ローマ人の物語 (14) キリストの勝利

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096238

感想・レビュー・書評

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  • 辻邦生『教者ユリアヌス』を読んでみたくなった。

  • 久しぶりにローマ皇帝らしい人物が登場したが、哀れな最後となる。教会がローマ皇帝の取捨/選択が可能な力を持つにいたり文明の停滞の始まりが訪れる。 皇帝ユリアヌスが長い政権を維持していたらもしかしたら人類の歴史は大きく変わっていたかもしれない。まったく偶然のことではあるが、このあたりのキリスト教(会?)の秘密を題材としたダビンチ・コードを直前に読んでいたので、ローマ帝国がどのようにキリスト教に侵食されていくのか興味深かった。

  • ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。この巻では、キリスト教がローマに正式に承認される。キリスト教徒には申し訳ないが、この一神教を信じることでローマは滅亡へと一気に転げ落ちてゆく。

  • 皇帝コンスタンティウスからユリアヌス帝、テオドシウス帝の治世を描く。この期間は多神教であったローマがキリスト教という一神教に支配されていく過程でもある。ユリアヌス帝だけが、その問題に気づきローマをかつてのローマにしようと奮戦するが、結局その努力も水泡に帰してしまう。テオドシウス帝の時代になると、もはや皇帝は司教(羊飼い)の従順な羊でしかなくなる。著者がどこかで書いたようにキリスト教によるローマ帝国乗っ取り大作戦は成功したのである。

  • (2016.11.20読了)(2016.10.17購入)

    【目次】
    読者に
    第一部 皇帝コンスタンティウス(在位、紀元三三七年‐三六一年)
    邪魔者は殺せ
    帝国三分
    一人退場
    二人目退場
    副帝ガルス
    ほか
    第二部 皇帝ユリアヌス(在位、紀元三六一年‐三六三年)
    古代のオリエント
    ササン朝ペルシア
    ユリアヌス、起つ
    内戦覚悟
    リストラ大作戦
    ほか
    第三部 司教アンブロシウス(在位、紀元三七四年‐三九七年)
    蛮族出身の皇帝
    フン族登場
    ハドリアノポリスでの大敗
    皇帝テシオドシウス
    蛮族、移住公認
    ほか
    年表
    図版出典一覧
    参考文献

    ☆関連図書(既読)
    「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
    「新約聖書福音書」塚本虎二訳、岩波文庫、1963.09.16
    「新約聖書 使徒のはたらき」塚本虎二訳、岩波文庫、1977.12.16
    「神の旅人 パウロの道を行く」森本哲郎著、新潮社、1988.05.20
    「背教者ユリアヌス(上)」辻邦生著、中公文庫、1974.12.10
    「背教者ユリアヌス(中)」辻邦生著、中公文庫、1975.01.10
    「背教者ユリアヌス(下)」辻邦生著、中公文庫、1975.02.10
    ☆塩野七生さんの本(既読)
    「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
    「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
    「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
    「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
    「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
    「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
    「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
    「ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ」塩野七生著、新潮社、1997.07.07
    「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」塩野七生著、新潮社、1998.09.30
    「ローマ人の物語Ⅷ 危機と克服」塩野七生著、新潮社、1999.09.15
    「ローマ人の物語Ⅸ 賢帝の世紀」塩野七生著、新潮社、2000.09.30
    「ローマ人の物語(27) すべての道はローマに通ず」 塩野七生著、新潮文庫、2006.10.01
    「ローマ人の物語(28) すべての道はローマに通ず」 塩野七生著、新潮文庫、2006.10.01
    「ローマ人の物語Ⅺ 終わりの始まり」塩野七生著、新潮社、2002.12.10
    「ローマ人の物語Ⅻ 迷走する帝国」塩野七生著、新潮社、2003.12.15
    「ローマ人の物語(35) 最後の努力」塩野七生著、新潮文庫、2009.09.01
    「ローマ人の物語(36) 最後の努力」塩野七生著、新潮文庫、2009.09.01
    「ローマ人の物語(37) 最後の努力」塩野七生著、新潮文庫、2009.09.01
    「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
    「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
    (「BOOK」データベースより)amazon
    ついにローマ帝国はキリスト教に呑み込まれる。四世紀末、ローマの針路を大きく変えたのは皇帝ではなく一人の司教であった。帝国衰亡を決定的にしたキリスト教の国教化、その真相に迫る。

  • アタナシウス派キリスト教とアリウス派キリスト教の抗争の話。
    一神教は果てしなく最後まで戦います。白か黒だもんね。
    ローマ帝国がなぜ国教を定めなければいけなかったのか、
    それがなぜアタナシウス派キリスト教だったのか、
    そのへんを時代背景とともに紐解くという流れになります。
    寛容であったローマがいかに非寛容に転じていくか、そんなところでしょうか。

    物語の中で述べられる皇帝ユリアヌスの政治姿勢(公平さ、寛容さ)に
    共感を覚えますが、同時に、時代の大きな流れに逆らうことの無常さも
    感じてしまいます。

    流れに乗るか、流れに逆らうか、流れから身を引くか、
    まさに人生観、ですね。

    2010/09/30

  • キリスト教を公認したコンスタンティヌス大帝の息子、コンタンティウスから始まる歴史。疑心暗鬼に囚われ宦官にその挙を委ねるのは、滅亡への王道と言えば皮肉か。その後に現れたユリアヌス帝の必死の戦いや政治は、その対照となるがゆえに悲しく、はかない。と同時にキリスト教の勃興期における、「いい加減さ」を推し量ることができる。ローマの終焉を文章から感じるのは辛いものです。

  • 権力による保護がなければ、キリスト教はここまで大きな宗教になっていなかったと思われる。弾圧されていた側が弾圧する側に回る皮肉。

  •  ユリアヌスは、辻邦生の著書によって大学時代の僕のアイドルであった。実を言うと、このシリーズを読み始めたのも、元はといえばユリアヌスとカエサルのおかげであるといってもいい。辻邦生とシェイクスピアである。

     だから僕にとってのこの巻は、いよいよ真打ち登場!とでも言うべきところなのだけど、読み終わってみればユリアヌスよりも、むしろその後に活躍した司教アンブロシウスのほうが印象に残った。

     まさにキリストの勝利を決定づけたこの司教の物語を読んでいると、宗教よりもむしろ、官僚のシステムとその中での出世について考える。そして、全く異なることではあるのだけれど、たとえば親密な共感で暖かい暮らしを送ってきた未開の村落に、冷徹な資本主義がどっと押し寄せてくるような印象を持った。

     ユリアヌスはやっぱり辻邦生の著作で楽しむとしよう。もちろん、塩野氏の、ややシニカルな描き方を持ってしても、わが青春のアイドルの輝きは曇ることはなかった。結局は、悲劇のヒーローでしかないにしても。

  • 2010/07/16 古来のローマを守ろうとした最後の皇帝ユリアヌスへの、筆者の哀惜があふれている。帝王教育を受けず政治も軍事も経験がなくても、歴史と哲学を学び、帝国を背負う覚悟ができた人なのだろう。

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