地球星人

著者 :
  • 新潮社
3.32
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レビュー : 153
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103100737

作品紹介・あらすじ

なにがあってもいきのびること。恋人と誓った魔法少女は、世界 = 人間工場と対峙する。地球では「恋愛」がどんなに素晴らしいか、若い女はセックスをしてその末に人間を生産することがどんなに素敵なことか、力をこめて宣伝している。地球星人が繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう。私はどうやって生き延びればいいのだろう――。

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃的過ぎるラスト…。
    ショックで、よくわからない、というか、頭が内容を理解をしようとしない…



    地球星人は、人間を作る工場の中で暮らしている。
    ほんとは、働くのもセックスするのも本当は嫌いなのに、催眠術にかかって、それが素晴らしいものだと思わされている。

    こんな世界観を持つ、ポハンピピンポボピア星人である奈月の物語。

    性的虐待、殺人など、残虐シーンが多く(淡々と語られてはいるが)不気味なことと、子育ての全否定みたいなところがあって、不快に思う人も多いだろうな、と思った。

    心がものすごく揺さぶられたので、快不快は通り越して僕の評価は高いです。
    全然違う内容だけど、村上龍さんの「コインロッカー・ベイビーズ」を初めて読んだ時の衝撃を思い出した。

    クレージー沙耶香、こと村田沙耶香さん。今後も注目していきたい。

    本屋大賞2019 1次投票第20位

  • 世の中の常識を押し付けられることの生きづらさを極端な表現で物語にしていて正直ラストはもう理解を超えてしまったけど、あまりの勢いに★は4です。
    今回も生殖と人のエゴについての追求。攻撃的だけど至るところに刺さるフレーズがあった。

    理解とか同意とかというものを超えた世界だった。もうこれは天才的。

  • 芥川賞受賞後もブレない村田沙耶香ワールドが全開!『殺人出産』や『消滅世界』では主人公が一般的な感覚に近く世間の方が私たちからすると異常だったのが、『コンビニ人間』では主人公が"少し"変わっていて世間は普通と逆転、今回も『コンビニ人間』同様の設定ではあるが…

    冒頭こそ「あれ?いつもと少し違う?」と思ったが、読むにつれいつも通りの"世界からの疎外感"と"一体化へのあこがれ"を軸に話は進行、異常な事も含め淡々と語られていく。この世は工場で恋は生産性を高めるための麻酔という捉え方も村田沙耶香さんらしく面白い。あと、どなたかも書いていたけど安部公房『人間そっくり』を思い出した。

    で、ラスト…これはこうでないといけなかったのか、もうちょっと他の結末はないものなのか?らしいといえば、この上なくこの人らしいラストだが、正直まだこの展開の必然性が飲み込めてない。『タダイマトビラ』と同じような方向でそれ以上インパクトといえばいいのか…

    あまりといえばあまりなラストなので、ちょっと他人に薦める気にはあまりならないが自分にとっては村田沙耶香ワールドが堪能できて楽しかった。ラストシーンの解釈については時間を空けて改めて考えたい。

  •  同町圧力の中で自分をすり減らされてしまった主人公「奈月」の悲劇。小学生時代と30代中盤の2つの時代が描かれており、地球の常識に主人公を引き込もうとする「由宇」、地球星人の常識から主人公を引き離そうとする「智臣」、そして間に挟まれた主人公という三角形の構図がある。

     『コンビニ人間』がどのような評価をされているか詳しくないが、「みんな違ってみんないい」なんて言葉はやっぱりまやかしで、常識・常道・社会を疑う視点と共に、そこから逸脱するということの厳しさ、寂しさ、重さがしっかりと書かれている本だと認識している。

     この小説があまりにもダークな終わり方をしているのも、同様の理由だろうか。同調圧力は地獄だが、そこから離れたって地獄だ。同調圧力を批判する本なんて星の数ほどあるが、そこから離れることが宇宙船地球号に齎す厄災に向き合うことはきっともっとずっと難しい。
     一所懸命に生きる主人公たちの人生が蹂躙されていく様と、互いが互いを思う気持ちがどんどん悲劇へと駒を進める様はあまりにも悲劇的で、読んでいるのが辛かった。

     自分の中のもやもやした何か、もやもやしていることをひた隠しにしていた何かを暴かれ蹂躙された読後感。こうした自分の中にある悲しみにどう対峙すればいいのか、こうした悲しみを抱える人に何ができるのか。蹂躙された心の中のどこかに、答えがあるのだろうか。

  • 小学5年生の笹本奈月には、勤務先でクラッシュボンバー笹本とよばれている母。中学校で、クロマニョン人といわれている姉がいる。
    塾の先生の伊賀崎には『お勉強』といわれ、いたずらされる。
    奈月は、お盆休みにだけ、長野で逢える同い年の従兄の由宇と結婚している。
    だけど、二人で、生きのびて、ポハピピンポボピア星に宇宙船に乗って帰る前に、塾の先生に殺されそうになる。
    「私、もしかしたら殺されるかもしれないの。だから死ぬ前に、由宇と結婚したいの。子供の約束じゃなくて、本当の結婚がしたいの」
    悲痛な奈月の叫びを由宇は受け入れる。
    「家を出たときから、もう戻らずに死ぬことを決めていた」

    このお話は、前半の二人の別れから、中ほどの奈月とすっかり人が変わってしまった由宇との再会までは、普通のお話しとして読めました。
    ただ、後半の奈月と由宇、奈月の元夫の離婚式のあたりから別な話になり、何の話なのかわからなくなりました。
    前半の二人のストーリーはとてもせつなく、どうなるのかと思っただけに、私は特に由宇の変化の仕方が残念でした。

    結婚誓約書の
    『なにがあっても生きのびること』
    この誓いが、離婚式のあとも守られたのは、よくわかりました。
    地球星人には未来がないということでしょうか。

  • とても評価が分かれる作品だろうと思います。
    ある生徒から「とても衝撃を受けました」とおすすめされ、『コンビニ人間』に対して好印象だったこともあって読んでみました。
    『コンビニ人間』でも少し感じた部分ではありますが、登場人物の「クセ」というか「周囲と馴染めない個性」の描き方に違和感を覚えることもありました。

    今回は自身を「宇宙人」だと思っている女性が主人公でした。
    幼いころのトラウマや、家族からの愛情不足など、主人国の置かれた環境に対して同情すべき点はありますが、やはり共感できないというか、感情移入できずに終わってしまったというのが正直なところです。
    描写にも気を付けなければならない点が少なくはなく(性的虐待を受ける描写や、殺人の生々しい(ある意味過激な)場面がある)、個人的にはあまり好きな部類ではなく、また生徒にもなかなか推薦しにくい内容だと感じました。

    物語のテーマそのものは面白い(現実の社会(地球星人が暮らしている社会)を「工場」に見立て、そこでの経済的生産性や子孫を残すという生物的な生産性で人が評価され、愛や恋などはこの「工場」の「部品」としての人間(地球星人)がストレスなく生活するための「脳内麻酔」に過ぎない、というような思想)のですがー『コンビニ人間』も「マニュアル人間」をテーマとした作品で、こちらは楽しめたような記憶が残っていますー、もう少し違った形で読むことができたらな、と思わずにはいられません。
    何のために生きるのか(結婚し、出産するという、また労働するという「社会が求める生き方」に”合わせる”ことはどこまで必要か)を、「自覚的に」考えながら生きておくことは無駄ではありませんし、そのきっかけを与えてくれる本という点からは、いい本だといえると思います。

  • 本というのは、何ページか読んでいくと、良くも悪くもそのストーリーの骨格というか、ラストまでの落としどころみたいなものが想像できる。

    しかし、この本はラストに向かうに従って全く分からなくなっていく。想像を超えるというか想像していたことがバカバカしくなる。

    まあ面白いとか面白くないとかというレベルではない。

    でも僕らが共有していると思い込んでいる工場という価値観は、もしかすると本当に単なる地球人の幻想なのかもねという疑いが自分の中で芽生えないようにしないと、えらいことになりそうなので、さっさと忘れることにする。

    それにしても、誰かから「仲良し」しなさいとか言われたら叫び出したくなるかもしれん。

    あー恐かった。

  • 主人公の奈月は、自分はポハピピンポボピア星からやってきたというピュートに命じられ、危機に瀕した地球を守る魔法少女なのだと思い込んでいる。
    毎夏訪れる秋級のおばあちゃんちで会えるイトコの由宇は恋人で、由宇もまた自分を宇宙人だと思っている。
    2人は「なにがあってもいきのびること」という約束をし、自殺未遂をする情緒不安定な母親や、ヒステリックに叩きつけてくる母親、塾の先生からの性的虐待にも堪える。
    最低な大人のなかで、生きるために魔法に縋って自分を守ることしかできないこどもたちが、ただ可哀想だった。
    そして小学5年生になったとき、奈月と由宇はセックスをしたことがバレて引き裂かれてしまう。ただそばにいきたい、誰かの皮膚の中に行きたい、と願うまだほんの少女の純粋な欲望が切なかった。

    「いつになったら生き延びなくても生きていられるようになるの?」
    その疑問は結局解消されないまま、奈月は大人になる。世間や親を欺くために同じような価値観の男と契約結婚する。
    ここは工場で、人間とは所詮つがいをつくって巣をつくり、生殖と繁殖を繰り返すためだけの道具なのだと思っている。
    ポハピピンポボピア星人として「宇宙人の目」をもって俯瞰して見れば、ここに生息しているのだってただの地球星人なのだ。
    読みながら同様に宇宙人の目を手に入れてしまった私たちは、次第に今いるここがどこだか分からなくなる。地盤が崩れ、視界がぶれて、自分が何者なんだか分からなくなる。ポハピピンポボピア星人なのかもしれないと、疑わずにはいられなくなる。
    そこからは怒涛の展開でラストまで止まらなかった。
    衝撃の展開に、進化と退化は紙一重なのかもしれないと思った。秋級での彼らの姿や生活は、遥か昔に産まれたばかりの生命としてのニンゲンそのものの気がしてならない。

    村田さんの小説に心酔し追い続けてきた一読者としては、「ついに来るとこまで来たか……。」という感想。
    これまでの小説のコアなる部分を結集させて、どえらい小説が爆誕してしまった。

  • 村田ワールド炸裂です。
    後半どーなるの?って、気になります。
    情報なしで読み始めたので、うわーって読みました(>_<)

  • POPで可愛らしい表紙のイメージで、うっかり読み始めてしまった私は
    最後にはコテンパンにやられてしまうことになった。。。

    自分だけ居場所がないような、生まれる場所を間違えてしまったような感情は誰もが心当たりがあるのだろう。
    それでもなんとか毎日周りに合わせたり、
    そんな自分に疲れてしまったり
    そんなことを繰り返しているのが人間らしさなんだろうなぁ・・・と
    『もし擦り寄ることを全て放棄したら?』の答えを読んでしまった今、
    しみじみと思っているのである。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた さやか)
1979年、千葉県印西市生まれ。二松學舍大学附属柏高等学校、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
2003年『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞しデビュー作となる。2009年『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補及び、第31回野間文芸新人賞受賞。2010年『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。2012年『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。2013年、しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。2014年『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
2018年8月末、『地球星人』を刊行。

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