ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀

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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096184

作品紹介・あらすじ

紀元二世紀初頭、ダキアとメソポタミアを併呑して帝国の版図を最大にした初の属州出身皇帝トライアヌス、帝国をくまなく視察巡行し、統治システムの再構築に励んだハドリアヌス、穏やかな人柄ながら見事な政治を行なったアントニヌス・ピウス。世にいう五賢帝のなかでも傑出した三者の人物像を浮き彫りにした、極め付きの指導者論。

感想・レビュー・書評

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  • 2021/6/30
    ダキアを属州化し、維持はできなかったがパルティア侵攻を成功させて北部メソポタミアも属州化してローマ帝国の版図を最大化させたトライヤヌス。帝国の全域を視察して、リメスと組織を再構築し、ローマ法大全を整備させたハドリアヌス。人格者であり、ローマに居続けることで市民と元老院と適切な関係をむすびトラブルを一切起こさなかったアントニヌス・ピウス
    ・トライヤヌスの治世中に補欠執政官となった小プリニウスの演説は、は元首政時代のローマの政治哲学を雄弁に表している。戦争は望まないが、恐れない。皇帝とは統治を託された存在であり、その目的は帝国と帝国民の安全と繁栄を保証することで、皇帝よりも法が優先される。皇帝の位は絶対的なものではなく、望んだのではなく市民と元老院に望まれたのだ
    ・ハドリアヌス時代にユダヤ反乱が起こり、その鎮圧後にユダヤ教徒のエルサレム居住は禁止されディアスポラとなった。
    ・ハドリアヌスは晩年、病を患い癇癪をおこすようになった。その矛先は元老院に向けられ、告発が乱発された。次期皇帝のアントニヌス・ピウスは正式な裁判を時間をかけて行うことでこれらの人を救った。これで元老院の反感を買ったハドリアヌスは、死後に少なくない議員が神格化に反対するがアントニヌス・ピウスの尽力で神格化がなされた。

  • 図書館長 井上 敏先生 推薦コメント
    『ヨーロッパの歴史を理解するにはまずローマの歴史。独特な書き方だが、ローマの建国から西ローマ帝国滅亡までの通史を知るにはちょうどいい。研究者からの批判もあるが、理解しやすい。』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/305467

  • 塩野七生 「 ローマ人の物語 」 賢帝3人が平和なローマ世界を樹立した巻。著者は 3賢帝の安全保障策、属州統治策、インフラ整備策に 賢帝たる理由を 見出している

    トライアヌス が平和の基盤を作り、ハドリアヌス が平和のために改革をして、アントニヌスピウス が 平和なローマ世界を定着させた

    平和は最上の価値
    *平和は 理想ではなく現世で享受すべき利益→経済的繁栄
    *抑止力としての軍事力は必要→戦争は怖れるべきでない、だが こちらから挑発すべきでもない
    *安全の保証→食の保証
    *パックスロマーナの成功=外的排除+内紛防止

    ローマ世界は一つの大きな家
    *ローマ世界は 異民族、異文化が混ざり合って動く社会
    *文化を共有しなくても、法を中心に共存共栄は可能

    トライアヌス「至高の皇帝」
    *インフラ整備:ダキア征服→ドナウ河防衛線を強化
    *インフラ整備:トライアヌス橋
    *属州統治:元老院議員に 国家反逆罪を悪用した恐怖政治を行わないことを約束。元老院議員の資産の1/3を本国に投資させる。育英制度。
    *インフラ整備:属州民の生活向上→人間は飢える心配がなければ穏健化する

    ハドリアヌス「ローマの平和と帝国の永遠」
    *帝国全域の視察→帝国の再構築→改革
    *安全保障:帝国の平和のため〜あえて危険を冒す
    *安全保障:ハドリアヌス防壁
    *君主のモラルと個人のモラルは違う〜正直、実直を守りきれると限らない→適材適所の人事、独断

    アントニヌスピウス「帝国全域に平穏な秩序」
    *改革されたものの定着
    *軍隊の指揮経験のない皇帝=行政のみの統治→必ずブレーンに相談してから決める
    *属州統治:首都ローマに常駐=情報が入りやすく指令が届きやすい組織
    *安全保障:アントニヌス防壁

    マルクスアウレリウスが父アントニヌスから学んだもの
    *決断を下す際の慎重、穏健、持続性
    *社会的名声への軽蔑
    *仕事への愛と忍耐
    *公益に資する提言に耳を傾ける

  • 歴史ドキュメンタリー。

  • 5賢帝と言われている(らしい)中の3人。トライアヌス、ハドリアヌス、アントニウスピウスのお話。前二人は色んなことしたり色んなもの作ったりして色々資料も残ってるので記述も多いのだけど、アントニウスピウスは「うまくいっているものをそのままうまくいくようにした人」ですごく地味な上に、いわゆる「いいひと」だったのでスキャンダルとかもなく、故にほとんど資料が残らなかったので記述もすごく少ないのが面白い。でもまあ、こういう「みんな幸せに過ごしました。ちゃんちゃん。」な治世がベストなのかもなあ。もちろんそれが許される時代だった、てのがあるわけだけど。

  • ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。五賢帝時代といえば、ローマの最高潮時代として、世界史の授業で習った人も多いと思います。そのときの皇帝が生き生きと描かれて、塩野世界が展開されいます。

  • 既製を無くし新しいシステムを作ろうとするとき。その方法を歴史から学ぶことが出来る。紀元前1世紀のローマ。カエサルは元老院体制の無力化を憂い、それを変えることを試みる。一人の力では難儀があるため、他の有力者ポンペイウス・クラッススを巻き込み三頭政治を構築する。カエサルがその実現に際し心を砕いたものが、私益(カエサルの利益)だけでなく、他益(ポンペイウス・クラッススの利益)、公益(もはや弱体化・無力化した元老院体制問題の解決が進まない)。私益ばかり強調してオジャンに終わることが散見される現代にも、大きな示唆を与えてくれる。

  • (2016.08.16読了)(2009.07.05購入)(2000.10.20・?刷)
    紀元98年から161年までの63年間の3名の皇帝の物語です。3名それぞれ20年前後の治世です。「賢帝の世紀」と題されていますので、それぞれに優れた皇帝たちということになります。
    トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、いずれもどこかで名前を聞いた覚えがあるので、比較的有名なのだと思います。

    【目次】
    読者に
    第一部 皇帝トライアヌス(在位、紀元九八年‐一一七年)
    皇帝への道
    気概を胸に
    ひとまずの帰都
    古代ローマの〝君主論〟
    ほか
    第二部 皇帝ハドリアヌス(在位、紀元一一七年‐一三八年)
    少年時代
    青年時代
    皇帝への道
    年上の女
    ほか
    第三部 皇帝アントニヌス・ピウス(在位、紀元一三八年‐一六一年)
    幸福な時代
    人格者
    マルクス・アウレリウス
    「国家の父」
    年表
    参考文献

    ●皇帝の振舞い(42頁)
    強大な権力を与えられた皇帝はどう振舞うべきか
    「主人としてではなく父親として、専制君主ではなく市民の一人として」
    人間的には、「快活であると同時にまじめであり、素朴であるとともに威厳があり、気さくでありながらも堂々としていなければならない」
    ●ローマ皇帝の三大責務(54頁)
    一に安全保障、二に国内統治、三に社会資本の充実
    ●ローマ人の橋(84頁)
    橋を道路の延長と考えていたローマ人の橋は、道路との高低差なしにつくられるのが常で、登っては降りる型の橋があれば、それらはすべてローマ帝国滅亡後につくられた橋である。
    ●アラビア(89頁)
    ローマ人がアラビアと呼んでいた地方は、後代のアラビア半島のことではない。香料や没薬や真珠の産地として知られた豊かなアラビア半島の南部を、ローマ人は「アラビア・フェリックス」(幸福なアラビア)と呼んでいたが、形容詞なしでアラビアと呼べば、それは現代のヨルダンを指していた。
    ●善政(151頁)
    善政とは所詮、正直者がバカを見ないですむ社会にすることにつきる
    ●推薦者(155頁)
    ユリウス・カエサルは、キケロが推薦してくる若者ならば誰でも自分の部下にしてしまったが、それはキケロの識見を買ったからである。トライアヌスも、プリニウスの依頼をほとんど満足させてやるが、これもまたプリニウスの誠実さと公共心の高さを認めたがゆえであった。人材登用は勝負である。この勝負の参加者には、登用者と登用されるものの二人だけではなく推薦者も加えるというのが、つまりお参加者全員に責任を持たせるというのが、ローマ人が縁故採用を多用した理由ではなかったかと思う。
    ●トライアヌスの欠点(162頁)
    ローマ時代の史家たちが、トライアヌスの数少ない欠点の一つにあげているのは、酒飲みであったということである。
    水か湯で割る習慣のギリシア人やローマ人の中で、酒飲みと評されるのはストレートで飲むことだった。
    ●トライアヌスの死(178頁)
    紀元117年8月9日、皇帝トライアヌスは死んだ。64歳を迎える1か月と少し前、20年におよんだ治世の後の死であった。死の直前に、ハドリアヌスを後継者に指名していた。
    ●あごひげ(262頁)
    ハドリアヌスは、はじめてあごひげを貯えた皇帝として知られている。共和政時代でもごく初期から、ローマの男たちはきれいにひげを剃ることを習慣にしていた。
    ●仕事と余暇(294頁)
    ローマ人は、「仕事」と「余暇」を分けるライフスタイルを確立した民族でもあった。一般の市民ですら、日の出とともに仕事をはじめ日没に眠るのを常としながらも、午前中は仕事、午後は余暇と分けていたのである。
    ●ローマの兵士(304頁)
    ローマの兵士は、戦時になってはじめて武器を取るのではない。
    まるで武器を手に生まれてきたかのように訓練を怠らず、訓練と演習にはげむ日々を送っている。
    ●調査(307頁)
    ローマ人は、思わぬ幸運に恵まれて成功するよりも、情況の厳密な調査をしたうえでの失敗のほうを良しとする。ローマ人は、計画なしの成功は調査の重要性を忘れさせる危険があるが、調査を完璧にした後での失敗は、再び失敗を繰り返さないための有効な訓練になると考えているのである。
    ●ローマ式の再建策(377頁)
    まずはじめに、皇帝からの義援金が届き、被害者たちに配分される。同時に、近くの軍団基地から派遣された軍団兵や補助兵によって、〝インフラ〟の復旧工事が行われる。さらに、ローマでは皇帝が暫定措置法を発令して、被害の状態に応じて免除年数が決められた、属州税の免除制度が実施される。免除年数は、三年から五年の間であるのが普通だった。

    ☆関連図書(既読)
    「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
    「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
    「ローマの歴史」I.モンタネッリ著、中公文庫、1979.01.10
    「古代ローマ帝国の謎」阪本浩著、光文社文庫、1987.10.20
    「ローマ散策」河島英昭著、岩波新書、2000.11.20
    ☆塩野七生さんの本(既読)
    「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
    「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
    「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
    「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
    「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
    「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
    「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
    「ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ」塩野七生著、新潮社、1997.07.07
    「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」塩野七生著、新潮社、1998.09.30
    「ローマ人の物語Ⅷ 危機と克服」塩野七生著、新潮社、1999.09.15
    「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
    「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
    (2016年8月18日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    紀元二世紀初頭、ダキアとメソポタミアを併呑して帝国の版図を最大にした初の属州出身皇帝トライアヌス、帝国をくまなく視察巡行し、統治システムの再構築に励んだハドリアヌス、穏やかな人柄ながら見事な政治を行なったアントニヌス・ピウス。世にいう五賢帝のなかでも傑出した三者の人物像を浮き彫りにした、極め付きの指導者論。

  • ローマ帝国の全盛期といわれる5賢帝の時代はあまり文献が残っていないらしい。トライアヌスやハドリアヌスは急務に対して忙しく立ち働いたのでその記録は残っていてこの本の材料として取り入れられているが、アントニヌス・ピウスにいたってはほとんど手がかりがないらしく二十数ページしかあてられていない。この3皇帝の在位年数はいずれも20年前後であったのに少々アンバランスな配分にならざるを得なかった。

    トライアヌスは敵対するダキアを打ち負かしその地域の先住民を完全に追い出した。今で言うルーマニアのあたりだ。この時代からこの国の名前通りローマ人の支配地域になった。トライアヌスはまた帝国全土のインフラにも力を注いだ。

    ハドリアヌスはトライアヌスの後を継ぎ帝国全土の再構築を行った。ユダヤ問題に決着をつけ、その結果ユダヤはそれ以来放浪の民となった。

    アントニヌス・ピウスは人格者ということになっている。何一つ実績は残っていないが無能というわけではもちろんなかったらしい。帝国にとっての「急務」がもはやなかったのだろう。そう考えるとアントニヌス・ピウスの時代がローマ帝国の歴史の頂点だったのかもしれない。

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