える認識力と、認識するやただちに修正するのをいとわない柔軟な行動力と、それを可能にする経済力のうちの一つが欠けても、機能しなくなるのである。
    ●政治家に必要な資質(282頁)
    第一に、自らの能力の限界を知ることをふくめて、見たいと欲しない現実までも見すえる冷徹な認識力であり、第二には、一日一日の労苦のつみ重ねこそ成功の最大要因と信じてその労をいとわない持続力であり、第三は、適度の楽観性であり、第四は、いかなることでも極端にとらえないバランス感覚であると思う。
    ●階級(318頁)
    ローマの社会は、階層間の流動性はあったにせよ、元老院階級、騎士階級、平民、解放奴隷、奴隷と分かれていた。

    ☆関連図書(既読)
    「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
    「ローマの歴史」I.モンタネッリ著、中公文庫、1979.01.10
    「古代ローマ帝国の謎」阪本浩著、光文社文庫、1987.10.20
    「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
    「ローマ散策」河島英昭著、岩波新書、2000.11.20
    ☆塩野七生さんの本(既読)
    「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
    「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
    「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
    「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
    「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
    「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
    「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
    「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
    「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
    (2016年6月17日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    天才カエサルの後を継いだ天才でない人物が、いかにして天才が到達できなかった目標に達したか―人々が見たいと欲する現実を見せるために、見たくない現実を直視しながら、静かに共和政を帝政へ移行させた初代皇帝アウグストゥス。ローマを安定拡大の軌道にのせるため、構造改革を実行し、「ローマによる平和」を実現したアウグストゥスの運命と意志の物語。

  • カエサルの物語に比べて退屈だった。
    アウグストゥスとアグリッパを選んだカエサルの目利きは驚くようだけど、カエサルに認められたという事実が彼等を育てたようにも思う。
    ローマ人の物語も6巻まで読み終えて、このシリーズの存在意義が何となく見えてきた気もする。

  • この巻では、アウグストゥスによるローマの改革が描かれました。表面上は共和制に戻したようにみせて、実権は自らの手に残すアウグストゥスがしたたかです。
    カエサルほど光り輝く存在ではありませんでしたが、その強い責任感と強い意志には感服しました。

全40件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

塩野七生の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×