地球星人

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2845
感想 : 370
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103100737

作品紹介・あらすじ

なにがあってもいきのびること。恋人と誓った魔法少女は、世界 = 人間工場と対峙する。地球では「恋愛」がどんなに素晴らしいか、若い女はセックスをしてその末に人間を生産することがどんなに素敵なことか、力をこめて宣伝している。地球星人が繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう。私はどうやって生き延びればいいのだろう――。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    誰かのReviewを拝見し、興味を持って手に取った1冊です。
    村田沙耶香さんの小説は初めて読みましたが、著書の「コンビニ人間」などはタイトルだけは知っていました。

    読み終わって呆然。
    こんな時こそ、あの人気芸人の言葉を借りよう。
    「クセがスゴイ!!」
    この一言に尽きますよ・・・

    なんだこのシュールな世界観!!笑
    だって、冒頭で「家族には話していないが、私は魔法少女だ。」とか、エンジン全開すぎるでしょ!!笑
    「工場」??姉はクロマニヨン人で、母はクラッシュボンバー笹本??
    で、何だっけ。ポハピピンポボピア星人??
    音読できねえよ!!笑

    ・・・というような感じで、これだけだと書いていて何のことやら分かりませんよね(笑)
    でも、読んでいて何のことやら分からないのです・・・
    少し落ち着きますね。よし、Reviewを書きます。


    主人公の奈月は、姉ばかりをえこひいきする両親のいる家庭で育ち、塾の講師に性的な悪戯をされたり、そのことを母親に伝えても信用してもらえないという、とても正常とは言えない環境で育ちます。
    ツラい環境の中、一種の現実逃避の為に、ある日から奈月は自分の事を「魔法少女だ」と思い込むようになりました。
    作中、母親から虐待されている途中、「はい、わかりました、すいません。だから私を捨てないでください。なんでもいうことを聞いて従うから私を捨てないでください。大人に捨てられたら子供は死ぬ。だから私を殺さないでください。」という文面がありましたが、そこに関して読んでいて鳥肌が立ちました。
    小学生や中学生からすれば、どうしても今いる環境が全てだと思ってしまいますよね・・・
    大人でさえも、今いる環境から抜け出すのにかなりのエネルギーがいるので、子どもからすれば絶望感を感じてしまうのもやむを得ないのでしょう。

    そのようなちょっぴり凄惨な日常の中で、正常とは言いがたい精神状態の奈月は、自分が生きる社会のことを「工場」と呼び、自分たちが住む家の事を「巣」と呼び、子供を産んで育てることを「生産」と呼びながら社会を観察するようになります。
    ただ、そんな奈月が唯一心を許せる存在がいます。
    それは、親戚の集まりの時にだけ会える、いとこの「由宇」のみでした。

    由宇は自身の事を”ポハピピンポポピア星人”だといい、帰るための宇宙船を探していると言っています。
    (明記されてないものの、由宇もおそらく母親から何かしらの虐待を受けていて、現実逃避をしているのか?)
    お互いに似た雰囲気を感じ取った二人は、精神的に依存し合い、やがて恋人となって祖父の墓の前で身体を重ねますが、その行為を親戚一同に見つかってしまって離れ離れになってしまいます。
    由宇という精神的な支柱を失った奈月は、表面上は「工場」のルールに従って生きているが、自分の事を「工場」に洗脳されそこなった存在だと思って生きることとなります。

    大人になった奈月は、「工場」で生きやすくするために、性的交渉を一切持たないで済む夫を出会い系サイトのようなところで見つけて偽装結婚します。
    二人は夫婦を装いながら幸せに暮らしていましたが、夫が会社を解雇されたことをキッカケに、親戚の集まりに使われていた屋敷に今も住んでいる由宇の元に夫と共に移り住み三人で暮らし始めます。
    社会に慣れて一般感覚を得てい由宇も、この二人と暮らし始めたことで徐々に自らの常識が崩壊していき、最終的に三人は”ポハピピンポポピア星人”として、地球星人とは異なった暮らしをしていくことになります。


    ・・・といった感じで、全体を通してかなりシュールな文面や展開で、読んでいて頭がおかしくなりそうでした(笑)
    「おやすみプンプン」と同じテイストのシュールな作品でしたが、読み終わった後に、「この作品って結局なにが言いたいのかよく分からないなぁ」と思ったのもまた事実。笑
    かなり長いReviewになりましたが、そこまで深読みする必要のない娯楽本なのかも(笑)

    本当にクセがスゴイ1冊でした。
    ・・・個人的に、あまり好きじゃないかも(笑)


    【あらすじ】
    私はいつまで生き延びればいいのだろう。
    いつか、生き延びなくても生きていられるようになるのだろうか。
    地球では、若い女は恋愛をしてセックスをするべきで、恋ができない人間は、恋に近い行為をやらされるシステムになっている。
    地球星人が、繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう―。

    常識を破壊する衝撃のラスト。村田沙耶香ワールド炸裂!


    【メモ】
    p6
    家族には話していないが、私は魔法少女だ。
    小学校に入った年に、駅前のスーパーでピュートと出会った。
    ピュートがぬいぐるみ売り場の端っこで捨てられそうになっていたのを、私がお年玉で買ってあげた。


    p42
    「あと何かな。由宇はなにかある?夫婦の決まり事」
    由宇は少し考えて、ピンクのペンをとった。
    整った小さな字で、こう書いた。

    ・なにがあってもいきのびること。


    p64
    「クラッシュボンバー笹本、まじでうざい」
    レジの中のお姉さんが低い声で言い、一瞬自分のことかとびくっとした。
    そうか、母はクラッシュボンバー笹本なのか。
    姉はクロマニヨン人で、母はクラッシュボンバー笹本なのは、やっぱり親子の血なのだろうか。


    p71
    はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい。はい、わかりました。ごめんなさい
    だから私を捨てないでください。
    なんでもいうことを聞いて従うから私を捨てないでください。
    大人に捨てられたら子供は死ぬ。だから私を殺さないでください。


    p170
    「由宇さんは、そんなふうに思ったことはないですか?世界は工場で、自分は宇宙人だって」
    夫の言葉に、由宇は小さく微笑んだ。
    「僕は一度もないです。子供の頃は、そんな空想をしたことがあったかもしれないですが、もう大人なので。僕はれっきとした地球人で、この星から出ることは一生ありません」


    p221
    もうすぐ「工場」へ出荷される私たちは、着々とその準備をさせられている。
    先に出荷の準備がされた者は、まだ準備ができていない人間を「指導」する。私は美穂に「指導」されたのだった。


    p233
    「やめてくれ、助けてくれ!」
    私は夫に訊ねた。
    「本当に助けてほしい?」
    玄関には草刈り用の鎌があった。
    「ねえ智臣くん、本当に私に助けてほしい?それなら私、全力で智臣くんを助けることができるよ」
    私の視線の先に気がついたらしい夫が、急いで首を横に振った。
    「いや、本当には助けないでほしい」
    「そう。わかった」


    p282
    『お前がばらしたんだね。全部わかってる。私は黙っていてやったのに、許さない。私の家庭を壊したお前に、絶対に復讐してやる』
    姉の憎しみは伝わってきたが、私は今日まで何も知らなかったので、的外れに感じられた。
    面倒なことになりそうだったので、私はスマートフォンを地面に叩きつけて壊し、川へ放り込んだ。


    p301
    切ってしまえば、地球星人はただの大きい肉でしかなかった。
    「今夜はごちそうだな!」
    夫が嬉しそうに叫んだ。
    男の入った味噌汁と、男と大根の葉の炒め物と、男を茹でて甘辛醤油で煮たものと、3種類の男料理ができあがった。
    「久しぶりだなぁ、こんなにたくさんの料理があるのは」
    夫は喜び、由宇も嬉しそうだった。


    p314
    「その腹はなんだ…?」
    隣にいた別の地球星人のオスが、掠れた声で言った。
    「ぼくたち、三匹とも妊娠してるんです」

  • 村田沙耶香作品をこよなく愛する僕にとってこの本を読了してしまうといことはある種の寂しさを感じてしまうのだ。
    というのも、この『地球星人』を読了してしまったことで、僕は現時点で単行本としての形で出版されている村田紗耶香作品(小説)を全て読了してしまったことになるからだ。
    今の時点、つまり令和2年8月の段階では、単行本としての最新作は『丸の内魔法少女ミラクリーナ』だが、単独長編としては本作『地球星人』が最新作である。

    本書『地球星人』であるが、村田紗耶香ファンにとっては、納得できるキレっぷりの出来栄えである。
    村田紗耶香ワールドを愉しめる人ならば、本書に直ちにのめり込めるだろう。
    ただ、もしこの本から村田紗耶香作品に入ろうという方には、本書はいささか強烈すぎるかもしれない。
    例えるならば小学生の野球チーム相手にメジャーリーグのピッチャーをいきなり登板させるようなものなので、僕としてはおすすめはできない。

    村田紗耶香作品の初心者ならば芥川賞受賞作の『コンビニ人間』やスクールカーストや自分の生き方に悩む女性の細かな心理を描いた秀作『マウス』などから入るのがよいだろう。

    本書『地球星人』は、主人公の小学5年生の女の子が成長していく過程で感じていく「ある違和感」を極限まで突き詰めていくという壮大な物語であるが、まさに村田紗耶香ファンの期待を裏切らない『クレイジー沙耶香』要素満載の小説となっている。

    本作『地球星人』は、今までの村田紗耶香がテーマとしているものを全て網羅している小説だと言っても良いだろう。
    言い方を変えれば、本書は『コンビニ人間』の続編であり、『消滅世界』の続編でもあり、短編の『生命式』や『殺人出産』『トリプル』のパラレルワールドで起こった出来事であるとも言えるかもしれない。

    村田紗耶香作品の普遍的なテーマといえば、
      ○『普通』とは何か?
      ○『性』や『家族』の在り方とは?
      ○『生』と『死』とは何か?
    ということになるかと思う。

    コンビニで働くことでしか自分の存在意義を見つけることができない女性の姿を描き、芥川賞を受賞した『コンビニ人間』では、読者に『普通』とは何か?ということを鋭く突きつけた。
    また「セックス」がなくなり、女性でも男性でも妊娠が可能となった世界を描いた『消滅世界』では、『性』とは?『生殖』とは何か?ということについて深く考えさせられた。
    男女2人の「カップル」ではなく、男女3人で行う性行為がごく普通となった世界を描いた短編作品『トリプル』では、人間社会の性の在り方の新しい方向性を見せつけられた。
    そして「亡くなった身内の肉体を料理し、その肉を食べることによってその人を弔う」という風習が当たり前となった生活を描いた『生命式』や「10人子供を出産すれば、誰でも1人殺すことができる権利を得られる」という社会を描いた『殺人出産』などの作品では、我々に「生と死」とは何か?という素朴すぎる疑問を思い起こさせた。

    本作『地球星人』の主人公は、小学5年生の女の子・奈月とその幼馴染である由宇、そして大人になった奈月が結婚する相手の智臣の3人だ。
    彼ら3人の生き方を通じて僕たちの世界観がいかに偏った固定観念の基に成り立っているかをまざまざとみせつけられる。

    この本書の世界観を最も端的に表した文章が、奈月の以下の二つのセリフに凝縮されている。
      『ここは巣の羅列であり、人間を作る工場でもある。
      私はこの街で、二種類の意味で道具だ。
      一つは、お勉強を頑張って、働く道具になること。
      一つは、女の子を頑張ってこの街のための生殖器になること。
      私は多分、どちらの意味でも落ちこぼれなのだと思う。』

      『世界は恋をするシステムになっている。
      恋ができない人間は、恋に近い行為をやらされるシステムになっている。
      システムが先なのか、恋が先なのか、私にはわからなかった。
      地球星人が、繁殖するためにこの仕組みを作り上げたのだろう、
      ということだけは理解できた。』

    本書を読むと、現在僕たちが生きるこの社会とは「全く別の世界」があるのかもしれないということを容易に想像させてくれる。

    村田紗耶香という女性は、僕らとは違う価値観を持っているというよりも、この世界とは「異なる価値観を有する」と「こちら側の世界」とを自由に行き来できる能力を持っているのではないだろうか。
    いや、むしろ
      「こちら側の世界」に誤って迷い込んでしまったパラレルワールドの住民なのだ」
    と言われたほうが僕たちには理解しやすいかもしれない。

    そんな彼女の描く世界を堪能する愉悦は何ものにも換えることはできない。
    だからこそ、僕は、こんなにも彼女の作品の魅力に取り憑かれてしまうのだ。

    • まことさん
      kazzu008さん。お久しぶりです。

      今、『山形小説家講座』のHPをなんとなく見ていたら、今年11月20日(土)午後3時から村田沙耶...
      kazzu008さん。お久しぶりです。

      今、『山形小説家講座』のHPをなんとなく見ていたら、今年11月20日(土)午後3時から村田沙耶香さんと島本理生さんのオンライントークショーがあるらしいです。今まで全然気が付きませんでした。
      御存知でしたか?
      参加方法は講座HPに詳しく書いてありますが、オンラインの〆切が11月6日となっています。
      まだ、申し込まれていらっしゃっらなくても定員100名みたいですので、問合せだけでもされてみられてはいかがでしょうか。
      熱心なファンであることをアピールすれば、1名くらい入れてくれることもあると思います。
      まだ申し込まれていなければ、1度トライしてみてください。
      2021/11/15
    • まことさん
      kazzu008さん。
      追伸ですが、会場視聴だと、定員150名まで、あるみたいです。
      kazzu008さん。
      追伸ですが、会場視聴だと、定員150名まで、あるみたいです。
      2021/11/15
    • まことさん
      kazzu008さん。
      もう一度追伸ですが、今、山形県はコロナ感染者は、12日間0人です。お知らせまで。
      kazzu008さん。
      もう一度追伸ですが、今、山形県はコロナ感染者は、12日間0人です。お知らせまで。
      2021/11/15
  • 村田沙耶香さんにかかれば、世間での常識と思われていることや固定観念、家族観、古くさい因習も、あっさり飛び越えてみせる。毎度毎度すごいと思うのだが、今回はその飛び越え方が、おもいきりK点越えしているのである。

    途中までは、「しろいろの街の、その骨の体温の」を思わせる、触れてほしくないところに触れられた感が強くて、読むのが辛かった。何か村田さんの作品には、自分の辛い過去を思い出させることが多い。

    細かいところを挙げると、母親が隣近所に挨拶するときに、なぜ子供のことをわざわざ悪く言うのだろうか。しかも本人のいる前で。社交辞令や、相手を立てる礼儀としての意味もあるのかもしれないが、これって、誰が得をするの? 私には、まるで子供を自分の所有物として扱っているようにしか思えなかったし、今ならモラルハラスメントにもなりかねない。

    しかし、それでも読むのをやめないのは、そういった自分が嫌だと思ったことが、間違っているのではと思ってしまった悲しみを、村田さんが分かってくれているように感じるからだ。それは全然おかしくないと。嫌だと感じていいんだよと。だから、自分の存在を認めてくれる村田さんの作品には、特別な感情が湧き起こり、つい感想も長くなる。

    そして、途中までの現代的でリアルな痛々しさから、少しずつ物語の雰囲気が変わっていく。

    それは、現代社会の見えない縛りや決まり事を、痛烈に批判しているようにも見えて、猟奇的な場面もありながら、時に滑稽さまで感じさせるのが、村田さんの凄いところで、そこにはジェンダー平等の問題も滲ませている。私は正直、そうした場面は苦手なのだが、不思議とこの作品では苦にならなかった。

    おそらく、終盤の展開を読んで、「かわいそうだね」なんて思う方もいるかもしれないが、そもそも、そういう思いにさせたのは誰なんだと言いたい。

    主人公「奈月」が、物語の序盤から思い描いていた、宇宙への思いは、辛い家庭からの現実逃避に始まり、その後のやり切れない事件で、心が限界を訴えて病気になっていたまま、何十年も生きてきた。
    その気持ちを誰か分かってやれるのか? 体と心への暴力で、自らがストレスの捌け口としての、サンドバッグにされてきた奈月の気持ちが分かるのか?

    こうした思いに、
    「皆それぞれ乗り越えてきたんだよ。だから、あなたもそうしないと」
    といった、脅迫めいた価値観の押しつけを表現しているあたり、また痛烈である。

    更に、現代の生き苦しさから逃れるように始めたことが、原初に立ち帰るような展開になるところも、エコや環境問題など、地球の未来を予見しているようにも見えて興味深いが、合理性重視や倫理観が無いあまり、ものすごい方向にもっていってしまうあたり、これまた皮肉なのかと感じてしまう。

    固定観念、ハラスメント、自立心、家庭問題など、実はすごく大事なことをテーマにしてあり、決して、笑い事では済まない。「ポハピピンポボピア」に惑わされてはいけないのである。

    もし、他の星に宇宙人がいるとして、地球の様子を見ているとするのなら、奈月の母と姉を筆頭とした常識人と思い込んでいる輩に、これだけは言っておきたい。頼むからこれ以上、地球星人の恥を曝さないでくれと。

  • 衝撃的過ぎるラスト…。
    ショックで、よくわからない、というか、頭が内容を理解をしようとしない…



    地球星人は、人間を作る工場の中で暮らしている。
    ほんとは、働くのもセックスするのも本当は嫌いなのに、催眠術にかかって、それが素晴らしいものだと思わされている。

    こんな世界観を持つ、ポハンピピンポボピア星人である奈月の物語。

    性的虐待、殺人など、残虐シーンが多く(淡々と語られてはいるが)不気味なことと、子育ての全否定みたいなところがあって、不快に思う人も多いだろうな、と思った。

    心がものすごく揺さぶられたので、快不快は通り越して僕の評価は高いです。
    全然違う内容だけど、村上龍さんの「コインロッカー・ベイビーズ」を初めて読んだ時の衝撃を思い出した。

    クレージー沙耶香、こと村田沙耶香さん。今後も注目していきたい。

    本屋大賞2019 1次投票第20位

  • 小学5年生の笹本奈月には、勤務先でクラッシュボンバー笹本とよばれている母。中学校で、クロマニョン人といわれている姉がいる。
    塾の先生の伊賀崎には『お勉強』といわれ、いたずらされる。
    奈月は、お盆休みにだけ、長野で逢える同い年の従兄の由宇と結婚している。
    だけど、二人で、生きのびて、ポハピピンポボピア星に宇宙船に乗って帰る前に、塾の先生に殺されそうになる。
    「私、もしかしたら殺されるかもしれないの。だから死ぬ前に、由宇と結婚したいの。子供の約束じゃなくて、本当の結婚がしたいの」
    悲痛な奈月の叫びを由宇は受け入れる。
    「家を出たときから、もう戻らずに死ぬことを決めていた」

    このお話は、前半の二人の別れから、中ほどの奈月とすっかり人が変わってしまった由宇との再会までは、普通のお話しとして読めました。
    ただ、後半の奈月と由宇、奈月の元夫の離婚式のあたりから別な話になり、何の話なのかわからなくなりました。
    前半の二人のストーリーはとてもせつなく、どうなるのかと思っただけに、私は特に由宇の変化の仕方が残念でした。

    結婚誓約書の
    『なにがあっても生きのびること』
    この誓いが、離婚式のあとも守られたのは、よくわかりました。
    地球星人には未来がないということでしょうか。

  • 家族から虐げられ、ごみ箱のような扱いをうけている主人公の奈月。そのいとこで母親に依存されている由宇。ふたりが会うことができるのは、毎年お盆に親戚一同があつまる長野の家。祖父の葬式があったある夏、ふたりのセックスが大人たちにばれ、それ以降奈月は家族から監視される生活をおくるようになる。そして夜中にこっそり魔女退治。大人になってからは利害関係が一致する夫に出会い、なんとか周りをだましながら工場の人間のふりをして生活するが、夫に限界がきて長野に旅行することに。そこで由宇と再会し、宇宙人として覚醒していく。

    こわいこわい、と思いつつ、共感する部分も多少はあり、そこがまたこわい。うまいこと工場の部品として機能ができる人と、そうでない人がいて。生きづらさをサイケデリックに著し、脳裏に焼き付ける。

  • どこまでも独特な世界観が広がっていた。

  • 村田沙耶香の入り方として、オビに『コンビニ人間』を上回る衝撃と書かれたものは、避けた方がよいと思われます……。

    後半はマトモに読むのがしんどくて、結局「地球星人」を完全に捨てて?、ポハピピンポボピア星人になるというのは、こういう結末になるんかなーと。

    じゃあ「尊厳」って何よ、と聞くと、痛烈なカウンターが返ってくるのは分かっている。
    アナタは「地球星人」として「尊厳」のある暮らしをしていると、本気で思っているのか?と。

    子どもの頃は大人の都合に支配され(時に逆転することもあるが)、異性の好奇の目に否応なく晒され(その理由として、自身が持って生まれた、どうしようもないことを否定されることさえあり)、働いて、家族になり、子を産む「工場」に組み込まれた部品であることを、自覚していないだけなのではないか。

    自身に負った傷をカミングアウトしても、「それはお前が悪い、お前が異常だ」と更に傷付けられる世の中は、当たり前にマトモではない。
    それでも、奈月が「地球星人」に早く洗脳されて、それとして生きていきたいと願うことが、切ない。

  • TIME誌が今年の必読書100選を発表。日本の作家から選ばれたのは? | ハフポスト
    https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5facb445c5b635e9de9ed133

    村田沙耶香 『地球星人』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/310073/

  • 魔法少女の逆襲SFかと思って読み始めたら、リアリズム小説だった。日本のリアルの話だった。暴力や絶望やとち狂った社会の話だった。それはとても見慣れた世界で、とても見慣れた種類の壊れかたで、読みながら呼吸がうまくできなくなった。「なにがあってもいきのびること」。一般に、虐待を「生き延び」た人は、サバイバーと呼ばれる。これはサバイバーである主人公が、自分の身体を取り戻すために立ち上がる物語。どこにでもいる異星人たちに向けられた、エンパワメントの物語だ。「男料理」というパワーワードに爆笑した。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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