神君家康の密書

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103110354

作品紹介・あらすじ

女房の尻の威光に縋る蛍大名と異名を取った京極高次。しかし関ヶ原の勝敗は彼の籠城によって逆転した。雲の動きが災いし、宿敵・秀吉軍が迫る北ノ庄城。信長下賜の井戸茶碗でお市と茶席を設けた柴田勝家の最期の戦術とは。東軍最強を誇る猛将・福島正則。強すぎるが故に家康に警戒された彼は、ある賭けに出た。取引は呆気なく成功したが…。戦国覇道の大逆転劇に与った三武将。歴史を変えた三つの落城秘話。

感想・レビュー・書評

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  • 京極高次、柴田勝家、福島正則…歴史上の準々主役くらいの人の視点や歴史にどんな影響を与えたのか考えるのも面白いな。

  • 徳川家康へと時代が変わりつつある時の短編集。
    蛍大名の変身(京極高次)、冥土の茶席(島井宗室)、神君家康の密書(福島正則)。
    どの話も歴史の裏側を読み解くもので、このような見方もあるのかなと非常に面白い。
    特に、冥土の茶席は、高麗茶碗から島井宗室、信長、柴田勝家らを描いていく視点が新鮮で良かった。

  • 京極高次、柴田勝家、福島正則。
    下衆な話もあって面白かった。

  • 本当に教科書のように感じる!学校の教科書というわけではなく、歴史小説の教科書のような気がします。本当に入門編としては非常にいいものだと思うのですが、先読みが簡単すぎて飽きてくるときもあるのですが、いい書き手だと思います。

    「神君家康の密書」

    オムニバス的に短編の三作品をまとめたものだが、スポットを当てたのは京極高次・柴田勝家・福島正則の3人である。75歳デビューと遅いデビューの加藤先生ですが、読みやすく感じる。

    ただ、作品とは全く違う思考が僕の場合は働くのだが、素直に描いた作品を読んでいるとどうしても石田三成が好きになってくる。律義者・忠義者、正しいことをしている人間に与えられる称号はすべて彼の肩書になるのではないかと思う。

    判官びいきというわけでもなく、彼に対してはどちらかと否定的なことをというよりも間違ったこと、人望がなかったことを言われるが民に愛され秀吉に信頼を受けた人間に対しての妬みにしか感じられない。武功ではなく、人間を書き綴ったらこの時代の人間性は彼が一番かもしれない。

  • 家康を主とするような題ですが、ボクは二編目の冥土の茶席が面白かったです。

    信長は安物と蔑んだ高麗茶碗を軸に歴史が展開し、柴田勝家像はイメージどおりでしたし、青井戸茶碗柴田は現存するということで、最後まで楽しめました。

    三編神君家康の密書は、いろいろと説の分かれる広島城修繕事件を家康の密書と絡めてあるのが良かったです。

    加藤廣は裏付けを踏まえた自説がしっかりと構築された上で小説化されている感じが伝わり、どの本も読んでいて矛盾しない爽快さが良いと思います。

  • 家康に関する短編集。

    蛍大名と言われた京極高次の話、重要文化財で現存する高麗青井戸茶碗の名前にもなった”柴田”勝家の話、加藤清正とならび、豊臣家の行く末を最後まで気にかけていた福島正則の話の3つである。

    秀吉は子をなせない胤なし男であることは噂されていたが、そんな秀吉の妻茶々が身ごもった。その茶々の夫重ねの相手は誰なのか。高次は茶々と幼馴染で、恋心を抱いていたが、父浅井長政の敵とも言うべき秀吉の妻になど何でなったのか。夫重ねの相手として噂になっていたのは、1位大野治長、2位石田三成、3位前田利長である。高次は最終的には徳川に味方し、茶々を見限ることになるが、周りからは、秀吉の温情により、功もないまま、従3位にまで昇進したので、当然、西方と思われていたようだ。徳川に味方したものの、家康は関が原の戦いで高次を助けに行けなかった。ただ、高次が、西軍大将毛利輝元の叔父・元康と、立花宗茂などの猛将の一部を引き付けておいたために、関が原で勝利を得たため、高次は3日で籠城戦に終止符を打ち開城したにもかかわらず、若狭8万5千石を賜った。

    高麗青井戸茶碗”柴田”と呼ばれるその茶碗は、勝家が信長から褒美にもらったものだ。信長も茶器集めに血眼になっていたが、当時は高麗茶碗はそこまで重宝がられておらず、それがため、信長は勝家にこれを与えたのであろう。この”柴田”は、勝家がお市と最後の茶を喫するときにも用いられたようであり、現在、見ることができるその素朴な茶碗には、今も当時の悲しさが満たされているように見えるものである。明治36年にこの茶碗は見つかり、競売にかけられ、長州出身の藤田伝三郎が落札した。藤田は、維新後、藤田組を組織し、陸軍御用達の土木請負業として、西南の役で巨利を博した金満家であった。その後、昭和9年に藤田家の入札で売りに出され、12万円で鉄道王・根津嘉一郎が落札した。現在の価値で言えば3億円以上と言われる。”柴田”は日本の歴史上、最高の価格をつけた茶碗になった。

  • 信長の棺シリーズのスピンオフ。

  • 信長の棺が面白かったので、これにも手をだしてみたが、それほどでもなかった。中途半端なフィクションが多くて、興醒め。

  • 加藤廣氏の歴史小説は、「信長の棺」を始めとしていつも楽しく読んでいます。小説という形をとっているものの、多くの歴史書等を調査したうえで、実際に起きていたであろう事実を小説の形で、私にもイメージしやすく表現されていて歴史ドラマを見てるようです。

    最近のテレビの歴史ドラマが残念なものが多いのに比べて、歴史小説の方は調査が進んできて従来の説を覆す内容をベースに書かれたものもあり、今後も楽しみです。

    以下は気になったポイントです。

    ・「西」は天子南面すれば「右」を意味して、西と右は当時(戦国時代)は同義である、武士の住まいも本丸の次は「西の丸」であった(p23)

    ・秀吉は鶴松が生まれる前に、天皇の弟(胡佐丸)を養子に依頼していた、金山などは豊臣家の直轄であり、それが支配下に入ることを期待して朝廷は了解した(p29)

    ・京極高次は実質三日のみ抵抗したが、これにより毛利元康(輝元の叔父)と立花宗茂の1.5万人が大津に引き止められて関ヶ原の戦いに間に合わなかった、彼等が関ヶ原へ到着していたら、小早川秀秋の寝返りは不可能であったと思われる(p88)

    ・柴田勝家が最初に50万石を超えたが、その後に羽柴秀吉(弟秀長分を加えて70万石)と明智光秀(61万石)に抜かれた(p127)

    ・廻し飲みをすることで、武将たちが毒入り危険から解放されて連帯感が高まった(p129)

    ・茶々、初、小督の三人は、事前に勝家の命令で城落ちとなった(p166)

    ・関ヶ原の戦いで、家康は大垣城攻めを保留にして進軍を余儀なくされたため、関ヶ原で遭遇戦となり勝利となった(p252)

    ・徳川軍の3万は、諸将が軍監として豊臣軍に配属されていたので、中身は小姓や雑兵のみ、実戦力は、井伊直政と松平忠吉の6000のみ(p253)

    ・西軍は15日早朝には8万近くの大軍に膨れていて負けるはずがなかったが、霧の発生によりお互いの配置がわからなくなった(p255)

    ・家康は西軍大名90家を取り潰し、厳封した669万石を東軍諸将に配った(p263)

    ・家康は豊臣家の持っていた蔵入地:225万石の殆どを削って、65万石の大名に転落させた(p266)

    ・加藤清正の死亡後に、浅野長政、池田輝政、浅野幸長、前田利長が相次いで不審死となった(p273)

    2012年4月14日作成

  • 期待してた作家だったのに、だんだん質が落ちてきているような気がするなあ。
    もっとサラリーマン経験がつまった歴史小説を期待していたんだけどなあ。

  • 「信長の棺」の著者の短編集。
    蛍大名(女の尻の光で偉くなった)と揶揄された、京極高次が関ヶ原前夜の大津城籠城戦を奮戦する「蛍大名の変身」
    井戸茶碗「柴田」を巡るちょっと切ない話「冥土の茶席」
    関ヶ原の直前に猛将福島正則と徳川家康とに交わされた密約を巡る「神君家康の密書」
    どの話も著者の他の作品の世界観とリンクしておりスラスラと読めた。特に「神君家康の密書」は、福島正則の知将ぶりに意外性を感じ、福島丹波守の忠臣ぶりに感動し結構楽しめた。

  • 「信長の棺」の作者にしてはあっさりした作品。軽くさくさく読める。短編も書けますよ~ってところかな。

  • 家康のしたたかな面が面白おかしく書いてある.江戸時代直前の様々な事件が手に取るように記述されていて,楽しい本だ.

  • まあ面白かったが、と言う程度。

  • 3英傑の時代が得意な作者は、結局、ここに帰結する。また、秀吉贔屓で家康嫌いなのは相変わらずで、秀忠などの書きようは、まあ通説的ではあるが結構、ひどいものがある。茶々の復讐とか子がなせなかった秀吉の悲哀とか、福島正則の本意とか、秀吉よりではあるが、歴史の解釈としては十分にありうる話であり、納得性も高い。ただし、最後の忠臣の丹羽の守のその後を含みを持たせて終わるのは、あまりにも露骨に自作への序曲めいていて、少々、気に障る。歴史物にイフは付きものだが、秀頼存命は少々、安易ではないか。

  • 本に出てきた高麗茶碗に興味をもつ。根津美術館にあるらしい。

  • 「秀吉の枷」における豊臣秀頼の父親に関する見解。

    その見解を踏襲し、詳細を語るための短編集という印象。

    「安土城の幽霊」の短編もそうだったけれども、
    著者は茶器に強い興味を持っているんだな、と思った。

    ちなみに、表題作を読むと福島正則への印象ががらりと変わる!

  • 福島正則の編は一度読んでみる価値はある。

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著者プロフィール

加藤 廣(かとう ひろし)
1930年6月27日- 2018年4月7日
東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、中小企業金融公庫(現日本政策金融公庫)に勤務し、調査部長などを歴任。山一証券経済研究所顧問、埼玉大学経済学部講師を経て経営コンサルタントとして独立し、ビジネス書執筆や講演活動を行う。
50歳頃から、人生を結晶させたものを残したいと考えるようになり、歴史関係の資料類を収集。2005年、『信長の棺』で作家デビュー。当時の小泉純一郎首相の愛読書との報道があって一気にベストセラーになり、高齢新人作家としても話題になった。のちに大阪経済大学経営学部客員教授も務めた。
『秀吉の枷』『明智左馬助の恋』を著し、『信長の棺』を含めて本能寺3部作と称される。ほか『水軍遙かなり』、『利休の闇』。その一方で『戦国武将の辞世 遺言に秘められた真実』、『意にかなう人生 心と懐を豊かにする16講』など歴史エッセイや教養書も刊行を続けていた。

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