ローマ人の物語 (8) 危機と克服

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096177

作品紹介・あらすじ

繰り広げられる意味なき争い、無惨な三皇帝の末路-帝国再生のため、時代は「健全な常識人」を求めていた。塩野七生が書下ろす、刺激あふれる物語、第八弾。

感想・レビュー・書評

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  • 1.ガルバ
    皇帝らしいことは何一つない、人身の読めない普通のおじいさん。

    2.オトー
    皇帝の座を巡り内乱が起こる。内乱を収めるためか、自死。

    3.ヴィテリウス
    権威と権力を持っていたが活用法を知らなかった。内戦に敗れ死亡。

    4.帝国の辺境では
    ローマの内乱を好機と捉え、外乱が起こる。挙句の果てにガリア帝国まで建設される。結局鎮圧されるが、寛容で迎える。内乱の余波であることを自覚していた、自らの非を認めたが故の行動。

    5.ヴェスパシアヌス
    庶民的であり、身の丈にあった行動におさえている。皇帝法の成立により、元老院からの承認を得なくても皇帝が成立するようになった。コロッセウム建設。死ぬまでに、平和と秩序の回復とその維持を実現。

    6.ティトゥス
    有能ではあったが、災難続き(ヴェスヴィオ火山噴火など)に心身がまいったのか、早死。

    7.ドミティニアヌス
    皇帝統治を積極的に行う。恐怖政治になる。暗殺される。

    8.ネルヴァ
    バランス感覚豊かなジェントルマン。



    リスクを排除しようとするほど、リスクに足元を取られる危険も増大する。リスクがあれば緊張感を持つ。

  • 20210516
    ネロ帝の自死によってユリウスクラウディウス朝が崩壊してから、1年間にガルバ、オトー、フラヴィウス3人の皇帝が表れては消える内乱状態となる。
    この混乱を収めたヴェスパニアウスはフラヴィウス朝を創設して、ティトゥス、ドミティアヌスへと続いていく。
    ・ガルバ、オトー、フラヴィウスは皇帝になったあと、何をすれば平和と秩序を維持できるのか、のヴィジョンがなかった。ただ、配下の軍団兵に推挙され、その地位に目がくらんだ近視眼的な行動である。ヴェスパニアウスは、ムキニウスからの協力を取り付けると、フラヴィウス派との軍事対決への対処と、帝国における自分の役割で市民と軍団兵の支持につながるユダヤ戦役の双方に適切に対処する。
    ・ヴェスパニアウスとティトゥスは壮年期まで皇帝を意識しなかったため、庶民的で民衆の支持も厚かった。ドミティアヌスは若くして帝位を意識し、告発による元老院のコントロールを公然と行ったことで反感を買った
    ☆プライドはよい仕事をするための必要条件ではないのかもしれない
    ・ドミティアヌスの構築した、ラインとドナウの上流地域の防衛線となる、リメスゲルマニクスはその後の皇帝たちも補強を重ね、方針を踏襲している
    ・ローマ繁栄の理由①インフラへの投資:街道、水道、会堂といった公共建築を地道に作り、補修し続けたことがローマ繁栄が長く続いた理由の一つ
    ・ローマ繁栄の理由②現実的、質実剛健の精神性:ギリシャ人のように空論をもてあそぶことを嫌い、安全と秩序の維持、食の保証を中心にした福祉の向上に価値観の中心においた
    ・ローマ繁栄の理由③高い公共心と市民、元老院、属州からのチェック機能:皇帝を始めとした有力者は公共建築を寄付することが求められた。カエサルは高い地位のものは低いものよりも行動が制限されるといい、共和政時代には元老院階級が最も戦争における死者を出した。
    ・ローマ繁栄の理由④実力主義:公職を務めるものは属州統治や軍団勤務などの実務経験があることが求められた。実力主義に例外が多く混入すると、いつしかそれらのものが作る独自ルールが生まれるようになる。
    実力とはなにか、を明確に定義することが重要

  • 図書館長 井上 敏先生 推薦コメント
    『ヨーロッパの歴史を理解するにはまずローマの歴史。独特な書き方だが、ローマの建国から西ローマ帝国滅亡までの通史を知るにはちょうどいい。研究者からの批判もあるが、理解しやすい。』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/289591

  • 歴史ドキュメンタリー。

  • ネロ帝を自死に追い込んだまではいいが、ネロ帝にはこれはという跡継ぎがいなかった。ということで大混乱、2年の間に3人の皇帝が次々変わる状態に。でその混乱をなんとか収めて再建する話。

  • ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。このころのローマはまだ元気です。

  • (2016.07.20読了)(2009.07.05購入)
    この本で扱われている期間は、紀元68年から98年までの30年ほどです。
    この間に7名の皇帝が登場します。ガルバは、在位7か月。オトーは在位3か月。ヴィテリウスは、在位8か月。ヴェスパシアヌスは、在位9年6か月。ティトゥスは、在位2年3か月。ドミティアヌスは在位15年。ネルヴァは、在位1年4か月です。
    落ち着いて統治できたのは、ヴェスパシアヌスとドミティアヌスの二人だけでしょうか。
    皇帝ティトゥス在位中の79年夏にヴェスヴィオ火山の爆発によるポンペイやエルコラーノの埋没が起こっています。
    ティトゥスとドミティアヌスは、ヴェスパシアヌスの息子たちです。親子三人による統治は、トータルで26年9か月に及びます。
    皇位争いによる内戦が何回かありますが、ローマ帝国としては、比較的安定していた時期なのではないでしょうか。ローマ史を勉強したことはなかったので、この本に出てくる皇帝の名前には、馴染みのない方ばかりです。

    【目次】
    はじめに
    第1章 皇帝ガルバ
    第2章 皇帝オトー
    第3章 皇帝ヴィテリウス
    第4章 帝国の辺境では
    第5章 皇帝ヴェスパシアヌス
    第6章 皇帝ティトゥス
    第7章 皇帝ドミティアヌス
    第8章 皇帝ネルヴァ
    〔付記〕一ローマ詩人の生と死
    年表
    参考文献

    ●前線(26頁)
    ローマ帝国にとっての「前線」とは、ライン河とドナウ河とユーフラテス河につきる。
    ●財政再建策(27頁)
    ガルバは、帝国の財政再建策でも誤りを犯した。その実行を宣言したまではよかったが、具体策となると失笑を買っただけであった。ネロが贈った金銭や物品を返せ、としたのである。ネロは贈物をするのが大好きではあったが、有力者や金持に贈ったのではない。ローマ社会では下層に属する、歌手や俳優や騎手や剣闘士に贈るのが好きだったのだ。
    ●嫉妬(76頁)
    嫉妬とは、相手に対して能力的に劣ることの無意識な表れに過ぎない
    ●皇帝の責務(86頁)
    ローマ皇帝の二大責務は、安全と食の保証である。安全とは、外敵に対する防衛に加え、帝国内の安定の維持もある。
    ●戦闘の利点(107頁)
    戦闘という人類がどうしても超越できない悪がもつ唯一の利点は、それに訴えることで、これまで解決できないでいた問題を一挙に解決できる点にある。圧勝でなければ意味をもたない理由もここにある。
    ●神の介入(163頁)
    古代のローマ人は、人間の担当分野である政治に神が介入してくるような政体を、考えたことさえもなかった
    ●小麦(198頁)
    主食を輸入に頼るようになって以後の本国イタリアの必要量の三分の一は、エジプトからの輸入が占めている。
    ●休日(238頁)
    ローマ人には日曜を休む習慣はなく、神々に捧げられた祝日が休日になる。
    ローマ人にとっての休日は、神殿で神に祈りを捧げた後に、競技や闘技を楽しむものであったのだ。
    ●医療と教育(241頁)
    現代の福祉制度を知っている我々の考える国家による社会福祉には、医療と教育もまた欠かせないのではなかろうか。
    ところが、ローマ人はこの二つは、国家の責務とは考えていなかったのである。
    ●官邸の組織化(303頁)
    ドミティアヌスは、いわゆる「官邸」の組織化も断行した。皇帝に集中してくる大量な実務をさばく、秘書官システムの整備である。
    ドミティアヌスは、秘書官の全員を、騎士階級から登用している。

    ☆関連図書(既読)
    「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
    「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
    「ローマの歴史」I.モンタネッリ著、中公文庫、1979.01.10
    「古代ローマ帝国の謎」阪本浩著、光文社文庫、1987.10.20
    「ローマ散策」河島英昭著、岩波新書、2000.11.20
    「ポンペイ・グラフィティ」本村凌二著、中公新書、1996.09.25
    ☆塩野七生さんの本(既読)
    「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
    「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
    「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
    「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
    「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
    「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
    「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
    「ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ」塩野七生著、新潮社、1997.07.07
    「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」塩野七生著、新潮社、1998.09.30
    「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
    「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
    (2016年7月24日・記)
    (「MARC」データベースより)
    繰り広げられる意味なき争い、無惨な三皇帝の末路。帝国再生のため、時代は「健全な常識人」を求めていた―。皇帝ネロの死にはじまってトライアヌスが登場するまでの三十年たらずの時代を描く。

  • 有名どころの皇帝の巻が終わった途端読むペースが落ちたが、読みはじめれば読んだでやはり面白い。
    ドミティアヌス帝の孤独に共感。治世後半のティベリウスも同じだが、皇帝としてやっていることはきちんとやっていてもっと評価されるべきなのに非業の最期を遂げる。。。唯一心を許せたのはユリアだったのか…。

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