ギリシア人の物語 III 新しき力

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  • 新潮社
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レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096412

作品紹介・あらすじ

塩野七生 最後の歴史長編は「永遠の青春」アレクサンダー大王を描く圧倒的巨編。混迷のギリシア世界を弱冠二十歳で統一し、ペルシア帝国制覇へと向かったマケドニア王アレクサンダー。トルコ、中東、中央アジアを次々と征服し、ついにはインドに至るまでの大帝国を築きあげるも三十二歳で夭逝――。夢見るように生き、燃え尽きるように死んだ若き天才、その烈しい生涯に肉薄した歴史大作。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わって、強い感慨、そして感傷が胸を占めました。

    ローマのように一千年の時を享受した巨大帝国にはなれずに衰退してしまったけど、ローマ人が傾倒し、後世から「ギリシア・ローマ時代」と呼ばれるほどの影響力を持った古代ギリシア。

    シリーズ最終となる第3巻は、二部構成。
    第一部はアテネやスパルタに代表される都市国家の終焉について。
    第二部は、同じギリシア民族でありながら、先に繁栄を手にした都市国家からは後進国と見なされていたマケドニア王国の台頭、マケドニア王アレクサンドロスによる東征と空前の大帝国の建設、まだ32歳だった若きアレクサンドロスの死による帝国分割、その死によって帝国は亡くなってもアレクサンドロスが遺したヘレニズム世界と文化について。

    短く太く駆け抜けたアレクサンドロスの33年に満たなかった人生は、劇的かつ、抗いがたい運命性に満ちている気がして、一気に読んでしまいました。

    歴史は、というか、人の世は、諸行無常、盛者必衰であることを痛感せずにはいられません。(平家物語ではなく、ヨーロッパの歴史なんですが)

    なにより。
    本編の後に掲載された、あとがきともいえる「十七歳の夏-読者に」が、塩野ファンであれば、これまた胸を打たれるとともに、感傷的な気分にならずには済まなかったです。

    戦後まだ貧しい日本の伊豆の海を前に地中海に恋い焦がれていた17歳の少女が、その9年後には単身ヨーロッパに渡り、「アルバイト」をしながら地中海沿岸…ヨーロッパ諸国はもちろん、エジプト、イェルサレム、当時は充分に安全だったシリアまでめぐり、やがて物を書くことにして…。

    私など、塩野さんの行動力にも知性にも文才にも何一つ足元にも及ばないけれど、読んでいて、ささやかなきっかけから彼女の書籍に出会い大ファンになった16歳の頃をふいに思い出してしまって、もう、色々な意味で、感傷があふれてしょうがなかったです。

    塩野さんの代名詞ともいえる、本作のような「歴史エッセイ」はこの作品を最後としてもう書かないと決めているそうで、ファンとしては寂しく悲しいのだけれども、そんな決断をしてしまうところがとても塩野さんらしい気がして、繰り返しになるけれども、もう、あらゆる感傷の嵐がとまらない一冊となりました。

  • いままで塩野七生さんの本をたくさん読んできましたが、
    彼女が次に書くであろう人物についての情報は極力避けていました。

    しかし今回のアレクサンドロスについては、待つことができず、古代ギリシア・マケドニア史の権威森谷公俊教授の『図説アレクサンドロス大王』『興亡の世界史アレクサンドロスの征服と神話』を読み、NHK文明の道『アレクサンドロス大王・ペルシャ帝国への挑戦』『アレクサンドロスの遺産・最果てのギリシア都市』DVDで予習してしまいました。

    そういうある程度知った中で読んだ感想。
    「アレクサンドロスVSダリウスって、ピーターパンVSフック船長みたい!!」

    いままで考えたことなかったけど、
    塩野七生さんの脚色ってハリウッド映画みたいだったのかしら?
    だから、面白かったのかしら?

    まあ、何はともあれ、塩野七生さんによる歴史長編エッセイはこれで完結。
    描きたかったアレクサンドロスが無事終了して、ほっとしました。
    私のもう一人大好きな須賀敦子さんは志半ばで亡くなってしまったので。

    80歳なんですねー。
    私のまわりの80歳の皆さんからは想像もできない快挙。
    もっとも最後の「17歳の夏―読者に」を読むと、
    若いころから普通の人たちとはまったく違う活動的な方だったよう。

    その「17歳の~」のところで、ほろっとしました。
    塩野七生さんのこと、彼女が描く男性たちのように、
    先頭に立って自信満々にバリバリ進んでいく人のように思っていたから。

    50年間、お疲れさまでした!
    最後の塩野七生「歴史エッセイ」一覧を見たら、
    あと3~4冊で完全制覇になることがわかったので、
    年内に挑戦します。

  • 塩野七生さんの「ギリシア人の物語」3部作が完結した。3部作の完結というだけでなく、「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」をはじめとする歴史絵巻の完結編となるという。振り返れば1993年の「ローマ人の物語」の開始から四半世紀。地中海世界の興亡を、あるときは俯瞰的に、あるときは微視的に塩野さんという稀有な案内人に連れられて、私たち読者は、歴史を読む楽しさを堪能できたのであった。本作は、アレクサンドロスが主人公で、記録の少なさからか、彼女の十八番である会戦の記述も薄口なのは否めないが、そのことはあえて問うまい。国の統治にはある種の技術(アルテ)が必要であり、あるときは、善より悪のほうが効果的である、という彼女の洞察に私たち日本人の「政治家は清廉潔癖であるべし」といううぶな政治意識がどれほど鍛えてもらったか。今はただ、「ありがとう。おつかれさまでした」と感謝を伝えたい気持ちばかりだ。

  •  ギリシアは迷走の時期に入る。
     この混乱期に現れた、たった一人の英雄の名前は今でも歴史に燦然と輝く。
     アレキサンダー大王、歴史上たった一人「大王」の称号をつくマケドニア王の三十二年間の生涯を描く。

     ペルシアからの軍勢を退けた後、ギリシアでは都市国家アテネ、スパルタ、テーベと覇権国家が目まぐるしく変わる。
     凋落と没落を繰り返し、ギリシア全体の力が低迷する。

     そこに現れたのは、ギリシア北部オリンポス山の北のマケドニア王国だった。
     ギリシアでは都市国家ともみなされなかった田舎では、マケドニア王フィリッポス二世が新しい戦術を編み出しギリシア北部に攻め入っていた。
     重装歩兵「ファランクス」は、二つの長槍を一本にして通常の二倍の長さの槍を持つハリネズミの陣形で敵を攻める。

     フィリッポス二世は息子にはレオニダスによるスパルタ教育と、アリストテレスによる哲学を叩き込んでいた。
     息子の初陣は、当時覇権国家のテーベ、それとアテネに続くほかのポリス連合との戦いとなるカイロネアの会戦だった。
     息子は待機するよう言明されていたが、一瞬の隙をついて騎馬隊を突撃させ、隙をつかれたテーベ軍は総崩れとなる。

     当時18才、フィリッポス二世の息子こそアレクサンドロス。
     その三年後に渡って小アジアでのグラニコスの会戦を皮切りに、イッソス、ガウガメラの会戦を経てアケメネス朝ペルシアを滅ぼし、ヒダスペスの会戦でインドまでを攻め込む。
     この間、たったの10年。

     アレクサンドロスが駆け抜けた激動の十年は歴史に刻まれ、今でも大王の名が燦然と光り輝く。
     速攻に次ぐ速攻。自らが先頭を走り敵に猛進していく。その兜にたなびく純白の羽飾り。
     男も惚れる、連戦連勝負け知らずの最強の王のが華々しくも、その裏で悩み苦しんだ人間臭さが短い生涯という運命と相まって深く印象に残る。

     人間、人生に一度は負けられない大事業を成し遂げてみたいものだ。

  • ギリシア人の物語もついに完結。対象範囲はテーベの時代からアレクサンドロス大王が死ぬまで。ディアドコイ戦争にも触れてはいるけど、内輪もめは気が滅入るだけ、ということでオマケみたいな程度。

    アレクサンドロスというとやはりその自ら突っ込む戦術や、無謀とも言える冒険的な要素が挙げられることが多い。本作ではその辺に加えて、兵站についても触れられているのが塩野さんらしい。アレクサンドロスのキャラ敵に兵站を気にしていないイメージを持っていたが、そんなことは無かった。やはり戦争に勝ち続ける将はちゃんとしているのだ。

    今回の範囲は『ヒストリエ』の時代ともろかぶりである。この本では総括の代わりにアレクサンドロスの年表を載せいてるのだが、それを見て笑ってしまった。『ヒストリエ』の最新巻はまだ3行目までしか進んでいない。そしてエウメネスが真に活躍するのはアレクサンドロスが死んだ後なのだ。

  • 若々しく、魅力的。

  • 塩野さんのライフワーク
    壮大な歴史物語
    大トリを飾るにふさわしいのは

    この人しかいない

  • 著者最後の歴史エッセイ、ギリシア人の物語「新しき力」は、ギリシア都市国家の衰退状況とマケドニアアレクサンダー大王の歴史の物語。アテネの敗退以降スパスタからテーベに至る都市国家の移移り変わりとマケドニア フィリッポス王とその息子アレクサンダーによるアケメネス朝ペルシャ制服のための大遠征紀行をローマ人の物語同様の熱情でありつつ冷静な視点で俯瞰した大歴史エッセイ。

  •  ギリシア人の物語3部作の第3作目。ギリシアの中では辺境にあたるマケドニアで優秀な王が現れ、その子供がアレキサンダー大王として帝国を築いていく様子が描かれる。やはりこのような英雄がいると物語が盛り上がるし、私は3部作の中ではこの巻がいちばんワクワクとして楽しかった。

  • アテネの覇権体制が崩れギリシア国内が混沌とする中、マケドニアからアレクサンダー大王が現れ東征していくところがメインに描かれている。古代の話であるのに、よく調べて分析していると思う。興味深く、とても勉強になる。塩野七生氏のこれが最後の作品かと思うと寂しい。
    「敗退した覇権国家に代わって別の国家が覇権をにぎるのであれば、人間世界にもたらす弊害は相当な程度に避けることができる。問題は、そのようにならなかった場合なのだ。多極化などと言ってこのような状態こそが理想的な形であるとする人もいるが、実際は、混乱以外の何ものでもない」p9
    「「覇権」とは、政治・軍事・経済・文明文化のすべての面で、一国が他の国々に対して強い影響力をふるう状態を意味する」p9
    「弾圧には、意識していようがいまいが、対象が自然に広がってしまうという性質がある。民主派支持ではなくても積極的に寡頭派に賛同しなかったという理由だけで、有力な市民が次々と告発され死刑に処される例が増えていった。恐怖政治がアテネをおおうようになったのだ」p15
    「不安、それが他者に転嫁された結果である怒りは、人間を盲目にする。冷静な判断力を狂わせてしまうのだ」p17
    「西洋哲学はギリシアにはじまってギリシアで終わる、とは思っているが、その世界での最大スターがソクラテスなのであった」p31
    「覇権国でありつづけるには、覇権下にある国々が、その状態でも納得する何らかの理由がなければならない。また、魅力もなければならない」p71
    「スパルタには、他国の人々を引き付ける魅力がなかったのだ。軍事力以外は、何も創造しなかったからである」p71
    「2400年以上も過ぎた今でも、アテネに行けば見るものは山ほどある。だが、スパルタにはない。文字どおり、何も無い」p72
    「(アポロン神殿にお金を置いていた)ギリシア人にとっては、貸し金庫の役割も果たしていた。神様が見ている前で盗みを働く不届き者はいないだろうと思われていたからだが、これがけっこう効果があった。デルフォイの神殿に預けられていたカネが盗まれたと記した史料はない」p132
    「プラトンの(物乞い増加をもたらした兵役忌避に対する)批判は正しい。働いてもいないのに報酬だけもらうのでは、国に対する詐欺でしかない」p138
    「有力者の間でのバトンタッチは、両人ともの能力が高ければ高いほど、実にむずかしいバトンタッチになる」p173
    「(アレクサンダーの)父王フィリッポスが偉かったのは、息子に「スパルタ教育」を授けただけでは充分でないと考えたところにあった。頭脳の強化と向上には、哲学者のアリストテレスを招聘している。(アリストテレスはマケドニア人で、プラトンが創設したアカデミアで20年も学んだ)」p184
    「アレクサンドロスが生きた古代という時代は、さしたる勢力ではなかったユダヤ教を除けば、圧倒的に多神教の世界であった。一神教を代表するキリスト教やイスラム教は、この古代が終焉した後に出てくる宗教であることを忘れてはならない」p289
    「広大な国の統治は、軍事力や警察力だけでは絶対に長続きはしない。その地域の特殊事情にほ配慮しない限り、大国の統治はできないのである」p291
    「他の人より成長するということは、ますます孤独になっていく」p358
    「後にローマ人は「ローマ軍団は兵站で勝つ」と言い切った」p366

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