国盗り物語 後編 織田信長

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103097341

感想・レビュー・書評

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  • 大河休み中に後半に向けて

  • 下巻は織田信長の編となっているが、実際には主人公は明智光秀で、光秀の目線から織田信長を語っている。現在放映されている『麒麟が来る』も、この作品から多大に影響を受けているのであろう。信長と光秀を、斎藤道三の愛弟子同士と捉えた司馬遼太郎の語りは大変勉強になった。

    光秀は古典教養主義であり、真面目すぎるところがあり、あまりユーモアは解さない。道三亡き後、越前の朝倉家に居候しながら40歳ごろまで諸国を巡り、浪人生活を送る。志は大きく、天下をどうすれば良いのかについて考えていた。プライドが高く、己を安く売る真似はしなかったのだ。その光秀が掴んだのは、今は衰退した室町将軍とのコネであった。朽木谷を訪れ、運良く幕臣の細川藤孝と知り合った光秀は、室町幕府再興のために奮走する。やがて担ぎ上げた足利義昭だが、その保護者にふさわしい上杉謙信や武田信玄はいずれも遠方にあり、結局は伝統を重んじない故に将軍の権力を軽んじかねない信長を頼ることになる。これまでの不遇に焦燥を感じていた光秀は、信長とは肌が合わないと感じているにも関わらず、腹を決めて信長の部下になる。
    武略から行政や政略まで、一流の働きを見せる光秀に対し、信長は破格の出世を与える。しかし、彼の自尊心が信長とうまくやっていけるはずもなかった。延暦寺の焼き討ちや、有名な浅井長政の頭蓋骨のお屠など、様々なところで信長にぶつかり合い、辱めを受けた。個人的なレベルで、殺してやりたいと思うほどの恨みをつのらせた。親戚関係にある濃姫をめぐる(あったかどうか分からない)微妙な三角関係も、信長と光秀の関係に影を落としていた。

    信長も光秀を性格の上では嫌っていたであろうが、あくまで光秀を冷静に「道具」とみて重宝した。信長は部下の能力を見出し運用することに天才的だった。彼が作り上げた家臣制度は、従来の豪族の代表という立場の大名ではなく、皆直属の臣下だった。家臣は働きの褒美として一国を治める大名レベルになったといえども、信長の部下である限り、こき使われる会社員の境遇だったのだ。自分の領地に居座って、ゆっくりと治政に励む間もない。そんなことでもしようものなら、信長に叛逆の志ありと見なされ、滅ぼされてしまう。こういう境遇も、光秀の突発的な反逆に繋がったのだろう。

  • 前編「斎藤道三」と後編「織田信長」の感想をまとめて。

    後編は織田信長編と言いつつも半分くらいは明智光秀編と言ってもいいだろう。
    人間を機能としてしか評価できない信長に対する積年の恨みか、「狡兎死して走狗烹らる」の通りに天下平定の後に廃されるのが目に見えたか。延暦寺の焼き討ちや荒木村重一族への仕打ちなどに対する義憤か。

    それと、いかにも拙速感のあるとこるがまた想像を掻き立てる。それだけの衝動があったのか。精神的に異常を来していたのか(戦国時代にあって通常とか異常の違いがあるとも思えないけど)。誰かに騙されたのか。

    やはり本能寺の変は劇的に感じる。

  • 織田信長の奇人ぶりがよく知れるかなぁと思いきや、
    それほどでもなく、前編のような小説仕立ての面白さにも欠け、がっかり。明智光秀に興味が持てなかったせいもあると思うが。あとがきに、「はじめは斎藤道三のみを書こうと思った」とあったので、後編は予定外でああなったのかも。

  • 織田信長の”うつけ”時代から本能寺の変までの話。

    織田信長と明智光秀の二人を軸として物語は進む。
    信長の革命児的な偉業と光秀の鬱積していくストレス。
    斉藤道三編と異なり、二人を軸としていたから歴史を単になぞっているだけの様な展開を少し感じた。しかし、戦国時代に興味を持つには十分過ぎるほど良い作品だった。

  • 斎藤道三から始まり、時代の開拓者で天才”織田信長“と優れた行政官で軍事にも優れ、教養も豊富な秀才”明智光秀“の物語。二回目の読書でした。
    二人とも斎藤道三の影響を色濃く受けているが、時代を変えていく力は織田信長が引き継いで革命を起こしてゆく様は素晴らしい。
    明智光秀の登場の多さに改めて驚いた。行政官や軍人としてとても優秀な人で、教養も豊富であるので、同時代でもトップクラスの人材だった。しかし、少し堅物で上司からは可愛いがられるタイプでなかった。サラリーマンとしてはその点は参考にしたい。
    熊本藩細川家中興の祖である”細川藤孝“の足利、織田、豊臣、徳川の世を生き抜いた処世術は凄い。このような生き方はとても参考になる。

    織田信長の活躍をしっかりと読むなら津本陽氏の「下天は夢か」もお勧めかも。

  • 岐阜などを舞台とした作品です。

  • 何かに取り付かれたように信長の本ばかり読んでいた時期に読んだので、珍しく途中から読み始めた本。
    織田信長編と書かれていながら、物語の半分は主人公が明智光秀。
    作者自身が、信長よりも光秀に共感した結果ではないかと。
    お陰で、読んでるこっちも光秀に共感しまくり。じれったいというか、もどかしいというか、人間的性質の違いから生じていく二人の歪みが少しずつ色濃くなっていくのを見るのがつらいです。
    でも、ここまで極端じゃないとしても、こういうかみ合わなさって普通によくあることだと思う。斎藤道三編から通してまた読みたい。

  • 織田信長がきちがいじみて書かれているのは司馬目線?現代人が昔に戻ったような「浮き方」であると感じた。明智光秀かっこええね。信長評価ダウーン。外国人が信長嫌いなのもわかる気がする。

  • 【メモ】戦国・織田信長・明智光秀

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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